『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第17話 孤島のX / 有象無象の藁と

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差出人不明の招待状を受け取った俺とアンナは、フェリーで春爛島へと向かった。

そこで、偶然、園咲冴子に出会う。彼女は自らの意思でこの島に来たわけではなく、何者かに連れ去られたというのだ。しかも、彼女によると、この春爛島は存在しない島で、しかも、この島には人間がいない。このホテルに、島にいるのは全て『等身大藁人形』だという。

 

 

『にわかには信じがたいね。私達は確かに彼女たちの存在を人間として確認している』

 

 

アンナの言う通りだ。俺達はこのホテルに来るまでも沢山の島民と話している。あれが全員『等身大藁人形』とは思えない。だが、園咲冴子が嘘を言う必要性もないのは事実だ。

 

 

『どちらも事実。もしくはどちらも虚偽か』

 

「くそっ、ワケわかんねぇな……」

 

「私からすればあなたの方が不可解よ」

 

 

混乱する中、目の前の園咲冴子がそんなことを言い出した。不可解って……。

 

 

「えぇと、社長さん。不可解って何がだ?」

 

「…………突然連れてこられた『藁人形』が闊歩するこの島で唯一動いている人間。そんな相手を不審がらないほど、私は馬鹿でもお人好しでもないわ」

 

 

まぁ、その言には一理あるし、その警戒心は正しい。だからといって、俺が騒動の原因でないことを示すのは難しい。そうでないことを示す、つまりは悪魔の証明である。

 

 

『いや、遠治くん、今回の場合は悪魔の証明ではないよ。なぜならその『悪魔』が存在するのだからね』

 

「あ、そうか」

 

 

言われて気づく。俺とアンナが変になっているにしても、園咲冴子が変になっているとしても、存在しない島や『等身大藁人形』なんてもの、『ガイアメモリ』が関わってないとあり得ないのだ。つまり、『ドーパント』を探し出せば、俺が怪しくないという証明になる。

 

 

「社長さん」

 

「……何?」

 

「この件には十中八九『ドーパント』が絡んでるはずだ。そいつを見つけ出して、騒動を解決すれば、俺は無実だよな」

 

「…………えぇ」

 

「よし」

 

 

そうと決まれば、早速探索だ。きっと俺をこの島に導いた奴と騒動は繋がっている。この先にきっと俺が求めている『力』がある、かもしれない。

 

 

「じゃあ、私はここで待っているから、早く行きなさい」

 

「え? 一緒に行かないのか?」

 

「は? なんで私があなたの無実を晴らすのに協力すると思っているわけ?」

 

 

おぉ、高飛車。なんかこう……心がむずむずする語調と視線である。

 

 

「ほら、早く行きなさい」

 

「……ふむ」

 

「なによ?」

 

 

怪訝そうな表情の社長さんを見つめ返し、

 

 

「おい、しょっと!」

ーーぐっーー

 

「は!?!?」

 

 

俺は彼女の肩と膝下に手を回し、持ち上げる。所謂お姫様抱っこである。

 

 

「な、なにしてるのっ! 離しなさいっ」

 

「まぁまぁ、社長さんもここに拉致されたんだから、1人だと危ないだろ。相手は『ドーパント』なら尚更チェーンロックなんて無意味だし」

 

「…………危ないことなんてないわ」

 

 

社長さんはそう言った。彼女も『ガイアメモリ』を持っていると雪南から聞いてはいる。でも、彼女の隠し持つメモリは、ここに彼女を拐ってきた人間に十中八九奪われているだろう。だから、

 

 

「あんたに何かあったら、俺の目覚めが悪い」

 

「………………勝手になさい」

 

 

そうして、俺と俺の中にいるアンナ、社長さんの3人パーティーで探索に出た。

 

