赤い霧がダンジョンにいるのは間違っている【0830】   作:ピグリツィア

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『復讐の果て』の先

 机を挟んでロキと対面する形で座る。ロキにとって聞きたい事はかなり多いだろうが、答えられる事はそう多く無いだろう。

 

「んじゃ、まず一番大切なことやな。カーリーはどうやってこの世界に来たん?」

「分からない。手段に心当たりが無い訳ではないが、私自身の能力でどうこう出来る物ではないし、よしんば手段がわかったとしても理由が全く分からない」

「う〜ん、こっちも概ね同じ感じやな。こっちからどうこう出来ん訳でも無いとは思うんやけど…誰がどーやって、何の為にやったか、な〜んも分からん。人間には流石に無理がすぎると思うからほぼナシ、もし神がやっとったら一瞬でウチらが捕捉して強制送還する筈やからな」

 

 ロキはうんうん唸りながらペンで紙面を叩いている。転移理由に関しては手がかりがなさすぎてなにも分からないな…

 

「そんじゃ、次は転移する前の最後の記憶…あ〜、やめとくか?」

 

 どうやら表情に出ていたようで気を遣わせてしまったらしい。確かに思い出したくない記憶ではあるが、話さない訳にもいかないだろう。

 

「最後の記憶か。そうだな…私が研究所に所属していたことは話したか?そこで色々あってな、襲撃されたんだ。都市の最高戦力である『調律者』、都市にとっての異物や規則違反者を排除する専門の殺し屋である『爪』が2人、そして脱走した数多の『幻想体』。私が駆けつけた時には既に研究所は壊滅、生存者は…あの状況だと1人も居なかっただろうな。それでも調律者以外は満身創痍になりながらも何とか倒したんだが」

 

 何時思い出しても苦い記憶だ。私がもっと強ければ何人かは救えたかもしれないのに…そう考えると、比較的楽に力を付けられる可能性のある『恩恵』を貰えたのは良かったのかもしれないな。

 

「ちょいまち、幻想体ってアレやろ?あの剣の元になった奴みたいなバケモン。え?アレが一杯いたのを倒したんか?」

「ああそうだ。まあその剣の元になった奴が一番強くて、その他はソレよりは楽に倒せる程度だったがな」

 

 時間が経ちすぎて『何もない』が人の形になっていたから鎮圧に随分と時間をかけたのが痛かったな。アレさえなければもっと余裕を持てただろうが…

 

「あーうん…そうか、まあええわ、続けて?」

「じゃあ続けるぞ。調律者を相手取る時には既に満身創痍だったからな。不覚を取って右半身がほぼ使い物にならなくなった」

 

 ああ、思い出すだけで苛つくな。調律者は獲物を痛ぶるのが好きだったのと…話が小難しい上に長かったんだ。本当に長かった。

 

「そんでそのまま意識を失って、おそらく死んだタイミングで転移した訳やな」

「慢心し切った調律者の土手っ腹に穴を開けた後にな」

「アレ?ウチ右半身使いもんにならんくなったって聞いたんやけど?」

「正確には右目失明、右腕欠損、その他骨折やら切り傷やら多数だな」

「???」

 

 ロキが完全停止してしまった。確かに限界を超えた戦いだった分、多少現実離れしているとは思うがそこまで大袈裟に受け取る必要はないのだが。

 

「あーうん、まあ火事場の馬鹿力って奴やな、うん。で、まあその後に目を覚ましたらダンジョンの中だったちゅう訳やな」

「そうだな、そこで目が覚めた直後にミノタウロスが突っ込んで来たから叩き切ったという訳だ」

「その節は大変ご迷惑をお掛けしてスンマセンっした」

 

 ロキが速攻で土下座に移る。私はもうファミリアの一員なのだからそこまでしなくてもいいだろうに。

 

「いや別に大丈夫だ、そこまで強い相手でもなかったからな」

「あんな?ミノタウロスを一撃で仕留めたモンに言うのもおかしいんやけどな、ミノタウロスって最低でもレベル2がパーティを組んで戦う相手なんよ。そんな奴がレベル1とかがいる様な上層に追い立ててしもたから…もし被害が出てたら大問題になってた訳やな。マジでカーリーたん最強で助かったわぁ」

「そうだったのか、確かアイズがギリギリで一般人…ではないが、上層で探索している冒険者を助けたと聞いたが」

「マジ?そんだったらちょい詫び入れんとかもなぁ。まあ向こうが動くまで待つか。後でアイズにも話聞かんとな」

 

 頭を掻きながら紙に何かを書いていく。恐らく今後の予定だろう。私には読めない文字だな…?

