『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第38話 Wに関わるな / 激闘のはじまり

ーーーー井坂内科医院前ーーーー

 

 

「ごきげんよう、皆様」

 

 

まるで来るのが分かっていたように、笑顔でこちらを迎えるソフィー。その傍らにはスキンヘッドの大男だけが立っている。姿は見えないが、『セバスチャン』という人物もいるだろう。だが、それだけだ。園咲霧彦も井坂深紅郎もここにはいない。

 

 

「だいぶ人数不利じゃねぇか? そっちは3人、こっちは5人だ。『仮面ライダー』も控えてる」

 

 

そうは言うが、半分ハッタリだ。左さんたちは依頼でここにいない。一応、照井さんの方には声をかけているが、なにやらそちらはそちらで事件が立て込んでいるらしい。

雪南が拐われているのだ。日を改めては難しい。2人ともすぐに片付けるとは言ってくれたが……。

 

 

「あら? 『仮面ライダー』のお三方は来られないのではなくて?」

 

「っ」

 

 

俺の心を読んだかのようなタイミングで、ソフィーがそう言ってくる。心を読む能力というよりは『知っていた』という感じか。つまり、

 

 

「えぇ、井坂先生が『インビジブル』を回収に行ってますわ」

 

「!」

 

 

『インビジブル』。そのメモリに反応を示したアンナ。曰く透明になるメモリ、らしい。また厄介なメモリを手に入れようとしてやがる。だが、井坂がそちらに行っているのなら、本当に3対5。なら、こちらが有利だ。

 

 

「姉さん……雪南くんを解放しろ」

 

「あの娘は井坂先生にとって必要な道具。そう言われて渡すとお思いなのかしら?」

 

「なら、力ずくで通るわ」

 

 

冴子さんのその一言で、その場の全員がメモリを構える。最初に動いたのはアンナ。

 

 

『ドア』

 

 

彼女はすぐさま『ドア』を使い、2つの扉を精製した。事前の作戦通りに分断するのだ。2つのドアの1つに向けて走り出す冴子さん。俺は冴子さん側の扉にスキンヘッドを誘導するように走る。アンナと若菜お嬢様はソフィーの方へと向かう。ソフィーと見えない『セバスチャン』を引き離し、扉に押し込む。それで分断できるはずだった。しかし、敵にその動きは読まれていた。

 

 

「『セバスチャン』!」

ーーパチンッーー

 

 

ーーズズズズズズズズッーー

 

 

「なっ!?」

 

「冴子さんっ!!」

 

 

現れた黒渦は扉を覆い、冴子さんを飲み込んだ。さらに別に現れた黒渦はスキンヘッドを包んで、そして、

 

 

「お兄さんっ!!」

 

「っ、椎ちゃんっ!?」

 

 

背後に控えていたはずの椎ちゃんをも飲み込んだ。まずいっ!? 椎ちゃんだけでは戦えない。でも、俺の位置からでは間に合わない。

 

 

「っ、遠治くんっ!」

 

「アンナっ! っ、頼むっ!!」

 

 

アンナはそのまま椎ちゃんを飲んだ黒渦に飛び込んでいった。残されたのは、俺と若菜お嬢様。そして、ソフィー。渦に飲まれた彼女たちのことは気になるが、任せるしかない。今は目の前の敵を倒すことに集中しろ!

 

 

「…………『セバスチャン』の方は俺が引き付ける。その間にソフィーを頼む、若菜お嬢様」

 

「分かったわ」

 

 

小声でそう指示を出す。俺とソフィーだと相性は最悪だ。だが、不幸中の幸い、こちらには若菜お嬢様が残ってる。『クサンティッペ』は女性には効き目がないという。だから、ソフィーは若菜お嬢様に任せて……。

 

 

ーーズズズズズズズズッーー

 

「っ、そう来るよな!」

 

 

またも黒渦が迫る。ターゲットは若菜お嬢様。俺は装着していた『ロストドライバー』を展開する。『エターナル』へと姿を変えた俺は『マキシマムドライブ』を発動させる。

 

 

『どうせ、あんたの近くにいるんだろ! 恥ずかしがり屋の執事さんがよ!』

ーーボゥゥゥッーー

 

『エターナル』(あなた)の『白い炎』。それは少々、危険ですわね」

 

 

俺は『白い炎』で若菜お嬢様を襲おうとした黒渦を焼却。その後、今度はソフィーへ向け炎を放つ。走る炎は確実にソフィーへと。

 

 

ーーズズズズズズズズッーー

 

『あぁ、分かってたぜ!』

ーーググッーー

 

 

ソフィーを守るため、黒渦を俺と彼女の間に展開する『セバスチャン』。瞬間、俺は『白い炎』を拳に纏わせて、渦ごとぶん殴った。

 

 

ーーバギィィィッーー

 

 

振り抜いた拳に何かを捉えた感触を感じる。『白い炎』により、殴った相手の輪郭が見えた。さらに燃え広がり、

 

 

ーーバリンッーー

 

 

『セバスチャン』とやらの肉体からメモリが排出され、壊れる。吹き飛ばされた『セバスチャン』が起き上がった時に、その姿が明らかになる。なんといえばいいか……そいつは見たことがない、だが、どこかで見たことのあるような、個性のない顔だった。感情も読み取れないくらいの無表情。こいつは……。

 

 

「はぁぁ、『セバスチャン』」

ーーブンッーー

 

「………………」

 

 

『ホール アップグレード』

 

 

