『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第21話 昼下がりのN / 人を見る目だけは確かなんだよ

ーーーー風森ハイム201号室ーーーー

 

 

「俺はやらないぞ」

 

 

俺は雪南とアンナの言葉に首を振った。というのも、

 

 

「いい加減にしてください。兄さんは『仮面ライダー』でしょう?」

 

「そうだね。せっかくひとつ上のレベルにまで至ったんだろう? ぜひ活躍してくれたまえよ」

 

「いいや、何度も言うが、俺はただ『平穏』に生きたいだけだ。そのために、俺やお前たちにふりかかる火の粉は払うさ。けど、わざわざ面倒事に顔を突っ込むのはなしだ!」

 

 

前回、『ディガルコーポレーション』の時もこの2人に半ば騙される形で同行させられ、半強制的に戦わされたのだ。しかも、アパートの4部屋中3部屋が『ガイアメモリ』の関係者ときている。75%だぞ!? 異常だからね!?

 

 

「でも、結果的に美人な女社長とお近づきになれただろう?」

 

「…………まぁ、それはそれ。これはこれだな」

 

「相手は人妻ですよ、兄さん。不倫も浮気も死刑ですよ」

 

「しないわい!!」

 

 

アンナの言うように確かにお近づき(物理的距離)にはなれたから、損ばかりというわけでもない。美人は好き。こればっかりはしゃーない。

でも、それはそれである。『ガイアメモリ』に絡む事件は『ドーパント』という化物がいる以上、ほぼ確実に死に直結する。『コックローチ』や『ラビリンス』、椎ちゃんが使っていた『イマジナリー』もそうだ。実際死にかけた。『平穏』とは程遠い。だから、巻き込まれた時はともかく自分から行くなんてことは決してしない。そう誓ったのだ。

 

 

「はぁぁぁ、単身、強くなるために島に渡った時の兄さんはどこに行ったんでしょうかね。妹にも告げず、命がけで椎さんを守ろうと死にかけて帰ってきたというのに……」

 

「いや、その……それは悪かったって」

 

「……それに関しては私も何も言えないな」

 

 

雪南の皮肉には流石になんとも言えず目を反らすアンナと俺。そんな重い俺の心中を知ってか知らずか、キッチンからパタパタと迫る影。影はそのまま俺のところへ駆け寄って、

 

 

「おにーーーさんっ♡」

 

 

どーんと言いながら体当たりをしてきた。

 

 

「っと、椎ちゃん?」

 

「ほらほら! クッキー作ってみたんだよ! 『普通』の女の子は好きな男の人にお菓子作るんでしょ! ほら、食べて食べて! あーん!」

 

「あーん…………うん、おいしい」

 

「えへへ♡」

 

「椎ちゃんはいい子だねぇ」

ーーなでなでーー

 

「なでなで、すき~♡」

 

 

「…………」

「…………」

 

「はっ!?」

 

 

ふと我に返る。いかんいかん。

 

 

「椎ちゃん、今、俺たち大事な話をしててだな」

 

「ん? そーなの?」

 

「あぁ、この問答で俺が『平穏』な生活を送れるかどうかがかかってるんだ」

 

「そーなんだ!? お兄さん、ボクは『平穏』な生活送れることを応援してるからね! いつでも力になるからね!」

 

「椎ちゃんっ! そう言ってくれるのは君だけだよっ!!」

ーーなでなでなでなでなでなでなでなでーー

 

「えへへぇ♡」

 

 

まったくいい子である。少し依存気味というか、俺に対してイエスマンになりつつある椎ちゃんではあるが、まぁ、好かれる分には嫌な気はしない。それに曲がらず育っているのでよしとする。

 

 

「さて、アンナさん、とりあえず調査結果は?」

 

「それはまだなんとも。君から例のことを聞いてから調査はしているよ。継続中とだけ」

 

「そうですか。それではわたしと兄さんも調査開始しますね」

 

「そうだね。確か原作ではゴリラのオブジェのある公園に、彼女たちはいたと思うが」

 

「記憶が正しければそうですね。それじゃあすぐに向かいましょうか。アンナさんは兄さんの右耳を、わたしは左耳を持って行きましょうか。最悪引きちぎっても構いませんよ」

 

「あぁ、それもやむなしと言いたいところだが、私はもう少し彼女に張り付く。そちらは頼むよ」

 

「分かりました」

 

 

あれれぇ? なんかこの義妹と美人、俺への当たり強くない?

