赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている【0830】   作:ピグリツィア

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都市の病気

 アイズ達と話しながら一日を過ごし、移動当日。護送メンバーは前日の雰囲気と違う、張り詰めた空気を纏っていた。

 

「じゃあみんな、よろしく頼むよ」

「悪いな、迷惑をかける。今日はよろしく頼んだ」

 

 前方はフィンが大きく先行し、私の左右をガレスとリヴェリアが警戒する。

 後方はミミクリーを預けたティオナとその周囲をティオネ・アイズ・ベートが囲む形で7層から移動する。地上への道はガネーシャファミリアが人払いしてくれているようだ。

 

「ガネーシャファミリアがある程度掃討してくれているはずだけど、もし進行方向にモンスターがいたら全部僕が片付けるから安心してくれ」

「流石オラリオ最大規模のファミリアの団長だな。頼もしい」

 

 所詮上層、このメンバーで問題が起こるはずもなく数体出てきた雑魚をフィンが倒した程度だった。

 警戒は切らさずに進み続ければ、そう時間もかからず一層の入り口近くに到着したが…ダンジョンの出口近くで問題が起きた。

 

「みんな停止だ…これは…」

「明らかにおかしいな。なぜ今、神威を感じる?」

「まあ地上で問題があったんじゃろうな、どうするフィン?」

「とりあえず僕だけで地上に向かおう。みんなここで待っていてくれ」

 

 そう言うとフィンは走っていってしまった。明らかに危険な気配を感じる、ミノタウロスなんか比べ物にならない気配だ。

 

「私も武装したほうがいいか?私としてはできれば武装しておきたいんだけど…」

「いや…まだやめておこう。何が原因で神が神威を出すことになったか判らないからな」

「そういえば神威を知らないか。神威は神が発する威圧みたいなものじゃ。つまり敵対存在がいるか、ブチギレているかじゃな」

「それよりも恩恵無しでこの神威に耐えているのが不思議でならない。どのような経験をしたら恩恵も無しにこれに耐えられるのやら…」

 

 後ろにいるミミクリーの輸送部隊を見ると全員もれなく顔に皺が寄っている。どうやら私と同じくらいには不快なようだ。

 フィンが地上へ出て数分後、威圧感が弱くなった。だがまだ微かに神威の気配が残っているな。

 

「どうやらブチギレていたようじゃな。大方フィンが抑えさせたんじゃろう」

「このタイミングであれほど怒る原因といったら…ミミクリーか?」

「まあ一番怪しいのはそいつじゃな、威圧感が不快だったか、はたまた別の理由か」

 

 フィンが帰ってきた、がかなり険しい顔をしている。どうやら小さくない問題が起きたらしい。

 

「待たせたねカーリー、地上に上がったら直ぐにロキからいくつか質問されると思う。嘘偽りなく答えてくれ」

「了解だ。何があったかはとりあえず聞かないでおこう」

 

 地上に上がると赤髪の小柄な女と眼帯の女、それと…話には聞いていたが、珍妙な格好をしている男がいた。

 例の神威とやらの発生源は…おそらく赤髪の神だろう。他の二柱も剣呑な雰囲気ではあるが、その二人を合わせても赤髪の髪の威圧感が強い。

 

「来たな、ウチはロキや。早速で悪いんやけどいくつか質問をさせてもらうで」

 

 やはり随分と敵対的な雰囲気だ。場合によっては徒手空拳で戦うしかないかもしれないな。

 

「アイズ達が持ってるソレ、ミミクリーやったっけ?ソレがどういうものか分かっとるんか?」

「どういうもの?」

「ちょっとわかりにくかったか、ソレが何からできとるか聞いとるんや」

「これは幻想体から抽出した武器だ」

「んじゃその幻想体とやらは何からできとる?」

 

 ああ、そういうことか。これは確かに伝えておくべきだったかもしれんな。これは私の失敗か。

 

「ミミクリーの元、何もないは人間から変質した幻想体だったな」

 

 フィン以外の人間が驚いた様な反応をする。確かに、幻想体から抽出したとは話したが幻想体そのものの話はしていなかったか。

 