 

「まて、ちょっとその紙見せてくれ」

「これ?この紙は神聖文字で書いてるから読めんと…もしかして読める?」

 

 ああ、読めないな…()()()読めない…いや、読めていたのが異常か?

 

「いや、読めないが…なら私は何故先ほどステイタスを読めたんだ?」

「そりゃ共通文字で書いとるから…アレ!?自分異世界人よな!?むっちゃ自然にステイタス読んどったからスルーしとったけど何で読めとんねん!?」

「知らん、だがもしかしたら何らかのヒントに…なる気がしないな」

「謎は深まるばかりやな…はぁ、ビビったわぁ。とりあえず読み書きを勉強する手間が省けたと考えとくか」

 

 転移に際し私に何らかの変化を加えられるとすれば、少なくともイオリでは無い気がする。イオリは移動だけだったはずだ。特異点か幻想体か…ダメだな、やっぱり手がかりが少なすぎる。

 

「まあええわ、気を取り直して、さっきのステイタスの話に戻るんやけど最強とか伝説とかって心当たりある?まあ何も捻らずに考えればカーリーがそのまま最強で伝説って訳やけど」

「最強かまでは分からないが、特色というだけで一応伝説に近くはあるかもな。フィクサーの頂点を示す称号だからな」

「こっちで言うレベル6とか7みたいな一級冒険者の頂点とも呼べる存在という訳やな。今のオラリオだと死ぬほど頑張ればオッタルやフィン達が取れそうやけど…とりあえずこれも置いとくか。流石に本人の主観でわかるもんやないからな。んじゃ次は…EGOについてやな。単刀直入に聞くけど、EGOって何や?幻想体から抽出するものかと思えば、カーリーも自分で出せるそうやないか」

 

 EGOとは何かか…アインはなんて言ってたか。確か『幾何学的器官の根絶』とか言ってたな…もっと私にもわかるように説明する努力をしろと言ったが、あいつには無理だったな。

 カルメンは『精神を物質化した物』と言ってたな。うん、なんたら器官の何ぞやよりはよっぽどわかりやすい。

 

「研究者が言うには『簡単に言えば、その者の精神を物質化した物』と言ってたはずだ。厳密に言えばもっと複雑だとは言っていたが…悪い、覚えていない。私は研究者ではなく傭兵だったからな」

「結構マジな研究だったんやな…カルト的な儀式をやってたら偶然出来たものとか考えとったんやけどな。となると例の『都市の病気』とかもマジもんかもしれんのか…とりあえずコレも置いとくとして、精神の物質化なあ、つまりこの剣は『何も無い』っちゅう幻想体の精神を物質化したものって訳やな」

「いや、幻想体は…『何も無い』はそれそのものが人間から発生した精神が実体化した物だ。幻想体のEGOの場合は一部を抽出した物だな。さっきの例えが当てはまるのは私だけだ」

「カーリーさんってもしかしなくてもあっちでも一際ヤバい存在でいらっしゃる?いやステイタスで知ってはいたけど」

「否定できなくなってきたな」

 

 いくら他人よりEGOに詳しいとは言え、そこそこ長い歴史を持つ都市、ひいてはフィクサー協会の記録に私以外のEGOを発現した人間の記録は無かったしな。その上特色なんて明確な『格』を付けられている以上、自分が特別では無いとは言えないか。

 都市での自らの立ち位置について、改めて客観的に見ていると外からノックの音が聞こえてきた。恐らくフィンだろう。

 

「ロキ、こっちは終わったよ」

「んあ〜、今行く〜。じゃあ今回はこの辺で切り上げるかぁ。いや〜、どうしよっかなコレ」

 

