『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第16話 孤島のX / ハーレム島

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差出人不明の手紙、それに貼り付けられていたチケットは、とある孤島行きのフェリーの乗船券であった。手紙を受け取った2日後、風都港から出るフェリーに乗り、孤島へ向かった。

残念ながら、俺の身体は完全には治らず、アンナが入ったままで旅立つことになった。アンナは構わないと言ってくれたが、少々心苦しい。それに今回、雪南は留守番だ。怪しさ満載の招待を受けるにあたって、彼女を連れてはいけないしな。勿論、アンナの指示に従って、『シュラウド』に連絡をとり、彼女の身の安全を確保してもらってだ。

そして、今、俺はその孤島『春爛島(しゅんらんじま)』に降り立った。そんな俺を待っていたのは、

 

 

 

「「「ようこそ♡ 春爛島へ♡」」」

 

 

 

美女3人による歓迎であった。

1人目は黒髪ロングの眼鏡っ娘。

2人目は金髪ギャル。

3人目は茶髪ショートな褐色っ娘。

3人ともとてつもない美少女であることは間違いない。

 

 

『ごほんっ、遠治くん』

 

「っ、悪い、つい……」

 

 

頭に響くアンナの咳払いで我に返る。危うく絆されるところだったぜ、こんな得体の知れない島で鼻の下を伸ばすなど言語道断だ。警戒を忘れず状況把握をしなくては。

 

 

「あ、いきなりすみません、お兄さん。私達、この島を代表して、お客様を案内する役目なんです」

 

 

ふーん。物腰柔らかな清楚系美少女、王道だな。

 

 

「おにーさん、観光の人だよねー! ウチらが案内するから!」

 

 

フレンドリーなギャル。そんなん嫌いな男いないだろ。

 

 

「ほら、お兄さん! ボクたちに着いてきて!」

 

 

ボクっ娘かぁ。小麦色に焼けた肌が眩しいね。

 

 

『お、おい、遠治くん、大丈夫かーー』

 

 

「はーい♡ お兄さん、君達に案内してもらおうかなー♡」

 

 

まぁまぁまぁまぁ、せっかく出迎えてくれたんだし?

ここはその好意を無下にするのも人としての道に外れるし?

それにこれも情報収集である。相手の懐に潜り込み、信頼されて情報を引き出すんだって、とあるスパイ映画でもやってたし。

…………決して下心があるとか、雪南がいないからハメを外せるとかそういうんじゃない。違うぞ!!

 

 

『………………はぁ』

 

