『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第11話 来訪者L / はじめてのへんしん

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目の前で『シュラウド』の姿が変わる。スレンダーな女性的シルエットの人間から、上半身が異様な筋肉で隆起した怪物へと。そして、

 

 

ーーボンッーー

 

「え?」

 

 

目の前で、怪物に変わった『シュラウド』の体から、元の人間の姿の彼女が分裂した。目の前には『筋肉達磨』と地面に倒れている『シュラウド』。2人の彼女がいた。

 

 

「な、なんだ、そりゃ!? てか、お前、前の『黄金ミイラ』と違う『ドーパント』で、しかも、え? なんで2人になってるんだよ!?」

 

 

混乱し、そう聞く俺。それに答えたのは『筋肉達磨』の方だ。

 

 

『ハーッハッハッハッ! 驚いたかい?』

 

「お前、『シュラウド』……なんだよな?」

 

『あぁ、そうだよ』

 

「で、そっちも『シュラウド』……?」

 

『その通り』

 

 

地面に倒れたままの人間の『シュラウド』を指差す。彼女の方はピクリとも動かない。分裂する『ドーパント』ってことか?

 

 

『いいや、これは私の『力』さ。転生特典ってやつだね』

 

 

彼女は自らの体を抱きかかえ、近くのベンチに寝かせつつ、そう答えた。

 

 

「転生特典……そうか、俺の『力』みたいな奴だな」

 

『そう。私の『力』は、自分の精神体を『ドーパント』にする『力』だ』

 

 

原作でいう『バイラス』のように、と言っても君にはその知識がなかったか。彼女はそんな風に補足する。たぶん雪南ならその例えが分かっただろうが、俺にとってはそういうのもあるのか、ほーんくらいの感想である。

……ていうか、

 

 

「戦わねぇぞ?」

 

 

俺は改めて彼女にそう告げる。メモリを使った瞬間は警戒したが、見たところ『コックローチ』や『スイーツ』のように、暴走して話が通じない相手ではない。『バイオレンス』なんていう物騒な名前だろうが、中身は一応知り合いなわけだしな。彼女だって、無抵抗の相手を攻撃なんてしなーー

 

 

ーーバギッーー

 

「……へ?」

 

 

突如として、足元に『筋肉達磨』の一撃が叩き込まれる。その威力は地面にヒビを走らせるくらいには強力なようで。

 

 

「って、おい!? 何しやがる!!」

 

『すまない。君がこの期に及んで戦わないというものだからついね』

 

「ついって……」

 

 

つい、で出す威力じゃなくない?

 

 

『あぁ……そうだ。言い忘れていたが、私の『力』はまだ発展途上でね。毒素こそ残らないが、精神がメモリの性質にだいぶ引っ張られるんだ』

 

「引っ張られる……?」

 

『つまりーー』

 

 

ーーブンッーー

『ーー死ねぇぇぇぇぇっ!』

 

 

「おわぁぁぁっ!?!?」

 

 

今度こそ殺意100%の攻撃だ。間一髪避けたが、『筋肉達磨』の左腕……鉄球のようなものがついており、あんなもので殴られたら確実に御陀仏だ。

 

 

「お、おいっ」

 

『ふぅぅ……ふゥゥゥゥ…………』

 

 

文句を投げるが、『シュラウド』の様子が変だ。なるほど、引っ張られるってのは、そういうことかよ。

 

 

「通りで、前の『黄金ミイラ』の時とも多少性格が違っていたわけだ」

 

 

以前のメモリはきっと『欲』に関するメモリだったのだろう。だから、人の欲望を解放するとかなんとか言っていた。そして、今は『暴力性』。つまりは、

 

 

「『バイオレンス』。まさに名前の通りってことな」

 

 

よりによって、なんて攻撃的なメモリを使ってやがる。普通に戦いたいならもっと違う能力の奴もあったろうに……て、そうか。普通のメモリじゃあ俺が戦わないと見越して、わざと好戦的なメモリを使ったと。