 ロキが唸りながらいくつかの紙束とペンをそこら辺に投げる。随分と迷惑をかけてしまう様だ。

 

「フィ〜ン、後でいいから適当にカーリーたんの演習相手見繕っといて〜。スキル考えるとレベル3か4は欲しいかも〜」

「そこまで凄いスキルを持っているのかい?後で確認しておこうか。じゃあカーリーは応接室にいるガレスと椿と共に武器の話をしておいてくれ。ロキは今回の遠征の話だね」

「わかった」

「や〜だ〜、も〜う〜つ〜か〜れ〜た〜」

「大丈夫だ、僕もすごく疲れているからね」

 

 さっさとフィンの案内通りに応接室に行くとしよう。あまり長居するとまたロキに絡まれかねない。

 

 応接室の中に入ると椿とガレス、そしてヘファイストスが席に座って待っていた。机の上にある紙を見るに、私の武器の草案は出来上がっているようだ。

 

「来たかカーリー!ガレスから聞いたミミクリーを参考に、簡単ではあるが図面を作ったぞ。流石に話に聞いたミミクリーの様な変形武器は作れそうにも無いから耐久性を重視した武器にしようと考えている。とりあえず形はミミクリーに寄せたが問題は重さや重心だな、そこは実際に振ってもらったりして細かく調整しなければならんが取り敢えず大まかな要望を聞こうと思う!」

 

 大興奮で武器の図面を見せながらアレでも無いコレでも無いと言い合う。武器は己の命を預ける物だから、妥協はできる限りしない。

 

「ほお、ここまで重くするか!まあ、重さも変えられんから最初から重くしておくしか無いんじゃろうけどな」

「要望を考えると不壊属性も付けたい所だが…流石にガレスが破産してしまうな!それに材料も大量に使う用が出来たから、そこは妥協するしかあるまい。とりあえず予算内でできるだけ頑丈にしておこう!少なくともゴライアスと正面でやり合っても壊れないくらいにはしておくか」

 

 概ね満足できる武器にはなった。流石にいきなり深層の深くに潜ると言うことはないだろうからコレでも問題はないかな。

 

「しばらく禁酒じゃな…」

 

 残念ながらガレスの酒代が消し飛んだようだが尊い犠牲だ。この武器はできるだけ丁寧に、大切に使うとしよう。

 

「ミミクリーの鞘だけど、相応の材料をいろんな所から集めないといけないから暫くかかるわ。一応材料が集まり次第着手するけど期待しないで待っててちょうだい」

「鞘を作ったからと言ってどこでも気兼ねなく振り回せる訳ではないんだろう?なら急がなくても良いが…」

「そこら辺をどうにかするのが鍛治神(わたし)よ。神としての力が使えなくても出来るだけ使いやすいようにするわ」

 

 二大鍛冶ギルドの片割れの主神自らが作るらしい、その上何かしらの手を加えるみたいだ。かなりの大金が吹き飛びそうだな…

 

「鞘には相応の値段がかかるけど…正直『その程度』であの武器を比較的自由に持ち歩けるようになると考えると破格の値段ね」

「そうじゃな、アレは最早金に変えられん程の武器じゃからのう」

「それよりカーリーも自身のEGOという装備があるのだろう!?くう〜!それも見たいな!もしかしたら手前の成長の切欠になるやもしれん!」

 

 椿の自らの成長の糧になり得る物を貪欲に求める姿勢は好感が持てるが、いかんせん圧が強すぎる。出来ればもう少し抑えてくれると助かるんだがな。

 

「まだ草案とは言え椿は大仕事が入ったでしょう?私も今からメンバーを見繕わなきゃいけないし…かなり忙しくなるわよ」

「それでも見たいものは見たいのだ!まあ『その時』が来れば見れるだろうがな!」

「アレは凄まじい武器じゃ!重量も耐久も申し分無し!個人的には斧の方が好ましいがそれを抜きにしても良い物じゃ!」

「知り合いが言うにはあのミミクリーですら完成品には程遠いらしい。完成品は私も終ぞ見ることはなかったがな」

 

