赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている【0830】 作:ピグリツィア
自室でフィンから今回の遠征結果の報告を聞く。酸を撒き散らす未知のモンスターか。随分と散々な目にあったとは聞いとったけど、この後のトンデモ大事件に比べればまだ『ダンジョンでの
「以上が深層であった事だ。全く、厄介なことばかりだね」
フィンから今回の遠征の詳細な報告を聴きながら置いてあった酒の残りを呷る。呑んでないとやってられんくらいにはボロクソにされたな。武器溶かされるって、遠征だと致命的な相性や。
「ホンマ今回の遠征はマジ災難やったな。次回の遠征は過去より費用が跳ね上がりそうやしなあ…そんで、次はアレか」
「ああ、帰還中にミノタウロスの群れの討伐をしようとしたらトラブルが起きてね。アイズたちに対応させたら、ティオネとティオナがカーリーを見つけたらしい」
今回一番の問題やな。異世界からの来訪者なんて信じられるか?嘘はついとらんみたいやけど厄介事には変わらん。全知零能の身である自分が何もわからないイレギュラー。正直コレのせいで今までの報告もあまり身が入らんかった。
「ティオネとティオナがなぁ…なんか因果を感じなくもないな。ミノタウロスをぶった斬っとったんやろ?まあ規格外やな。強さと言い武器と言い、一体どんな世界からやって来たんや」
「彼女の身の上話を聞いたら想定より酷かったけどね。カーリーの出身地では食人も珍しい物では無かったらしい…ここに関しては「都市の中でも異常寄り」とは言ってたけどね」
「マジか、もしかしてカーリーたん食人嗜好とかあったりする?」
「そういった話は聞いてないな。少なくとも彼女は常に人の死と隣り合わせの人生だったらしい。人を食べて糸に加工する化け物も居たとか」
えぇ…食人はともかく人間を食って糸にって、神でもそんな倒錯した奴おらんかった筈やぞ。どんな地獄や。
「なんつーか、まあヤバい所やな。マジでそれしか言えん」
「そうだね、正直闇派閥でもここまで危険と言うか…悍ましいのは少なかったからね」
「まだ人間の悪意で済む範疇やったからなあ。まさか
あの時代も酷かった。街の中でも常に死の危険がある様な時代。それが常習化してる様なところから来たっちゅう訳や。フィン達にとっても他人事とも言い切れないから微妙な表情になっとるしな。
「カーリーたんの人となりはコレから見極めていくしかないやろな。ステイタスを見るに根は優しい子やろうけどなあ…」
「スキルが発現していたのか。あの話を聞いたら一つくらい発現していてもおかしくはないと思ってはいたけどね」
「ああ、これや」
カーリーの処遇について顎に手を当てて考えているフィンに
カーリー
Lv:1
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:無し
《魔法》
《スキル》
【伝説】
・格上との戦闘時に『力』『耐久』『器用』『俊敏』のアビリティ補正
・行動阻害耐性
【最強】
・戦闘時に全アビリティ大幅上昇
・戦闘時間に応じて全アビリティ上昇
【技量】
・戦闘時『器用』上昇
・対人戦闘時効果量上昇
【反撃】
・反撃時『器用』の数値に応じて威力上昇
【赤い霧】
・守る物が多いほど全アビリティ上昇
・逆境時に能力低下耐性
・逆境時にアビリティ上昇
・EGOの発現権
・任意のタイミングでEGOを発現できる
・感情が昂るほど効果上昇
【
・コア抑制中
・解放時 『技量』『反撃』『赤い霧』 無効化
・解放時 段階に応じて『力』『俊敏』超大幅上昇
・解放時 段階に応じて『耐久』『器用』大幅低下
・解放時 記録されているEGOの使用権を得る
カーリーのステイタスを見せればフィンが目を丸くする。まあ信じられんよな。効果がよく分からん奴を抜いても規格外のスキルが5つ。発動条件は緩く、文面を見る限り効果は強力と来た。
「ステイタスは本人の素質や経験を映す物だけど…そこに【最強】と【伝説】か」
「マジの頂点やろうな。素でミノタウロスを一刀両断したのも納得や」
スキルは本人の内に秘めた物の他に、例は少ないが対外的な評価も写される傾向に有る。ソコに雑じり気なく『伝説』と『最強』なんて書かれてたら、元の世界のカーリーがどんなんだったかガキでもわかるな。
こんな手駒を手に入れたら誰でも狂喜乱舞するやろうな。この見えてる地雷に目を瞑れば。
「この最後のスキル『峻厳』だけ見せとらん。とんでもなく嫌な予感がするんや」
「解放条件がわからないけど、解放時に『守る物がある時に発動する』赤い霧が無効化されるとなると…かなり不味い状況になってそうだね」
カーリーの二つ名でもある赤い霧のスキルが示すのは、あの子が守る事に並々ならぬ拘り、もしかすると執着にも近いそれを持っとるっちゅう事。これを捨てる状態となると…
「解放条件はおそらく『喪失』、それも親しい仲間とかになるのかな」
「多分な、そんな最悪の状況で解放となると…良い悪いに関わらず状況が大きく動くやろうな」
「僕の魔法を極端にした物になるかな、若しくはアイズのスキルか…いや、EGOのあの雰囲気を考えると…怒りか?」
『守る物』どころか自分の身も捨てて敵の殲滅を優先する…一昔前のアイズと同等か、それよりも酷くなりそうやな。
