『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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『I』編スタート!
有能絵師はどこだぁぁぁぁ!!


第23話 Iは止まれない / その人との距離

ーーーー風森ハイム201号室ーーーー

 

 

「連続凍結事件ねぇ」

 

 

テレビを見ながら、俺はポツリと呟く。風都で人が次々に凍っているらしい。前世の俺だったら、なんじゃそりゃな話だが、ここは風都。『ガイアメモリ』の蔓延る街である。この事件も十中八九『ドーパント』によるものだろう。

 

 

「あー、ヤダヤダ」

 

「ビルが溶け、人が死ぬ。この街ではよくあることですからね」

 

 

そう言って、雪南が麦茶を運んできた。その後ろには椎ちゃんもいる。アイスを食べておる。

 

 

「ふぉうひたふぉ、ふぉひぃふぁん」

 

「んん?」

 

「椎さん、食べるか喋るかどちらかにしてください」

 

「っと、どーしたの、お兄さんって言ったんだ」

 

「あぁ……これだよ、これ」

 

 

そう言って、テレビの画面を指差した。ワイドショーでは件の連続凍結事件の被害者を報道していた。

 

 

「何が悲しゅうてこんな事件を起こすかねぇ。『平穏』が一番だぜ」

 

「そうだねぇ」

 

「はぁ、またそれですか」

 

 

同意してくれる椎ちゃんと呆れる雪南。もう慣れたもんである。

って、そうだ。

 

 

「解決しに行きましょうとか言うなよ?」

 

「言いません。わたしがなんでもかんでも関わろうとすると思ったら大間違いです」

 

「そなの?」

 

「はい。いいですか、兄さん。この事件を境に、とある男性の運命が変わっていくんです。しかも、原作上必ず変身してほしい人が!」

 

 

変身……? 今、変身って言ったか?

何かの言い違いかと思い、確認すると、雪南の表情が変わる。このドヤ顔……これはまたもスイッチを入れちまったか。

 

 

「そうです! この連続凍結事件が起こったことで、この風都署に赴任してくる人、彼こそがーー」

 

「……椎ちゃん、雪南を頼むわ」

 

「え?」

 

「昼飯と晩飯の買い物をしてくる! んじゃ!」

 

 

椎ちゃんにスイッチの入った雪南を任せて、俺は部屋を出た。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「あら?」

 

「お?」

 

 

階段を降りたところで、同じくたった今、アパートから出てきた社長さんに出くわした。

 

 

「社長さんも買い物か?」

 

「え、えぇ……」

 

「俺もちょうど買い出し行くところだったんだよ。ここの近くだと交差点を曲がったとこのだろ? なら、一緒に行こうぜ」

 

 

大家としてはアパートの住人とはそれなりに良好な関係を築いておきたい。『ガイアメモリ』の関係者ならば尚更。印象はよくして、こちらに被害を被らないようにするべきだろう。そんなわけで同行の提案をしてみた。却下されるかとも思ったが、

 

 

「……構わないわ」

 

 

そんな風に受け入れてくれた社長さん。

顔を背けてはいるが、彼女も少しはこちらに歩み寄ってくれているんだなと思い、ほっこりする。いいな、こういう普通のご近所付き合い。

そうして、俺は社長さんと並んで歩き出した。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

まずい。会話がない。えぇと、なにか話題を振らなくては……はっ!? そこで俺は気づいてしまう。

思えば、俺の周りの女たちは

①雪南……勝手に向こうが話す。毒も吐く。そもそも義妹。

②アンナ……勝手にペラペラ喋る。まぁ、美人ではあるが。

③椎ちゃん……すんごい喋る。ボディランゲージがすごい。

というわけで、俺から話さなくてもよかった。だが、彼女は違うのか!? くそっ、このままだと「この男一緒にいてもつまらない」となりかねない。大家として、いや、1人の男としてそれはなんか嫌!

 

 

「あの……」

 

「ん?」

 

「ご趣味は?」

 

「は?」

 

 

しまった。なんかお見合いみたいになった!?