 ミミクリーの場合、完成品には『殻を奪い、使用者に補填する効果』…簡単に言えば生物を切った時に持ち主の傷を埋める効果が発現する可能性があったらしいが、所詮は予想だな。

 

「あれで未完成か…完成品を見てみたかったのう」

「手前はその未完成品すら直に拝めていないのだぞ!贅沢を言うな!」

「さ、椿。もう帰るわよ。明日のうちから準備しなきゃいけない事もあるでしょう?」

「む、そうだな!では失礼する!」

 

 あの二人には色々と頼りきりになったな。早いうちに借りを返せれば良いが…それもこれもまずは得物がなければどうしようもないか。もどかしいな。

 ヘファイストスと椿と入れ替わる形でロキとフィンが部屋に入ってきた。ロキは少しやつれてるな。この短時間で何があった?

 

「カーリーの武器についての相談も終わったようだし、とりあえずやるべき事は終わったかな。それじゃあ汗を流してくるよ」

「こっちも風呂にするか〜!カーリーも汗流したいやろ!」

 

 思えば三日間ダンジョンに潜っていたのか、ロキの言う通り体を洗った方がいいかもしれない。

 

「そうだな、風呂に入るか」

「他の子達は先入っとるかな、ウチも後から行くから…ほれ!この地図見て先に風呂場に向かっとくれ!」

「ああ、わかった」

 


 

 ロキから貰った簡易的な手書きの地図を頼りに浴場まで行く。ロキファミリアの浴場は男女別で一つづつ、つまり他人と一緒に入るらしい。

 今更己の裸体が見られるのを恥じらう程乙女じゃ無いが、見知らぬ地でとなると話は別だ。少しばかり警戒しながら浴場へ向かう。

 

「ここか…うん?」

「あ!カーリー来た!待ってたよ〜!」

「ティオナ?一人でどうしたんだ?」

 

 浴場の入り口にティオナが一人で立っていた。私を待っていたようだが何かあったのだろうか。

 

「カーリー一人だとお風呂の入り方分からないかな〜って思って待ってたんだ!」

「そうか、随分と待ったんじゃないか?」

「ううん、そうでも無いよ?私たちもやる事がなかった訳じゃ無いから、他のみんなもさっき入ったばかりだし!リヴェリアも後から来るってさ!」

 

 他愛ない話をしながらティオナと共に浴場へ入る。すると目に飛び込んできたのは想像以上に広く、豪華な浴場だった。

 

「これは…!デカいな!」

「ソーダネートッテモオッキイネー」

「お、来たわね…ティオナ、そんなに見ないの。はしたないわよ」

 

 ティオナの刺さるような視線は無視して浴場を見渡す、やはり豪華な造りだな。裏路地じゃまず見られない光景だな。

 

「カーリー!まずはこっちで体を洗うよー!」

「ああ、わかった…ちょっと待て」

 

 ティオナの案内でシャワーの前に立つ…前に、邪な気配に備えてEGOを発現させる。

 浴場で臨戦態勢になった私を見た者は漏れなく驚愕の表情を浮かべているが、直後に突っ込んできた『襲撃者』を見て納得したように溜め息を吐く。

 

「カーリーたんおっぱい揉ませ、て…し、失礼しました~」

 

 まあ、薄々そうだろうとは思っていたが。予想通りロキが浴場に突っ込んできた。しかしEGOを身に纏った私の姿を確認するとそのまま踵を返して帰っていく。

 

「…それ、奇襲(ロキ)避けに便利ね」

「ロキ顔真っ青にして戻ってったね」

「まったく、あいつはいつもこうなのか?」

「うん、いつも誰かに抱きつこうとしてくる」

 

 ロキの素行に私も溜め息を吐きながら、EGOを解除していざシャワーを浴びようとした時、脱衣所の方からロキの声が聞こえてきた。

 

「わ゛あ゛あ゛あ゛〜ん゛!し゛ぬ゛か゛と゛お゛も゛っ゛た゛あ゛〜!」

「お、おいお前達!何をやったんだ!ロキが泣きながら抱きついてきたぞ!」

 