 

~~~~~~~~

 

 

「改めまして、私は英未(えいみ)と言います」

 

「ウチは美夏(みか)

 

「はいはい! ボクは(しい)だよー」

 

 

島の宿泊施設に案内するという3人に、道すがら自己紹介をしてもらう。黒髪ロング眼鏡っ娘が英未ちゃん、金髪ギャルが美夏ちゃん、茶髪褐色っ娘が椎ちゃんというらしい。英未ちゃんと美夏ちゃんは大学生、椎ちゃんは高校生だという。

 

 

『遠治くん、分かっているとは思うが、女子高生に手を出したら犯罪だよ?』

 

「わかってらい!」

 

「「「??」」」

 

 

しまった!? アンナの声は他人には聞こえない。そのせいでいきなりツッコミをするヤバい観光客男性になってしまう!?

 

 

「あー、すまない。ちょっと置いてきた妹に言われたことを思い出してね」

 

 

とそんな風に誤魔化す。3人はその話にも妹がいるのとか、どんな娘なのとか相槌をうってくれて……なんだろう、キャバクラにハマる男ってこんな気持ちなんだろうなぁ。

 

そんなこんなしている間にも、今回俺が泊まる予定の宿泊施設に到着する。春爛島は決して大きな島ではないが、それに釣り合わない大きなホテルであった。どうやら3人もここで住み込みのバイトをしているようで、受付に一緒に着いてきてくれた。一通りの手続きを終え、俺は案内された部屋のベッドに横たわった。

 

 

「んんんんっ……」

 

 

大きく伸びをする。ベッドもクイーンサイズくらいはあるようで、広々ゆったり身体を預けることができた。

 

 

『……遠治くん、少しいいかな?』

 

「ん? なんだー?」

 

『君、少しデレデレしすぎじゃないかな?』

 

「…………ほら、愛想はいい方がいいだろ」

 

『何度も言うが、君の心の声も聞こえてきているからね』

 

「……うっす、すみません」

 

 

素直に謝る。正直、多少下心あります。すみません。

でも、仕方がないだろう。案内の3人もそうだし、フロントのお姉さんや清掃スタッフも妙齢ながら美人だった。その全員が俺に対して好意的なのだ。そりゃあデレデレもする。

 

 

『開き直るのもどうかと思うけれど』

 

「まぁまぁまぁまぁ」

 

『聞きたいのだけれど、君、前世とさして外見の変化はないのだろう?』

 

「ん、そうだな。まったく変わらないと思うぞ」

 

『私から見ても、君は爽やかな好青年に見える。髪も肌もよく手入れしているし、二重だし鼻も高い。髭も濃くはないから清潔感もまるだ。それにお金も持っている』

 

「いやぁ、それほどでも」

 

 

お? なんだなんだ? いきなり褒められてるじゃん。アンナはかなり美人だし、俺のタイプではあるから、気分は悪くないなぁ。

 

 

『……ごほんっ/// そんな君だし、前の世界では特にモテたんじゃないか』

 

「え、あー、まぁ……それなりには」

 

『だろう? そういう人物は総じてそんなに下心が全面に出ないと思うのだが……君、前世では彼女の1人でもいなかったのかい?』

 

「………………」

 

 

世間話のつもりだったんだろう。彼女にとってはなんてことない雑談だ。けれど、彼女の一言で、ふと思い出してしまった。前世の『彼女』のこと。俺を裏切った婚約者のことを。

 

 

『っ、す、すまない。今のは失言だったようだ』

 

「……いや、いい」

 

 

恐らく俺の考えたことが、肉体を同じにしているアンナにも伝わったのだろう。彼女はすぐに発言を謝り、忘れてくれと言う。正直、そう言ってくれて助かった。これ以上は考えたくなかったからな。

 

 

ーーピンポーンーー

 

「ん?」

 

 

俺の思考を遮り、チャイムが鳴る。勿論、さっきここに着いたばかりだから、来客の予定は一切ない。ルームサービスの類いだろうか。

 

 

『遠治くん、警戒した方がいい。君をここに呼んだ本人の来訪かもしれないよ』

 

「…………あぁ」

 

 

抜けていた気が少し引き締まるのを感じた。俺は懐にしまってあった『ロストドライバー』を装着し、『エターナル』も手中に入れる。そのままチェーンロックをした状態で、部屋の扉をそーっと開けた。そこにいたのは、

 

 

「っ、なっ!?!?」

 

 

1人の女だった。強烈に見覚えのある女で、しばらく俺はその姿に固まるしかない。

間違える訳がなかった。こいつだけは間違える訳がない。こいつは、俺の前世での婚約者ーー。

こちらの視線に気づかないその女は口を開いた。

 

 

「失礼いたします。ルームサービスです」

 

 

その一言に、

 

 

「~~~~っ、ルームサービスだっ!? ふざけんなっ!! お前っ、よく俺の前に顔を出せたなッ」

 

 

