赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている【0830】   作:ピグリツィア

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カーリー特色の事件簿 ヴィリーの宿殺人事件

 換金所の店主から聞いた情報を元に、事件の起こった現場『ヴィリーの宿』まで向かう。

 件の場所は天然洞窟を利用した物だ。逃げ道はそう多くはないが…街灯は少ないし、人通りが多い訳でもなさそうだ。逃げていく犯人を見た人間は多くないだろう。

 

「随分と混雑しているな?」

「久し振りの殺人だからかもね、大半は野次馬だろうけど…」

 

 殺人現場となった宿の前には予想通り、野次馬が群れを成していた。入り口で止めているみたいだから、中までこうではないだろうけど…これじゃ入るのも一苦労だ。

 

「僕が先に見てくるよ、リヴェリア達はここで待機してくれ」

「ああ、わかった」

 

 フィンはスルスルと人の足の間を抜けて宿の入り口へ向かった、その間に私たちは宿の外観を見ておくか。

 

「裏口とかは無さそうだな。正面から入って正面から出るしかなさそうだ」

「そうだな、後は目撃者がどれ程居るかだが…」

「団長…!ちょっとあんた達、どきなさいよ!」

 

 どうやらティオネが力づくで道を切り開いてくれたようだ。私たちもそれに便乗しよう。

 

「ティオネが道を作ってくれている事だし、私たちも行くか」

「そうだな、先に行ったフィンが話を通していれば良いが…」

 

 入り口まで辿り着けば、残りはスムーズだった。入り口の見張りはフィンに言い包められたのか私たちを止める事はなかった。

 

 宿に入る直前に、微かに嗅ぎ慣れた匂いが鼻につく。都市に満ちていた、この世界では幸いにもまだ嗅いだことのない匂い。生臭さと鉄のようなものが入り混じった、うんざりするような匂い。

 都市で飽きるほど見てきた、人の悪意が生み出した物に溜め息を吐きながら、洞窟という割には広い入り口をくぐる。

 

「入り口の時点でこの臭いって事は、かなり派手にやったみたいだな。部屋が内臓まみれになってないと良いんだが」

「全く、嫌になるわねぇ…レフィーヤは引っ込んでなさい」

「え…はい」

 

 まだ歳若く、こういう経験をした事がないであろうレフィーヤをティオネが引っ込めさせる。

 

「ここで死体に慣れている奴は…慣れていない人間を探した方が早いか?」

 

 ティオネ達が多少なりともこういう状況に耐性があるのは知っている、フィンとリヴェリアも『暗黒期』の程度によるけど…長年冒険者をやっているんだ、問題はないだろう。後はアイズか。

 

「私たちは故郷で飽きる程見てきたわよ」

「あんまり良い思い出じゃないけどね~」

「私も…多少は慣れている」

「暗黒期は悲惨な光景に事欠かなかったからな。慣れていないのはレフィーヤくらいだ」

 

 どうやらレフィーヤ以外は耐性があるらしい。これなら捜査の間に余計な問題が起こる事はないだろう。

 

「さて、どんな状態かな…っと」

 

 事件の起こった部屋の中は、文字通り血の海となっていた。その中心には頭の潰れた男らしき死体。上半身に服はないが…揉み合った時に破れたとかではなさそうだ。男女が2人きりで宿を貸し切ってやる事といえば()()()()()だろうし、服を脱いでいるのは不自然では無いか。

 

「うわぁ…ここまで酷いのはなかなか見ないね」

「私たちの故郷でもね。新人が半狂乱になってやりすぎる事はあっても、あそこでの目的はあくまでも戦う事だから…一応、もうちょっと綺麗にやってたわね。で、そっちの基準では?」

 

 ティオネが私に話を振ってくる。どうせ面白い話にはならないんだから聞かない方がいいだろうに…いや、それはそれとして気にはなるのか。

 