 

 

「悪い、忘れてくれ」

 

「?」

 

「じゃなくてだな。そういや、社長さんがうちに越してきた理由聞いてなかったなぁ、と」

 

「…………あぁ」

 

 

合点がいったようで、彼女は少し考えてから、俺の質問に答えてくれた。

 

 

「秘密」

 

 

そう言って、指を唇に当て薄く笑う社長さん。答えになってはいないが、その妙な色気に気圧されてしまい、俺はそれ以上聞くことができなかった。すげぇや、人妻。

 

 

~~~~~~~~

 

 

少々ドギマギしながらも、スーパーで社長さんと一緒に買い物をした俺。会計をしようと、レジ待ちをしていると、俺の2つ前の客がその前の客となにやら揉めているようであった。

絡まれているのはベビーカーを押し、もうひとり子供を連れた母親。それに絡んでいるのは、若い男だった。

 

 

「おい、どうしてくれんだよっ」

 

「す、すみませんっ」

 

「あんたがちゃんと子供見てないせいで、俺の服が汚れたんだけど!」

 

 

どうやら子供が哺乳瓶の中身をぶつかったか何かで、あの男の服にかけてしまったようだった。それを必死に母親は謝っている。店員がどうにか仲裁をしているかと思ったが、どうやらレジ打ちの子は高校生バイトのようで、アタフタとしている。周りも男の剣幕に怯んでしまって、割って入れそうにない。

…………はぁ、仕方ねぇ。

 

 

「おい、おまーー

 

 

「不愉快ね」

 

 

男に声をかけようとしたところで、スーパーに凛とした声が響く。その主は勿論、社長さんであった。眉間にシワを寄せ、目を吊り上げて、男に対して言い放った。

 

 

「は? なんだよ、あんたに関係ないだろっ」

 

「関係? 貴方のせいでレジがまったく進まないのよ。関係大アリでしょう」

 

「チッ、俺はこの子供の教育が出来てないことを指摘してやってるだけだ! 悪いのは俺じゃない!」

 

「……はぁ、その理論で言えば、貴方の方がよっぽどよ。公衆の面前でヒステリックに大声を張り上げて、自分よりも弱い立場の子供とその親を責める。教育が出来てないのは貴方の方でなくて?」

 

「~~~~っ」

 

 

「そっちこそ親の顔が見てみたいわ」

 

 

誰が見ても分かる。レスバは社長さんの完全勝利で、男は顔を真っ赤にしながらその場から逃げるように、走り去っていった。その後、見ていた全員から盛大な拍手を送られたことは言うまでもないだろう。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「すげぇな、社長さん」

 

「はっ!?/// なによ、いきなりっ///」

 

 

スーパーを出て、俺は素直な気持ちを口にした。流石の社長さんも少し照れているのか顔が赤いように見える。そんな彼女に構わず、俺は続ける。

 

 

「いや、あの状況だったら、普通あんな風に言えねぇよ。日本人特有だけど、誰かが言ってくれるだろうとか、自分に火の粉が振りかかったら嫌だとか、とにかくあんな風に堂々とは言えねぇなって」

 

「……べ、別に。単純に私が不快だっただけよ」

 

「いやいや、それでもだよ。俺も少し様子見ちまったしな。だから、素直にかっこいいと思ったよ」

 

「~~~~っ///」

 

「って、社長さん?」

 

 

気づいたら顔を伏せていた社長さん。

なんだ? なんか地雷でも踏んだか? そう思って、顔を覗き込もうとしてーー

 

 

 

『おいッ!! そこの女!』

 

 

 

止まる。こちらにかけられたエコーのかかったような声に、悪い予感がして、俺はその声の方を向いた。残念ながら俺の予感は的中した。そこにいたのは白いハリネズミみたいな『ドーパント』であった。

 

 

「『ドーパント』……!」

 

『……お前だよ、お前! そこの気の強そうな女ァ!』

 

 

そう言って、『ドーパント』は社長さんを指差した。そして、彼女に対して、

 

 

『自分の砕ける音を聞きな』

 

 

そんなことを言ってくる。狙いは社長さんか!?

 

 

「社長さん! 逃げろ!」

ーーカシャッーー

 

 

そう言うと同時に、俺は『ロストドライバー』を装着して、

 

 

『エターナル』

 

「変身……おらぁっ!!』

ーーバキッーー

 

 

