『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい 作:藍沢カナリヤ
ーーーー井坂内科医院前ーーーー
「ごきげんよう、皆様」
まるで来るのが分かっていたように、笑顔でこちらを迎えるソフィー。その傍らにはスキンヘッドの大男だけが立っている。姿は見えないが、『セバスチャン』という人物もいるだろう。だが、それだけだ。園咲霧彦も井坂深紅郎もここにはいない。
「だいぶ人数不利じゃねぇか? そっちは3人、こっちは5人だ。『仮面ライダー』も控えてる」
そうは言うが、半分ハッタリだ。左さんたちは依頼でここにいない。一応、照井さんの方には声をかけているが、なにやらそちらはそちらで事件が立て込んでいるらしい。
雪南が拐われているのだ。日を改めては難しい。2人ともすぐに片付けるとは言ってくれたが……。
「あら? 『仮面ライダー』のお三方は来られないのではなくて?」
「っ」
俺の心を読んだかのようなタイミングで、ソフィーがそう言ってくる。心を読む能力というよりは『知っていた』という感じか。つまり、
「えぇ、井坂先生が『インビジブル』を回収に行ってますわ」
「!」
『インビジブル』。そのメモリに反応を示したアンナ。曰く透明になるメモリ、らしい。また厄介なメモリを手に入れようとしてやがる。だが、井坂がそちらに行っているのなら、本当に3対5。なら、こちらが有利だ。
「姉さん……雪南くんを解放しろ」
「あの娘は井坂先生にとって必要な道具。そう言われて渡すとお思いなのかしら?」
「なら、力ずくで通るわ」
冴子さんのその一言で、その場の全員がメモリを構える。最初に動いたのはアンナ。
『ドア』
彼女はすぐさま『ドア』を使い、2つの扉を精製した。事前の作戦通りに分断するのだ。2つのドアの1つに向けて走り出す冴子さん。俺は冴子さん側の扉にスキンヘッドを誘導するように走る。アンナと若菜お嬢様はソフィーの方へと向かう。ソフィーと見えない『セバスチャン』を引き離し、扉に押し込む。それで分断できるはずだった。しかし、敵にその動きは読まれていた。
「『セバスチャン』!」
ーーパチンッーー
ーーズズズズズズズズッーー
「なっ!?」
「冴子さんっ!!」
現れた黒渦は扉を覆い、冴子さんを飲み込んだ。さらに別に現れた黒渦はスキンヘッドを包んで、そして、
「お兄さんっ!!」
「っ、椎ちゃんっ!?」
背後に控えていたはずの椎ちゃんをも飲み込んだ。まずいっ!? 椎ちゃんだけでは戦えない。でも、俺の位置からでは間に合わない。
「っ、遠治くんっ!」
「アンナっ! っ、頼むっ!!」
アンナはそのまま椎ちゃんを飲んだ黒渦に飛び込んでいった。残されたのは、俺と若菜お嬢様。そして、ソフィー。渦に飲まれた彼女たちのことは気になるが、任せるしかない。今は目の前の敵を倒すことに集中しろ!
「…………『セバスチャン』の方は俺が引き付ける。その間にソフィーを頼む、若菜お嬢様」
「分かったわ」
小声でそう指示を出す。俺とソフィーだと相性は最悪だ。だが、不幸中の幸い、こちらには若菜お嬢様が残ってる。『クサンティッペ』は女性には効き目がないという。だから、ソフィーは若菜お嬢様に任せて……。
ーーズズズズズズズズッーー
「っ、そう来るよな!」
またも黒渦が迫る。ターゲットは若菜お嬢様。俺は装着していた『ロストドライバー』を展開する。『エターナル』へと姿を変えた俺は『マキシマムドライブ』を発動させる。
『どうせ、あんたの近くにいるんだろ! 恥ずかしがり屋の執事さんがよ!』
ーーボゥゥゥッーー
「
俺は『白い炎』で若菜お嬢様を襲おうとした黒渦を焼却。その後、今度はソフィーへ向け炎を放つ。走る炎は確実にソフィーへと。
ーーズズズズズズズズッーー
『あぁ、分かってたぜ!』
ーーググッーー
ソフィーを守るため、黒渦を俺と彼女の間に展開する『セバスチャン』。瞬間、俺は『白い炎』を拳に纏わせて、渦ごとぶん殴った。
ーーバギィィィッーー
振り抜いた拳に何かを捉えた感触を感じる。『白い炎』により、殴った相手の輪郭が見えた。さらに燃え広がり、
ーーバリンッーー
『セバスチャン』とやらの肉体からメモリが排出され、壊れる。吹き飛ばされた『セバスチャン』が起き上がった時に、その姿が明らかになる。なんといえばいいか……そいつは見たことがない、だが、どこかで見たことのあるような、個性のない顔だった。感情も読み取れないくらいの無表情。こいつは……。
「はぁぁ、『セバスチャン』」
ーーブンッーー
「………………」
『ホール アップグレード』
