『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
ーーーーーーーー
『そこを退けッ! 園咲霧彦ッ!!』
『いいや、退くわけにはいかないな。返してもらうぞ、私の妻を!!』
ーーーー30分前・ふうとえんーーーー
「なんで遊園地なんだよ……」
「まぁまぁ、細かいことはいいじゃないですか」
『白ハリネズミ』との戦闘、そして、冴子さんの歓迎会をした翌日のこと。俺達は遊園地へやってきていた。発案は勿論、雪南なのだが、埋め合わせとかでもなく、彼女は何故か上機嫌である。
「す、すごい……これが遊園地!」
「乗りたいものはあるかな、椎くん」
「えー、ボクが決めていいの!?」
目を輝かせながら走っていく椎ちゃん。その後を着いていくアンナ。去り際にひとつウインクをこちらにしていった。今回、遊園地が初めてだという椎ちゃんをエスコートする役はアンナで、こちらは任せてくれていいよと言われている。アンナ曰く、たまにはお姫様のエスコートをしてあげるといい、とのこと。
まぁ、なんだ。確かに最近こういう兄妹の時間をちゃんと取れていなかったのも事実だ。少々照れくさくはあるが、ここはアンナの厚意に甘え、俺は雪南と回ることにしようか。
「おい、雪南。えーっと、なんだ。今日は兄妹水入らずでーー」
「あ、お構い無く」
「えぇぇ……」
「さぁ、振り切るぜぇぇ!!」
雪南からフラれた俺。雪南は目を輝かせながら、メリーゴーランドに向かっていった。うーむ、兄だから分かるが、あれは遊園地にワクワクしている表情じゃない。どちらかといえば、ヲタクとしての輝きである。
「ったく、またあいつ、何かに首突っ込もうとしてるのか……」
ため息を吐きながらも、俺は雪南を遠くから見守ることにする。ただ、このままだと遊園地を1人で回る悲しい成人男性になってしまう。なので、
「…………私のことは放っておいてと言ったのが、理解できなかったのかしら」
俺は遊園地の入口にあるベンチで座る彼女、冴子さんに声をかけた。
実は今日のお出かけは、昨日の歓迎会からの流れで、風森ハイムの全員でどこかに出かけようという趣旨であった。色々と考えた結果、椎ちゃんの憧れを叶えてあげるために、ここふうとえんになったというわけ。
正直、冴子さんはついてこないかなぁと思ったんだけど。
「まぁまぁ、せっかく来たんだから、少し付き合ってくれよ」
「………………はぁ、仕方がないわね///」
なんだかんだ言っても面倒見がいいんだな。冴子さんは、俺の手をとってくれた。仕方がない。義妹様にはフラれてしまったことだし、今日は彼女をエスコートするかね。
「どうする? なんか乗るか?」
「流石にこの年で遊園地は楽しめないわ。昔ならまだしもね」
「昔?」
「……えぇ、遠い昔」
そう言うと、冴子さんは空に視線を投げる。きっと遊園地を楽しんでいた昔を懐かしんでいるのだろう。どこまで聞いていいのかとも思うが、まぁ、別に元から好感度もないだろうし、せっかくだから聞いてみるか。
「昔……家族で来た、とか?」
「そうね。私と妹、弟。あとは父と母。一回、5人で来たことがあるわ」
彼女は語り始める。
「私の父は研究漬けの人で、家族で出かけるといったら、博物館や美術館が多かった」
「まぁ、あの博物館の館長だしなぁ」
「フフッ……私はそれも嫌いではなかったけれど、如何せん妹も弟も幼かったから、遊園地やショッピングモールをねだることもあったわ。父は少し寂しそうだったけれどね」
「それでここに?」
「えぇ。あのメリーゴーランドも今とは色味も違うけれど、その頃からあった。手を引かれて、妹と一緒に乗ったのを覚えてるわ」
そう言う彼女の表情は、とても優しくて。
「妹さんのこと、好きなんだな」
ふとそんなことを口にしてしまった。雪南から聞いていたが、この姉妹の仲は悪いらしい。しまった、失言だ。そう思ったのだが、想定とは違い、冴子さんの表情は穏やかなままだった。
「……そうね」
彼女の視線の先には、メリーゴーランドに乗る椎ちゃんの姿があって。もしかしたら彼女に昔の妹の姿を重ねているのではないかなんて、つい邪推してしまった。
~~~~~~~~
遊園地で何も乗らずに、ベンチに座り、ただそこで楽しむ人達を見て過ごす。そんな不思議な過ごし方をして10分ほど。俺と冴子さんの視界を遮るように、1人の男が現れた。
「よう」
よく見ると、その男は昨日俺達がスーパーで会ったクレーマー男だった。まさかここまで追いかけてきやがったのか、とも思ったが、それよりも彼の異様な様子に目がいった。頬は痩け、目の下には隈ができている。1日でここまで変わるのは明らかに異常だ。
「っ」
ーーぞわっーー
悪寒。いや、気のせいじゃなく、気温が下がっているのだ。この男から溢れ出した白い煙……冷気によって。ここまでヒントが揃えば、馬鹿でも分かる。こいつはあの『白ハリネズミ』だ!
