『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
ーーーーsideアンナーーーー
「雪南くん、冴子さんと一緒に照井竜を連れて、ここから逃げるんだ」
私は後ろにいる雪南くんにそう伝えた。遠治くんと椎ちゃんは何者かの能力でこの場から姿を消した。現状、ここにいる味方は照井竜を含めて4人だけ。なら、それが一番全員の生存率が高いはず。
「ですが……」
「大丈夫だよ。私が敵の動きを止める。その隙に2人で彼を救出してくれ」
恐らく彼は死んでいない。だが、『アクセル』になる前に刺されたのだ。『風都探偵』の説を信じるとすると、『アクセル』を使ってない今、彼の生命力は普通の人間とそう変わらない。彼をここで失うわけにはいかないだろう。
「そうではありませんっ、それではアンナさんが……」
「大丈夫。私を信じて」
「…………分かり、ました」
「走ってッ!!」
『ヘル』
言うと同時に、私はメモリを挿した。瞬間、身体が暑くなり、精神体の姿が変わる。ボロボロのローブ、首や手首、足首には鎖に繋がれた重石がついている。凹凸のない真っ白な顔。目に当たる部分からはドロリと黒いヘドロが流れ出ている。
『あァァぁァぁぁぁッ』
思わず叫び声をあげてしまう。動悸が収まらない。頭も割れるように痛むし、身体の節々には悲鳴をあげるほどの激痛が走っている。まさに『地獄』の苦しみだ。だが、
ーーベシャッーー
ーージュッーー
『な、なんだ、このヘドロ!? 地面が溶けやがった……!』
その分、強力なメモリだ。これを使えば、『アップグレード』された『アイスエイジ』と『彼女』が相手でも、雪南くん達が逃げるくらいの時間は耐えきれるはず。
『はぁっ、は……っ、うゥゥゥぅぅ……っ』
『な、なんだよこいつ、化物めっ!』
化物でもいいさ。この状況を抑えられるなら!
「無茶をしますね、アンナ」
『あァァ……っ、ねえ、さんっ』
私は正気を失いながらも、目の前の『彼女』を見る。
ソフィー姉さん。私の双子の姉。
破滅主義者で、前世で私ともども心中した女だ。
さっき、この女は風都を地獄に変えると言っていた。今度こそさせない。今の私には力がある。この風都はーー彼らは私が見つけた『平穏』なんだ。
「貴女は昔からそうでしたわね」
『~~~~ッ、がァァぁ、はぁァ!!』
ーーベシャッーー
ーーベシャッーー
ーーベシャッーー
ーーベシャッーー
『おわぁぁぁっ!? 来るなよっ!』
ーーガガガガガガガッーー
ーージュゥゥゥッーー
『ひっ!? このヘドロ、簡単に氷を貫通してきやがる……!?』
あぁ、無駄だよ。『ヘル』のヘドロは氷程度では防げない。出力をさらに上げれば、ヘドロは流れて侵食していく。だから、このまま彼女達が逃げ切るまで放出を続けるんだ。
『は、ァぁっ!! あァァぁぁぁッ!!』
ーーベシャッーーベシャッーーベシャッーーベシャッーー
「はぁ、せっかくわたくしが苦しみから解放して差し上げたのに……貴女はまだ苦しもうというのね」
ーーパチンッーー
姉さんが鳴らした指。その音に呼応するように、また黒い渦が現れた。さっき、遠治くんたちを飲み込んだ渦と同じ。つまりは私をそれで飲み込むつもりだろう。それなら渦で飲み込み切れない大量のヘドロで攻撃すればーー
「あら、いいのですか。この渦の先には久永遠治がいるというのに」
『ッ』
その一言で止まる。渦がもし中に人を閉じ込める能力だとしたら? 中に入ったヘドロは彼を殺してしまう。
……駄目だ。それがブラフだったとしても、可能性がある限りは攻撃できない。
「氷漬けにしてくださいますか」
『あぁ!!』
ーーシュゥゥゥゥゥーー
『っ』
痛みと冷たさで意識は遠退いていく。薄れいく意識で、どうにか辺りに既に雪南くんたちがいないことだけは確認できた。
…………うん、私は役目を果たしたよ。あとはお願い、遠治くん。
ーーーーーーーー
ーーザンッーー
『ぐっ!?』
「お兄さんっ!」
『ナスカ』の剣が俺の身体を斬る。『白ハリネズミ』に受けた凍傷もまだ後を引いている状態にも関わらず、『ミュージアム』の幹部と戦うのは無謀だってのは分かってる。けれど、戦わずに退けるほど彼は甘くはない。
『冴子を誑かした男というのだから、どれ程の強者かと思ったが……この程度か』
『……っ』
膝をつく俺の首筋に、彼は剣を突き立てる。それを押し返す力は既に俺には残っていなかった。彼は剣を振り上げ、告げる。
『さらばだ、白い『仮面ライダー』』
ーーブンッーー
『っ』
敗北を覚悟したその瞬間、
「お兄さんを傷つけるなッ!!」
『イマジナリー』
『!』
声が響いた。と同時に『ナスカ』の剣が止まる。
『さ、冴子……!?』
『は?』
彼は俺を見て、冴子さんの名前を呟いた。
『お兄さんっ! 今だよっ!!』
『あぁっ! らぁぁぁぁっ!!』
ーーバギッーー
『がっ!?』
俺は動きを止めた『ナスカ』の顎をめがけて、蹴りを繰り出した。不意打ちだったこともあり、その攻撃はもろに当たり、奴の脳を揺らす。『ナスカ』はよろけ、膝をつく。
『っ、椎ちゃん!』
「うんっ!」
この機会を逃したら次はない。そう判断した俺はすぐに彼女を呼び、そのまま抱きかかえて跳ぶ。
『ま、まて……!』
ーーバヂバヂバヂッーー
『くっ』
『ナスカ』もこちらを追おうとしていたが、ダメージが残っていたのだろうか、なぜか追ってこない。俺と椎ちゃんは無事、その廃墟を脱することができた。
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廃墟から離れ続けること10分ほど。