ソフィーから投げ渡されたメモリと『強化アダプター』を、ぎこちない動きで受け取り、起動させる『セバスチャン』。それを自らの首に挿し、また奴の姿が消えた。
「まったく……使い物になりませんわね」
『……なんだ、そいつ』
「答える必要ありまして? 『セバスチャン』、今度はちゃんとやりなさい」
ーーパチンッーー
ーーズズズズズズズズッーー
ーーズズズズズズズズッーー
ーーズズズズズズズズッーー
ーーズズズズズズズズッーー
ーーズズズズズズズズッーー
『なっ!? 若菜お嬢様っ!』
「っ」
『クレイドール』
ーードプンッーー
まるで壁のように展開した黒渦は若菜お嬢様を飲み込んだ。そして、奴の気配も消える。つまり、今ここにいるのは俺とソフィーだけ。
「やっと、ふたりきりですわね、久永遠治」
『っ』
奴はそう言って笑う。双子のアンナとは似ても似つかないおぞましい笑みで、彼女は『強化アダプター』を装着したメモリを起動した。
『クサンティッペ アップグレード』
ーーーーside:椎ーーーー
「う、うぅぅ……」
前に飲み込まれた時と同じ感覚から抜けると、そこはどこかの公園だった。切れかけの街灯だけが場を照らす薄暗い公園。なんでボクも飛ばされたんだろう。その答えはすぐに分かった。
「よう……『0758』」
「っ」
聞き覚えのある声。そして、ボクを番号で呼ぶのは1人しかいない。街灯の下に、その人はいた。スキンヘッドの巨大な男の人。『管理者』。
「ソフィーも粋な計らいをしてくれるよなぁ」
「は、はぁっ……」
「俺に逆らったお前を、なぶり殺していいってよぉ……!」
「いや、いやっ……!?」
その人はゆっくりとこちらへ向かってくる。
あの声は、ボクを罵倒し、従わせようとしていた声。
あの目は、ボクを道具にしか思わない目。
あの腕は、実験が上手くいかない時にボクを殴った腕。
あの脚は、動けなくなったボクの腹を蹴り飛ばしてきた脚。
あぁぁぁぁ……あの人の、目に写る全てが怖い……っ。
「……うぅぅぅ」
「おぉ……なんだぁ、今さら素直になったって遅いからなぁ……俺に逆らったんだ、苦しませながら殺してやるよぉぉ」
身体が動かない。怖い……怖いよぉ……。助けてっ、助けて。
「あぁ? あの男は来ねぇよぉ、奴はソフィーが止めてるからなぁぁ」
「はぁっ、やっ……やだ、こないでっ」
自分の身体を抱いても震えが全然止まらない。
「ハハハ……まずは一発、ぶん殴るぞぉぉ」
ーーググググッーー
ーーブンッーー
風を切って振り下ろされた拳。
「…………あ、れ……?」
はボクには届いてない。顔を上げると、そこにいたのは、
「大丈夫かい、椎くん」
「あ……アン、ナちゃん……っ」
拳を止めるアンナちゃんだった。
「ああ? 邪魔すんなよぉ」
「邪魔はするさ。私は彼女の仲間だからね」
「仲間ぁ? 実験動物に仲間ぁ? ハハハはハハハッ」
大笑いをするその人はさらに力を込めていく。そして、追い打ちにメモリを取り出し、起動した。
『マッスル アップグレード』
その人の姿が変わる。人体模型のような真っ赤な肉体に骨のような白いラインが入った『ドーパント』。
『ハハハハッ! いいなぁ! 『ホール』とか『ラビリンス』なんてややこしいメモリじゃねぇ……! ただ俺の力が強化されるぅ、だから、こういうのが好きだぜェェ!!』
ーーグググググッーー
ーーグググググッーー
彼の高笑いに呼応するように、彼の腕が肥大化していく。普通の腕の5倍くらいになったその腕に、徐々に押されていくアンナちゃん。
「…………」
「あ、アンナちゃん……ボクはいい、から……逃げてっ」
勝てるわけないっ。こんな怪物相手なんだもん……。このままじゃアンナちゃんも潰されちゃうよ……っ。
「ご、ごめんねっ……」
「……なんで謝るんだい」
「ボクのせいで……ボクがお兄さんのところに来たせいで……っ」
ガタガタと震える身体。気づけば涙も溢れて、こぼれてる。心が壊れそうだ。ごめんね、ごめん、ごめんなさい。ボクはーー
ーービタッーー
『あぁァ??』
「え……?」
徐々に迫っていた巨大な腕が止まる。こちらをじわじわ追い詰めようとしてるわけでも、手加減してるわけでもない、よね……?
「椎くん」
「え、あ……うん」
「あの時と一緒だ。だけど、今、遠治くんはここにいない。だからーー」
アンナちゃんは笑う。
「ーー君は私が守るよ」
『フェアリー』
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『マッスル』は三軒牌様よりいただきました。
ありがとうございます!
追記
※誰ともくっついてないのに何故かR版を書き始めました。
なんでだろう……? あれぇ……?