『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第41話 Wに関わるな / 敗走

ーーーー井坂内科医院周辺・side:若菜ーーーー

 

 

作戦通りの分断はできなかった。2人で飛ばされた方はいいとして、単身渦に飲まれたお姉様や『悪女』のメモリを持つ女を相手にした遠治は正直、心配ね……。でも、

 

 

『………………』

 

 

 

こいつだけは計画通りに分断できてる。しかも、見れば井坂内科医院からそう離れていないところに飛ばされたみたい。なら、すぐにこいつを片付けて遠治と合流する!

 

 

『行くわよ!』

ーーズズズッーー

 

ーーバシュンッーー

 

 

腕の先から光弾を放出、同時にわたしは走り出す。今までのを見て、『ホール』というメモリは離れたところから渦を飛ばす遠距離タイプだと思う。『クレイドール』も至近距離は得意じゃないけど、死ぬことはないから、攻められる。

 

 

『はぁぁっ!』

ーーバギィッーー

 

『…………』

 

 

相手の腹に当たった。あの黒渦は光弾を防ぐために使ったみたいだし、同時発動はできても意識外の攻撃には対応できないってこと? それなら倒せる!

 

 

ーーガンッーーガンッーーガンッーー

 

 

金属製な『ホール』の装甲を打つ音が響く。腹に直撃したことで、相手はまだ体勢を立て直せてない。『クレイドール』は護身用のメモリだから攻撃力は高くない。相手に立て直されたら勝率はぐんと下がってしまうはず。だから、打撃は止めない。『クレイドール』の腕先の硬球で叩き続ける! やがて、

 

 

ーーガンッーー

 

『………………」

ーーどさっーー

 

 

そいつは声をひとつもあげずに倒れ、変身も解けた。勝負をかけたとはいえ、あまりにも弱すぎる。

 

 

「……なに、こいつ」

 

 

変身を解き、軽く倒れたその男を蹴るも、反応はない。本当に倒せてはいる、わよね。こんなのがあのソフィーって女の護衛として貼り付いていたのは本当に不可解で。

 

 

「ううんっ、今は急がなきゃ」

 

 

頭を振ってモヤモヤを追い出し、わたしは遠治の元へ急いだ。

 