「くっ、冴子さん! 離れろ!」
ーーカシャッーー
「おせぇよっ!」
『アイスエイジ アップグレード』
「っ」
メモリを自らに挿した奴の姿が変わった。『白ハリネズミ』に、いや、それだけじゃねぇ。その両腕には昨日はなかったガトリングみたいなパーツが現れてやがる。この短時間で進化したわけではない。さっきメモリを起動した時に聞こえた『アップグレード』の音声。そして、メモリの上部に着いていた銀色の機械。それは『ディガルコーポレーション』でやられた『ラビリンス』が使っていたのと同じ機械だった。
『女ァァ!! 自分の砕ける音を聞けェェっ!!』
ーーガガガガガガガッーー
「くっ!? 変身っ」
『エターナル』
間一髪、変身した俺は、冴子さんの前に飛び出した。瞬間、俺の背中が凍る。と同時に、装甲が砕ける音が響いた。腕のガトリングから打ち出した氷弾は一瞬で対象を凍らせ、同時に砕く。1つ目の弾と追撃が同時に行われることで、大ダメージを与えることができる。それがあの『白ハリネズミ』の『アップグレード』か。
『ぐ、が……っ!?』
「っ」
冴子さんの目の前で、俺は崩れ落ち、膝をつく。その様子を見て、『白ハリネズミ』は笑い声をあげた。
『ハッ、ハッハッハッ!! ざまぁみろ! 俺に恥をかかせやがってっ!』
『……っ」
言い返そうにも、背中への衝撃が大きく、思うように息ができてない。そのせいか変身も解除されてしまう。こちらは丸腰。くそっ、まずいっ!!
『まずは邪魔なお前を粉々に砕いて、次は俺を馬鹿にした女を凍らせてやるよっ! 砕けろっ!』
氷弾が奴の腕から打ち出される。その直前に、
ーーガンッーー
『ぐあっ!?』
『白ハリネズミ』に何かがぶつかり、奴は仰け反った。不意にぶつかったそれはそのまま地面に刺さる。これは、剣?
「兄さんっ!」
「遠治くん!」
「お兄さんっ!」
声がした方を見ると、雪南たちがそこにいた。そして、彼女たちの側には赤いライダース姿の男性がいて、こちらに歩いてきた。
「だ、誰だ……?」
その雰囲気は一般人ではない。彼は『白ハリネズミ』を睨み付けながら、俺の側に来て、言い放つ。
「邪魔だ。死にたくなければ今すぐここを離れろ」
な、なんだこいつ!? 初対面でかなり失礼な奴じゃね!?
そう思って反論しようとするも、まだ呼吸が覚束なく、言い返せない。その間に、冴子さんが肩を貸してくれて、俺はその場を離脱することができた。
「兄さん、大丈夫ですか」
「あ、あぁ……」
駆け寄ってくる雪南たちにどうにか一声返す。
「っ、凍傷が酷い。一度安全なところへ移動しよう。そこで『フェアリー』を使う」
「冴子さん! 反対側、ボクが支えるから」
「えぇっ」
そうして、俺は冴子さんと椎ちゃんの肩を借りて、歩き出す。少し息ができるようになったタイミングで、俺は雪南に訊ねた。
「あの男は……?」
「はい。あの人は照井竜。風都署の刑事でもう1人の『仮面ライダー』……その名は『アクセル』!」
あぁ、そういや言ってた気がする。風都には『W』以外にも『仮面ライダー』がいると。なるほど、そうか、彼がもう1人の『仮面ライダー』なのか。
なら、とりあえずは安心か。俺の出る幕はないだろう。俺のそんな呟きにアンナも雪南も頷いた。
「大丈夫。彼がいればーー」
「? ち、ちょっと待ってください、あれは……?」
突然、照井竜の前に1人の女の子が現れていた。彼女は『白ハリネズミ』と彼の間に割り込むように現れ、彼を見つめている。照井は動きを止めていて、ポツリと呟いた。
「……春、子?」
「うん、お兄ちゃん」
誰かは分からない。だが、彼はゆっくりとした足取りで、その女の子に近づき、両手を広げてーー
ーーザクッーー
2人が抱擁することはなかった。なぜなら、照井竜が春子と呼ばれた女の子にナイフで刺されたからだ。ナイフは深々と彼の右胸に突き刺さっていて。
「「え……?」」
原作を知っている雪南もアンナも、目の前の光景に言葉を失っていた。つまり、これは原作にない展開。
「っ、皆、下がってろッ!」
『エターナル』
