『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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『L』編開幕!


第10話 来訪者L / な ん で も

ーーーー風森ハイム201号室ーーーー

 

 

園咲邸での事件から3日後、俺と雪南は変わらない日々を過ごしていた。

『ドーパント』が同時に2体も出現した事件に巻き込まれたのだから、警察からの聴取もあるかと覚悟はしていたのだが、それもなく、すぐに家に戻ることができた。雪南によると、恐らく園咲家から圧力がかかったのだろうとのこと。公権力すら手玉に取るのかあの『ラスボス』は。そんな人物のところからよく無事で帰れたものだと、改めて嘆息する。

それで今回の潜入の成果だが、雪南が園咲家の幹部と接触し、友好的な関係を築くことができたという。流石は我が義妹様、やる時はやる女である。さらに、成果は他にもあって。

 

 

「流石はお兄様ですね。まさか組織のトップと友好的な関係を築くとは」

 

「いや、雪南、違うんだ」

 

「ご謙遜を。現に園咲家からの招待状が届いているじゃないですか」

 

 

そう。俺の成果、それは園咲琉兵衛から届いた招待状を見れば分かる。いや、たぶん思い過ごしだとは思うんだけどさ……なんか気に入られてませんか!?

 

 

「いや、ほら……違うって、きっと社交辞令って奴だろ」

 

「兄さん、たぶんこれ、原作だと月に1回開かれるという園咲家の者のためのお茶会、その招待状ですよ」

 

「…………ほんとぅ?」

 

「はぁぁ、一体何をしたらこんなに気に入られるんですか……」

 

 

呆れた様子を隠すこともなく嘆息する雪南。

そんなの俺が聞きたいと言おうとするも、心当たりが多すぎるため、口を閉ざすしかなかった。そのあとも、井坂の話も蒸し返してきて、淡々と文句を言われ続ける俺。そんな時ーー

 

 

ーーピンポーンーー

 

 

インターフォンが鳴った。助かった。そう思い、俺はすぐに立ち上がる。雪南はまだ不満たらたらだったが、配達の人を待たせてはいけないからと急ぎ足で玄関に向かい、ドアを開けた。

 

 

「やぁやぁ、久永遠治くん!」

 

「おまっ!? 『シュッ!?」

 

 

玄関を開けた先にいたのは、『シュラウド』であった。なぜ俺の家を知っているとか、何しに来たとか色々言いたいことはあるが……。

 

 

「兄さーん? そちらの方はー?」

 

 

インターフォンでその姿を確認して、宅配の人ではないことに気づいたようで、雪南もその場にやってきた。一瞬で思考する。雪南にこいつのことを伝えるべきか? いや、それとも……。

 

 

「しゅ……うきょう勧誘の人だよぉ」

 

「宗教勧誘、ですか?」

 

「そうそう。雪南がいないときに1回来たんだけどしつこくてねー」

 

 

早口で捲し立て誤魔化す。考えた結果、雪南にこいつのことを伝えるのは危険だからだ。

 

 

「……おいおい、それはないだろう? 私はーー」

「ーーはーいはいはい! お外でお話ししましょうか、宗教の人ー!!」

 

 

『シュラウド』が余計なことを言う前に、俺は彼女の口を無理矢理塞ぎ、外に出た。

 

 

ーーーー公園ーーーー

 

 

「どういうつもりだ?」

 

 

公園のベンチに腰掛け、俺は『シュラウド』にそう聞いた。彼女はブランコを漕ぎながら答える。

 

 

「君に会いたくてね」

 

「………………いいから本題を教えろよ」

 

 

美人にそう言われるのは満更でもない。だが、この状況では、それがこちらを茶化したものであることに気づかない俺ではない。どうして家に来たのかと再度訊ねる。

 

 

「今日は君に渡したいものがあって来たんだよ」

 

 

そう言って、『シュラウド』はベンチに座る俺の横に置いたアタッシュケースを指差した。謎多き女からの贈り物など怪しい事この上ない。

 

 

「ラブレターでもチョコでもないのは確かだな」

 

「どうだろうね。開けてみるといい」

 

 