 

~~~~~~~~

 

 

「遠治!!」

 

 

わたしが彼のところに戻った時、彼はなぜか棒立ちしていた。その前には、例の女がいて。

 

 

「あら、思ったよりも早かったですわね。はぁ、本当に出来損ないの人形ですこと……あとで『財団』に文句のひとつでも言わなくてはね」

 

 

そうは言うが、彼女の表情はあまり変わらない。元から期待はしていなかった、そんなところだろう。一瞬でもいいから遠治と一対一になれればって感じ。

 

 

ーーガチャッーー

 

「若菜くん!」

「若菜ちゃん!」

 

 

そこでちょうどアンナと椎が合流する。そっちも無事だったみたいね。お姉様は……まだ。

 

 

「どういう状況だい?」

 

「っ、分からない。ただ遠治がさっきから動かないわ」

 

 

アンナにそう伝え、指差す。やっぱりさっきから身動ぎひとつしてない。

 

 

「ソフィー姉さんのメモリの影響と考えた方がいいだろう」

 

「っ、『悪女』に魅せられてるって? 悪い冗談ね。遠治!」

 

「お兄さんっ!」

 

 

「………………」

 

 

こちらの声は届いていないようだ。なら!

 

 

「まずはあいつを倒せばいいわよね!」

 

「あぁ、行こう」

 

「ボクも戦うよ!」

 

 

『クレイドール』

『ボム』

『イマジナリー』

 

 

メモリを起動。わたしと椎は『ドーパント』になり、アンナは銃型の武器にメモリを装填した。

 

 

『はぁぁっ!』

ーーバシュンッーー

 

「彼から離れろ!」

『ボム マキシマムドライブ』

 

 

牽制でソフィーに向けて、光弾と火球が放たれる。当たればよし。けれど、

 

 

「あら、物騒ね。『セバスチャン』」

ーーズズズズズッーー

 

『!?』

「! あれはっ!」

 

 

攻撃は当たらない。突如として現れた黒渦に飲まれてしまう。て、あれは……っ!?

 

 

『確かに倒したはずっ』

 

「……フフッ、残念でしたわね」

 

 

『らぁぁぁっ!!』

 

 

倒したはずの相手が現れたことに一瞬動揺するわたし。ただ、彼女は冷静だった。『イマジナリー』で姿を消していた椎はソフィーの死角、背後に回り込み、拳を振るう。けど、

 

 

ーーズズズズズッーー

 

「……当たるとお思いで?」

 

 

彼女の拳も黒渦に止められてしまった。また椎が飛ばされるかと焦るわたしと対照的に彼女は笑う。

 

 

『にししっ! かかった!』

 

ーーグラッーー

『………………」

 

「『セバスチャン』……?」

 

 

ソフィーの側で男が倒れる。後から聞いて分かったことだけど、椎の『イマジナリー』は敵に幻覚を見せられるという。彼女の攻撃はソフィーを守る『セバスチャン』を確実に昏睡させた。

 

 

「ナイスだよ、椎くん!」

『ボム マキシマムドライブ』

 

『っ、えぇ! 喰らいなさい!』

ーーバシュンッーー

 

 

これで相手は丸腰! この攻撃は避けられない!

勝利を確信したその時だった。

 

 

 

ーービュゥゥゥゥゥゥーー

 

ーーバチバチバチッーー

 

 

『!?』

『うわっ!?』

「っ」

 

 

わたしたちの攻撃を弾くように、突如として竜巻が出現した。さらに、ソフィーの近くにいた椎を雷が襲う。あまりにも前兆なく起こった異常気象。これはまさかーー

 

 

 

『ずいぶん騒がしい客人ですねぇ』

 

 

 

そこにいたのは白い『ドーパント』。まるでソフィーを守るかのように、わたしたちの前に立ち塞がっていた。まるで風神と雷神をモチーフにしたような装飾で着飾った『そいつ』の中身の名前を、アンナは苦虫を噛み潰したように呟いた。

 

 

「井坂、深紅郎……ッ」

 

『! あいつがっ!?』

 

 

『ウェザー』。

あらゆる気象を操る『ドーパント』。竜巻や雷、大雨、日照。1つのメモリとは思えないほどの多彩な能力をもつ、シルバーランクの『ガイアメモリ』。その持ち主であり、今回、久永雪南を拐った張本人だった。

 

 

「椎くん! 若菜くん!」

『ボム マキシマムドライブ』

 

『うんっ!!』

『分かってるっ』

 

 

アンナの声で再びわたしたちは動き出す。椎は『イマジナリー』で姿を消し、わたしも光弾の発射とともに駆け出す。どちらかが隙を作り、どちらかが零距離で奴に攻撃を叩き込む。それしかない。理屈ではなく、本能で理解した。それほどの重圧で。

 

 

『はぁぁっ!』

ーーバシュンッーー

 

『弱い!』

ーーバチバチバチッーー

 

 

溜めもない雷で、わたしの攻撃は防がれる。さらに、突風が吹き荒れ、『ボム』の『マキシマムドライブ』も霧散してしまった。けど、まだ!

 

 

『らぁぁぁっ!!』

ーーグッーー

 

 

椎が『ウェザー』の背後に回り込んでいる。さっき、『セバスチャン』を倒した技を使うために、彼女は手を伸ばした。

 

 

ーードプンーー

 

『え……? 水……?』

 

 

彼女が触れたのは、『ウェザー』ではなく、その前に突如として出現した水の壁だった。奴には届かない。

 

 

『…………姿を消すメモリ。今の私には、癪に障る能力だっ!』

ーーザァァァッーー

 

『え、なっ!? が、ぼっ!?』

 

 

雨が椎の周りにだけ降り注ぐ。止める暇などなく、水が椎を包み込んだ。あれはまずいっ!? 溺れ死ぬ!?

 

 

