『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第13話 来訪者L / 肉の壁

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久永雪南の俺のへ理解度と遠慮のなさ。

アンナ・京極のこの世界でのコネクション。

そして、2人に共通する原作知識。

それらが合わさったことで、

 

 

「最悪なんですけど……」

 

 

IT企業『ディガルコーポレーション』の前で、俺は呟いた。Sっ気のある歳上女社長に会うためにルンルン気分だった俺は気づいてなかったのだ、平穏とは程遠い状況にまたも陥れられていることに。何も説明されず連れてこられた時点で気づくべきだった。はぁ、もう最悪である。

 

 

「大丈夫かい、遠治くん?」

 

「兄さん、だらしがないですよ。シャキッとしてください」

 

 

各々俺へ声をかけてくる女性陣。

 

 

「大丈夫ではねぇな。そして、これがシャキッとしてられるかよ」

 

 

だって、そうだろう。今からこの清掃業者に扮して潜入する『ディガルコーポレーション』ってところは、

 

 

「『ガイアメモリ』を流通させてる組織のフロント会社なんだろ。しかも、女社長様は園咲冴子……園咲家の人間で、しかも、人妻……」

 

「嘘はついてませんよ?」

 

「……物は言い様だと勉強になったよ」

 

「それはなによりです」

 

 

皮肉の通じない義妹様である。まぁ、一旦それは置いておこう。今は改めて目的を確認するべきだ。

 

 

「女社長に会ってどうするつもりなんだよ」

 

 

変装し、リスクを背負ってまで潜入するのだから、それなりの理由が必要だ。まさか本当に女王様系歳上美人にただただ会いに来たわけではあるまい。

 

 

「遠治くん、『スイーツフェスティバル』での一件を覚えているね」

 

「ん、あぁ。『スイーツ野郎』大暴れだろ」

 

「そうだね。実はあの展開は原作には存在しないんだ」

 

「え、そうなの?」

 

 

アンナも雪南も俺の言葉に頷く。

 

 

「『スイーツドーパント』自体は存在します。しかし、本来は園咲邸のメイドが『スイーツ』の使用者なんです。『スイーツフェスティバル』で園咲琉兵衛が襲撃される事件はありませんでした」

 

「ふむ」

 

「そこで私と雪南くんはある仮説を立てた」

 

 

指を1本立て、アンナは自信に満ちた表情で言う。

 

 

 

「原作は改変できる」

 

 

 

私達の行動にトリガーがあったのかそれとも別な要因があったのか、原因については分からないけれどね。そう付け加えるアンナ。

 

 

「それでこのタイミングで改変するならこれしかないと思ったんです」

 

 

そう言って、雪南は『ディガルコーポレーション』のビルを指差した。このビルに潜入して、女社長に会うのがその改変だと? 以前、『ラスボス』は園咲家の当主・園咲琉兵衛だと言っていた。その娘が女社長の冴子だということも聞いた。つまりは、女社長を味方に引き入れるとか、か?

 

 

「それも悪くはないが、恐らく彼女を味方にするのは無理だろうね。それほど苛烈な女性だ」

 

「これはあくまでも改変のための足掛かりです。わたしたちの狙いは彼女の側にいる男性です」

 

「それって?」

 

 

「園咲霧彦。彼を『仮面ライダー』側に引き入れます」

 

 

 

ーーーーディガルコーポレーション内・用具室ーーーー

 

 

いつまでもビル前でたむろしている清掃業者は怪しすぎる。俺達はアンナ(バックにいる『シュラウド』)が用意した許可証を受付に見せて、ビル内に入り込んだ。そのまま人が少なく、業者が入ってもおかしくない用具室に入る。

 

 

「時間もないですし、手短に伝えます。園咲霧彦は敵組織にいますが、この街に対する愛情をもっています。『ミュージアム』が街の子供にもメモリを流していることを知れば、必ず組織に反旗を翻します」

 

「必ずって……言い過ぎじゃないか?」

 

 

計画にチームメンバー以外の心情を入れるべきではない。必ずなんて言えないはずだ。そんな俺の経験則を否定するのはアンナ。

 

 

「今回に限ってはそうとも言えないのさ。なぜなら私や雪南くんはその事実を『知っている』からね」

 

「…………なるほど」

 

 

そういうことか。その状況になれば、園咲霧彦が組織に反旗を翻すのは実際に起こること。原作を知っている2人からは、それは必ず起こると断言できるわけだ。

 

