『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
ーーーー風森ハイム201号室ーーーー
島での事件から1週間が経過した。
この1週間でアパートの権利を買い取ったり、雪南が椎ちゃんを強制的に家の隣の部屋に引っ越しさせようとしたりと、色々なことがあったが、それでも比較的『平穏』に過ごしていた。
『ガイアメモリ』と関わらないだけで、こんなにも心穏やかなのかとしみじみ思う。『平穏』な日々、万歳!
ーーピンポーンーー
「はいはーい」
小さな幸せを噛みしめる昼下がり、玄関のチャイムが鳴った。完全に緩みきっていた俺は、インターフォンも見ずに、玄関に向かい、扉を開けた。そこにいたのは、
「風都署のものですがー」
警察手帳を出した中年男性であった。スーツ姿ではあるが、なぜか肩のツボを押すアレを持っている。変な人だなぁと思いながらも俺はその人に対応することにする。
「えーと、警察がなんの用ですか? 何か事件とか事故でもありました?」
まぁ、俺別に悪いことしているわけでもないしなぁ。そう思って、訊ねると、彼は言う。
「いえね、ここ最近、未成年らしき女の子がこの部屋に出入りしているようだとタレコミがありまして。少し中を見させていただけませんかね」
「!?!?!?」
なんてこったい!? それはまずいですよ!?
「い、いやぁ、気のせいじゃないですかねぇ」
「…………」
「ほら、うち、義妹がおりまして、それを見間違えたんじゃないですかねぇ?」
「…………」
「お兄さーん! ボディソープとってぇ! そのままボクといっしょにお風呂入っちゃう~?♡」
「…………」
「…………」
ーーガシャリーー
こうして俺は逮捕された。
~~~~~~~~
「すみません。うちの愚兄が」
逮捕から1時間後、俺は無事に釈放された。風都署へと連行された俺を迎えに来た雪南が、署の入口で、刃野という刑事に深々と頭を下げていた。
「いやぁ、こちらこそすみません。まさか従妹さんだったとは」
「はい。その従妹もだいぶ拗らせてまして、こちらでしっかり教育しておきますので」
「…………」
そんなこんなで帰り道、俺はうだうだと雪南に文句を言われながら帰ることになった。毒を吐かれ続けた俺は、怒りの矛先を変えるために、さっき刃野刑事から聞いた話題にすり替えることにした。
「未成年に『ガイアメモリ』が出回ってるんだってな」
「……そう仰っていましたね」
「椎ちゃんのことといい、まったく風都は物騒だなぁ」
「まぁ、未成年にメモリが出回っている件は原作にもありましたから」
「……それを日曜朝にやるって結構すげぇなぁ」
『ガイアメモリ』の説明を聞くたびに思うのは、『ガイアメモリ』はまるで『薬』みたいだと。中毒性といい、人格の変質者といい、裏で売人が高値で取引しているところもそのものだ。
「だから、単純所持でも犯罪なんですよ」
「なるほどなぁ」
『仮面ライダー』や『シュラウド』、アンナや椎ちゃんが持っているのも含めてそうなら、だいぶ危ない立場にある。もちろん俺も。
「……兄さん、ところでアンナさんは?」
「ん? あぁ、夕方まで用事があるって言ってたよ」
「それで夕方に集合となったんですね」
「ん? なに、雪南、今日アンナに会うのか?」
「はい。未成年にメモリが出回ってる件で、ご相談をしたいと連絡したんです。原作の改編タイミングの最終ラインが近づいていそうなので」
そういや『ディガルコーポレーション』に潜入した時に言ってたな。たしか、園咲霧彦って人を味方に引き入れるとかなんとか。
「はい。それについてもなにやら問題が発生しているとアンナさんが言っていましたので」
「ふーん」
味方にできない事情ができたとかそんなところでしょうか。そう言って、雪南は首をひねる。なんだろうな、大変だなぁ。
そんなやり取りをしながら我が家へ帰ってこれた。よかった、よかったと胸を撫で下ろしていると、何やらアパートの駐車場に引っ越し業者のトラック2台が停っているのに気づく。
「引っ越しですかね」
「あー、なんか前の大家さんからそんな話を聞いたような気が……」
権利を買い取ってからまだ1週間だから、その辺のことはまだうろ覚えだ。でも、新大家としては引っ越して、これから同じアパートの住人になる人には挨拶をしなくてはならないだろう。
雪南には部屋に戻るように告げて、俺は引っ越し業者が出入りしている202号室へと向かった。
「ありがとうございましたー」
「おつかれさーん」
ちょうど荷物を搬入し終わったようで、業者の男性2人とすれ違った。一言労いの言葉をかけ、早速202号室のチャイムを鳴らした。少しして、202号室の扉が開く。そこには
「やぁやぁ、遠治くん! この間ぶりだね」
「お前……アンナ!?」
アンナの姿があった。いつものスーツ姿ではなく、Tシャツにショートパンツという、健全な男の子にとっては非常に刺激の強い格好である。エッッッッッ!?!?