「…まあ、頭が潰れているだけで済んでるならいい方だな。()()は抜き取られてないようだし、人の形も保っている。」

「はぁ〜やだやだ。何が嫌ってカーリーの言っている事が多少なりとも察せられるのが嫌ね」

「あ、あの…中身って?」

「レフィーヤは知らなくてもいいよ!まだ早い!」

 

 金に困ったネズミが死体の『中身』を漁っているのは珍しい光景じゃない…23区はちょっとした事情で、他地区よりはそういうのは少なかったかもしれないけどな。フードロスは少ないに限る、と言った所だ。

 

「あん?何だてめえら、ここは立ち入り禁止だぞ!見張りは何やってんだ!」

「やあボールス、お邪魔しているよ」

 

 フィンの挨拶にボールスと呼ばれた男が顔を顰めた。どうやら歓迎はされていないみたいだな。

 

「ロキファミリア!?なんだってこんな時に…」

「たまたまだよ、僕たちも街の宿を利用しようと考えていたんだけど…この有様だ。放置して探索に集中するのは難しいから、早期解決に協力したい。どうかな、ボールス?」

「何を言っても無駄だろ?まったく、お前らみてえな奴らは力で何でも押し通そうとしやがって…」

 

 ボールスはぶつくさ言っているが、私たちが捜査に加わる事を拒否する事は無いらしい。邪魔をしないなら何を言ってくれても構わない。

 

「じゃあ僕は部屋を見てみようかな」

「私は()()だな」

 

 フィンが机や鞄を物色するのと共に、私は死体の方へと向かう。自慢じゃないが私は死体に詳しいんだ。それこそ日常風景と変わらない程度には見てきた。

 

「さて、死体の方を見せてもらうぞ」

「ああ、構わねえ…誰だおまえ!?」

 

 ボールスの上げた大声で動きが止まる。そうだった、私はロキファミリアではあるけどこの面子と…比べなくても無名だったな。ボールスの困惑ももっともだ。

 

「彼女は僕たちの仲間だよ。カーリー、任せても良いのかい?」

「この手の事に一番慣れているのは私だろうしな」

 

 ボールスはフィンの言葉を受けて、渋々といった様子を隠そうともせずに引き下がる。面倒にならなくて良かった、仕事に取り掛かるとしよう。

 

 ミチミチ、ブチブチといった音を立てながら地面と一体化した頭を引き剥がし、辛うじて残った下顎と首の辺りを見る。背後で引いている奴らは無視だ無視。アイズやティオネ達も引いてるけど気にしない。

 床に陥没痕はないが…恐らくはダンジョンの自己修復機能によって消えたんだろう。顔面の埋まり具合から推察するに、犯人はかなり強い力を持っているはずだ。

 

「顔面の骨は…酷い有り様だな。これは身元の特定を困難にさせる為か。死因は…窒息、もしくは頸椎を折られたからか…少なくとも顔面のこれでは無さそうだな」

「………おいフィン、こいつは何者なんだよ。この死体をここまで弄れるような人間、そういないだろ」

「ノーコメントだ。そっちは何かしらの手がかりを掴んでいるのかい?」

 

 ボールスの顔にはありありと嫌悪の感情が浮かんでいる。血に慣れていない訳じゃないだろうけど、嫌なものは嫌なんだろう。特に床から顔面を引き剥がす時の音に顰めっ面を浮かべていた。

 フィンは表情も変えずに部屋にある物を片端から見て回っているようだ。めぼしい物も手に入れられたみたいだな。

 

「今は解錠薬(ステイタスシーフ)待ちだ」

「ふうん?カーリー、死体の背中に大きな傷はあるかい?」

「無いな、ステイタスは読めないが…手はあるんだな?」

 

 背中には抽象化された図形のようなものが描かれている。神聖文字は読めないし、この状態だとそれ以前の問題のようだが…何かしら解読出来るようにする手はあるらしい。

 

「ロックされているとは言えステイタスは読める状態…なのに顔は潰してある?妙だね、被害者の身元を隠したいなら背中も処理するべきだけど…素人だからか?」

 

