『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第43話 幕間B / 野獣を追いかけろ

ーーーー鳴海探偵事務所付近・side:椎ーーーー

 

 

『尾藤勇!』

 

 

電話の向こうのアンナちゃんに報告したのは、昨日、探偵事務所に来た依頼主の名前だ。アンナちゃんにはその名前に聞き覚えがあったみたい。少し驚いたような反応が返ってきた。

 

 

「知り合い?」

 

『いいや、そういう訳じゃないんだ……それで、その尾藤さんはどんな依頼を?』

 

「んーとねぇ」

ーーひょいっーー

 

「あっ!?」

 

 

アンナちゃんに依頼の詳細を伝えようとした瞬間に、スマホを取り上げられてしまった。見れば、いつの間にか探偵事務所から出てきてた翔太郎さんがそこにはいた。

 

 

「椎ちゃん、勝手に部外者に依頼人の情報を流すんじゃねぇよ。ウチの信用に関わる」

 

「部外者じゃないよ!」

 

「あー?」

 

 

翔太郎さんはボクのスマホの画面を見た後、スピーカーをオンにした。

 

 

『やぁやぁ、翔太郎くん』

 

「……誰かと思えば、ドジっ娘をうちの事務所に送り込んだ張本人じゃねぇか」

 

『椎くんがいい働きをしているようでなによりだよ』

 

「えっへん!」

 

「…………で、なんでこっちの依頼の話を聞き出そうとしてるんだ?」

 

 

ため息を吐きながら翔太郎さんは、電話の向こうのアンナちゃんにそう訊ねた。こっちにも守秘義務があるんだと言って。それに対して、アンナちゃんは逆に聞き返す。

 

 

『翔太郎くん、最近……いや、昨日『W』になった時に違和感を感じなかったかい?』

 

「っ、お前、なんでそれを!?」

 

「?」

 

 

よく分からない話を2人はしてる。なんだかそれが翔太郎さんにとっては黙るトリガーになってたみたいで、アンナちゃんは話を進めていく。

翔太郎さんが尾藤さんから持ち込まれた依頼内容を共有した。それが探し物は『木彫りの熊』で、翔太郎さんのお師匠さんだった人の別荘にあることも。

 

 

「って訳で俺と尾藤さん、あとは亜樹子で、風吹山の別荘にこれから行ってくる予定だ」

 

『そうか。それじゃあ、私と椎ちゃんも同行しよう』

 

「はぁ? 何を言ってーー」

 

『今回の件には井坂深紅郎が関わってくる可能性がある』

 

「!」

 

『雪南くんを助けるためにも動かない訳にはいかないんだよ』

 

 

その一言で、翔太郎さんは渋々ながら頷いた。アンナちゃんがメモリを使わないことが条件だけど。それから翔太郎さんはさっきアンナちゃんが指摘したことについて訊ねる。

 

 

「なぁ、あれは……あのバチバチは一体なんなんだ」

 

 

その質問にアンナちゃんは、声色をかえ告げた。

 

 

『今、フィリップくんは進化の時を迎えている。ハッキリ言おう。今の君ではその進化についていけない』

 

 

ーーーー風吹山・鳴海荘吉別荘ーーーー

 

 

アンナちゃんが言うには、今回、ボクたちは積極的には関わらないこと、この事件の成り行きを見守ることが大事だそうだ。これが『W』に必要なことらしい。難しいことは分からないけど、ボクはそれに頷いた。それにメモリは使わないって、翔太郎さんに言っちゃったしね。

……でも、もしアンナちゃんのお姉さんが介入してきたら話は別。井坂深紅郎とソフィーと戦う必要がある。でも、アンナちゃんはまだ『ヘル』は使えないみたい。そうなったら、ボクだけで戦わなきゃ……。

 

 

「すまない、椎くん」

 

「ううん、大丈夫! ボクだって戦えるからね!」

 

「……うん、ありがとう」

 

 