「椎くんっ!!」

 

『ヘル』

 

 

わたしが走るよりも速く、アンナはそのメモリを自らに挿し込んだ。ボロボロのローブの『ドーパント』になり、汚泥を『ウェザー』に向けて飛ばす。

 

 

『ほう、中々に高そうなランクのメモリですねぇ』

 

ーージュゥゥッーー

 

 

だが、『ヘル』の攻撃はやはり届かず、蒸発してしまう。今度は高熱!? ノーモーションでこんな……っ!?

 

 

『あ"ぁァァ"ァ"ァ"ぁァっ!!!』

 

 

叫びながら組み付くアンナ。だが、『ウェザー』はそれを意にも介していないようで。

 

 

『ソフィーくん』

 

「はい、先生♡」

 

『『仮面ライダー』諸君に私の正体がバレてしまった。この診療所はもう使えない。中にいる彼女を連れて、ここを立ち去るとしましょう』

 

「承知いたしましたわぁ♡」

 

 

アンナと交戦しながらも、そんな会話をする『ウェザー』。そして、ソフィーもこちらに背を向けて。

 

 

『チッ! 待ちなさいっ!!』

ーーバシュンッーー

 

『…………フフッ』

ーービュゥゥゥゥゥゥーー

 

『なっ!?』

 

 

ソフィーへ放った光弾は、片手間で発生させた竜巻に飲まれる。そして、竜巻のパワーも乗り、アンナへと襲いかかってしまった。変身が解除され、こちらへと吹き飛ばされるアンナ。

 

 

「っ、はぁ……はぁっ」

 

『くっ!』

 

 

光弾を放とうとするも、わたしたちの間に水の柱に包まれている椎がいて、攻撃できない。

 

 

「ご、ぼ……っ」

 

 

水に囚われた椎は既に変身が解けている。わたしの攻撃では歯が立たないし、アンナも『ヘル』の反動で動ける状態じゃない。彼女が溺死するのも時間の問題。

 

 

『っ、はぁぁぁッ!!』

 

「わか、なくんっ!」

 

 

でも、やらないわけにはいかない! 何もせず目の前でむざむざ彼女を死なせてしまったら、自分で自分を許せなくなる!

大丈夫。『クレイドール』があるわたしが死ぬことはーー

 

 

『甘い』

ーーバヂンッーー

 

「が、ッ!?!?」

 

 

一閃がわたしの腰を貫く。同時に変身が解除されてしまう。何が……?

 

 

『これだからドライバー使いはっ! ドライバーさえ壊してしまえば何もできない』

 

「はっ、はぁ……っ、ぐっ」

 

『フフッ、目の前で仲間が死ぬのを見るといい』

ーーゴポゴポゴポゴポッーー

 

「っ、ご、が…………」

 

 

まずい、まずいまずいまずい。これじゃ本当に……!?

 

 

 

『止めてもらおうか』

 

ーーズパンッーー

 

 

突然だった。『ウェザー』の腕を誰かが切り裂いた。攻撃モーションが中断されたことで、水の柱は形を崩す。解放された椎を抱き止めたのは1人の青い『ドーパント』。あれは!

 

 

「霧彦、お兄様!?」

 

『やぁ、若菜ちゃん。久しいね…………っと』

ーーパリンッーー

 

 

わたしが名前を呼ぶのに応えるかのように、変身が解除され、霧彦お兄様がその姿を現した。

 

 

「『ナスカ』……よく保ってくれたね」

 

『……なんのつもりだ、園咲霧彦。君は妻の園咲冴子を取り戻すんじゃなかったのかな』

 

「あぁ、その妻に目を覚ましてもらったのさ」

 

『答えになっていないッ!』

ーーグッーー

 

 

生身の霧彦お兄様に能力を使おうとする『ウェザー』。絶体絶命の場面で、

 

 

「……………………」

ーーガシッーー

 

『!』

 

 

彼が、遠治が『ウェザー』の腕を掴んでいた。けど、様子が変。遠治……意識がない?

 

 

「………………」

 

『邪魔をっ!』

ーーググググッーー

 

 

「井坂先生! 準備が整いましたわぁ♡」

 

 

響いた声は井坂医院から巨大な棺を運んできたソフィーのもので。それを聞いた『ウェザー』は人間へと戻り、彼女の方へ向かった。

 

 

「逃げ、るなっ! 雪南くんを……っ」

 

「……逃げる? アンナ、状況をよく考えなさい。そちらは『ドーパント』への変身能力を失った人間が2人、戦闘不能のものが2人、そして、意識すらない『仮面ライダー』が1人」

 

 

この状況で命拾いしたのはどちらかしらねぇ?

ソフィーは歪んだ笑みで、勝ち誇ったようにアンナにそう言った。さらに、井坂は紳士的に告げる。

 

 

 

「彼女はいただいていきます。もう少しで彼女は最高の触媒になりますから」

 

「そして、園咲のお嬢さん。君の父親に伝えてください。近く……『テラー』を戴きに行く、とね」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

久永遠治……意識不明。原因も不明

アンナ京極……『ヘル』メモリの副作用により戦闘困難。

久永椎……溺死寸前までいったことによる衰弱。

園咲冴子……行方不明。

園咲若菜……『ガイアドライバー』破損。変身不可。

 

久永雪南……奪還失敗。

 

 

ーーーーーーーー




『W』編完結。
主人公チーム、敗北。

次回より新章ですが、もしかしたらゆるーい番外編書くかもしれません。アンケートご協力ください。

番外編見たいのは……?

  • 日常修羅場編
  • 日常遠治くんキャラ崩壊編
  • 温泉編
  • いや、本編を書けぇぇ!!
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