嫌な予感はする。それでも今、俺ができる選択はこのケースを開けることしかない。俺は恐る恐るケースを開けた。

中に入っていたのは謎の機械だった。色は赤で、大きさは掌よりも少し大きいくらい。片方だけ出っぱっており、その出っ張りに何かを入れられそうな空洞がある。

 

 

「…………なんだ、この機械?」

 

 

見たことのない機械だったから、素直な感想が口から出た。首をひねっていると、『シュラウド』はブランコから飛び降り、おもむろにこちらに近づいてくる。

 

 

「そうか。君はこれを知らないんだね」

 

「あぁ、見たことも…………ん?」

 

 

ふと記憶が甦る。うっすらとしたものだが、なんだか『仮面ライダー』にあった時に、この機械を見たことがあるような……?

 

 

「習うより慣れろ、という言葉もある。使ってみるのが早いよ」

ーースッーー

 

「え……?」

 

 

ーーカシャンッーー

 

 

『シュラウド』がその機械を俺の腹に押し立てると、機械から帯が射出された。そして、まるでベルトのように……。

 

 

「あ"ッ!?!?!?!?」

 

 

頭に雷が落ちたような衝撃が走り、きったない声が出る。

そうだ、そうだそうだそうだっ!? なんで忘れていた!? この機械、あれじゃねぇかよっ!? 前に遭遇した『仮面ライダー』の腰に巻かれていた奴!!

 

 

「どうやら知っていたようだね。そう、これは『ロストドライバー』。『仮面ライダー』になるために必要なモノの1つさ」

 

「ちょ、おいっ!?」

 

「おめでとう。君は『仮面ライダー』になれる」

 

 

俺に美人スマイルを向ける『シュラウド』。美人に弱いらしい普段の俺なら、その笑顔にドキドキしていただろうが、今はーー

 

 

 

「ふざけんなよッ!?!?!?」

 

 

 

俺の叫びは公園にこだました。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「落ち着いたかい?」

 

「……多少」

 

「それはよかった」

 

 

多少の冷静さを取り戻した俺はベンチに座り直した『シュラウド』と話すことにする。

 

 

「で、なんでこれを俺に?」

 

 

腰に装備されたままの赤の機械『ロストドライバー』を指差し訊ねる。

 

 

「私の同志からの依頼でね。その『ロストドライバー』を君に託しにきた」

 

「……同志。それって、もしかして『シュラウド』って奴か?」

 

「ご名答」

 

 

やっぱりか。雪南から聞いていた話だと、この『ロストドライバー』を作れるのはこの世界の『シュラウド』だけらしい。それを届けに来たというのだから、きっとこの『シュラウド』ともう1人の『シュラウド』は繋がっている。その推理はどうやら合っていたようだった。

 

 

「その『シュラウド』はなんで俺に『これ』を?」

 

「君が園咲琉兵衛を倒し得る存在だから、だそうだよ」

 

 

彼女曰く、それが『シュラウド』の目的であるらしい。『エターナル』ならばそれが容易に叶う、らしい。

 

 

「期待されてるところ申し訳ないけどな、俺は『ドーパント』と戦う気はないぞ」

 

「『コックローチ』や『スイーツ』と戦っておいて、かい?」

 

「っ」

 

「しかも、『スイーツ』とは2回も対峙し、2回目はメモリの力も引き出したじゃないか」

 

 

どうやら彼女はそれを見ていたらしい。

 

 

「情報が早いこったな」

 

「お褒めに預かり光栄だ」

 

「褒めてねぇよ……はぁぁ……」

 

 

思わずため息を吐く。

なんでこうも俺のところに集まってくるのか。

転生後に持っていた『エターナル』。しかも、自宅に置いておいても何故か俺の懐に戻ってくる呪いの機能付き。

『ロストドライバー』。『仮面ライダー』になるための必需品。顔も知らない女性からの贈り物。

生身でメモリの能力を引き出せる『力』。きっと『スイーツ』を倒したのがこの『力』だったのだろう。

あとは『仮面ライダーW』の登場人物達。平穏を願えば願うほどに関わってしまう。

 

 

「なんでこうもトラブルにしか出会えないのかねぇ……」

 

 

悲しくなるぜ。俺の顔を見て、なにやら思うところがあったのか、『シュラウド』が俯いていた俺の顔を覗き込んでくる。

 