そんな話をしなかまら、ボクらは翔太郎さんたちについていく。そして、山の中を歩くこと1時間くらい。やっとその建物に着いた。翔太郎さんたちが建物に入ってくのを見守る。ボクたちはここで待機だ。

 

 

「ふ、ふぃぃ……疲れたぁ」

 

「お疲れ様、椎くん」

 

「とりあえずボクたちは外で待ってればいいんだっけ?」

 

「あぁ、辺りを警戒しておこう」

 

「はーい!」

 

 

とりあえず足を揉みながら、ゆっくり建物の周りを歩く。木で出来てて、造りはしっかりしてそうだけど、結構古くてところどころ虫食いがあった。翔太郎さんもかなり久しぶりに来たって言ってたし、手入れをする人はいなかったんだろうなぁ。

 

 

「ふわぁぁ」

 

 

ふとあくびが出た。じょうほーしゅーしゅーのためだけど、慣れない探偵事務所で働いている分、まだ疲れがとれてないのかも? 目をゴシゴシと擦っていると、

 

 

「椎くん!!」

 

「!」

 

 

建物の入口の方からアンナちゃんの大声。ボクは回らない頭を叩き起こしてすぐに駆け出した。

 

 

「アンナちゃん!」

 

『おや? そちらの彼女も一緒ですか』

 

「っ、お前はっ!」

 

『熊狩りのついでです。殺して差し上げましょう』

 

 

そこにいたのは『ウェザー』。アンナちゃんが言っていた通り、探していた熊を狙ってきたんだ。誰も怪我はしていないけど……。

 

 

「フィリップ!」

ーーカシャッーー

 

『ジョーカー』

 

 

翔太郎さんがメモリを起動する。でも、

 

 

「おい! フィリップ!」

 

 

なぜかフィリップさんからの返事がないみたい。

 

 

「まぁ、そうなるだろうね。椎くん、頼めるかい?」

 

「うん! アンナちゃんは尾藤さんと所長さんを!」

『イマジナリー』

 

 

代わりに、ボクはメモリを起動した。同時に姿が消える。

前回のリベンジだ。ボクの『イマジナリー』は触ることで能力が相手に現れる。今度こそ『幻』を決めて『ウェザー』を倒す! そして、

 

 

『雪南ちゃんを返せ!』

 

『また姿を消す。馬鹿の一つ覚え、ですねぇ!』

ーーバチバチバチバチッーー

 

 

全方位への雷攻撃。対処方法は離れること。だから、ボクはそれを避けながら移動する。ここだと皆を巻き添えにしちゃう。だから、ボクは駆け出した。ボクの姿は見えないはず。だけど、『ウェザー』はどうにかしてこっちを追ってきた。そうして、ボクは『ウェザー』を近くの川へと誘導する。

 

 

『ちょこまかと鬱陶しい』

ーーぐぐっーー

 

『!』

 

『消し炭になれ!』

ーーバチバチバチバチバチバチバチバチーー

 

 

溜めて放つ電撃。また距離を離さなきゃ! でも、向こうが強い攻撃を繰り出したからこそ、隙ができる!

 

 

『はぁぁぁぁっ!!』

 

 

ボクは攻撃をもらう覚悟でそのまま突っ込んだ。もちろん、受けるのは最低限! 1……2発食らった。激痛が右肩と左足に走る。だけど、もらったよ!! 『ウェザー』まであとーー

 

 

ーーズズズズズッーー

 

『っ』

 

 

手が触れる寸前、ボクと『ウェザー』の間に黒渦は現れた。これは『ホール』の!? こいつがいるってことは!?

 

 

「お怪我はなくて、井坂先生」

 

 

渦をくぐり抜けて出てきたのはアンナちゃんのお姉さん・ソフィー。

 

 

『っ、またっ!』

 

「そちらの実験動物もごきげんよう」

 

『っ』

ーーダッーー

 

 

ボクはすぐに標的を変える。アンナちゃんは何をしてくるか分からないって意味で、この人が一番危険だって言ってた。なら、この人を倒しちゃえば!!