ソフィーから投げ渡されたメモリと『強化アダプター』を、ぎこちない動きで受け取り、起動させる『セバスチャン』。それを自らの首に挿し、また奴の姿が消えた。

 

 

「まったく……使い物になりませんわね」

 

『……なんだ、そいつ』

 

「答える必要ありまして? 『セバスチャン』、今度はちゃんとやりなさい」

ーーパチンッーー

 

 

ーーズズズズズズズズッーー

ーーズズズズズズズズッーー

ーーズズズズズズズズッーー

ーーズズズズズズズズッーー

ーーズズズズズズズズッーー

 

 

『なっ!? 若菜お嬢様っ!』

 

「っ」

『クレイドール』

 

ーードプンッーー

 

 

まるで壁のように展開した黒渦は若菜お嬢様を飲み込んだ。そして、奴の気配も消える。つまり、今ここにいるのは俺とソフィーだけ。

 

 

「やっと、ふたりきりですわね、久永遠治」

 

『っ』

 

 

奴はそう言って笑う。双子のアンナとは似ても似つかないおぞましい笑みで、彼女は『強化アダプター』を装着したメモリを起動した。

 

 

『クサンティッペ アップグレード』

 

 

 

ーーーーside:椎ーーーー

 

 

「う、うぅぅ……」

 

 

前に飲み込まれた時と同じ感覚から抜けると、そこはどこかの公園だった。切れかけの街灯だけが場を照らす薄暗い公園。なんでボクも飛ばされたんだろう。その答えはすぐに分かった。

 

 

「よう……『0758』」

 

「っ」

 

 

聞き覚えのある声。そして、ボクを番号で呼ぶのは1人しかいない。街灯の下に、その人はいた。スキンヘッドの巨大な男の人。『管理者』。

 

 

「ソフィーも粋な計らいをしてくれるよなぁ」

 

「は、はぁっ……」

 

「俺に逆らったお前を、なぶり殺していいってよぉ……!」

 

「いや、いやっ……!?」

 

 

その人はゆっくりとこちらへ向かってくる。

あの声は、ボクを罵倒し、従わせようとしていた声。

あの目は、ボクを道具にしか思わない目。

あの腕は、実験が上手くいかない時にボクを殴った腕。

あの脚は、動けなくなったボクの腹を蹴り飛ばしてきた脚。

あぁぁぁぁ……あの人の、目に写る全てが怖い……っ。

 

 

「……うぅぅぅ」

 

「おぉ……なんだぁ、今さら素直になったって遅いからなぁ……俺に逆らったんだ、苦しませながら殺してやるよぉぉ」

 

 

身体が動かない。怖い……怖いよぉ……。助けてっ、助けて。

 

 

「あぁ? あの男は来ねぇよぉ、奴はソフィーが止めてるからなぁぁ」

 

「はぁっ、やっ……やだ、こないでっ」

 

 

自分の身体を抱いても震えが全然止まらない。

 

 

「ハハハ……まずは一発、ぶん殴るぞぉぉ」

ーーググググッーー

 

ーーブンッーー

 

 

風を切って振り下ろされた拳。

 

 

「…………あ、れ……?」

 

 

はボクには届いてない。顔を上げると、そこにいたのは、

 

 

「大丈夫かい、椎くん」

 

「あ……アン、ナちゃん……っ」

 

 

拳を止めるアンナちゃんだった。

 

 

「ああ? 邪魔すんなよぉ」

 

「邪魔はするさ。私は彼女の仲間だからね」

 

「仲間ぁ? 実験動物に仲間ぁ? ハハハはハハハッ」

 

 

大笑いをするその人はさらに力を込めていく。そして、追い打ちにメモリを取り出し、起動した。

 

 

『マッスル アップグレード』

 

 

その人の姿が変わる。人体模型のような真っ赤な肉体に骨のような白いラインが入った『ドーパント』。

 

 

『ハハハハッ! いいなぁ! 『ホール』とか『ラビリンス』なんてややこしいメモリじゃねぇ……! ただ俺の力が強化されるぅ、だから、こういうのが好きだぜェェ!!』

ーーグググググッーー

ーーグググググッーー

 

 

彼の高笑いに呼応するように、彼の腕が肥大化していく。普通の腕の5倍くらいになったその腕に、徐々に押されていくアンナちゃん。

 

 

「…………」

 

「あ、アンナちゃん……ボクはいい、から……逃げてっ」

 

 

勝てるわけないっ。こんな怪物相手なんだもん……。このままじゃアンナちゃんも潰されちゃうよ……っ。

 

 

「ご、ごめんねっ……」

 

「……なんで謝るんだい」

 

「ボクのせいで……ボクがお兄さんのところに来たせいで……っ」

 

 

ガタガタと震える身体。気づけば涙も溢れて、こぼれてる。心が壊れそうだ。ごめんね、ごめん、ごめんなさい。ボクはーー

 

 

ーービタッーー

『あぁァ??』

 

「え……?」

 

 

徐々に迫っていた巨大な腕が止まる。こちらをじわじわ追い詰めようとしてるわけでも、手加減してるわけでもない、よね……?

 

 

「椎くん」

 

「え、あ……うん」

 

「あの時と一緒だ。だけど、今、遠治くんはここにいない。だからーー」

 

 

アンナちゃんは笑う。

 

 

 

「ーー君は私が守るよ」

 

『フェアリー』

 

 

 

ーーーーーーーー




『マッスル』は三軒牌様よりいただきました。
ありがとうございます!

追記
※誰ともくっついてないのに何故かR版を書き始めました。
 なんでだろう……? あれぇ……?
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