『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
ーーーーside:アンナーーーー
「残念。貴女にこのメモリは効かないようですわね」
せっかくこの街に相応しいメモリですのに。
姉さんはそう嘯き、笑う。『クサンティッペ』のメモリを挿し、『ドーパント』へと化したソフィー姉さん。しかし、その姿は変わらない。姉さんのまま。
なるほど、確かにフィリップくんの言う通り、私には効果がないようだ。もしくは姉さんの姿こそが望む女性の姿とでもいうのか。どちらにせよ、これならばーー
「では、メモリを変えましょうか」
「な!?」
やはり『クサンティッペ』以外のメモリを準備していたのか。たじろぐ私を嘲笑いながら、彼女は手にしたメモリを何もない上空へと投げた。そのメモリは何かに突き刺さり、『ドーパント』が姿を現した。巨大な翼と3つに開く嘴を持つ翼竜のような頭部。見たことがある。この『ドーパント』はっ!?
「……『ケツァルコアトルス』!?」
「ご名答ですわ。勿論、複製品のメモリですが」
さっきのあれは飛んでいたカラスに突き刺したのだろう。まるで原作で井坂深紅郎がしたように。あれの出所を考えるのは後。あの巨体だ。『ボム』ではダメージを与えられるかも微妙なところだろう。
……このままではせっかくこちらから距離を離してくれた『仮面ライダー』たちの戦闘も妨害されかねない。ここは私が何とかするしかない。
「…………」
目を閉じ、覚悟を決める。
待っていてくれ、遠治くん。きっともうすぐだ。
『ヘル』
『地獄』の記憶が私に流れ込んでくる。灼熱のマグマに身を焼かれたかのような熱さと痛みを受け、私の姿は鎖に繋がれたボロボロのローブの囚人へと変わった。
痛い。痛い痛い。痛い痛い痛い。けど、耐えるんだ。
『あ、あぁぁぁっ!!』
ーーベチャッーー
ーーベチャッーー
ーーベチャッーー
ヘドロを飛ばす。狙うは姉さん自体。けれど、それは『ケツァルコアトルス』の巨大な翼に遮られ、姉さんまで届かない。けれど、翼には穴を開けることができている。
『キィィィィィィィィッ!!!!』
『ッ、はぁぁぁっ!』
次は拳にヘドロを纏わせ、駆ける。ヘドロは私の腕も溶かしていて、激痛が絶え間なく走っているが、それでも!
『はァっ、あぁぁぁッ!!』
ーーベチャッーー
叫び声をあげ、翼竜の嘴を下から殴りつけた。ヘドロは嘴を確実に溶かし、その肉の焦げる匂いは辺りに漂う。これほど殴ったのにも関わらず、翼竜は未だに健在で、ソフィー姉さんを守るように私の前に立ち塞がっている。
「酷い匂いですわ」
『……はぁ……はァァ……』
「はぁ……アンナは聞き分けの悪い子ね。そうまでして彼を取り戻したいのかしら」
『あ、ぁ……わ、たしはァっ』
耐え難い苦しみだ。
けれど……そうだ。姉さんの言う通り、私はここまで苦しんででも彼に会いたい。『久永遠治』を取り戻したい。だからーー
『う、ゥゥぅウっ……あ"ぁぁ"ァァア"ぁ"ぁッ!!!』
ーーーーーーーーゾゾゾゾゾゾゾゾッーーーーーーーー
内に込み上げる灼熱を解き放つ。ヘドロは『ケツァルコアトルス』の巨体の半分ほどの高さまで吹き出し、周囲一体を囲うように広がっていく。
「っ、これは『テラーフィールド』と同質の……ッ」
視界の端で、姉さんの表情に初めて焦りが見えた。ただそれをよく見る余裕は今の私にはなかった。ヘドロは私の全身から吹き上がっていて、それをコントロールするのに必死で。
『あ、ぁ"ぁ"ァぁァァ"っ!!』
ーーーーゾゾゾゾッーーーー
もっと、もっとだ! まだあの巨体の半分しか覆えてない。完全に倒すにはここしかない。身体全部を包み込んで、一撃で倒すんだ。
ーーーーゾゾッーーーー
『っ』
限界が近い。あまりの熱でヘドロが沸き上がるのを躊躇してしまいそうだ。死んでしまいそうなくらい熱い。死んだ方がマシだと思えるくらい苦しい。痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
ーーゾ、ゾッーー
『あ…………ぅウ……ァぁ……』
今、助けるよ、遠治くん。助けてよ、遠治くん。
……ううん。私が、今度は私が助けるんだ。そして、彼に言わなきゃいけないんだ……。
『あ、な……だ…………が……っ』
「……少々焦りましたが、嗚呼、なんとも『哀れ』ですわね。こんなにヘドロにまみれて、ボロボロで。わたくしとは正反対……早く殺してあげなくてはね」
ーーピシッーー
ーーーーーーーー
離れていた場所からでも、そのヘドロは彼等の目に入っていた。それが敵の攻撃ではないことを本能的に感じ取っていた彼等は、その思いに応えようと渾身の力を振り絞り、目の前の『ドーパント』を撃破した。