フィンには何かしらの心当たりがあるみたいやけど…どちらにせよ今すぐどうにか出来そうなモンでもないか。
「ここ最近は出とらんけど、一層気を付けなアカンな」
「彼女の最期の記憶を踏まえると、そういう状況になれば事態は加速度的に悪化していくだろうね」
話を聞く限りはカーリーもそういう事を割り切れん程子供やない筈やけど…誰にでも限界はあるか。フィンによるとカーリーの最期はかなり壮絶だったらしいしな。襲撃者によって施設壊滅、生存者は絶望的。その絶望の中で孤軍奮闘して襲撃者と相打ち。
そんな経験をした子があそこまでの社交性を残せているのは本人の素質やろうな。他の子だったら自暴自棄や無気力になる方が自然や。そうなった子を何人も見てきた。
「ベートとかちっちゃい頃のアイズを思い出すなぁ」
「そうだね…彼女が強くて助かったよ。もし自暴自棄になっていたら…ティオネとティオナは間違いなく負傷していただろうね」
普段はある程度の社交性を持った良い子やけど、心に深すぎる傷を持った潜在的な問題児か。地雷が分かりやすいから他よりは御し易いけども…冒険者である以上、絶対に事故は起こらんなんて口が裂けても言えんな。
「流石にリヴェリアとガレスにも教えとかんとな」
「そうだね、これを知らないまま万が一があったら被害は大きくなる」
場合によってはファミリアから離して療養させなアカンかもしれんな。どちらにせよしばらくは退屈しなさそうや。
「それにしても…やっぱり異様な量のスキルだね」
「ああ、これなぁ…」
これに関しては言う必要も無さそうやけど…伝えとくか。
「このステイタスなぁ、なんと言うか、でっち上げと言うか…」
「でっち上げ?」
「こう、違う言語の能力を無理やりこっちに合わせたって感じやねん。だから変な挙動とか『スキルに書いてない効果』みたいなのがあるかもしれんし、魔力に関してはそこに入れられるステが存在しなかったから『なし』になっとるしな」
異世界の人間だった事がここではっきりしたり、魔力が文字通り『無い』って事がわかった訳やな。リージョンが違うからそこを合わせるのにも一工夫加えたりしたしなぁ。
「ついでに言うと神威の効きが悪いのも異世界生まれやからやな。あれって『
「異世界の生まれであるカーリーには通りが悪いと…だからあの時平気そうにしてたのか」
ダンジョンから出てきた時もウチの神威に対する反応が薄かったし、精神的な攻撃は効果が薄いかもなぁ。カーリーにとって神威は『なんかやばい圧』程度でしか無いって訳やな。
「いざって時はマジで冒険者しか頼れんかもしれんな」
「神威での鎮圧ができないとなると、そうなるね」
下手すると真の意味でなくても神も殺しかねんな…そうなったらいよいよ収拾つかんくなる。
「常に誰かしらは側に付けときたいなぁ」
「検討しておこう。じゃあそろそろ椿達も帰る頃だろうし、行こうか」
「せやなぁ。ファイたん見送らんとな〜…
未知のモンスターに次の遠征、異世界人。本当に退屈しないで済みそうやな!…正直、もう少し、こう、なんと言うか、手心というか…って思わなくも無いな。あまりにも纏めて来るもんやから流石にキャパギリギリや。
〜
図書館長さん「全盛期の戦闘技術にロボトミー社のEGO。これが『私たちの考えた最強の赤い霧』よ」
ツンデレロリ「今でも思い出せるわ、ロボトミー社の時のゲブラーの暴れっぷり…アレは凄まじかったわよね。部署から部署へ縦横無尽に走り回って…」
酔っ払い「そうですね…あまりにも大暴れしていたから死者も何人か出てましたし…」
潔癖症「力のある人間が自暴自棄になるとどうなるか、痛いほど思い知らされましたよね」
峻厳「あまり人の黒歴史をほじくり返さないでくれ…反省はしているから」
元復讐に燃える9級フィクサー「こっちにも飛び火してるんだけど?まあわざとじゃ無いんだろうけどさ…」
元復讐に燃えるつよつよAI「私にも思いきり飛び火してるわね…」
ドジっ子研究員「研究所時代のカーリーも本当に強かったですよね!トラブルが起きた時もすぐ解決してくれたし、カルメンからもEGOを任されて…私なんか色々焦っちゃって…本当に馬鹿なことを…」
密告者「そんなこと言ったら私なんて…ごめんなさい、カーリー…」
ヘタレ青髪ぼっちゃん「もしかしたら、あの時俺も少しばかりの反抗でもしていたら…もうちょっと生き残りは多かったかもね〜」
伝説「あーあー、もう気にして無いから…ほらホド、泣くなって。マルクトもほら、そんなにしょげるな」
B「私はあなたのおかげで生き延びる事ができましたから…そう言えばまだお礼を言ってませんでしたね。爪や調律者から守ってくれた事、
最強「もういいって…もう『カーリー』は死んだんだ。ここにいるのはただの図書館にいる、言語の階の指定司書『ゲブラー』だ。過去のことは忘れてこの先のことを考えよう」
元9級フィクサー「それにしても…今ある赤い霧の逸話だけでもお腹いっぱいなのに、更に強くなるのかぁ。EGOの強さはよくわかっているつもりだけど、どこまで強くなるのやら」
元特色フィクサー「怒りに飲まれずに多種多様なEGOを振るえる状態か…私たち三人がかりでも骨が折れそうだな」
元調律者「存在し得ない虚像を写そうとした結果が此れだが…暫くは退屈せずに済みそうだね」
ともだち「ああ…本当にな!」
図書館長「苦労をかけるわね、ローラン」