「あんたらは人間をそういう扱いするような奴らっちゅう事か」

「ああ、私たちの目的の為ならな」

「フィンから少しばかり話は聞いとる。アンタがどういう環境で生きてきたか〜ってのをな。でもな、それとこれとは無関係や。ウチはウチの子らを守るために行動せなあかん。だから聞くで、アンタらの目的ってのはなんや」

「都市に蔓延る病気を治す事だ。そうすれば、もう誰も傷つく必要はなくなる。私はその為に、仲間を守る為に力を振るってきた」

「病気なぁ…本当にそんな外道に堕ちてまで治さな…いや、多分ウチらから見たら外道以下のその行為すらもそっちじゃ日常みたくなっとったんか…そんでアンタは確固たる信念を持ってその行為を是としたと…」

 

 いつか、ミミクリーから問われた質問が…いや、正確には意味もなく吐き出していた言葉が頭を過ぎる。

 

「お前もやはり人間の殻を求めている」

 

「果たして私たちの命の価値は私が殺した者たちの価値と引き換えられる程なのか?」

 

 それの答えは、カルメンを守れば誰もが他人の為に動ける、これ以上人が人を傷つけるような必要のなくなる世界が来るからと…そう信じて、犠牲を許容し今まで生きてきた。

 

 ロキが片手で頭を掻き毟る。威圧感は減らないがロキの纏う雰囲気は少しだけ変わった気がする。

 

「本気で厄介なもん拾ってきおったな…頑固さは筋金入り、倫理観なんてもんはぶっ飛んでる、しかもこいつ旧い時代の英雄みたいなもんやろ。そういう眼をしとる。正直今ここで息の根を止めるのが最適解なんやろうけどな…」

 

 散々な言いようだな。気持ちは理解できるが、面と向かって息の根を止めた方がいいと言われていい気はしない。

 

「ロキ、無理はしなくていいぞ。もし気が進まないならば俺が…」

「や、大丈夫や。うちも甘くなったもんやなぁ…天界に帰った時やってけるか心配になってきおったわ」

 

 ロキが笑みを深めると威圧感が引いていった。どうやら私の処遇が決まったらしい。

 

「カーリー…ちょっとこの呼び名慣れへんな、まあええわ。カーリー、アンタはウチの眷属になってもらう。あまり気は進まんけど野放しにするよりはいいのと、同情やな。そんな手を使わな生きていけんような環境に生まれたアンタへの同情や。拒否権はないで」

「こちらとしては最初からそのつもりだったのだがな。そっちが納得出来たのならばそれでいい。よろしく頼む」

 

 一騒動あったが最終的には予定していた結果になった。一悶着起きたが終わりよければすべてよしだろう。

 

「さて、話は終わったな?」

 

 珍妙な格好をした男が話しかけてきた。確かこいつも神だったはずだ、名前は確か…

 

「ああ、終わったで。せっかくやからこの空気をぶっ飛ばす為に一発かましたれや!」

「では失礼して…」

 

 

 

「俺がガネーシャだ!!!」

 

 

 

 …なんだったんだ今のは?いきなり大声で自己紹介したぞ。

 

「これはガネーシャの一発芸みたいな物や。ことあるごとに擦ってくるで。まあ今回はいつもより気合い入っとったけどな」

「そうか、独特な挨拶なんだな」

 

 ガネーシャの独特な挨拶に少しばかり引いていると、眼帯の女が前へ出てくる。

 

「えっと、カーリー…で合ってるのよね?私はヘファイストスよ。ソレの対処を任せられているわ」

「ああ、迷惑を掛けるな」

 

 今回は普通の挨拶だ…じゃあガネーシャ(アイツ)はなんだったんだ…?