 

 

ーーーーーーーー

 

 

ゴリラ公園。2人がそう言っていたのを聞いて、首をひねっていたが、確かにその通りで、公園の中心にある時計を曲げているゴリラ像があり、それを指してゴリラ公園。風都市民もそう呼んでいるらしく、公園の正式名称が分からなくても、人に聞けばすぐにたどり着くことができた。

 

 

「……そんで、そろそろ離してくれません?」

 

 

俺の右腕をガッチリと掴んで離さない雪南にそう言う。目的地に着いたんだからもういいだろと。

 

 

「駄目です。離したらすぐに兄さんは逃げるでしょう」

 

「ソ、ソンナコトナイヨ!」

 

 

くそぅ、流石は我が義妹。俺の行動を読んでやがる。

 

 

「こちらも組みたくもない兄さんの腕を組んでいるんですから、兄さんも我慢してください。むしろわたしのような美少女の体に合法的に触れられるんですから感謝してほしいくらいですね」

 

「…………いや、別に。雪南、胸あんまりないし……」

 

「あ"あ"?」

 

「すんません」

 

 

流石に失言であった。

 

 

「…………椎さんは離してもらって大丈夫ですよ」

 

「ボクは好きでこうしてるからおかまいなくー」

 

「…………」

 

左腕を掴む椎ちゃんは雪南にそう返す。今の雪南さんにそう返せるのは、中々の強者である。というか、天然なのかな。

 

 

「それで義妹さんはなんでここにきたのー?」

 

「……雪南でいいですよ、椎さん。というか義妹さんとか呼ばれる筋合いないですし」

 

「? えっと、じゃあ、雪南さん!」

 

「……はぁぁぁ。実は『ガイアメモリ』が中学生に出回ってるって話があったんです。それの解決……ではありませんが、それを流している人が誰かを探りに来たんです」

 

 

椎ちゃんに悪意がないことは分かっているようで、雪南はやれやれといった風にそう伝えた。原作と同じなら分かり切っているんですが、少々展開が変わってきているようで、どう探ったものかと。雪南がそう続けた言葉は、椎ちゃんには届いていなかった。なぜなら、

 

 

「ねぇねぇ、君たち! 『ガイアメモリ』って知ってる?」

 

「ちょっ!?」

 

 

気づけば椎ちゃんは公園にいた中学生に話しかけており、しかも、それを止めるのに雪南も飛び出してしまった。流石に子供の中に成人男性が入るのも躊躇ったので、俺は物陰からの観察に徹することにし、聞き耳を立てる。

 

 

「ん? なんだよ、お前ら」

 

 

リーダーっぽい男の子が眉をひそめて2人を見る。その視線に臆さず、椎ちゃんはガンガン突っ込む。

 

 

「いやさー! 超人になれるっていうから、ボクたちもなってみたいなぁって! ね、雪南ちゃん!」

 

「は、はい」

 

「ふーん。お前らどこ中?」

 

「中ぅ!? 失礼ですね、わたしは歴としたーー」

「まぁまぁ、そんなのどこだっていいじゃん!」

 

 

中学生に中学生扱いされ、ぶちギレかける雪南を上手くおさめ、椎ちゃんが会話を進めてくれている。彼女持ち前のあのフレンドリーさはこういうことに関しては向いているんだろうな。うちで一緒に住み始めた頃よりずっと明るくなってくれてなによりだ。

 