同時に『彼』がこの世界に舞い戻る。
ーーーーーーーー
「……ぁ……れ」
痛みは完全に消えていた。そして、燃えるような熱さの代わりに、心地よい体温に包まれている。私よりもずっと低いガッチリとした身体。でも、何よりも優しく、私を抱き締めてくれてて。
「……あ、うぅぅぅ……」
色んな感情がぐちゃぐちゃで、気づけば頬には涙が伝っていた。
……あぁ、ちゃんといる。『彼』が戻ってきてくれた。
「ありがとう、アンナ」
「う、うん……っ」
「おかげで戻ってこれた」
「うんっ」
「あとは、任せろ」
ーーギュッーー
『彼』は最後に私を力強く抱き締めてくれた。そうして、『彼』はーー『久永遠治』は敵に向き直る。
「よう、これで何度目だ」
「……残念。もう少しでこの娘を壊せましたのに」
「…………」
「ふふっ、それにしても『力』が増してますわね。『エターナル』に変身せずとも、その娘のメモリを瞬時に無効化し、その副作用すらも……。いいんですの? このままだと貴方ーー」
「黙れ」
「っ」
私からは後ろ姿しか見えない遠治くん。けれど、彼がいつになく怒っているのが分かる。だって、彼の全身から『白い炎』が沸き立っていたのだから。
「御託はいい。俺の『力』云々もどうだっていい。『平穏』すらも今は置いておいてやるよ。今はただーー」
『エターナル』
「変身」
『ーー完膚なきまでにブチのめす』
遠治くんの姿が変わる。『仮面ライダーエターナル』へと。
姉さんと『ケツァルコアトルス』に向けて、サムズダウンをする様はまるで原作の『あの男』のようであった。
そんな彼に襲いかかる翼竜。
『キィィィィィィィィ!!』
叫び声にも聞こえる鳴き声をあげて、その巨体、爪は『エターナル』を切り裂こうとしていた。けれど、彼は焦りもせず、マキシマムスロットへとメモリを装填した。
『エターナル マキシマムドライブ』
ーーーーーーーー
久永遠治の変身する『仮面ライダーエターナル』は、大道克己の『エターナル』には遠く及ばない。
それは事実であり、今後も変わることのない決定事項である。だが、彼の『マキシマムドライブ』ーー『白い炎』は大道克己にもできないことをし得る。『白い炎』は他のメモリを強制的に排出させ、そして、その毒素さえも浄化する。それは久永遠治の『平穏』を望む心に『エターナル』が応えたが故に到達した能力であった。
ーーーーーーーー
ーーボゥッーー
『キィィィィィィィィっ!?』
『白い炎』は『ケツァルコアトルス』を一瞬で焦がし、メモリを強制的に排出させた。姉さんに強制的に変身させられたカラスは、何事もなかったかのようにそのまま飛び立ってしまう。
「っ、あんな小さな炎で……」
『次はあんただ』
「ッ」
明らかに焦った表情を浮かべた姉さんは、一歩後退る。そして、
「『セバスチャン』ッ!!」
ーーパチンッーー
ーーズズズズズッーー
『!』
現れる黒渦。それは姉さんの体を瞬く間に飲み込む。
「…………目的は果たしましたわ。けれど、アンナ。次こそは貴女を救ってみせましょう」
彼女は最後に捨て台詞を残し、跡形もなく消えてしまった。
~~~~~~~~
「…………ふぅ」
姉さんが姿を消したのを確認した遠治くんは、変身を解いた。背中を見せていた彼が、やっとこちらを向いてくれる。
「ただいま、アンナ」
「~~~~っ、おかえり、遠治くんっ」
ーーぎゅぅぅぅっーー
彼が、名前を呼んでくれた。それが嬉しくて、私は駆け、彼に正面から抱きついた。
「お、おいっ!? アンナっ!?」
「遠治くんっ、遠治くんっ!」
遠治くんだ。遠治くんが帰ってきてくれた。苦しい思いを、痛い思いをした分、想いが溢れ出してしまった私は、ふっと一瞬両腕の力を抜いてからーー
「ん~~っ♡♡♡」
~~~~ちゅぅぅぅぅ~~~~
「!?!?!?!?」
彼の唇に、キスをしてしまったのだった。
…………しかも、かなり濃厚なやつを。
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『R』編、無事完結!!
流石、アンナ!
誰にもできない事を平然とやってのけるッ!
そこにシビれる! あこがれるゥゥ!!
【朗報】次回、デレデレアンナが見れるぞ!
アンナのこと……?
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好き
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普通
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嫌い