一瞬で頭に血が上るのを自覚する。そのまま女の胸ぐらを掴み、廊下の壁へ叩きつけた。

 

 

『遠治くんっ!? 落ち着くんだっ』

 

「お客様っ!? お、お止めくださいっ」

 

「何がっ、お前、俺が止めろって言っても止めなかったのは誰だよッ」

ーーググッーー

 

「か……っ」

 

『駄目だ、止めろっ、遠治くんっ!!』

 

「お前のせいでッ!!」

ーーギリギリッーー

 

 

 

「そこで何をしているのかしら」

 

 

 

「っ」

 

 

凛とした声がホテルの廊下に響いた。おかげで俺は我に返り、パッと掴んでいた女を離す。女はけほけほとわざとらしく咳をしている。俺の邪魔をした、声をかけてきた奴の顔を見る。そこにいたのは

 

 

「あ、あんたは……園咲冴子!?」

 

 

この間の一件で会った女性・園咲冴子であった。

 

 

「? どこかで会った?」

 

「あ、いや」

 

 

そうか。そういえば、あの時は俺は変装していたし、そもそも彼女と顔を合わせたのは俺が『仮面ライダー』になっていた時だった。だから、彼女にしてみれば、こちらが一方的に知っているだけ、という状況である。咄嗟に、彼女が女社長であることを思い出し、テレビで見たことがあって、と誤魔化すことができた。

しかし、まずい。冷静さを少し取り戻したことで、今の状況を思い出した。怒りで我を忘れていたとはいえ、この状況、警察にでも通報されたら一発アウトである。

 

 

「あー、い、今のはですね……」

 

 

しどろもどろになりながら、園咲冴子に説明をしようとして、

 

 

「待ちなさい。あなた、その部屋から出てきたわよね」

 

「え、あ、はい」

 

「…………邪魔するわよ」

 

「え? え??」

 

 

彼女はなぜか俺の部屋に押し入ってきた。例の女の件は一切無視。バタンと扉を閉めたかと思いきやチェーンロックをかけて、ずんずんと部屋の中に入っていく。な、なんだ??

 

 

『遠治くん、遠治くんっ!』

 

「え、あっ、アンナ、これどういう状況だ!?」

 

『……とりあえず我に返ってくれたようで何よりだ』

 

「……すまん」

 

『いいや、事情は後で詳しく聞くよ。今はこの状況だ。正直、私にも分からない。この出来事も原作には存在しないんだ』

 

「!」

 

 

小声でアンナと話をしていると、園咲冴子は傍若無人に部屋のベッドに座り、口を開いた。

 

 

「ここは一体、なに?」

 

 

そう訊ねてくる彼女。質問の意図を読み取れない俺は、とりあえず案内の3人から聞いた話をそのまま話した。島の名前やらこの島の名産品、島の行事やこのホテルの話など、本当に英未ちゃんたちの受け売りをそっくりそのまま。俺の話を聞き、彼女は口元に指を添わせ、何かを考え出してしまう。

 

 

「…………」

 

「…………」

『…………』

 

 

口元……なんか……。

 

 

『遠治くん、君はもう少し緊張感をもった方が……』

 

「……いや、ほんと、うん」

 

 

どうしても目が彼女の口元に向かってしまうので、俺は目をつぶり、会話が再開されるのを待つことにした。やがて、彼女は口を開いた。

 

 

「あなた、この島の名前、春爛島とか言ったわね」

 

「え、あぁ」

 

「風都港から出てるフェリーで行ける島に、そんな名前の島は存在しないわ」

 

「…………え? いや、そんなわけは……」

 

 

何かの間違いじゃないか。そう返したのだが、彼女曰く風都港から出るフェリーを運営している会社は『ディガルコーポレーション』傘下の会社の1つであるという。社長自らその会社の視察に行ったこともあるから間違いない。

 

 

「じゃあ、春爛島って名前は一体……?」

 

「島の名前もそうだけど……そもそもあなた、変に思わないの?」

 

 

変に思うって何が? そう訊ね返すと、彼女は深いため息を吐いて、告げる。それは衝撃的な発言で。

 

 

「このホテル……いえ、この島にはまともな『人間』がいないじゃない」

 

「は?」

 

 

いやいやいや、この人は何を言っているんだ?

英未ちゃんや美夏ちゃん、椎ちゃん。フロントのお姉さん、清掃のスタッフさん。それに『あの女』も。ここには働いている人達がたくさんいて……。

 

 

「……あなた、おかしくなってるんじゃない? あなたがさっき掴みかかってたのーー」

 

 

 

「ーー等身大の藁人形よ」

 

 

 

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ヒロインだと思うのは……?

  • 雪南!
  • アンナ!
  • その他
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