 

「そ、そこまで落ち込むとは……ダ、ダイジョブかい?」

 

「………………」

 

 

さっきとは一転、本当に心配そうな表情をする『シュラウド』。この女、顔はとてもいい。

…………うーむ。

 

 

「いや、もうだめだ。俺はなんでこうもダメなんだろうなぁ……」

 

「っ、えぇと……な、なにか私にできることはあるかな?」

 

「俺なんてほら、もうダメだから、あー、やだやだ」

 

「な、なんでもできることはするっ! だから、そんなに落ち込まないでーー」

 

 

「な ん で も と 言 っ た な ?」

 

 

言質とったぜ。ふっふっふっ……何をさせようかなぁ(ゲス顔)。

欲望の抑えきれない表情を手で隠し、企む俺。せっかくの機会だ。よーく考えなくてはなぁぁ。

 

 

「兄さん」

 

「あ? 待て待て、今考えて……」

 

 

「兄 さ ん」

 

 

「………………」

 

 

背後から声がした。ゆっくりと振り返ると、そこには、

 

 

「なに、女の子にセクハラをしているんですか」

 

「せつなさぁん……?」

 

 

仁王立ちする義妹様がいた。どうやら途中から見ていたのか、俺が『シュラウド』にセクハラをしていると勘違いしているらしい。

 

 

「え、いや? いやいやいや? べ、別にしてないが?」

 

「……どうせ兄さんのことですから、宗教の話を聞く代わりに、え、えっちなことをその方にさせようとしていたのでしょう。あれですね、兄さんは本当に性獣ですね。女の敵です、死んでください」

 

「ノー! 違う! そこまでのことはしようとしていない!!」

 

「…………はぁぁぁ、すみません。頭の中が思春期の兄さんが……って、あれ?」

 

 

『シュラウド』に謝ろうとした雪南であったが、いつの間にかその姿はどこにもなかった。キョロキョロと2人で辺りを見渡すが、やはりいない。

 

 

「…………どこ行った、あいつ」

 

 

結局、彼女は見つからなかった。

弁明は家で聞きます。そんな処刑宣告をされつつ、家に帰る途中で、

 

 

『今日21時に、ここで待っているよ』

 

「!?」

 

 

耳元でそんな声が響いた。その声は確かに『シュラウド』の声。

 

 

「雪南! 今!」

 

「はい? どうかしました?」

 

「………………い、いや、なんでもない」

 

 

どうやら声を聞いたのは俺だけのようだった。

 

 

 

ーーーー夜ーーーー

 

 

約束の時間はすぐにやってきた。

夜に人気のない公園で、ブロンドヘアの美人と待ち合わせ。

 

 

「…………なんか、ドキドキしてきたな」

 

『そうなのかい?』

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!?!?」

 

 

誰もいない夜の公園。不意に耳元で囁かれたことで、すんごい声が出た。飛び退き、声の聞こえた方を確認する。誰も近づいてきていなかったはず。なのに、そこには『シュラウド』がいた。

 

 

「案外怖がりなんだね、君は」

 

「おまっ、おまえっ!?」

 

「ハーッハッハッ! 実に愉快だよ」

 

 

この女……俺のドキドキを返しやがれ!!

頭にきたまま、俺はぶっきらぼうに聞く。

 

 

「で、なんで俺を呼び出したんだよ!」

 

 

その質問に『シュラウド』は意味深に微笑む。街灯も少ない暗い公園で見る彼女は妖艶で、そして、不気味だった。

 

 

「なんでもすると言っただろう。身体を張って、君の不安を取り除こうかと思ってね」

 

「…………あ?」

 

「君のことだ。きっと『ドーパント』との戦闘は避けられないだろうね。ぶっつけ本番で初戦闘も嫌だろう?」

 

 

いまいち現状を飲み込めてない俺に、彼女はにこりと微笑み、言う。

 

 

「だからーー」

ーースッーー

 

 

 

『バイオレンス』

 

 

 

「ーー私が初めての相手をしてあげるよ」

 

 

ーーーーーーーー




久永遠治
……けっこうムッツリ。
シュラウド(仮)
……人の心配をできるいい子。
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