 

 

「まったく……そこまでお見通しってか」

 

 

美人に弄ばれるのは嫌いじゃねぇが、ここまで掌の上だと少々やり返してやりたくなってきた。

……大丈夫、1回だけ。この1回だけやって、あとは金庫かどこかに『ロストドライバー』ごと閉まっておけばいい。うん、そうだよな。

そんな決意を固めると、俺は腰に装着してあった『ロストドライバー』に触れる。そして、懐から『エターナル』を取り出した。

 

 

 

『エターナル』

 

「…………変身」

 

 

 

『仮面ライダー』になるならばこれは言わなければいけないだろう。自分にしか聞こえない声量で呟き、俺はメモリを装填した。

次の瞬間、体が熱に包まれる。その原因は変身と同時に放たれた炎。目の前には炎がゆらゆらと揺れ動く。

時間にして2、3秒後、俺の姿は変わっていた。

 

 

『…………これが『仮面ライダー』?』

 

 

仮面をつけているにも関わらず、異様にクリアな視界を通して、自らの体を見る。自身の顔は見えないが、体はとにかく白い。全身が白く、両腕の先は赤色の炎のような模様が刻まれていた。ペタペタと頭部も触ると、アンテナだか角だかもある。確かに俺は『変身』しているようだった。

 

 

『なっちまったのか……ついに……』

 

『潰れろォォォ!!』

 

『!』

ーーゴッーー

 

 

不意を突いた『筋肉達磨』の左拳が、俺の腹に直撃した。人間だったら臓物を潰され、即死レベルの攻撃だろう。だが、今の俺、『エターナル』にはそんな攻撃は、

 

 

『いってぇぇッ!?!?!?』

 

 

痛い! 痛いんですけどっ!? なんで!? 話違うっ!?

雪南は『エターナル』はすんごい強いって言ってたじゃん!?

 

 

『フゥゥゥゥ……アァァァァ!!』

ーーブンッーー

 

『あぶねっ!?』

 

 

痛みに耐えながらも『筋肉達磨』の攻撃を避けるのには成功。動きは単調だからどうにかなりそうだが……。相手が変身前の美人なら痛めつけられるのもまぁ、そこまで苦じゃねぇが、『筋肉達磨』にサンドバッグにされるのは苦痛しかない。

 

 

『どうやら、逃げるだけじゃいけねぇみたいだな』

 

 

正気に戻すのには強烈な一撃と古今東西どの物語でもそう決まっている。一撃でいい。この『筋肉達磨』に攻撃を入れて、『シュラウド』の意識を引き戻す。

 

 

『ウゥゥっ……』

ーーググググッーー

 

『…………』

 

 

奴も俺に一撃を入れるために力を溜めている。さっきよりも強い打撃が来る。なら、見極めろ。奴の攻撃の軌道を!

 

 

『アァァァァっ!!』

ーーブンッーー

 

 

来た。大振りの一撃。

 

 

『見切ったぜ!』

 

 

大振りを身を落として躱す。狙うは見るからに装甲の薄い腹部。

 

 

『ここだッ!!』

ーードゴッーー

 

『が……ッ!?』

 

 

入った。俺の拳を受けて、『筋肉達磨』はよろけ、膝をついた。奴は荒い息を整えながら、また口を開く。

 

 

『っ、はっはっは……なれたよう、だね』

 

『! お前、意識が戻ったのかっ』

 

『……だが、長くはもたないっ、メモリをベルト横のマキシマムスロットへ』

 

『え、あっ…………これだな』

 

 

彼女の指示に従い、『エターナル』のメモリをベルトの右側にある黒色のくぼみに差し込む。すると、ベルトから音が響き渡る。

 

 

『エターナル マキシマムドライブ』

 

『お!? おぉぉ!?』

 

 

瞬間、熱が右足に集まっていくのが分かった。そうか、それは必殺技なんだな! 『仮面ライダー』っていえば『ライダーキック』だってのは、素人の俺でも分かるぜ!