 ともかく、まさか武器一本でここまで大事になるとは思ってなかったが、その武器をどうにかしてくれるのが彼女らしい。

 

「さてロキ、へファイストス。この者の処遇が決まったのは良いとして、アレはどうする?こう言っては何だが流石のガネーシャもびっくりするくらい悍ましい物だぞ」

「本当に…何をどうしたら人の子がこんな物を作るって発想になるのかしらね」

「一回フィンが帰ってきた時に色々話を聞いたんやけど、ちょっと想像以上やったな。どや、ファイたん、手持ちの道具でどうにか出来そうか?」

「とりあえず街中を運ぶ程度ならなんとか出来そうね…出来れば私の工房に持って行って早いうちに専用の道具で処置したいけど、うちの子が居るからすぐにはどうにも出来ないわね」

 

 話には聞いていたがやはり一筋縄には行かないか。専門家のへファイストスですら持て余している様だ。

 

「ホンマにエラい事なっとるなぁ…純粋、なんて言うたら聞こえはええかもしれんけど、こんなんが人間言われて納得できる奴なんか神でも滅多におらんやろうな」

 

 ロキがアイズ達からミミクリーを受け取ると、少し眉を顰めた後、軽く撫でてヘファイストスと共に大量の布と包帯で包んでいく。

 

「いくらなんでも多すぎたかと思っとったけどそうでもなかったな。マジでどういう経緯で何があったらこんなんなんねん」

「武器としての有り様は理解できるわ。獣の牙や爪をそのまま武器にするような、まさに()()()()武器ね。ただ、まだまだ造りが荒いわ、声を大にして言えないけどもっと()()()()形に出来る筈よ」

 

 確かにこれは運良く抽出できた、不安定なEGOだと言われたな。まさかそれをこの短時間で見抜くとは、鍛治の神と呼ばれるだけの事はあるな。

 

「大元は人の子なのだろうが、元の形を捨てて久しいようだな…」

「まったく、これをどうしたら都市の病気を治すための鍵となるんだか…こういう物に縋るしかない状況にならん様に気を付けんとなぁ?」

「そうだな。正直子供達がこれに縋るような状況になるか人類が滅ぶかで言ったら、人類が滅亡する確率の方が高そうだがな…」

「それは心底同意するわ、そんな状況になりそうならそうなる前にウチ等が本気で介入するやろうしな」

 

 どうやらこの世界の神々から見てもこちらの世界の状況は良くないようだ。こうなってくると本当に何とか出来る状況だったのか怪しいな。

 

「んじゃ最後にこいつを専用の箱に積めて…ヨシ!って事で帰るで!つっても他の皆は明日だったっけか。んじゃ打ち上げはその後やな!カーリーも参加な!ダンジョンでの初戦闘祝いと歓迎会や!」

「それじゃあ今日は帰ったら仕事をしようか?今回はアクシデントで早期撤退することになったから色々とやることが山積みだからね」

 

 ロキが満面の笑みからWAWクラスの幻想体が脱走しているのを見た研究員の様な顔になった。見慣れた絶望顔だが、今回ばかりは私がどうにか出来る物でもない。諦めて犠牲になってもらおう。

 

「…うせやろ?とりあえず明日にせん?ほら、カーリーの事とかミミクリーの事とかでムッチャ気疲れしたし…」

「カーリーの事があるから今日の内にやるんだぞ。明日も仕事漬けだからな」

「い、嫌や嫌や!仕事なんてしとうないわ!た、助けてカーリー!」

 

 これがさっきまであの威圧感を出していた存在なのか?多少威圧されていたことが情けなくなってくるぞ…

 

 自らのファミリアの指揮を取るガネーシャと別れ、ロキファミリアのホームに行く道中。大量の神々が規制線の外を埋め尽くすように並んでいた。

 

「何拾ったんだロキー!」「さっき明らかにやばい物持ってたよな!なあ!」「そこの赤髪の子誰ー!」「ちくわ大明神」「面白そうなものを独占するなー!」「_GKP@Z-@4JUEQ],¥」「アイズちゃーん!こっち見てー!」「誰だ今の」

 

 随分と騒がしい上に意味も判らないことを叫び続ける。神っていうのはどいつもこいつもこんなものなのか。

 

「やっぱこうなるかあ。とりあえず何人かぶっ殺してくるわ」

 

 ロキが目を見開きながら「野郎オブクラッシャー!」と叫び、凄まじい殺意と共に群衆に突っ込んでいってしまった。アレは何を言っているのだろうか。

 