 

「端から見たら『普通』の娘だよ、よかったなぁ……」

 

 

思わず涙が出そうになるが、今は我慢だ。話の続きを……。

 

 

「……おい、茜! 見せてもいいよな!」

 

「う、うん」

 

 

茜、と呼ばれた娘に確認をとった男の子はポケットから何かを取り出した。間違いない。あれは『ガイアメモリ』だ。

 

 

「これを使えば俺達は超人になれるんだよ」

 

 

まるで宝物でも見せびらかすように、男の子は赤紫色のメモリを掲げた。その腕を、

 

 

「おっと、子供がこんなもの持ってんじゃねぇよ」

 

 

掴む男。彼は以前、俺と雪南が依頼したこともある探偵の左翔太郎さんであった。傍らには所長の鳴海亜樹子さんもいる。

 

 

「なんだよ、おじさんっ」

 

「これは子供には、いや、誰にとっても毒にしかならねぇ代物だ! 大人しくこれを渡してーー」

 

「っ、有一! パス!」

ーーパッーー

 

 

男の子は離れたところにいた眼鏡男子へとメモリを渡した。彼はそのまま左手首にメモリを突き刺して、メモリ名と同じ『バード』の『ドーパント』へと変貌を遂げた。

雪南と椎ちゃんをこの場から離れさせなくては。そう思って、一歩踏み出したその瞬間、左さんが懐から何かを取り出した。あれは!?

 

 

「……ったく、お仕置きが必要だな」

ーーカシャッーー

 

『ジョーカー』

 

 

「『ロストドライバー』!?」

 

 

いや、少し違う。俺の持つ『ロストドライバー』はメモリひとつだけしか入らない。それに対して、左さんが装着した『それ』はメモリを入れる場所が2ヶ所ある。そんな観察をしていると、いきなりその『ドライバー』にもう1本、緑色のメモリがどこからともなく現れて。

 

 

『サイクロン』『ジョーカー』

 

 

左さんは右半身が緑色、左半身が黒色の『仮面ライダーW』に変身した。

おいおい、あの人が『W』だったのかよ!?

なるほど、得心がいった。転生当初、雪南が猛プッシュして鳴海探偵事務所に行ったのはそういう理由か。

……って、納得してる場合じゃないな。

 

 

「雪南! 椎ちゃん!」

 

「「!」」

 

 

『仮面ライダー』と『バード』の戦闘が始まったのを確認して、俺は2人を呼び戻す。今なら逃げ出せそうだったからな。2人も危険を察知したのか、素直に俺の方へと戻ってきてくれた。

 

 

「大丈夫か、2人とも」

 

「うん!」

「はい」

 

「怖かったよぉ、お兄さんっ」

 

「おぉ、よしよし」

 

 

飛びついてくる椎ちゃんの頭を撫でながら、ほっと胸を撫で下ろす。とりあえずひと安心だ。まぁ、雪南はこの展開を分かっていたようで、左さんが来た瞬間に、椎ちゃんをその場から遠ざけていたからあまり心配はしてなかったけどな。

 

 

「で、収穫はあったのか?」

 

「いえ、残念ながら」

 

 

雪南の言っていた彼らにメモリを渡した人物は、聞き出せなかったらしい。

 

 

「この後、彼らは翔太郎さんに捕まって、警察で事情を聞かれることになると思います。残念ですが、彼らから直接聞き出せるタイミングはありません」

 

「あー、仕方ねぇだろ。ともかく『仮面ライダー』が来てくれたんだ。こんな危ない事件とは早々におさらばしようぜ」

 

「…………そうですね。こちらはそうするしかありません」

 

「うんうん、そうだろうそうだろう…………ん?」

 

 

こちらは? なんだろう、その言い方だとまだ手があるようにも聞こえるのだが?