俺達は森の中にあった小さな小屋で息を潜めていた。ありがたいことに小屋には簡易的なベッドもあり、俺はそこに横たわる。
「大丈夫、お兄さん……」
「あぁ、背中はいてぇが、とりあえずは大丈夫そうだ」
薬などは残念ながら持ってきていないから、今はとにかく休むしかない。けど、そもそも『ガイアメモリ』によるダメージは普通の医療では治らないんだったな。
「助かったよ、椎ちゃん……」
「ううん」
「にしても、よくメモリを持ってたな」
「……うん、黒い渦に呑まれた瞬間に、アンナちゃんが投げ入れてくれたみたい」
「そうか、アンナが」
流石はアンナ。咄嗟の判断としては満点だし、そのおかげでこうして助かった。
「…………アンナちゃん達、大丈夫かな……」
確かに椎ちゃんの言うように、アンナ達が心配だ。向こうも危機を脱してることを願うしかない。まぁ、アンナも冴子さんは戦う力はあるだろうから、無抵抗にやられるなんてことはないはず。雪南と照井竜って人を庇いながらでも、どうにかなっている……はずだ。そう信じる。
「きっと、大丈夫だよ」
ーーなでーー
「…………うんっ」
その後、俺達はどうにか森を抜けた。森を抜けると無事に携帯の電波が入り、雪南と連絡を取ることができた。そして、俺は信じがたい事実を聞いてしまった。
ーーーー風森ハイム201号室ーーーー
『ソフィー・京極』と名乗った女の襲撃後の話。
雪南と冴子さんによって、照井竜は無事、病院に運ばれた。そして、彼の護衛として、左さんーー『仮面ライダー』が付いている。風都を地獄に変えると言い、彼を襲った『ソフィー』の真意はまだ分からない。だが、『仮面ライダー』が護衛についているのだ。これなら彼が再び襲撃されることはないだろう。
問題はーー
「アンナは、まだ帰ってきてなかった」
隣の部屋の鍵が閉まっているのを確認してきた俺は、部屋にいる雪南と椎ちゃん、冴子さんにそう伝えた。
「そう、ですか……」
「そっか……」
それを聞いて、俯く2人。それと対照的に、
「…………」
無言で立ち上がる冴子さん。咄嗟に彼女の腕を掴み、引き留める。
「なに?」
「どこに行くつもりだよ、冴子さん」
「別に。部屋に帰るだけよ」
バレバレの態度。このまま殴り込みにでも行きかねない雰囲気だった。大方、『白ハリネズミ』は自分を狙ってきたからそのとばっちりで、アンナが……とでも思ってるんだろう。
「あんたのせいじゃない」
「……あの時、私も残っていれば」
「アンナはあいつ自身の判断でそうした。なら、それがベストな選択だったってことだ」
あの状況では、冴子さんよりも『原作』ーー今より未来のことを雪南やアンナの方が知っている分、状況をずっと判断できる。戦える自分が時間を稼ぐのが一番生存可能性が高いと踏んだんだろう。
「信用してるのね、彼女のこと」
「あぁ」
「…………そ」
そこまでして、彼女は納得したのかその場に座ってくれた。
「兄さん」
次に口を開いたのは雪南。
「アンナさんのこと、助けなきゃ」
あぁ、そんなこと分かっているさ。
彼女の奪還なんて『平穏』とは程遠い。けれど、ここで彼女を失ってしまうのは間違ってる。それは俺の求める『平穏』じゃない。
……けれど、
「手がかりがない」
雪南曰く、『白ハリネズミ』の事件は『仮面ライダーアクセル』の手により終わるはずだったという。それが崩され、さらに『強化アダプター』を使ったこと、さらに『ソフィー』という女の介入によって、原作とは違う展開になっている。だから、雪南にも心当たりがないらしい。
つまり、相手からのアクションがない限り、こちらからは動けず、手詰まりだということ。
「やっぱり、私が囮になるしか……」
「だから、それはっ」
ーープルルルルルルーー
「「「「!?」」」」
また自らを犠牲にしようとした冴子さんの言葉を遮るように、彼女のスマホが鳴った。この場面で彼女のスマホへの通話着信。事件に関係する人間からの着信かと思った。例えば、恐らく向こう側に付いているであろう夫・園咲霧彦とかな。
「っ」
そう思ったのだが、画面を見た冴子さんの顔色が変わったことで、それが違う人物からの着信だと察した。
「………………」
ーーピッーー
「なっ!? ちょっと勝手にっ!?」
それは咄嗟の思いつきだった。この現状がいい方か悪い方かどちらに転がるか分からない。けれど、今は賭けるしかない。
「もしもし」
『ん? 誰だね、君は』
冴子さんが出ると思っていた電話の先のその人は怪訝そうな声で、そう訊ねてきた。だから、俺はご無沙汰しておりますと前置きしてから、名乗る。
「久永遠治。ただの勇敢な青年です、園咲琉兵衛さん」
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遠治くんの覚悟が決まった後ですが、R版は……?
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ほしい! イラストもあるとよし!
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ほしい! 文章だけでよい!
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いらぬ! えっちなのは駄目だと思います!
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むしろ私が絵を描こう(有能絵師)
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むしろ私が文を書こう(有能作家)