「フィン、ガレス、私は恥ずかしくなってきたぞ。もう色々とダメだ。この世界の汚点を見せている気分だ…」

「まあこうなる事は予想ついてたけどね、実際に見せるとなると少しアレだね」

「リヴェリアは考えすぎじゃろ。まあ出会いが良くも悪くもあの形だっただけに少しどうかとも思うが」

「どうするんだアレ、無視してホームに行くのか」

「そうだね、とりあえずカーリーとミミクリーを拠点に送っても戻って来なかったら連れ戻そうか」

「本当は今直ぐ連れ戻したいがな。流石にしばらくすれば帰ってくるだろう」

 

 アホ(ロキ)は放置して帰路を優先するらしい。確かにこんな所で道草を食っていたら問題が大きくなっていきそうだ。

 

「そういえば、幻想体についてだけど。幻想体っていうのはこちらの世界でいうモンスターの様な物だと把握していたんだけど、かなり違うようだね?」

「そもそもこっちのモンスターがどんな物か知らないけど、幻想体っていうのは一概にこれと言えない何かなんだよ。『何もない』もたまたま人間から発生した幻想体ってだけで、幻想体全てが人間から発生したって訳じゃない」

 

 とある童話から生まれた物や森を怪物から守る為にそうなった物など、幻想体の根源は一纏めにこれと言えるような物じゃない。ミミックはたまたまそういう生まれ方をしたというだけだ。私たちにとってそこは然程重要な点じゃなかった。

 

「ああ、だからミミクリーの時にそういう話が出なかった訳か。カーリーにとっては『幻想体から手に入れた武器』という程度だっただけで、その幻想体に拘っている訳ではないから、説明する必要も感じなかったということだな」

「ついでに言えば人1人死んだところで気にする様な世界でもなかった訳じゃな。こりゃ説明されてない問題が山の様にありそうじゃのう」

 

 今回の様な事態を避ける為にもう少し考えて会話しないと駄目そうだな。ただ都市の成り立ちを一から十まで説明するのは…気が遠くなるほどの時間がかかってしまうな。情報の取捨選択も慎重にしなければ。

 

「ところで、ここには私達以外にはガネーシャファミリアのメンバーと神しかいないんだよな?」

「ああ、そうだね。その筈だったんだけど…」

「アレは止められんじゃろうな」

「身内の恥ね…」

 

 へファイストスが頭を抱えながら溜息を吐く。どうやらへファイストスの身内らしい、眼帯をつけた赤髪の、かなりがたいの良い女が凄まじい勢いで突っ込んできている。人間を3人ほど引き摺りながら…

 

「ダメですって椿さん!今ここは交通規制してるんですから!」「ダメだ!力が強すぎる!誰か高レベル呼んでこい!」「というか人引きずりながら移動するなぁ!」

 

「何やってるのよ椿…」

「おお!主神殿!フィン!リヴェリア!ガレス!それと…見ない顔だな、何者だ?」

「カーリーだ」

「手前は椿・コルブランドだ!へファイストスファミリアの団長をやらされている!」

 

 椿の瞳は好奇心と希望に満ち溢れている。興味本位でフィクサーになった少年の様だな…例えが悪かった、この例えはあまりにも縁起が悪すぎる。

 

「椿、この周辺は交通規制を敷いている筈なんだけど…何かあったの?」

「いや何、ダンジョン近くで強大な力を持った何かを感じ取ってな。手前の勘が叫んでいたのだ。これは武器から発せられる威圧感だと!」

「今ゴブニュファミリアとへファイストスファミリアで凄まじい騒ぎが起こってるんですよ。ゴブニュの方は主神が一喝してある程度沈静化したんですけど…」

 

 もしかしなくてもミミクリーの事だろう。そこまで惹きつけられる様な何かではないと思うのだが。むしろ忌避すべき存在だ。

 

「はぁ…椿、家に帰りなさい」

「嫌だ!何がなんとしてもその得物を一目みたい!」

「あなたなら見なくてもわかるでしょう。これはそう易々と見せられる物じゃないの」

 

 ついさっき封印した武器をこんな街中で解放してはいけない事くらい、異世界人の私でもわかるぞ。それだと言うのに目の前の女は子供のようにじたばたと駄々を捏ねている。体格のいい、大の大人がだ。

 