 

~~~~~~~~

 

 

部屋を出ると、既に『あの女』はいなかった。思うところはあるが、今は頭の隅に置いておくことにする。

 

 

『さて、遠治くん、『ドーパント』を探すとは言うが、手がかりはないよね』

 

 

まぁな。だから、俺がするべきことは、この島の案内人だと言っていた女の子3人に会うこと。たしかこのホテルでバイトをしていると言っていたし、ひとまずの指針としていいだろう。

 

 

「それで連れ出したんだから、当てはあるんでしょうね」

 

「え、あぁ……俺がこの島に入った時に、ここまで案内してくれた子が3人いたんだ。ここでバイトをしているって言っていたから、彼女たちに聞いてみるのがいいと思ってな」

 

「……どうせそれも『藁人形』よ」

 

 

その可能性は勿論ある。それでも彼女たちが『藁人形』であることを確定させるというのでも意味はある。とにかくーー

 

 

 

「あれ? お兄さん」

 

 

「!」

『!』

 

 

廊下の俺達を呼ぶ声。この声は、

 

 

「や、やぁ、英未ちゃん」

 

 

黒髪ロングの眼鏡っ娘、英未ちゃんである。先程の清楚系私服とは違い、ホテルマンの制服を着ていた。ワゴンを運んでいる様子を見るに、ルームサービスの仕事の途中のようだった。

 

 

「どうかされましたか? もしかして、昼食でも食べに行かれます?」

 

「ん、あぁ、そうだな」

 

 

まさかこの島の秘密を探っていますとも言えない。俺は適当に頷き、誤魔化す。

 

 

『……遠治くん、園咲冴子に確認を』

 

 

そうだった。アンナの言葉を受けて、俺は背後の社長さんに目線を向ける。彼女はフルフルと首を振る。彼女は人ではない、『あの女』の形をした奴と同じ『等身大藁人形』だという。

 

 

「あー、そうだ。英未ちゃん、美夏ちゃんと椎ちゃんもここでバイトしてるんだっけ?」

 

「? はい。美夏さんはキッチンの方に、椎さんは清掃の方にいると思いますよ」

 

「そうなんだな! ありがとう!」

 

 

俺は早々に話を切り上げ、そのまま彼女とすれ違おうと歩き出す。だが、

 

 

ーーガシッーー

 

「っ、なによっ!?」

 

 

俺の後に続き、英未ちゃんとすれ違おうとした社長さんの腕を、突然、英未ちゃんが掴んだ。社長さんはその腕を振り払おうとするが、力が強いのか動きすらしない。

 

 

「お、おい、英未ちゃんっ」

 

「あなた、この島の人じゃありませんね』

ーーグググググッーー

 

「痛っ」

 

「おいっ!」

ーードンッーー

 

 

異様さを感じ、俺は英未ちゃんを突き飛ばした。次の瞬間に。転んだ英未ちゃんの足が崩れた。崩れた足は肉ではなく、まるで藁のようなものになっていて。

 

 

『なぜ邪魔をするんでスカ、オニイサン』

 

「っ」

 

 

口調は彼女のまま、姿だけが変わる。

 

 

「……なるほどな、確かにこりゃ『藁人形』だ」

 

 

俺が突き飛ばした彼女の姿は、さっき社長さんが言っていた『等身大藁人形』になっていた。目があるであろう場所が窪み、それがこちらを向いているのが分かる。その視線は突き飛ばした俺ではなく、俺の後ろの社長さんを捉えているようだった。

 

 

「社長さん! さっきの部屋に入ってろっ!」

 

「は? あなたに指図される筋合はーー」

 

「うるせぇっ!! 死にたいのかっ!!」

 

「っ、私に命令したこと、高くつくわよ」

 

「この島を脱出したら、いくらでも払ってやるよ」

 

 

大声を出した甲斐あって、社長さんはさっきの部屋へ駆けていった。

 

 

『待ちなサイ!』

 

「おっと」

ーーガシッーー

 

『ッ』

 

「俺を置いてくなよ、英未ちゃん」

 

 

社長さんを追おうとする『等身大藁人形』の体に掴みかかり、止める。温度も柔らかさも感じない。確かに人形だ。見ると、無事社長さんも部屋に入ったようだし、これなら遠慮なく戦える。

 

 

「ほっ!」

ーードスッーー

 

ーーカシャッーー

 

 

『藁人形』を蹴り飛ばし、『ロストドライバー』を装着する。そして、メモリを起動してーー

 

 

『エターナル』

 

「変身」

 

 

俺は『仮面ライダーエターナル』へと変身した。

 

 

『よし!』

 