 もし被害者の身元を伏せたいのなら、顔面を潰すだけではなく背中の皮を剥がすなり焼き潰すなりして個人情報の塊であるステイタスを読めないようにするべきだ。解錠薬(ステイタスシーフ)なんて物があるなら尚更だな。

 汚い仕事に慣れているなら知っていて然るべき物みたいだけど…犯人像がぼやけたな。

 

「被害者と加害者の力量差は相当ありそうだな」

「なんでわかるんだ?」

「手だ。首を絞められた時に、被害者は手を解こうとするなり爪を立てるなりして抵抗するが、爪に血や皮膚片が着いていない。力量差が無かったら薄皮くらいは削れる筈だろ?つまり被害者が爪で皮を削れないくらい耐久が高いか、爪を立てる前に首の骨をへし折られたかだな」

 

 俊敏か耐久、特に耐久が高ければ筋力も高いと見て良いだろう。後衛はそもそも攻撃を受けにくいポジションだから耐久は上がりにくいし、前衛なら筋力がなかったら何も出来ないと言っても過言じゃない。

 

「もし反応できない速度で殺したとしても、同じく力量差の証明になるね。もし毒殺だったら話は別だけど…」

「そうだとしたらこの首を絞められた痕の説明がつかないから可能性は低いな。そんなまだるっこしい事なんてせずに頭蓋を潰すだけでいい」

 

 後は麻痺毒を盛って動きを止めた後に絞殺か…それも頭蓋を潰せばそれだけで良い筈だけど、死んだ後にステイタスが無効になったから潰せるようになった、とかか?死後のステイタスがどんな働きをするのか分からないからなんとも言えないか。

 

「………お前ら冒険者じゃなくて探偵をやったらどうだ?」

「生憎と冒険者以外の生き方は性に合わないな」

「僕には目的があるからね、転職は考えてないかな」

 

 今更事務職とかに転職するのも…悪くはないけど、どちらにせよロキファミリアから受けた施し分は返したいし、暫くは冒険者稼業だな。

 

「つまりだ、こいつと犯人の力量差は1レベル以上はありそうだって事だな?」

「こいつが後衛職なら話は変わるけど、全身鎧を着ていたならその線は薄いか」

 

 全身鎧を着た魔法使いだと言うなら容疑者の推定レベルは下の方に増えるが、この世界の魔法使いは軽装を好む傾向にある。後衛の可能性は低いと見ていいだろう。

 

「問題は単独でやったのか協力者が居たのかだが…」

「まずは被害者の身元からだね、例の薬も来たみたいだ」

 

 ステイタスを見れば身元や実力、役割もわかる。そこから犯人の力量も見極められるし、毒物の可能性もある程度絞れるのは大きいな…恩恵を隠す理由がよくわかる。

 ボールスの手下が被害者の背中に薬を垂らして、あれやこれやと弄くり回す。リヴェリアは不満気だが、手がかりはあればあるほど良いのは分かっているんだろう、口出しはしてこない。

 

「できた」

「リヴェリア、アイズ。頼めるかい?」

「気は進まんが…仕方がないな、任せろ」

 

 被害者の背中の模様が辛うじて文字だとわかるくらいの見た目になった。フィンがリヴェリアとアイズに任せたという事は、2人は神聖文字を読めるんだろう。

 

「名前はハシャーナ・ドルリア…」

「所属は、ガネーシャファミリア…」

 

 地上での治安維持を努める大手ファミリアの団員か…周囲の人間の反応から察するに、相当な有名人らしい。フィンの表情も僅かに硬い物に変わっている。

 

「ガネーシャの所のハシャーナ…これは、かなり不味いかもしれないね」

「なかなかの手練れみたいだな?」

 

 フィンが不味いと言う事はかなり危険な人物、もしかしたら私たちの手にも負えないような奴が犯人になっている可能性がある。

 

「レベル4の前衛職が被害者だ。さっきの推理から犯人の力量を考えれば…」

「最低でもレベル5の前衛職か、麻痺毒の線は?」

「アビリティ欄に耐異常がある。ハシャーナに効く毒物は滅多に無いだろう」

 