「見たいぞ見たいぞ見たいぞ!みーたーいーぞー!」

「わがまま言わないの。子供じゃないんだから…その内嫌でも見る機会があるからその時に見せるわよ」

「…仕方があるまい、機会があるならそれまで待つ事としよう」

「先に言っておくけど鍛冶屋の武器としては少しも参考にならないわよ?」

「主神殿がそう言うのならそうなのかも知れんな、だが見ないよりは見ておいた方がいいだろう!」

 

 高レベルの冒険者というのは揃いも揃って我が強いのか?いや、私以外の特色も似たような物か…何処の世界でも上位の実力者というのは一癖あるんだろう。

 

「そうだ椿、今回の遠征で少しトラブルがあってね。へファイストスファミリアの力を借りたいから椿にもホームまで来てもらおうかな」

 

 フィンの提案を聞いた椿がロキファミリアの面々、特にティオナを見て何か納得したように首を縦に振る。

 

「トラブル?ふむ…わかった」

「な、なによ〜」

「いや、『またか』と思ってな」

「今回は不可抗力だって!」

 

 椿(鍛冶師)がティオナを見て用事を察するか…ティオナが自分の武器を持ってない事と関係ありそうだな。「また」と言った所から常習的にやっているとなると…

 

「武器は丁寧に扱った方がいいぞ。毎回のように使い潰してたら支出も馬鹿にならないだろ」

「うぐっ!?だから今回はしょうがなかったんだって!というかなんでカーリーが知ってるの!?」

「椿がまたって言ってたからでしょ。前回がダメだって知られたから言われるのよ。あんたは今回の事を抜きにしても、自分の武器くらいもうちょっと丁寧に扱いなさい」

「ぐう〜!」

 

 もはやぐうの音しか出ないらしい。良い武器は高いんだ、それも『かなり』な。長く使えば摩耗は避けられないだろうが、だからと言って毎回使い潰していたら近いうちに首が回らなくなる。そういう奴は都市でも珍しくなかった。

 

「そこまでにしてあげてくれカーリー、ティオナは身に染みてわかっている筈だからね。さて、ここがロキファミリアのホーム『黄昏の館』だ。僕たちは君を歓迎しよう」

 

 周りの建物より一際大きく、巣でもなかなか見ないほどに豪華な建物の前でフィンが歓迎してくれる。

 

「これは、凄いな。随分と手間も金もかかってそうだ」

「凄いやろ〜?ふふん、ウチ自らが直々にデザインしただけはあるやろ〜」

 

 いつの間にか戻ってきていたロキが自慢げに胸を張る。確かにこれは自慢したくもなるな…ここまでの拠点は裏路地だと『五本指』や『フィクサー協会』みたいな大規模な組織でもないと見れないだろうな。

 

「おいロキ、こいつはどこ置くんだ。ロキの部屋に置いとけばいいのか?」

「せやな、適当に壁際に置いといて〜。フィンたちは椿と話があるんやろ?ファイたんはどーすんの?」

「そうね…ここまで来たし椿との話に同席するわ。あの武器についてはこっちの受け入れ態勢を整えてからじゃないとなんとも出来ないしね」

「そんじゃウチは…カーリー、恩恵刻むか?」

 

 恩恵、神に忠誠を誓い眷属となる行為か…あまり、いやかなり気は進まないがこの都市、オラリオで生きていく為だ。覚悟を決めて恩恵を受けるとしよう。

 

「気は進まないが…強化施術だと思って受け入れるか…」

「そんな難しい顔せんでも…あー、もしかしてなんかあった?あったんやろなぁ。恩恵刻みながら色々聞いたるからウチの部屋行こな〜」

 

 ロキとミミクリーの入った箱を持ったベートに続いて入った部屋は、裏路地でもよくある様な酒瓶で散らかりっぱなしの部屋だった。随分と酒臭いな。ベートはミミクリーの入った箱を置いてさっさと出て行ってしまった。

 

「さて、恩恵を刻みまくるで〜!て事で服脱いで背中こっち向けとくれー」

「ああ、そうだったな」

 

 さっさと上着を脱いで上半身を晒す。ロキががっつり見てくるがなんなのだろう…ああ、そういう趣味か…

 