そう聞くと、雪南はそれを肯定し、続ける。

 

 

「アンナさんが動いてますからね」

 

「えぇぇ……行動力の女ァ……」

 

 

雪南とアンナ。本当にこの2人が組むと厄介なことこの上ないぜ。

……まぁ、百歩譲って、アンナの方からこちらに火の粉がふりかかることはないだろうからいいけどさ。

 

 

「それで? アンナは今、何をしてるんだよ」

 

「はい。園咲冴子を尾行・監視しています」

 

「え、なんで……?」

 

 

いきなり出てきた社長さんの名前に、俺は困惑する。だが、思い出せば『ディガルコーポレーション』に潜入した時も、社長さんに会うとかいう名目で連れ出されたもんな。その名前が出ること自体は不思議ではないのか。そんな風に思い返しながらも、俺はなぜ彼女なのかと訊ねた。

彼女が『ガイアメモリ』の元締・園咲家の人間であることも、『ディガルコーポレーション』の社長であることも分かっている。だが、彼女自身と何回か会い、話してみて、そこまで悪い人間なのかと思う節があったのだ。勿論、気は強いし、プライドも高い女性ではある。

だが、もしかしたら今の地位にいるのも、あの父親・園咲琉兵衛のせいではないかとも思っていた。強大な父親の陰に怯えている、だから、あの刺々しい言動になってしまったのではないだろうか?

……うん、きっとそうだ。自慢じゃないが、俺は人を見る目はあるからな!

 

そんな風に自己解決する俺。すると、雪南から返ってきた答えはあまりにも、

 

 

「原作では、あの中学生たちにメモリを渡していたのって彼女ーー園咲冴子なんですよ」

 

「………………まじ?」

 

「はい、大マジです」

 

 

…………そういえば、俺、前世で『あの女』に裏切られてるじゃん。

俺、女を見る目、ないかもしれないですぅ……。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

風森ハイムの近くのスーパーからの帰り道にて、園咲冴子は歩みを止めた。それは決して買い忘れに気づいたからなどではなく、自分の後をつけてくる気配に気がついたからだった。

 

 

「……姿を見せなさい」

 

 

物陰から出てきたのは、1人の男性だった。それは冴子もよく知る人物で、

 

 

「冴子」

 

「霧彦さん……なんのつもり?」

 

「っ、何のつもりだって!? それはこちらの台詞だ! 会社にも顔を見せないで、理由も告げずに園咲の屋敷を出て! お義父さんや若菜ちゃんも寂しがっているよ」

 

「…………フッ」

 

 

霧彦の必死そうな声を聞き、彼女は笑った。

 

 

「お父様や若菜が寂しがっている? 冗談でしょう。若菜は嫌いな姉がいなくなってせいぜいしているでしょう」

 

「そんなことはないっ」

 

「それにお父様は寂しがっているのではなく……怒っているのではなくて?」

 

「っ」

 

「……図星ね」

 

 

霧彦の反応を見て、冴子は自嘲気味に笑う。

 

 

「父は私を娘としては見ていないわ。『ガイアメモリ』を流通させるための道具……その程度の感情しかないでしょうね」

 

 

本当に愛しているのは私ではなく……。

小声でポツリと漏らしたその声を聞き、霧彦は止まってしまう。彼に彼女の言葉を否定する材料はなかった。

 

 

「っ、冴子……」

 

「私、したいことが見つかったのかもしれないのよ。だから、今はあの家から少しだけ離れたい」

 

「…………っ」

 

「消えて、霧彦さん」

 

「私は!」

 

「…………ごめんなさい、貴方には悪いことをしたわ」

 

「っ」

 

 

園咲冴子が謝った。

その事実は霧彦の足を止めるのに、十分な出来事であった。彼女の中で、何かが変わってきているのを、彼も感じざるをえなかった。

 

 

ーーーーーーーー

現段階でのヒロイン、遠治くんとくっついてほしいのは?

  • 雪南
  • アンナ
  • 冴子お姉様
  • その他
  • 全員に決まってるだろ!! 全員いけ!!!
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