 いよいよ面倒な事態になってきたな…そのレベルになってくると、スキルや魔法によっては私でも負ける事はなくても苦戦するかもしれない。

 特に機動力に秀でた物があったら普通に逃しかねないな。残念な事に私は三次元的な動きに弱いんだ。跳ぶ事は出来ても飛べる訳じゃないって事だ。

 

「色仕掛けで油断させていたとは言え、この力と耐久だ。オラリオの冒険者を上から数えてその中から特徴の当てはまる人間を挙げてみるか?」

「ハニートラップを利用した、と考えるとイシュタルファミリアが怪しく見えるけど…」

「レベル5となると…」

 

 部屋の中に奇妙な沈黙が満ちる。特に男達が顔を青くして頭を抱えているな。一部に至っては嘔吐き始めたぞ。何か心当たりがあるみたいだけど…どうにも容疑者だって雰囲気ではないみたいだな。

 

「うん、イシュタルファミリアの線は薄いかな。レベル5で『()()()()()()()()()()()』人員となると、当てはまるのは1人もいないよ。公式のレベルを鵜呑みにするなら、だけどね」

「あの化け物カエルだったらアホでもすぐ分かる…つーかアイツにそういう事は出来ねえだろ、色んな意味で…」

 

 言葉の一部を強調している辺り、何かしらの心当たりはあるみたいだが…触れない方が良さそうだ。フィンが無いと言っているなら無いんだろう。そうしておこう。

 

「ここまで来ると何かしらの搦め手を挟んでいてくれた方が良いんだけどな」

「そうだね、もし単純な力でこれを成したとすると…」

 

 最悪、街が壊滅しかねないな。私達か、他の高レベル冒険者が居なかったらその危険性はかなり高かっただろう。

 

「動機は物取り、それも特定の物品を狙ったみたいだ」

「ふむ…極秘の依頼か。これを処分なりしてないハシャーナの迂闊さを喜べばいいのやら嘆けば良いのやら…」

 

 フィンに手渡された血に濡れた羊皮紙には『30階層』『単独採取』『内密』の文字のみが読み取れた。それが何なのか、具体的な記述は読み取れないけど随分と胡散臭い依頼だな。

 

「ボールス、街を封鎖してくれ。恐らく犯人はまだ街の中に居る」

「…根拠は?」

「レベル4の殺人を前提とした物取り、それに極秘の依頼だ。目的の物は相応の価値がある、もしくは替えの効かない物だろう。そんな物品を回収できずに帰る、なんて事は無いと思うよ」

 

 目的の物が何かは分からなくても、それがどれほど重要な物かは推察できる。オラリオでは禁制となっている物か、よほど貴重な物か…少なくとも、それが殺人をしてでも手に入れたい物だといのは結果が示しているな。

 

「場合によってはそれを持ってそうな人間を片端から…なんて事もあり得る。早急に解決しないと不味い」

「レベル5が犯人ならそれも可能ってか?クソ、何でこんな面倒な事に…おい、北門と南門を閉めろ!街の中の冒険者を…」

 

 ボールスが部屋にいた人間に指示を出すのを聞き流しながら、床にへばりついた顔面の残骸を弄る。

 リヴェリアの「あまり死体を辱めてくれるな」と言わんばかりの責めるような視線が突き刺さるが、無視して飛び散った顔面の肉を検分していく。

 

「カーリー、何か気になる事でも?」

「そうだな…違和感、という段階でしかないんだけど…」

 

 床や肉片、死体を片端から見回すが…違和感は拭えない。見慣れた光景だけど、何かがおかしい。

 

「何かが足りない、そんな気がする」

「何か…ね?」

「死体の損壊が酷くてそれが何かは分からない。だけど違和感を感じる、そんな状態だ」

 

 この世界の死体を見るのが初めてだから、もしかしたらそれ関連かもしれないけど…はっきりと「これだ」と言えるものはない。今は頭の片隅に留めておくだけにしておこう。

 