『エターナル』へと変身した。そして、変身してすぐにその『ドーパント』を殴り飛ばす。

 

 

『正当防衛だからな?』

 

 

襲ってきたのはそっちだと言い、俺は再び構える。そんな俺によろっと立ち上がったそいつは言う。

 

 

『ぐ、ぅぅぅ……お前も『ドーパント』だったのか!?』

 

『あぁ?』

 

 

俺が『ドーパント』?

……ってまぁ、そうか。雪南やアンナが当たり前のように『仮面ライダー』だと言ってくるから俺も思い込んでいたが、この街の『仮面ライダー』といえば『W』なのだから、知られてない俺が『ドーパント』と思われるのも無理はない。

 

 

『ま、俺はどっちでもいいけどな』

 

『くそっ! なら!』

ーーシュゥゥゥゥゥッーー

 

『!?』

 

 

不意に『白ハリネズミ』がこちらに向けて白いガスを出してきた。いや、これはガスじゃなくて冷気か! そう気づいた時には遅く、冷気をもろに受けた両腕が凍結して動かなくなってしまっていた。

 

 

『ハハハッ! ざまぁみろ!』

 

『はっ! 無駄だぜ』

ーーボッーー

 

 

氷には炎。瞬時に思い付いた俺は、両腕に炎を集めて解凍させる。氷に炎は無意味だったな! 俺は次の攻撃に転じようとして、

 

 

ーーシュゥゥゥゥゥッーー

 

『な!?』

 

 

再びその冷気を食らってしまった。さらに、追加で両足も凍らされてしまう。

 

 

『炎がどうしたっ! 俺の冷気は無限に出せるんだ! その程度の炎でどうにかできると思うな! 溶かされようとまた凍らせてやるよッ』

 

『くっ』

 

 

予想外の展開だった。まさかごり押しで凍らせてくるとは!?

『マキシマムドライブ』ならどうにかなるだろうが、両手両足が使えない今、この状況を脱する手段がない。

おいおいおいおい、こりゃ本気でまずいか……!?

 

 

『そこで見てな。お前の女の砕ける音を聞かせてやるよ』

 

『くそっ』

 

 

動けない俺の横を通り過ぎ、『白ハリネズミ』は俺の後ろにいたはずの彼女の元へ歩みを進める。まずい、社長さんはちゃんと逃げたのか!? このままだとーー

 

 

ーーバシュンッーー

 

『ぐぅぅッ!?』

 

 

俺の視界にまた『白ハリネズミ』が戻ってきた。しかも、転がりながらだ。さらに、追撃するように赤い光球が奴に襲いかかってきた。

 

 

「舐めないでもらえる」

ーーバシュンッーー

ーーバシュンッーー

 

 

さらに、2発光球を放つ社長さん。どうやら彼女もメモリを使わずとも、能力を使えるらしい。俺の『力』も形無しである。

 

 

ーーバシュンッーー

 

『うげぇぅ!?』

 

 

光球は容赦なく『白ハリネズミ』に襲いかかる。さらに、何発か光球が放たれたことで、辺りの気温が上がったのだろう。俺の腕の凍結も少し溶け、右腕がどうにか使えるようになった。俺は好機とばかりに、メモリをスロットへ。『マキシマムドライブ』の炎を身に纏い、氷をすべて溶かすことに成功した。

 

 

『っしゃ! さんきゅー、社長さん』

 

「えぇ」

 

 

俺と社長さんは揃って、『白ハリネズミ』に向き直る。

 

 

『で? 2対1だが、まだやるか?』

 

『く、くそぉっ! 覚えてろッ!!』

ーーシュゥゥゥゥゥゥゥゥッーー

 

 

捨て台詞を残し、奴は白い冷気を撒き散らしながら姿を消した。

 

 

「ふぅぅぅ……」

 

「…………」

 

 

変身を解き、ひとつ大きな息を吐いた。きっとあいつが例の連続凍結事件の犯人なんだろうな。とりあえず通報か? でも、どうやって助かったのかとか聞かれても迂闊に答えられないしなぁ。

そんなことを考えて、頭を捻っていると、

 

 

「ねぇ」

 

 

社長さんが声をかけてきた。なんだよと片手間に返すと、彼女は真剣な調子で口を開いた。

 

 

「あなた、一体何者なの?」

 

 

なんやかんやあって彼女とこうして話すことがなかったせいで、忘れていたが、椎ちゃんのいた島で彼女には俺が変身したのを見られている。勿論今もバッチリ見られている。

彼女がいわゆる敵組織の人間であることを考えると、一応『仮面ライダー』に分類されるであろう俺のことは放ってはおけないはずだ。

これは分水嶺。俺の返答次第で彼女は敵になるだろう。ならば、どう答えるべきか。色々と考えた結果、俺は

 

 

