『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
恋を自覚した乙女は強い。
健全です。
ーーーー風都タワー展望台ーーーー
「遠治くん♡」
ーースリスリーー
「う、っす……」
例の事件から2日が経過した。再びこの世界に戻ってきたら、なぜかアンナからの好感度が最高になっていた。あまりの変貌ぶりにまた違う世界に飛ばされたのかと、これまでの状況を訊ねてみたが、どうやらここは俺が消される前と同じ世界で間違いないらしい。
そんで今、俺は助けてくれた彼女へのお礼として、デートをしています。
……どうしてこうなったぁ??
「あのぉ……アンナさんや?」
「なんだい、遠治くん♡」
「なんで俺に腕を絡めてくるんでしょうか?」
「ん? 好きな人と腕を組みたいという願いは別に変なことではないだろう?」
「っ、ま、まぁ、そうかもだが……」
「それとも……イヤ、かな……?」
「嫌じゃないっす!!」
「それはよかった♡」
ーーぎゅっーー
俺の答えに満足したのか、彼女はニコニコでまた俺にくっついてきた。
……まぁ、勿論、彼女はとても美人さんである。最近は関係性が友人のようになっていたから忘れていたが、俺の好みドストライクではあるのだ。そんな女性にくっつかれて嫌な訳はない。むしろ、控えめではあるが、柔らかな膨らみが腕に当たり……うん、いい。
ーーゾワッーー
「ッ!?」
不意に殺気を感じ、俺はキョロキョロと辺りを見渡す。だが、展望台にはこちらを見る人間はいない、と思う。
「遠治くん? どうかしたかい?」
「え、あぁ……なんか視線を感じてさ」
「んー、それはきっと君がとってもカッコいいからじゃないかな。君の魅力に惹き付けられた女性たちの視線だよ」
「お、おう……」
「でも、駄目だよ。デート中なのだから、ちゃんと私だけを見てほしいな。ね?♡」
「っす」
調子が狂う。だが、それが嫌ではないのだから、余計に困ったものだ。
「うん。思う存分、遠治くん成分を補給したし、次はカフェにでも行こうか!」
そう言って、彼女は俺の手を引いた。
~~~~side:椎~~~~
「ぐぬぬぬぬっ」
「何よ、あれ」
物陰からお兄さんとアンナちゃんの様子を伺う人影が2つ。ボクと冴子さんはデートする2人を尾行していた。若菜ちゃんも来る予定だったんだけど、テレビの仕事があるらしく、泣く泣くボクらに監視もとい調査を託していった。何故か雪南ちゃんにはパスと言われてしまったんだけど……なんでだろ?
「この間まで全然興味ないですって顔しておいて……!」
「ねー、いきなりだったよねぇ」
雪南ちゃんやアンナちゃんから聞いたけど、どうやらボクや冴子さん、若菜ちゃんはメモリの能力で、お兄さんのことをすっかり忘れてしまっていたらしい。その間、お兄さんを助けるために、2人は動いていたみたい。
そのこともあって、ボクたちは2人のデートを受け入れ、快く?送り出したんだけど。
「気になるものは気になるし」
「見つめ合ってんじゃないわよ……腕を組んでんじゃないわよ……」
「ハンカチ使う? きぃぃぃ、ってする?」
「……やらないわよ?」
「あ、動くみたい!」
~~~~~~~~
2人を追ってやって来たのは、古民家カフェだった。空き家を再利用してカフェにしたらしく、木造の落ち着くいい雰囲気のカフェだ。
「珈琲をちょうだい」
「ボク、オレンジジュースと……手作りシフォンケーキ!」
注文を終えたボクたちは再び監視を続ける。どうやら横並びのカウンター席を選んだみたい。流石にここでは腕は組んでないね。けれど、並んで笑顔で話している。
「仲、いいわね」
「まぁ、そうだよねぇ。なんだかんだ言ってアンナちゃん、お兄さんとかなり仲良かったし。休日は2人で買い物とかもしてたらしいよ~?」
「なっ!?」
こうなる前の2人の関係性はどちらかといえば、友人に近かった。お姉さんな冴子さんや好意をぐいぐい伝えてたボク、表面上は毒舌な雪南ちゃんよりも、お兄さん的にずっと気軽に誘える相手だから当然といえば当然だよね。それでも、アンナちゃん側が自分の気持ちに気づいてなかったからまだよかったんだ。でも、
「うーむ。すんごいライバルが誕生してしまったなぁ」
「どうする? 毒でも盛る?」
「……冴子さん、お兄さんのこと好きじゃなかったんじゃないっけ?」
「………………えぇ、そうよ」
元々、誤魔化せてなかったけど、アンナちゃんがああなってからはもっとひどくなったなぁ……。
「お待たせいたしました」
「あ! きたよ!」
そんなことを話していると、店員さんが注文したものを持ってきてくれたみたい。
「シフォンケーキとオレンジジュースのお客様」
「はいはーい!」
「失礼しますね……それからこちら、珈琲になります」
「えぇ」
テーブルに置かれたケーキはとっても美味しそう! ボクはウキウキでフォークをとって、ケーキを食べようと……。
「な"っ!?!?!?」
「え?」
突然、冴子さんの顔が歪む。もんのすごい鬼の形相で。視線の先にはーー
~~~~side:遠治~~~~
「はい、遠治くん♡ あーーん♡」
目の前に掲げられたショートケーキ。それが意味するのは、アンナからのあーんである。
「うぅ」
「? 食べないのかい?」
「た、食べるけどさぁ」
「なら、ほら……あーーん♡」
「…………あーーん……ん」
「おいしい?」
「おいひいれす」
「なら、よかった♡」
そう言って満足げに笑うアンナ。
……なんだろう、もんのすごくドキドキするんですが?