「ふむ…もし何かわかったらすぐに教えてくれ」

「ああ」

 

 死体を弄くり回した結果、血まみれになったので一度水場で血汚れを落としてから広場へ向かう事になった。

 死体のあった部屋に長時間滞在した他の面々も上着等の臭い消しはするらしい。レフィーヤに上着の血汚れを洗ってもらえる事になったので、コートはそちらに任せて今回の事件について話しあう流れになっていた。

 

「よく嫌な顔ひとつ浮かべずに、あんな死体をベタベタと触れるわね」

「ティオネ達も出来るだろ?」

 

 死体を見ていた時は嫌な顔こそしていたが忌避感というものは感じられなかった。事前に言っていた通り、相当死体に慣れているんだろう。

 

「出来ないとは言わないけど、嫌な顔くらいはするわよ」

「年の功って奴だな。後は環境の差だ」

「そんな経験はしないに越した事は無いと思うけどね〜」

 

 ティオナの言葉には同意の気持ちしかない、死体なんて見ないに越した事はない。冒険者なんて職業をやっているなら慣れておくに越した事はないと思うけどな。

 

「はぁ…」

「どうしたんですかカーリーさん?」

 

 思わず吐いていたため息にレフィーヤが反応した。どうしたもこうしたもこの様だ。前回は祭りを楽しむつもりが戦闘になって、今回は()()だ。

 

「初めてのダンジョン探索だから結構楽しみにしてたんだけど…こんな所まで来てこんな事をしないといけなくなったからな」

「ああ…」

「こうなるとこのまま探索続行!っていうのも難しそうだよねぇ」

 

 ガネーシャファミリアの団員が死んでいる以上、報告をする為にも一度地上へ蜻蛉返りする事になるだろう。なんだっていつもいつも予定通りにいかないんだ…。

 

「解決しても一度地上に戻る事になると思う…」

「アイズまでしょぼくれてるわね、まあ仕方ないとは思うけど」

「カーリーさんもかなり楽しみにしてましたよね、アイズさんもお金を稼がないといけないって言ってましたし…」

 

 良い大人としていつまでもヒモでいる訳にはいかないんだ。だからこの機会に稼いでおこうと思ったんだけど…ままならないな。

 

「つくづく私の間の悪さを感じさせられるな」

「一回アミッドあたりにお祓いしてもらう?もしかしたらどこかで変な呪い貰ってるかもしれないし」

「異世界の呪いがこっちの魔法で祓えるかはわからないけどね〜」

 

 都市の呪いか…もしも特異点で厄を付けられたとなると、かなり頑固な物だろう。それこそ因果律やらなんやらを弄っていると言われても納得するぞ。

 

「私も一緒に行こうかな…」

「あ、アイズさん、そこまで思い詰めて!?」

 

 アイズもアイズで大きい出費があったし、買ってもらった洋服もすぐにボロボロになっていたからな。一緒に行くのも良いかもしれない。

 

「よし、臭いも落ちただろうし広場に行くか。悪いなみんな、手伝ってもらって」

「別にいいわよ。文字通りの汚れ役を引き受けてくれたんだし、これくらいはね。レフィーヤの方はどう?」

「綺麗に落ちてます!というかこのコート、すごい汚れが落ちやすいんですけど…何で出来ているんですか?」

「まあ、そこそこ良い素材でできた装備だよ」

 

 伊達に特色フィクサーをやっていなかったからな、装備も相応に良い物だ。この世界の防具とも余裕で並び立てるだろう。

 

 広場へ行くと、数百人にもなる人々が集まっていた。それぞれの表情には苛立ちや不安等、悪感情による物が浮かんでいる。前者は私と同じく予定が狂ったであろう人間か。後者は比較的低レベルの人間だろう、加害者の推定レベルを考えれば無理もないか。

 

「さて、冒険者は集まったけど、どうやって手を付ける?」

「まずは男女に別れてもらおう、幸いにも犯人の性別は分かっているからね」

 