 ロキの慟哭とリヴェリアの困惑したような声が浴場にまで響く。どうやら私はやりすぎてしまったようだ。

 

「これは…やらかしたか」

「ちょっとやりすぎね、私たちもちょっとビビったし」

「なんというか、『今から貴様を殺す、異論は認めない』って感じの雰囲気だったもんね」

「ファミリアの皆はセクハラされても殺気は当てないから、すごい殺気を当てられてロキもびっくりしたんだと思う」

「後で謝っておくか」

 

 勢いよく入ってきたから反射的に臨戦体制になったが、ロキファミリアの浴場でこの面子相手に覗きや襲撃を仕掛ける人間は居ないか。

 

「ま、ロキにはいい薬でしょ。これでしばらくはセクハラも控えるでしょうね」

「控えるかなぁ?ま、ロキの事はリヴェリアに任せてシャワー浴びてお風呂入ろ!」

「ああ、わかった…」

 

 曲がりなりにも自分たちの組織の長をそんな扱いでいいのかと思わなくもないが、ティオナに促されるがままにシャワーを浴びる。親指や中指だったらえらい事になってただろうな。

 シャワーを浴びたら湯船へ浸かる。ここ数日は色々あったな…本当にここは異世界なのか?実は外郭のどこかしらなんじゃないか…そう思わずにはいられない。

 

 ここ最近の騒乱を思い返していると、リヴェリアが隣に入ってきた…ああ、言いたい事はわかるから、そのなんとも言えない顔で見るのはやめてくれ。怒れば良いのかどうすれば良いのか分からない中途半端な顔になっているぞ。

 

「カーリー…ロキが悪いのは重々承知しているが、ホームや街中で殺気を出すのは控えてくれ。オラリオはお前が思っているほど物騒じゃないんだ」

「ああ、悪い。いきなり突っ込んできたから反射的にな…」

 

 リヴェリアに注意されてしまった。だが流石にこの世界に来て三日(しかも地上は今日が初日だ)で慣れろと言われてもな…それを分かっているのかリヴェリアも深くは追求してこなかった。

 

「ロキもこれに懲りたら団員へのセクハラは控えてくれ。流石にここまでの事態にはならなくても怪我をする可能性はあるんだからな」

「はい、もうカーリーさんにはセクハラしません…」

「他の団員にもするなと言っているのが分からんのか」

「それは無理やて!可愛い女の子と触れ合うんはウチの生き甲斐なんや!」

 

 これは…ファミリアの選択は早まったか?可能性は低いとはいえもう少し様子を見て、別のファミリアへ行く事も考えた方が良かったかもしれん…

 

「早まったか、って顔してるわね…」

「カーリー!そんな顔しないでよ〜!ロキ以外は良い所だから!」

「うん…ファミリアのみんなは良い人だよ?ロキは…うん」

「みんな酷ない?」

「身元のわからない私を拾ってくれたのはありがたいけど、あれがファミリアの頭だと思うとな」

 

 フィンとロキのどちらが上なのかはわからないが、そもそも神がいなければファミリアとして成り立たないと考えるとロキの方が上だろうな。コレが上か…

 

「あー、カーリー。ファミリアの頭を神が務めるのは珍しくないけど、うちはロキが放任主義だから基本は団長が頭よ」

「結構まちまちだよね〜。へファイストスファミリアは神が主導してるよね」

「探索系ファミリアは子供らが主導になりやすいな〜、命張るんは子供らやからな。逆に生産系ファミリアは鍛治はファイたんとか、農業やったらデメテルみたいにその道の頂点でもある神が作るから神が頭になるな。まあこれも目安でしかないけどな」

 

 ファミリアにも色々あるらしい。都市でいう事務所と考えればわかりやすいか。となると情報を取り扱うファミリアもある筈だ。この世界で必要になるかは分からないが探しておいた方がいいだろう。

 

「せや!リヴェリア〜、カーリーの部屋どうしよか」

「そうだな…今回の件を踏まえると相部屋は控えた方がいいか…使われてない部屋はあったかな」

「あったとしても今日すぐには使えないよね〜」

「そうだな、となると今日はここにいる誰かと一緒の部屋で寝てもらうことになるが…」

 