「うわ、デッッッ!お、思っとったんより結構あったわ〜。服でかなり引き締めとんねんな?」

「何を言ってるんだお前は。この後はどうすればいい?」

「ああ、せやな、適当なとこ座って背中見せてくれれば大丈夫や」

 

 そこら辺にあった背もたれのついてない椅子を引っ張り出して座る。ロキが背後で背中を触り始めて…小声で呟く。

 

「…このままちょっとくらい揉んでも…バレへんか?」

 

 どうやら私の戦闘技術をその身で味わいたいらしい。いい度胸だ、『赤い霧』として全力で相手をしてやろう。

 

「ごめん!ごめんって!変なことせえへんから殺気収めて!洒落になっとらんって!」

 

 殺気を収めるとぶつくさ言いながら改めて背中に触る。何やら背中に違和感を感じる辺り恩恵を刻み始めたのだろう。

 

「うん?なんやけったいな…ああ、こういう…これならこれで…ヨシ!うっわ、なんやこれ…マジでなんやこれえっぐい、スキル生えすぎやない?」

「スキル?スキルとはなんだ」

「なんていうかなぁ…その人の特徴みたいなもんを能力として表した物やな。ところでなんで『伝説』とか『最強』なんてスキルあるん?これだけでも明らかにインチキみたいな効果しとるんやけど」

 

 ちょっと待っててや〜とロキは紙に何かを書いていく。

 

「これがカーリーのステイタスや。これを一緒に見ながら説明していくで」

 


 

カーリー

Lv:1

 

《アビリティ》

力:I0

耐久:I0

器用:I0

敏捷:I0

魔力:なし

 

《発展アビリティ》

 

《魔法》

 

《スキル》

【伝説】

・格上との戦闘時に『力』『器用』『俊敏』のアビリティ補正

・行動阻害耐性

 

【最強】

・戦闘時に全アビリティ大幅上昇

・戦闘時間に応じて全アビリティ上昇

 

【技量】

・戦闘時『器用』上昇

・対人戦闘時効果量上昇

 

【反撃】

・反撃時『器用』の数値に応じて能力上昇

 

【赤い霧】

・守る物が多いほど全アビリティ上昇

・逆境時に能力低下耐性

・逆境時にアビリティ上昇

・EGOの発現権

・任意のタイミングでEGOを発現できる

・感情が昂るほど効果上昇

 


 

「最初のアビリティってのは簡単に言えば身体能力やな。ここは恩恵での上昇量が出るから元から持っとったモンはそのままの筈や」

「数値が0だからと言って弱体化している訳ではないと」

「せやな!『潜在値』って所や!」

 

 アビリティは恩恵を刻んだ時点を0と表記して、ここから育てていく物らしい。弱体化している訳じゃないならとやかく言う気はない。

 

「発展アビリティは…レベルが上がったときに時々ついてくる特殊な能力みたいなモンやな!」

「レベルの上昇が必要だとすると…しばらくは無縁だろうな」

「まあレベルは一朝一夕に上がるもんでもないし、発展アビリティの発現も確定って訳や無いからそうなるなぁ」

 

 発展アビリティには書いて字の如く毒物への耐性を上げる『耐異常』や素手での戦闘時に攻撃力が上がる『拳打』などがあるらしい。『耐異常』はかなり欲しいな、

 

「んで魔法やけど…残念ながらカーリーは覚えることはできなさそうやな」

「魔力がないからか?」

「まあそれもあるっちゃあるんやけど、そもそも魔法を覚えるんにはスロットってのが必要なんや。それが無いから無理って判断や…そもそも魔力ナシって状態も異常なんやけどな」

 

 私のアビリティ欄にはそもそも『魔力』が存在しないらしい。便宜上『魔力:なし』と書いているだけで、実際に背中に描かれているステイタスには元から何も無かったかのように空欄なんだとか。

 魔法とはそもそも魔力を使って行使する物だから、必要なリソースが存在しない私ではスロットが空いていても使えない可能性が大きかったらしい。

 魔法か…使ってみたかったんだが、仕方がない。潔く諦めよう。

 