俺は叫び、再び『エターナル』を起動する。ここで動かなきゃヤバい。そう俺の本能が叫んでいた。だが、その動きを察知した女の子は俺を指差し、『白ハリネズミ』に指示を出した。
『……あぁ、それは少し厄介ですわね』
『あぁ!』
ーーガガガガガガガッーー
「っ!?」
氷弾は俺達の足元へ。一瞬で氷の壁を作り出し、俺達との距離を作った。その向こうで、照井竜をナイフで刺した女の子の姿が、メモリの起動音とともに変わるのが見えた。
『クサンティッペ』
後に分かる、それは『悪女』の記憶を内包したメモリ。
その銀色のメモリの持ち主は、女の子から姿を変えた、セミロングのブロンドヘアと翡翠色の瞳を携えた女性。彼女は優雅にスカートの端を掴み、お辞儀をする。
「改めまして、ごきげんよう。わたくしの名前は『ソフィー・京極』」
「あの方とともに、この風都を地獄に変える女ですわ。以後お見知りおきを」
ーーパチンッーー
ーーズズズズズッーー
その女が指を鳴らした瞬間に、俺の足元に黒い渦が現れる。それはまるで底無し沼のように、俺の身体を飲み込んでいきーー
ーードプンッーー
~~~~~~~~
「う……っ、ブはっ!?」
黒い渦に飲み込まれた俺が目を開けると、廃墟が広がっていた。遊園地では決してなく、どうやらどこか違う場所に飛ばされたようだ。さらに、
「わわわっ!?」
「なっ!? 椎ちゃんっ!?」
ーーガシッーー
「ふ、ふぅぅ、ありがと、お兄さんっ」
「あ、あぁ」
渦から落ちてくる椎ちゃんを無事抱き止める。その後、黒い渦が消えたことを考えると、どうやら渦に飲まれたのは俺と椎ちゃんだけのようだった。
くそっ! ここはどこなんだ!? 黒渦は『ドーパント』の能力か? そもそもあの女はなんだ!? ソフィー京極? なんでアンナと名字が一緒なんだよ!?
色々な疑問が浮かんでは解決できないまま消えていく。パニック寸前。だが、俺はブンブンと頭を振ってそれらを追い出した。今は考えてる暇はない。
「って、まずい! 戻らねぇとっ!」
あの状況は確実にヤバい。刺された照井って人は勿論、雪南もアンナも冴子さんもあのままじゃ危ない。すぐに『エターナル』になって、この廃墟をぶっ壊してでも脱出して、あの遊園地に戻らなきゃいけないんだ。
「行こう、椎ちゃん」
俺は椎ちゃんに手を差し出してーー
「どこに行くんだい」
男の声に止められる。声の主、彼の姿は写真で見たことがあった。
「園咲霧彦、か!」
『ディガルコーポレーション』の副社長かつ『ミュージアム』の幹部がそこにはいた。にこやかな笑み。だが、その目は笑っていない。理解する。こいつは敵だ。
「…………そこを退け」
「君、園咲冴子を知っているね。彼女は私の妻なんだ」
「っ」
「彼女、最近園咲の家を出て、しかも、会社にも姿を見せなくなったんだ。私は心配で心配で……。調べると、どうやら彼女を騙した悪い奴がいるようでね」
「っ、今は話している時間がねぇ! もう一回言う! そこを退け!」
俺の怒号にも、彼は表情を変えない。笑みを浮かべながら、メモリを起動した。
「妻を返してもらおうか」
『ナスカ アップグレード』
霧彦の姿が変わる。次の瞬間、
ーードゴッーー
「が……はっ!?」
「お兄さんっ!!」
腹に衝撃。あまりの強烈さに、俺は吐いてしまう。
「か、ふっ……ごほ……っ」
『……こちらももう一度言おうか、妻を返してもらおう』
静かにそう言いながら、奴は右手で俺の首を掴み、持ち上げる。
「が……く、そ……っ!」
『エターナル』
そのまま俺は変身し、奴の身体を思いっきり蹴る。多少よろけ、手を離した霧彦ーー『ナスカ』に、俺は思いっきり息を吸い、吠える。
『そこを退けッ! 園咲霧彦ッ!!』
『いいや、退くわけにはいかないな。返してもらうぞ、私の妻を!!』
ーーーーーーーー
ソフィーが動き出す。
『クサンティッペ』は祈願花様より案をいただきました。
ありがとうございます。
遠治くんの覚悟が決まった後ですが、R版は……?
-
ほしい! イラストもあるとよし!
-
ほしい! 文章だけでよい!
-
いらぬ! えっちなのは駄目だと思います!
-
むしろ私が絵を描こう(有能絵師)
-
むしろ私が文を書こう(有能作家)