 リヴェリアと共に周囲を見渡す。ロキは論外、リヴェリアは…無理らしい。ティオナは期待した目でこちらを見ているがティオネはあまり気が進まないようだ。最後にアイズは…

 

「…私の部屋に来る?」

「え!?アイズが誘った!?」

「何やて!?まさかのカップリンぐべっ!?」

 

 リヴェリアが妄言を吐き始めたロキの頭を叩いてから、アイズの方を見る。確かに自分からこうやって誘うタイプには見えないな。

 

「正直助かるが…アイズ、理由を聞いてもいいか?」

「カーリーに聞いてみたい事があるから…」

「私もお話しした〜い!」

「私たちの部屋は相部屋だからかなり狭くなるわよ。それにアンタの寝相が悪いからカーリーが蹴っ飛ばされかねないわ」

 

 ティオナとティオネは相部屋だったか。そうなると確かに、アイズの部屋が一番よさそうだな。

 

「そうだな…廊下なんかで寝たり、夜警で徘徊するのも問題か。わかった、ここは好意に甘えておこう」

 

 自分の寝室に誘ってまで聞きたい事となると、他人に聞かれたく無い事なんだろう。私の出自を考えればアイズと二人になる時間もここでしか取れないだろうし、私に拒否する理由もないしな。

 

「…なんか、えっちやな!」

 

 私とアイズを交互に見たロキが妄言を吐く。何がえっちだ、こいつの脳内はピンク色の花畑に違いない。

 

「カーリー、ロキをボコボコにしていいぞ」

「わー!ごめんごめんごめん!もう言いません!ごめんなさい!」

 

 リヴェリアの許可と共にEGOを発現させると、浴槽内にも関わらずロキが土下座を決行する。これは多少痛い目に遭わせても治らないな。

 

 

 

 風呂から上がったら食事だ。この世界に来てからはずっと保存食だったから、ちゃんとした食事は今日が初めてになる。

 ロキファミリアでは朝食と夕食は見回り以外のホームにいるファミリアの仲間全員が揃ってから食べるらしい。

 

「ごはんだー!お腹減った─!うわー、食堂がガラガラ!」

「私たちだけで遠征から帰って来るなんて無かったからね…今回は色々あったからくたびれたわね。特にミミクリー。上層でいきなりアレが出てくるのは流石に心臓に悪かったわ」

 

 確かに適当な裏路地でいきなり未知のALEPHクラス幻想体に出会ったら驚くな。こればかりは倒せる倒せないの問題ではない。

 

「カーリーは何食べる〜?おすすめはステーキ!」

「ステーキか…これは何の肉を使っているんだ?」

「…他意は無いんだろうけど、カーリーが『ソレ』を言うと意味深に聞こえるのよね。普通に牛肉よ。そして私は魚と野菜を食べることに決めたわ。カーリーのお陰でね!」

 

 最初は何を言っているのか分からなかったが…ああ、これは私が悪いな。ティオネの発言に釣られてガレスも顰めっ面になっている。ティオナは…ピンと来てなさそうだ、そのままのお前で居てくれ。

 

「暫く禁酒と言ったが今日は飲むか…一刻も早く例の話を忘れたいの…儂も魚じゃ」

「今日は僕も魚にしようかな」

「勧められたし私はステーキにするか…それと、じゃが丸くんも食べてみるか」

 

 それぞれが思い思いの注文をする。異世界の食事か…楽しみじゃないと言ったら嘘になる。ダンジョンの中ではちゃんとした食事は出来なかったからな。環境的に仕方がないとは言え保存の効く食料ばかりで味気なかった。

 

 出てきた料理は都市と比べて格段に美味かった。具体的には最低4000〜5000文字に至る程度の文を書ける程度には美味かったな、きっとオラリオの環境が良いからだろう。

 

「ふう〜、食った食った…どやった?こっちの飯は」

「かなり美味かったな。都市じゃなかなか食えない位良い物だった、特に野菜がな」

「デメテルん所の野菜か〜!お気に召してくれたようで何よりや!」

 