 

「そのための潜入か」

 

「あぁ、彼女ーー園咲冴子がその件に関わっている証拠……データか何かを入手しよう」

 

 

潜入の目的は分かった。二手に別れよう。その言葉に頷き、俺と雪南、アンナに別れて、それぞれ証拠を入手することにした。

 

 

ーーーー業者用エレベーター内ーーーー

 

 

エレベーターに乗り、階を上がっていく。社長室っていったら最上階だろ。ということで目指すは最上階。高いビルだから、その分上がっている時間も長い。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「?」

 

「……長くないか?」

 

 

いや、気のせいではない。エレベーターが正常に動いているとしたら、既に100回分は上がっている。だというのに、エレベーター内のモニターは未だに5階。

 

 

「兄さん、これは……」

 

「っ」

ーーガンッーー

 

 

エレベーター備え付けの緊急停止ボタンを叩き押す。程なく止まる。

 

 

「離れてろ」

 

「は、はい」

 

「ふんっ!!」

ーーググググッーー

 

 

エレベーターの扉をこじ開ける。開けた先、目の前に広がっていた光景は、さっきまでのビル内とは似ても似つかない赤黒い壁の廊下だった。さらに、その壁は所々ドクンドクンと脈打っているようである。まるでそれは生きているようで。

 

 

「こりゃあ……普通じゃないよな」

 

「……間違いなく『ドーパント』の仕業です」

 

 

この現象は、このフロアだけ? なんの『ドーパント』なんだ? 中にいた人達はどうなった? アンナは無事か?

様々な疑問が頭に浮かんで、ごちゃ混ぜになる。そんな俺の思考を止めたのは、

 

 

ーーぎゅっーー

 

「にい、さん……」

 

 

雪南の姿。ぎゅっと俺の腕にしがみついている。

そうか、そうだった。転生して間もない頃、雪南は『ゴキブリ野郎』に襲われているんだ。しかも、殺される一歩手前までいった。原作知識をもっていて、全てを知っているかのような振る舞いをしていても、怖いものは怖い、よな。

 

 

「大丈夫。俺が守るから」

 

「……はい」

 

 

軽く頭を撫でて、俺は雪南を抱き寄せる。そして、一歩その異形の『肉廊下』へと繰り出した。

 

 

ーーーー3階廊下・sideアンナーーーー

 

 

電気系統を操作できる場所を探している途中、グラッと立ってられないほど地面が揺れた。私も咄嗟にその場で壁に手をつく。地震か何かとも思ったけれど、それとはまた違う?

 

 

ーーぐちゅっーー

「!?」

 

 

ふいに手を包む生暖かい感覚。慌ててそこから手を離し、見ると、壁が変質している。まるで何かの臓器のように、ドクンドクンと脈打っていた。

 

 

「明らかに、メモリ犯罪者の仕業だね」

 

 

周りを見ると、先ほどまであった部屋への扉がなくなっている。その代わりではないが、なかった場所に扉が現れていた。

空間を変質させる類いの能力か。原作でこんなことをできそうなのは『ジーン』メモリくらいだが、原作でそれを使った彼にこんな大それたことができるとは思えない。間違いなくこれも何かしらの『原作改変』だろう。

 

 

「……それにしても、まさか『ガイアメモリ』のお膝元……『ディガルコーポレーション』でこんなことを起こす人間がいるなんてね」

 

 

私達への攻撃……とは考えられない。私はともかく遠治くんたちに攻撃を仕掛けるのに、こんな大規模な襲撃はいらない。『コックローチ』のように暗い路地裏ででも襲いかかればいい。

とすると、考えられるのは『ディガルコーポレーション』への襲撃しかない。会社への報復か、もしくは、

 

 

「園咲冴子を狙ったもの?」

 

 

断定はできない。だが、これが園咲冴子を狙ったものだとしたら……? この短期間で園咲琉兵衛、園咲冴子、園咲家のうち2名が狙われた。これが偶然ならばいい。けれど、何か意味があるとしたら?

 

 

「…………いや、今は彼らと合流するのが先だ」

 

 

ブンブンと頭を振って、思考を遮る私。

彼らが向かったのは恐らく最上階のはず。なら、私もそこを目指すとしよう。

 

 

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メモリ募集感謝です!
そして、ライダー作品同士でコラボしてみたい……。
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