『あー、遠治くん、テンションが上がっているところ悪いけど』

 

 

『藁人形』に対峙し、構えたところに、アンナが声をかけてくる。出鼻を挫かれた気分で、なんだよと返すと、彼女は、

 

 

『『マキシマムドライブ』……必殺技は使ってはいけないよ』

 

『は? なんでだよ』

 

『『エターナル』の『マキシマムドライブ』は本来、他メモリの機能を停止するものだ。それを発動すれば、確かに敵は倒せるだろうが、君の中に入っている私も弾き出される可能性が高い。まだ君の肉体は完治していない。ここまで言えば分かるね?』

 

『……あー、なるほどな』

 

 

そんなことを言ってきた。それに関しては納得した。けれど、待て。

『ドーパント』は必殺技じゃないと『メモリブレイク』できない。つまり、変身者を殺さずに救うには、『マキシマムドライブ』が必須なんですよ、兄さん。

そんな風に雪南が言っていたことを思い出す。その理論でいくと、『マキシマムドライブ』を使えないということは、俺はこの子を……?

 

 

『いいや、元々、英未という人物は存在していないんだと思う。『ドーパント』には共通して体のどこかに球体状のコアがある。あの『藁人形』にはそれがないことを加味すると、恐らくは元となる『ドーパント』の端末のようなものだと推測できる』

 

 

端末。そうか、『ディガルコーポレーション』の時の狼みたいなもんか。

 

 

『それでも意志疎通が取れる分、気分的に倒しにくいな』

 

『そこは飲み込んでくれたまえ』

 

『分かったよ』

 

 

ーーブンッーー

 

『っと!?』

 

 

アンナとの対話が終わった瞬間に、『藁人形』の拳が俺の前を掠める。『仮面ライダー』になったことで反応速度も上がっている。『藁人形』の速度は並。当たりはしない。一気に決める!

 

 

『フンッ!』

ーーブンッーー

 

 

体を低く落とし、繰り出すは足払い。『藁人形』はバランスを崩し、そのまま倒れた。俺はその体の上に飛び、蹴りを繰り出す。

 

 

ーーザスンッーー

 

 

俺の脚は『藁人形』の腹を突き破った。貫かれたままバタバタともがく『藁人形』。少しして甲高い断末魔をあげて、動きを止める。途端に形が崩れ、ただの藁になってしまった。

 

 

『……呆気なかったな』

 

 

必殺技を使えないことが不安だったが、終わってしまえば呆気ない。不気味なくらいに手応えはなかったが、無事倒すことができた。息を吐き、変身を解いた俺に、アンナは労いの言葉をかけた後に考察を続ける。

 

 

『君の言う狼とは違い、今回は『擬態』に重きを置いた能力なんじゃないかな。それに私達が出会った島民でも裕に30人は超える。多くの端末を操る分、一体一体の戦闘能力は高くない。そんなところだろう』

 

「まぁ、これで一体一体強かったら地獄だからなぁ。弱い分にはいくら弱くてもいい」

 

『同感だね』

 

 

さて、次は美夏ちゃんと椎ちゃんか。椎ちゃんは清掃担当だと言ってた。どこかにはいるだろうが、居場所の見当はつかないし、順当にいけば美夏ちゃんのいるであろうキッチンに回ってみるか。

とりあえず一旦部屋に戻り、社長さんと合流しよう。そう考え、部屋に向かった先で異変に気づく。

 

 

「おい! 何体いやがる」

 

 

うじゃうじゃと『藁人形』どもが、社長さんがいる部屋の扉に集っていた。腕や頭を使って、扉を叩く。一体一体の力は弱くても、あれだけ集まれば壊されるのも時間の問題だ。しかも、廊下の先からまだ集まってきている。

 

 

「面倒な奴らだ」

 

『遠治くん!』

 

「あぁ、分かってる」

『エターナル』

 

 

再度、俺は変身ーー

 

 

ーーシュルンッーー

 

「なっ!?」

 

 

完全に不意打ちだった。背後から藁が伸びてきて、俺の手にあったメモリを叩き落とす。そして、そのままメモリを包み込み、どこかへと去っていってしまった。

 

 

「お、おいっ!?」

 

 

追おうとするも、速度は相当で到底追い付ける速さではない。

 

 

『遠治くん、追うんだ! 今、メモリを失ったらまずい!』

 

 

アンナの言う通りではある。だが、

 

 

「くそっ!」

 

『遠治くんっ』

 

 

俺は去っていった藁を追わずに、部屋の前の『藁人形』どもに向かう。前世での格闘技経験があるから、倒せなくはない。けれど、人のまま戦うと、それなりに手こずる。一撃では勿論倒せないし、複数の『藁人形』に囲まれ、攻撃も受けてしまう。