「こればっかりはウチでも『ズル』せんとどうしようもないわ、すまんな。そんで肝心のスキルなんやけど…う〜ん、インチキ!こんなん見たらズル疑われてもしゃあないな!」

「そこまで異常なのか?生憎とこの世界のことはまだよく分からなくてな」

「そもそもスキルが…5つってのがまずヤバいな。もっと問題なのは『EGO発現』以外のそれぞれのスキルにえっぐい効果が書いてあることや。効果に対して条件が緩すぎんねん、特に【最強】。なんや戦闘時に全アビリティ大幅上昇って。アイズでもここまで緩くないで」

 

 口調に反して雰囲気は剣呑な物だ、どうやら私のスキルはよほどの物らしい。他を知らないから私にはピンとこないが。

 

「てか【伝説】もやばいな…これと【最強】で強引に同レベル帯にまで跳ね上げるんか?そんで行動阻害耐性…一部の搦手が効きにくいって事か、つっよ」

 

 ロキはじっと紙を睨みつけている。色々と考え事をしている様だが私にはいまいちよく分からない。

 

「この『赤い霧』のEGO発現も効果が文面からじゃよう分からんだけで絶対やばいやろ。後でどんなもんか見せとくれ。魔法はスロットも魔力もないから覚えられへんやろうけど…恩恵無しでミノタウロス倒した奴がこんなスキルまで手に入れたんなら必要ないやろなって感じやな」

 

 魔法に関しては戦闘スタイルを変えなくて良いと割り切ろう。スキルに関しても、今までと大きく変わるような要素はなさそうだが…実際に体感してみないとわからないか。

 

「後でフィンたちと一緒にダンジョン潜ってスキルの上昇値を見てって言おうと思ったんやけど…もしかしなくてもかなり深くまで潜らんとダメそうやな。とりあえず中庭で適当に動いてみ。そこそこの広さもあるしな!」

「そうだな、フィンあたりに色々聞いてみるとするか」

「それと!ステイタスについては幹部…フィンとリヴェリアとガレスな。3人以外には話さないことや、余計な諍いは生みたくないやろ?」

 

 私のスキルは『それほど』危険な代物なのか。取り敢えず頷いておく。それを見たロキが手を一つ叩いて口元に笑みを浮かべる。

 

「そんじゃ次は、カーリーの居た世界…いや、カーリー自身について教えてな?フィン達がここに来るまでな」

 

 茶化す様に話す道化師の目は笑っていない。




カーリーのステイタスが出鱈目だって?ワイトもそう思います。

〜なぜなに!プロムン教室~

フィクサーってな〜あに?


フィクサーっていうのは何でも屋みたいな物だ!猫探しから人殺しまで!ナ〜ンデモデキル!
フィクサーは大抵『12協会』か『事務所』のどちらかに所属しているよ!

『12協会』はそれぞれ得意分野が違って、協会に持ち込まれた仕事は大きい物なら専門の協会で、些細な仕事なら所属している『事務所』に振り分けられるんだ!そしてそれぞれに所属している『フィクサー』たちが仕事を熟す訳だね!
だいたい『本社』『支店(ってよりはフランチャイズかな?)』『社員』って関係だよ!『事務所』は『支店(協会所属)』と『完全個人経営(協会未所属)』で分かれてるけどね!

そして事務所やフィクサー個人には9〜1級、フィクサー個人にはさらに別枠で『特色』っていう階級がつけられているよ!『9級』は木端の雑魚で『1級』はスーパーエリート!『特色』はどこかしらイカれてる『規格外』につけられるよ!

我らが主人公カーリーは『赤い霧』っていう特色だ!どうにもマジで最強らしい!死人は幾らでも盛っていいってヒンメルや南の勇者が証明してたしね!多少(技量)は盛っても…バレへんか。
ステイタスのスキルは内容こそダンまち風にしているけど、基本はゲームに出てた名称そのままの特性だぞ!公式自ら『伝説』で『最強』って言ってるって事だね!

特に『Library Of Ruina』での『最強』の効果は初見だと「???」ってなるような見た目的に少しインパクトがある効果だぞ!初めて見た時は『最大』が思ったより『最大』でびっくりしたよ。
みんなも、やろう!『Library Of Ruina』!
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