 

 

『って、これ使って大丈夫なのか!? お前、死なない!?』

 

『はっ、はぁっ……問題、ないっ。むしろ一思いに……』

 

『お、おう!』

 

 

どうにか彼女が自身の暴走を抑えているうちに、俺は助走をとった。そして、駆け、跳ぶ。

 

 

 

『『ライダーキック』っ!!』

 

ーーバチバチバチバチッーー

 

 

 

炎と稲妻を帯びた俺の蹴りは『筋肉達磨』の体に確かに当たり、『筋肉達磨』は爆発したのだった……って、

 

 

『爆発しちゃったんですけど!?!?』

 

 

え、死んでない、よねぇ……?

 

 

~~~~~~~~

 

 

「ほれ」

 

「あ、あぁ……ありがとう」

 

 

公園の側の自販機で買ったアイスコーヒーを、ベンチに座る『シュラウド』に渡す。彼女は素直に礼を言う。

 

 

「…………ふぅ」

 

「本当に大丈夫か?」

 

 

俺は彼女の隣に座り、問いかけた。なにせあの爆発だ。精神だけ?とはいえ、彼女にも何かしらのダメージがフィードバックしているのではないかと考えるのも自然なことだろう。そんな俺の心配に対して、彼女は首を横に振った。

 

 

「肉体へのダメージはないよ。かなりの疲労感はあるけれどね」

 

「そう、なのか」

 

「あぁ、だから、正直羨ましいよ、君の『力』が」

 

 

そう言って、彼女はベンチに体を預けた。

『ガイアメモリ』の能力を人間のまま引き出せる、だったか。まぁ、確かに『スイーツ』を撃破した時はその『力』に助けられたとは思うが。

 

 

「…………私が転生したのは君たちより少し前でね。原作知識とこの使いにくい『力』だけ。住む場所も日々を暮らせる資金もなくて……絶望したよ……」

 

「それでもう1人の『シュラウド』に拾われたのか」

 

「拾われた……まさにその通りだよ。体でも売ろうか考えていたところ、彼女に声をかけられたんだ。まぁ、恐らく彼女は私の『力』に興味があったんだろうけどね」

 

 

それでも恩人だ。『シュラウド』はそう言って笑う。

 

 

「まー、なんだ。お前も色々あるんだな」

 

「人に歴史ありさ」

 

 

彼女の背景を少し知り、俺は少し彼女への警戒を解く。謎の美人から知り合いの美人くらいにはなれた気がした。

 

 

「さぁ、次は君の番だ。君のことも教えてほしいな、遠治くん」

 

「そうは言うが、俺たちのこと色々と調べてるんだろ?」

 

「まあね。けれど、本人の口から聞いた方が理解はできる。そういうものじゃないかな」

 

「一理ある」

 

 

そうしたら何から話したものか。別に隠すようなこともないし、なんでも答えてやるけど……って、あっ。

 

 

「お前、名前は?」

 

「ん? 『シュラウド』と名乗ったじゃないか」

 

「あー、いや、そういうコードネーム的なのじゃなくてだな」

 

「……ああ、そういうことか」

 

 

こほんとひとつ咳払いをしてから、彼女は笑顔で名乗る。

 

 

 

「私はアンナ。アンナ・京極(きょうごく)。改めてよろしくね、遠治くん」

 

「あぁ、よろしく、アンナ」

 

 

 

こうして、この世界に来て初めての知り合いらしい知り合いができた。

……さて、アンナの希望通り、俺の話でもすることにしようか。俺は改めてベンチに座り直すと、彼女の方を見た。彼女も気持ちが一段落したようで、俺から受け取ったコーヒーを開け、飲んだ。

 

 

「…………うっ」

 

「ん? どうした? 傷が痛むのか?」

 

「…………ブラック飲めない……苦い……」

 

 

そう言って顔をしかめるアンナ。

…………止めてくれ、美人がそんなかわいい表情をするな。俺はギャップに弱い。

 

 

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