『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
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『エターナル』
「……変身」
変身する。いつもよりも身体に纏わり付く炎の温度が高い気がする。変身後、違和感を感じ、自分の腕を見ると、両腕に刻まれていた炎の色が赤から黄色に変わっていた。
『これは……?』
『遠治くんっ!』
『邪魔するなぁぁ』
ーーブンッーー
内から聞こえたアンナの声で我に返り、顔を上げるとすでに目の前には『巨大肉だるま野郎』の腕があった。『ディガルコーポレーション』での戦闘ではこの一撃でやられた。だけど、
『…………来いよ』
『ふぅぅぅぅぅぅんっ』
ーードゴッーー
ーーガシッーー
『なにぃぃ……!』
あの時とは違う。奴の全力の拳を、俺は右腕1本で止めることができていた。奴の攻撃が、軽い? さらに、
ーーボッーー
腕から黄色い炎が吹き出る。黄炎は『巨大肉だるま野郎』の腕を燃やす。
『おぉぉぉ!? あつい、あついぃ……』
肉が剥き出しだから、その分熱に弱いのだろう。ならば、ここは好機。一瞬で決める。右手で奴の拳を掴んだまま、メモリをベルトの右スロットへ装填する。
『エターナル マキシマムドライブ』
機械音とともに、熱は俺の左腕に集まっていく。その熱が最高潮に達した瞬間、奴を掴んでいた腕で、そのまま奴を引き寄せて、左の炎を奴の腹に叩き込んだ。
ーーボボボボボッーー
『ご、が…………っ』
腹から胸や腰に、そして、全身に回った黄色い炎は奴をよろめかせ、膝をつかせる。
『ふ、ふぅぅ……『0758』、お前が働いて、いればぁ……』
「っ」
『おい、『肉だるま』』
ひん剥いた眼球で椎ちゃんを威圧する『巨大肉だるま野郎』。俺はその間に踏み入り、告げる。
『人の幸せを、『平穏』を邪魔すんじゃねぇよ』
『エターナル マキシマムドライブ』
ーーバギィィィィィーー
黄炎を帯びた回し蹴りが奴の腹にぶち当たり、奴は遥か彼方に吹き飛び、爆散した。
~~~~side?~~~~
「大丈夫ですか」
「あ……あぁ……死ぬかと思ったなぁ……」
「流石の丈夫さですわね。しかし、まさか『アップグレード』したメモリを『ブルーフレア』にも至っていない『エターナル』で倒すとは思いませんでした」
「あー、すまねぇ……『強化アダプター』も『ラビリンス』も壊されちまったぁ……」
「構いません。貴方が生きていることの方が大切ですからね」
「…………それで『そっちも』取り入れたのかぁ……?」
「えぇ、わたくしも手筈通りに。それに、井坂先生は思った通り……いえ、思った以上に素敵な殿方でしたわ♡」
「そうかぁ……なら、よかったぁ……」
「今、迎えを呼びます。少しお待ちになってください」
「あぁ……ちょっとねむる……」
「えぇ、お休みなさいませ」
「…………さて、少々、認識を改めなくてはいけませんわね」
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後日談。
『巨大肉だるま野郎』を撃破した俺は、その後またも気を失ったようだった。後でアンナから聞いた話によると、俺が『マキシマムドライブ』を発動したことで、アンナが俺の中から抜けてしまい、重傷の俺は再び意識を失ったらしい。
島からは椎ちゃんが外部との連絡ができる部屋に、社長さんを連れていき、『ディガルコーポレーション』の人間が島まで迎えに来たらしい。その迎えの船に、俺と椎ちゃんも乗せ、風都に戻ることができた、と。
ちなみに、椎ちゃんが持っていた『イマジナリー』のメモリはアンナが回収、保管しているそうだ。毒素はまだ残ってるだろうが、『シュラウド』にその辺はどうにか頼んでみるとのこと。
そんなわけで、存在しない島での一件は無事に終息したのであった。
そんでその数日後、俺が目を覚ました後の話。
ーーーー風森ハイム201号室ーーーー
「はい、お兄さん♡ あーん♡」
「あーん」
ベットから身体を起こした俺に、彼女ーー椎ちゃんがお粥を口に運んでくれる。まだ身体が上手く動かせないのもあって、俺は素直にそれを受け入れる。
「で、兄さん。この人はなんなんですか」
非常に、過去最高に不機嫌そうな表情で、雪南がそう聞いてきた。
「だから、椎ちゃんだって」
「はいはい! 椎でーす!」
「アンナから聞いてるだろ? 『財団X』の実験施設に囚われてた子だってさ」
「えーん、お兄さんっ、怖かったよぉぉ」
「あー、よしよし」
ーーなでなでーー
「そういうことじゃねぇんですよッ!!」
大きな声を出す雪南。なんだ、アンナの説明が不十分だったのか? そう訊ねると、義妹様はニコニコ笑顔で返してくる。
「だから、なんでわたしたちの家にこの人がいるのかって聞いてるんですが? 兄さん、文脈も読めないんですか、本当にバカなんですか?」
「あー、だから、椎ちゃん、帰る家がないらしいんだよ」
「だからって……アンナさんとか『シュラウド』に預かってもらえばよかったのでは」
「まぁ、俺もそうは言ったんだが……」
「ヤ、ボクはお兄さんと一緒にいたいから!」
「ということらしく……」
「~~~~っ 」
「そんなわけで少しの間、家で椎ちゃん預かることになり……ましたので、あのー、雪南さん、よろしいですか……?」
過去最高にぶちギレスマイルの義妹様の機嫌を損ねないように、ていねいに訊ねる俺。そんな俺に義妹様は答える。
「勝手にどうぞ、捕まれ未成年者誘拐犯」
「ちょっ!? 止めて、そのやべぇ呼称!?」
こうして、我が家にもう1人同居人が増えた。また『平穏』とは遠い生活が始まりそうな予感が、そりゃあもうすごくしていた。
ーーーー深夜・園咲邸ーーーー
「…………冴子? こんな時間にどうしたんだ?」
時間は日付を回った頃、部屋でなにやらスーツケースを開けている妻・冴子の姿を確認した霧彦はそう訊ねた。ここ数日、どこかに姿を消していた彼女が、またどこかへ行こうとしている様子に不信感を覚える霧彦。
「あぁ、霧彦さん。私、ここを出るわ」
彼の内心も知らない冴子はそう言った。
「は? いきなり何を言っているんだ」
いきなりのことで混乱する霧彦。彼の様子には構わずに、冴子は続ける。
「あなたはここにいてくれていいとお父様には話はつけてあるから」
「ま、待ってくれ、話が見えないっ!」
ーーバタンーー
「……よし」
彼女はそこで準備を終えたようで、スーツケースを閉めて立ち上がった。
「それじゃ」
「さ、冴子っ!?」
自分を制止する夫の声も聞こえないフリをして、彼女は部屋を出た。その手には、どこかのアパートのカギが握られていた。
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ヒロインだと思うのは……?
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雪南!
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アンナ!
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その他