「偶然『仮面ライダー』の力を持ってしまった一般人だ」

 

 

そんな風に答えた。全部本当のことではないが、すべてが嘘でもない。そもそも『転生者』なんて言っても信じてもらえないだろうし、今、説明できる範囲はこれが精一杯だろう。

社長さんは俺の目をじっと見つめ、

 

 

「……そう」

 

 

それだけを口にした。なんか、拍子抜けな反応である。

 

 

「えっと、何かないのか?」

 

「何かって?」

 

「あー、驚くとか、警戒するとか?」

 

「別に。それに私は今、家出中の身だし」

 

 

彼女はそう言って少し笑った……って。

 

 

「え!? 社長さん、今、家出してんの!? あ、だから、うちに来たのかっ!?」

 

「あっ……いや、それはっ」

 

「なんだなんだ。そうならそう言えよ!」

 

 

雪南やアンナから色々と聞いていたせいで、警戒してた。けど、そうか。家出か!

予想よりも『普通』な答えを聞いたことで、なんだか一気に社長さんへの親近感が湧いた俺。しかし、あのいい家からの家出だもんなぁ、お嬢様がいきなりの1人暮らし。うーむ、そりゃ心細かったろう。

 

 

「よし、決めた!」

 

「え、な、なにを……」

 

 

「これから社長さんの歓迎パーティーをしよう!」

 

 

「は!?」

 

「いやぁ、大家として、あんまり社長さんにしてやれなくて申し訳なく思ってたんだよ! ほら、ちょうど色々買ったしな! 場所は狭いけどうちの部屋でいいだろ? あっ、義妹とか女の子の同居人いるから、安心していいからな!」

 

「え、あ、いや……」

 

「えーっと、これから色々と仕込みをして……夜にはできるかな。なぁ、なんか食えないものあるか?」

 

「………………柑橘類は苦手よ」

 

「了解!」

 

 

よっしゃ! こりゃあ忙しくなるぞぉ!!

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「くそっ! くそくそくそっ!!」

 

 

男は苛立っていた。

彼の名前は片平清。ここ数日、風都を騒がせている連続凍結事件の犯人・『アイスエイジ』ドーパントの正体である。彼は自分を苛立たせた人間を、片っ端から凍らせていくという犯行を繰り返していた。

原作においては、新たな『仮面ライダー』・『仮面ライダーアクセル』ーー照井竜によって撃破される運命にあった。だが、その運命はたった今からねじ曲げられる。

 

 

「こんにちは」

 

「あ? なんだよ、お前」

 

「自分を馬鹿にした人間を見返したい。けれど、力が足りない。そうですわよね」

 

「っ、なんなんだ、いきなりっ」

 

「こちらを」

 

 

その女は片平清に『あるもの』を手渡した。これはなにかと訊ねる彼に、女は微笑みながら答える。

 

 

「これは『強化アダプター』と言って、メモリの力を3倍に高めてくれる。そんな代物ですわ」

 

「! そんなのがあるのか!」

 

「はい。ぜひお使いください」

 

「っ、貸せ!」

 

 

片平清は半ば引ったくるように女の手から『強化アダプター』を奪い取り、自らのメモリに装着する。

 

 

『アイスエイジ アップグレード』

 

 

以前のヤマアラシのような姿に加えて、その両腕にはガトリングのような形状の強化パーツが現れていた。

 

 

『お、おぉ!! すげぇ、力が溢れてくる!』

 

「それはなによりです。ぜひその力を有意義にお使いくださいませ」

 

 

にこりと微笑み、女はその場を後にした。自らの力に酔っていた片平清は気づかない。去り際に女が邪悪な笑みを浮かべていたことを。

 

井坂深紅郎。

園咲霧彦。

彼らが『仮面ライダー』と戦うために、まずはこの男で見極める。

彼女ーーソフィーの計画は順調に進んでいた。

 

 

ーーーーーーーー

遠治くんの覚悟が決まった後ですが、R版は……?

  • ほしい! イラストもあるとよし!
  • ほしい! 文章だけでよい!
  • いらぬ! えっちなのは駄目だと思います!
  • むしろ私が絵を描こう(有能絵師)
  • むしろ私が文を書こう(有能作家)
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