その後、俺にあーんをしたフォークで自分もケーキを食べるアンナ。いい年して間接キスなんぞ気にしているのも恥ずかしいが、それでも意識はしてしまう。そのせいだろう。
「ふふふっ」
「ん、ん? どうかしたか?」
「口の端っこ。クリームがついているよ。子供みたいだ」
誰かさんのせいで、気もそぞろなのだ。仕方ないだろう。言い訳も満足に言えずに、モゴモゴしていると、彼女は少し悪戯っぽい笑みを浮かべた。そして、
「…………んっ、ぺろっ♡」
「!?!?!?!?」
「おいしい♡」
こ、こいつっ!? 指でとるとかじゃなくて、舌で直接!?
「何してるのよっ!!!!」
「え?」
「ん?」
そこで響く女性の声。何事かと振り返るが、誰もいない。幻聴か?
「す、すまない。流石にやりすぎた、かな///」
「え、あぁ……気をつけてくれ」
「うんっ///」
2人とも聞こえた妙に聞き覚えのある幻聴に、我に返ったのか、アンナは急に恥じらいを見せた。そんなところも妙に可愛く見えてしまうのは……本当に意識のしすぎだろうな。
「そろそろ……出ようか」
~~~~~~~~
2人、目的もなく歩く。カフェに入るのが遅かったり、少しゆっくりしすぎたこともあり、もうだいぶ日が落ちていた。最近は日が落ちるのも早い。少し前まで7時とか8時まで明るかったんだがなぁ。そんなことをしみじみ考えていると、
「遠治くん?」
ふとアンナに名前を呼ばれる。しまったな、上の空だったぜ。すまん、なんでもないよ。そう謝ったのだが、お姫様的には不満だったようだ。ジト目でこちらを見てくる。
「どうせ、他の女の子のことを考えていたのだろう?」
「へ?」
予想外の方向からの話題に、俺は間の抜けた返事を返してしまう。理解の追い付かない頭のまま、彼女は言葉を続ける。
「今日は若菜くんが出てる番組の放送があったからね。そのことかな。それとも、冴子さんのこと? 今日も部屋にご飯を食べに来るのだろう。彼女に食べさせる献立でも考えていた?」
「い、いや、そんなんじゃないって」
「じゃあ、椎くんだ。彼女は肉体的接触が多いからね。ムッツリな君のことだから。それとも……雪南くんのことかな。ここ数日、彼女は少し元気がないように見えたし」
止まらない。アンナの口からアパートの面々のことが出てくるわ出てくるわ。俺が気圧されている間に、彼女は俺の手を掴んで走り出した。
やがて、辿り着いたのは風都の歓楽街。そして、俺とアンナの目の前の建物は……。
「…………ア、アンナさん……?」
「君の周りには魅力的な女の子が大勢いる。私をちゃんと選んでくれるか、正直不安だよ。だからーー」
彼女の顔は既に真っ赤で。
「君を繋ぎ止めるためにっ/// 私は……っ」
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健全です(断言)
次回に続きます。
……R版ってどこからなんだろ。
することしなけりゃ健全か……?(思考迷宮)
アンナのこと……?
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好き
-
普通
-
嫌い