 デメテル…神の名か、食料の生産をしているファミリアなのだろう。これ程上質な食料を供給できるファミリアとなるとかなり大きな組織になっていそうだな。

 都市の野菜は大気汚染とかで変な味がするんだ…高い物なら別だが、裏路地のフィクサーは食事にそんな金を出すくらいなら強化施術や武器に金を使うしな。

 

「食事が豊かなのは治安がいい証拠だ。ここはさぞ恵まれているんだろうな」

「せやなぁ、伊達に世界で最も栄えとる都市じゃないで!」

 

 少し前までは大規模な抗争のせいで治安がいいとは言えなかったそうだが、今はそれも終結してかなり安定しているらしい。

 私の居た世界もこれくらい治安が良ければ良かったんだがな…それもカルメンの研究を完成させれば叶ったのかも知れない。

 


 

 食事を終えて、アイズの部屋で寝具を用意する。

 アイズの部屋は、必要最低限の物しかなく、この歳の子供の部屋とは思えないほどすっきりしていた。

 

「随分と物が少ないな」

「うん、必要なものだけあれば良いから…カーリー」

 

 早速聞きたいことがある様だ。出来る限りは答えてやりたいが、裏路地の話はどこまでして良いものかな。

 

「カーリーはどうして恩恵も無いのにあんなに強いの?」

「必要だったから、としか言えないかな。都市には強化施術とかがあったから、この世界よりは早く手軽に強くなれるかもな…それに私が居た場所じゃ弱い奴はすぐに居なくなるような環境だったから、生き残る為には強くなるしか道がなかったんだ」

 

 この世界でも悪人は居るだろう。それでも皆が皆、加害者になるなんて事は無いらしい。

 都市では人間なんて掃いて捨てる程に居たから、人命を尊ぼうなんて高尚な考えを持つ人間は少ないくらいだ。

 

 裏路地はそれが顕著で、見知った人間がいつの間にか居なくなっているのも珍しくない。いつの間にか居なくなっても、何処に行ってどうなったかなんて、誰も興味が湧かない位には。

 

 そんな場所で子供が生き残るには、誰かの庇護下に付くか、他人と協力したり、騙したりして運良く生き延びるしか無い。

 そして運良く成長した子供も大抵は、他の子供を救うわけでもなく、むしろ自分の食い扶持の為に利用しようとした。

 子供から金や食い物を騙しとったり、力ずくで奪うだけなら可愛い位だ。大抵は身ぐるみどころか、その身や命も奪って金に変える。そんな場所だった。

 

 確かに親切にしてくれる人間は居ない訳じゃない。でもそれは、家畜に餌を与えるのと大差は無いような物だった。

 

 誰も彼もが自分の為に他人を容易く傷つけられる。そんな世界で生き延びるには、自分で自分を守るしかなかったんだ。

 

「…まあ、これは裏路地の話だけどな。巣だとまた事情は変わるけど、どちらにせよ自分の為に他人を貶める事が無くなる訳じゃ無いらしい」

 

 少し話しすぎたな。アイズは…あまりいい顔をしていない。当たり前か、誰だってこんな話を聞いていい気分にはならないだろう。

 

「アイズはどうして強くなりたいんだ?」

「…私は…私が強くなる理由は、モンスターを倒す為。復讐の為」

 

 復讐か、都市ではそれほど珍しくない動機だ。私も依頼でその手伝いをした事もあるし、逆にその対象になった事もある。

 結果は…私がこうして調律者と相打ちになるまで生き残った事が物語っているな。

 

「復讐か…それが悪い事だとは言わないけど、怒りで盲目になったらいけない。それで死んだ奴を飽きる程見てきたからな」

 

 私のありきたりな忠告に、アイズは何も返さなかった。

 

「アイズ、お前の周りには頼れる仲間が居るだろ?それならいざってときは頼ると良い。いい方向に導いてくれるさ」

 