 目撃者である宿屋の主人ヴィリーの証言通りなら、相応に恵まれた体型をした女性冒険者、だったな。ティオネが丁度良い目安か。(180C)よりは身長が低いのは確からしい。

 

「とりあえず身体検査と荷物検査だな」

「よし、それじゃあ並んで…」

 

「女ども!体の隅々まで調べてやるから服を脱げ!」

 

「「「「うおおおぉぉぉ!!!」」」」

 

 ボールスがアホな事を叫び、周りのアホもそれに便乗し始めた。これは『鎮圧』が必要かもしれない。

 

「はあ、野朗共を黙らせるのが先か…?」

 

「なんかすげえ嫌な予感がする、お前ら死にたくなかったら黙ってろ」

「うす…」「今ぞわっと来た…」「あれは人を殺せる目だ、間違いねえ」「も、もう一回やってくんねえかな…?」

 

 ボールスを筆頭とした騒ぎ立てる男共が水を打ったように静まり返った。これで本来の仕事に集中できるな。

 

「よし、じゃあ改めて女冒険者たちはこっちに…」

「フィン、早く調べて!」「こっちも!」「お願い!」「体の隅々まで!」「なんならその先も!」

 

 ………次は女共だ。これはもう都市流の鎮圧術を披露する場面じゃないか?フィンの人気はともかく、こんな事態になっているのにどうしてここまで露骨に自分の欲望をさらけ出せるのか…。

 

「………オラリオの冒険者はみんなこうなのか?」

「そんな訳ない…とは言えないのが悲しいな」

 

 リヴェリアの気不味そうな表情を他所に、フィンの周りには状況を考えないアホ共がきゃあきゃあと群がっていく。こいつら、高レベルの冒険者が殺されたって聞いてなかったのか?

 少なくともエルフや半分ほどの女冒険者は遠巻きに見ているだけだ。全員が全員そういう趣味を持っている訳ではないらしいけど…そんなの慰めにもならないな。

 

「あ・の・アバズレ、どもッ…!!!」

「お姉ちゃん大人の余裕!この騒ぎを収めるならいいけどやり過ぎない!」

「ッッッ!!!………ッ!!!」

 

 顔中に青筋を浮かべながらも冷静な笑顔を保とうとするティオネの顔は、それだけを見たらそういう幻想体にも見えなくもない物だった。つまりはかなり不気味で悍ましい、という事だ。

 そして問題はもう一つ、広場から逃げ出した犬の獣人の少女。そちらの対応もしなきゃいけない。

 

「カーリー、リヴェリア、私はあの子を追うね」

「任せた」

「私も行きます!」

「…アイズと一緒なら万一もないか。わかった、レフィーヤの事は任せたぞ、アイズ」

 

 獣人の少女に関してはアイズとレフィーヤに任せよう。私たちはこっち(広場)の対処をしないといけないな。

 広場はフィンを狙うアホと、下手なモンスターよりも恐ろしい表情のティオネから半狂乱で逃げ出す冒険者で混沌としていた。何をするにしても私たちはまずこの状況を収めなければならない。

 

「さて、こっちはこの騒動をなんとかしないとな?」

「そうだな…EGOは伏せておけ。こんなバカな事で犯人に手札を晒したくは無いからな」

 

 それもそうだ。性欲に任せて暴れるアホを鎮圧する為だけに使うのも勿体無い。多少時間は掛かっても普通に鎮圧するのが良いだろう。

 

「そろそろ夜か。出来れば朝までには解決したいけど…」

 

 きっと一筋縄ではいかないだろう。私の勘がそう言っている。何が出るかは分からないけど、犯人の腕前的にもそうだが…力尽くを視野に入れているなら()()()()()もあるはずだ。数の暴力か、広範囲攻撃かまでは分からないけど、その手札を切られたら…被害者は少なく無いだろうな。




〜なぜなに!プロムン教室~

ネタ切れです


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