…………30分くらいは経っただろうか。部屋に向かってくる『藁人形』がひとまずいなくなったことを確認してから、俺は部屋の扉を開いた。

 

 

「! あなた……」

 

「すまねぇ……遅くなった……」

 

 

社長さんは無事で一安心。俺は息を整えながら、彼女に謝った。

 

 

「っ、謝る暇があったら傷の治療をしなさいっ、いえ、治療できるような道具はどこにも……」

 

 

高飛車だった社長さんが慌てる様子を見て、きっと気が緩んでしまったのだろう。俺の意識は遠退きーー

 

 

ーーーーsideアンナーーーー

 

 

『遠治くんっ』

 

「は?」

 

 

彼が意識を飛ばさないように不意に叫んだ声が、音となる。しかも、響いた声は男の……遠治くん自身のもので。

 

 

『あ……』

 

 

そこで気づいた。今、私が遠治くんの代わりに、彼の肉体を動かしていることに。

『フェアリー』メモリの他人に入り込む能力を使ったのは今回が初めてで勝手が分からなかったが、本来の身体の主が意識を失ったことで、主導権が私に切り替わった。そんなところだろう。

 

 

「……あ、あなた」

 

『っ、あ、あぁ』

 

 

不意に園咲冴子に声をかけられ、思わず上ずってしまう。

 

 

「急に倒れたから……何事かと思ったけれど……」

 

『え、っと……心配をかけたね』

 

「…………別に、心配はしていない。その様子ならとりあえずは大丈夫そうね」

 

 

園咲冴子は当然、私が遠治くんだと思って話しかけてきている。人格が変わっていること自体はバレても支障はないかもしれないが、現状がややこしくなるし、余計に怪しまれる可能性もある。彼の意識が戻るまではこのまま遠治くんのフリをするのがベターだろう。

 

 

「さて……あなたはここで休んでなさい」

 

 

そう言って、彼女は立ち上がった。

 

 

『え? あなたはって……冴子さんはどこに?』

 

「っ、急に名前で呼ばないでもらえるっ?」

 

『あ、あぁ……社長さんはどこに行く、んですか?』

 

 

私の質問に、彼女は堂々と答えた。

 

 

「このホテルの『支配人』に文句のひとつでも言ってくるわ」

 

 

『支配人』。それは額面通りの意味ではなく、あの『藁人形』たちを『支配』する『ドーパント』を指しているのは誰でも分かる。だから、私はそれを止めた。部屋の外の『藁人形』は退けたとはいっても、恐らくこのホテル内にはまだ無数の『藁人形』がいる。メモリを持たない彼女では、すぐに捕まってしまうだろう。

 

 

『行かせられないな。言っただろう、あなたに何かあったら目覚めが悪くなると』

 

 

遠治くんの意思を尊重するならば、ここは止めるべきだ。でなくては彼のしたことの意味がなくなってしまう。けれど、彼女は止まらないようで。

 

 

「止めないでもらえる? 今、私は虫の居所が悪いの」

 

『っ』

 

 

傍若無人。自らの思うままに、自らを通す。

それがこの頃の『園咲冴子』という人物だというのを、改めて思い出す。

部屋を出ようとする彼女と、そうさせたくない私。自然と睨み合う形になる。

 

 

『…………』

 

「…………」

 

『…………』

 

「…………っ///」

 

 

ん? 顔を背けた?

強気な彼女にしては、不自然な行動。それを誤魔化すように、ひとつ咳払いをした彼女は言葉を続ける。

 

 

「私も言ったでしょう、高くつくと。ここを出たら、いくらでも払うと言ったんだもの。あなたに死なれては困るわ」

 

 

一旦、さっきの違和感を頭の隅に追いやり、私は訊ねる。力のないあなたがどうするつもりなのかと。そんな私の問いに、彼女は答える。

 

 

 

「…………問題ないわ。何故か行ける気がするから」

 

 

 

そう言う彼女の掌の中には光球が浮かんでいた。

『タブー』が使う『紅い光球』が。

 

 

ーーーーーーーー




園咲冴子
……夫殺し・殺人犯との恋・命の恩人への反逆
  彼女は禁忌ーー『タブー』を侵す傾向にある。

ヒロインだと思うのは……?

  • 雪南!
  • アンナ!
  • その他
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