 きっとこの世界では、仲間のような顔をして他人を利用する必要なんて無いのかもしれない。少なくとも私が見る限りでは、フィン達は仲間が困っているときは善意で手を貸してくれるだろう。

 

「…カーリーは、私の事を聞かないの?」

「誰だって触れられたくない過去のひとつやふたつ位あるだろ。それに気づけないほど私は鈍感じゃ無い。アイズが話したいなら別だけどな」

 

 アイズは静かに首を横に振る。この様子だとファミリアでもアイズの事を知る人間はそう多くはなさそうだ。

 

「それでアイズ、復讐が終わった後はどうするんだ?」

「終わった…後?」

「やっぱり考えてなかったか。復讐が終わったからってアイズが死ぬって訳じゃないだろ?その後にやりたいことだよ」

 

 復讐をする人間というのは大抵、自らの大切な物を喪った人間だ。そういう奴はその後の事なんて考えずにその目的の為だけに人生を捧げる。

 そしていざ復讐を完遂させて生き残った者は、喪失感に苛まれて自堕落に、自暴自棄に生きていく。そうなった時、そいつの行く末は碌な結果にならない。

 

「アイズみたいに復讐に生きる奴は多く見てきた…だから、お前にはあいつらみたくなって欲しくないんだ。だからその後の事も考えてみないか?」

「復讐の後…」

「そんな難しく考えなくてもいいし、今すぐ答えを出せなんて言わない。でも私は、アイズがいつかそれに答えてくれる日が来るのを待ってる…私にじゃ無くてもいいけどな」

 

 とりあえず今はこれで良い。アイズはまだ若いし、今まで復讐の為に生きてきたのなら考えもしなかった事だろう。

 きっとすぐに、その迷いが刃を鈍らせると思い込んで切り捨てるかもしれない。それでも、たった一度だけでも考えたなら、『その時』が来たときに道を踏み外しにくくはなるかもしれない。そう願っておこう。

 

「少し話しすぎたかな…寝るか」

「…うん」

 

 きっとこの世界にはこの世界の苦痛があるんだろう。それがどんな物なのかは知らないけれど、多くの仲間がいるアイズならそれに向き合って、乗り越えてくれるかもしれない。




 なんで料理の感想文の文字数が具体的だったかって?消し飛んだのがそれくらいだったからだよ。って事で…

〜なぜなに!プロムン教室~

こっちも一回消し飛んだんだよな…気を取り直して!今回のテーマは…

調律者と爪ってな〜あに?


『調律者』と『爪』は都市の警察とか軍隊みたいな人たちだよ!それぞれA社とC社に所属してて、ここに『目』っていうB社に所属している人もいるんだけど、カーリーの件に関しては管轄外だったみたいで研究所襲撃の時には居なかったぞ!

『爪』は上位の一級フィクサーなら1対1で勝ち目がある程度の実力だぞ!カーリーなら鎧袖一触、ボコボコのボコよ!オラリオなら魔法使い以外のレベル4上位なら勝ち目があるかな?レベル5にもなれば油断しなければ勝てる程度だと思うよ!

『調律者』は都市の『特異点』っていうフシギパワーを使って戦うぞ!
たとえばクソデカ柱を高速で打ち出したり、閉じている物なら何でも(概念含む)開く『妖精』や、その逆の性質を持つ『錠前』など、その他諸々いろんな力を使って戦うぞ!
強さは特色でも歯が立たない程度には化け物だぞ!それと話が難しくて長い。シャレにならないくらい長い。具体的には長話が過ぎて不意打ちされたり、敵を仕留め損ねたりする程度には長い。

カーリーでも慢心している『調律者』相手にEGOで初見殺しを仕掛けてようやく相打ちだ!慢心無しだと…使えるかの明言はないけど、T社って所の特異点が戦闘においてヤバすぎるせいでオッタルでも勝てるか怪しいぞ!
具体的には相手の『時間』を遅くして自分は早くなるって手が使えるのと、恐らく『妖精』が防御無視攻撃出来るからだね!めだかボックスの『致死武器《スカーデッド》』が出来るって事だ!

T社特異点無しの慢心ありとはいえカーリーは何でこんなのに勝ってるの…?
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