「な、なんでここにいるんだよ」
思いもよらない人物が引っ越してきて、なによりちょっとムズムズする姿で現れたもんだから、少々ぶっきらぼうにそう訊ねると、彼女は引っ越してきたんだよとあっけらかんとして答えてくる。
いや、違う違う! そう言う意味じゃねぇんだよ。そう言うと、彼女は少しイタズラっぽい笑みを浮かべて言う。
「少しでも君の近くにいたくて、ね?♡」
「っ」
冗談だと分かってはいても少しドキッとはしてしまう。一緒に戦ったりしてたから忘れてたが、こいつ、美人なんだって。しかも、なんだったら俺の好みドストライクの。格好もえろいし!!
くそぅ、向こうのペースにハマるな、俺。冷静に、クールになれ。今こそ平常心だ。そう思い直した俺は、ひとつ咳払いをして、アンナの言葉を一蹴する。
「はいはい。冗談はいいって」
「フフッ、それは残念」
「で、本当はなんだよ?」
「『シュラウド』から君のこと、というより『転生者』を注意深く見ておくように言われてね。ちょうど君がこのアパートの権利を買い取るって話を雪南くんから聞いたから、ここに越してきたって訳さ」
なんという行動力の女だ……。
「そんな訳でよろしく、大家さん」
「oh」
またひとつ『平穏』から遠ざかる要素が俺の身近に現れてしまったことに、俺は頭を抱えた。
「あぁ、そういえば下の階に挨拶に行ったのだけれど、どうやら留守みたいでね。下の階の方は何時ぐらいに戻ってくるか知らないかな」
「は? 下の階?」
このアパート、少し前に俺たち以外の入居者が全員退去してしまったようで、この部屋は勿論、下の階にも誰もいないはずなんだが。疑問に思いながらも、俺はアンナと一緒に下の階、101号室へと赴く。
「ふむ?」
確かに入居者がいない時に貼る投函禁止のシールが剥がされていた。前の大家さんが貼り忘れた、訳ではないはずだ。新大家としては、住人のことは把握しておかなければならないだろう。俺は101号室のチャイムを鳴らした。
「…………」
「…………」
「ほら、留守だろう?」
「みたいだなぁ」
表札には名前は入ってないし、越してきたばかりなのかポストにも何も投函されていない。ここの住人が何者なのか知る術はない。
「まぁ、契約したとしたら前の大家さんの時だろうし、そっちに聞いてみるのも手ではあるが」
「いや、そこまではいいよ。時間を置いて、もう一度挨拶に来るとしよう」
とりあえずここの住人のことは棚上げにする。アンナは雪南とこの後、会う用事があるって言っていたし、とりあえずアンナを部屋にでもあげるとするか。そんなことを考えていたその時である。
「あら、あなた」
後ろから声がした。声のした方を見ると、そこには、
「し、社長さん!?」
「ひ、ひさしぶりね」
『ディガルコーポレーション』の女社長・園咲冴子の姿があった。黒いロングスカートとシンプルな白のスキッパーブラウス。他の女性も普通に着るような服装だったが、彼女自身の色気のせいか妙に艶やかにも見える。
「あ、あー……その後、大丈夫か? ほら、事件に巻き込まれたわけだし」
「……えぇ。あの程度でどうこうなるほどやわじゃないわ」
「そうか。なら、よかった」
「えぇ」
「………………」
「………………」
思いもよらない出会いパート2で、当たり障りのない会話をする俺と社長さん。少しの沈黙のあと、彼女は衝撃的なことを口にした。
「そろそろ退いてくれる?」
「え?」
「そこ……101号室、私の部屋なのだけれど」
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4部屋中3部屋が『ガイアメモリ』の関係者。
今ならまだ1室空室があります。
おいでませ、風森ハイム。
さよなら、俺の『平穏』。
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現段階でのヒロイン、遠治くんとくっついてほしいのは?
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雪南
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アンナ
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椎
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冴子お姉様
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その他
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全員に決まってるだろ!! 全員いけ!!!