 

 

『甘いっ!』

ーーザァァァァァーー

 

『っ』

ーーバッーー

 

 

慌てて飛び退く。危なかった。前にやられた雨攻撃。あれを1人で受けちゃったら確実にやられてた。ただでさえ2対1なんだからーー

 

 

「らぁぁっ!!」

ーーブンッーー

 

「おっと」

 

『翔太郎さん!?』

 

「大丈夫か、椎ちゃん!」

 

 

そこに現れたのは、翔太郎さんだった。変身はしてないけれど、加勢に来てくれたみたいだ。ボクの姿を見つけられず、キョロキョロする翔太郎さん。ボクは見えないけどここにいるよと伝えて、2人で『ウェザー』とソフィーに向き合った。

 

 

『まったく……生身で向かってくるとは……ナメられたものだッ!!』

ーーバチバチバチバチッーー

 

『「!?」』

 

 

再び襲ってくる雷は、

 

 

ーーギギィィィィィィーー

 

 

ボクたちには届かずに、巨大なマシンに止められた。そこからフィリップさんが出てきて、何やら翔太郎さんと2、3言葉を交わした。その後に、ボクにも声をかけてくるフィリップさん。

 

 

「久永椎。君はソフィーを引き付けてくれ」

 

『う、うん!』

 

「任せたよ」

『ファング』『ジョーカー』

 

 

「「変身!」」

 

 

2人は白と黒の『仮面ライダーW』に変身して、『ウェザー』に向かっていった。ボクはソフィーと改めて対面する。でも、彼女に慌ててる様子はなくて、

 

 

『いいの?』

 

「えぇ、井坂先生はここでは決して負けませんから」

 

 

余裕たっぷりにそう言った。何を考えてるのかは分からないけど、今がチャンスだ。ボクは息を潜めて姿を、気配を完全に消す。

 

 

「……やはりわたくしには見えませんわね」

 

『…………』

 

 

まだだ。ソフィーの側には『ホール』を使う人がいる。だから、見極めるんだ。ソフィーの視線や体の動きから、『ホール』の人が警戒する場所と隙になる場所を!

 

 

「井坂先生のような全方位への攻撃手段もありませんし……困りましたわ」

 

『…………!』

 

 

ソフィーが何かにもたれかかるような動きをした。そこには何もないように見える。けど、そこにはたぶん『ホール』がいる。なら!

 

 

ーーダッーー

 

 

ソフィーの重心は左。なら、『ホール』がいるのはソフィーの左側! ボクはもう一度、手を伸ばした。その手は何かに触れる。そして、

 

 

『…………」

ーーガクッーー

 

『よしっ!』

 

「あら、また壊れてしまいましたのね」

 

 

『ホール』に触れることができ、『イマジナリー』が発動する。同時に『ホール』は姿を現して、さらに人間へと戻った。

よし! これでソフィーに手が届く!

 

 

『『ぐぁぁぁっ!?!?』』

 

 

『え?』

 

 

突然響いた声。その方向を見ると、『ウェザー』と戦っていた翔太郎さんたちの変身が解除されてしまっていた。傷はないからやられた訳じゃないと思う。じゃあ、一体……?

 

 

「さ、ここですわね」

ーーパチンッーー

 

『!?』

 

 

変身解除された2人を見て、ソフィーは指を鳴らした。次の瞬間に上空にまた黒渦が発生してて、そこから一体の『ドーパント』が降ってきた。ドスンと音を立てて落ちてきたその『ドーパント』はーー

 

 

 

『あれ、翔太郎さんが昨日戦った『ビースト』!?』

 

 

 

間違いない。あれは昨日、翔太郎さんに同行した時に見た『ドーパント』・『ビースト』だ。でも、何かが違う。背中には無数の棘が生えて、尻尾がまるで蠍のような形に変化していた。

まさか『強化アダプター』!?

 

 

「フフッ、ご名答ですわ」

 

『っ、翔太郎さん! フィリップさん!』

 

 

叫ぶ。だけど、2人はその場から動かない。『ビースト』は構わず2人へと向かっていって。

 

 

ーーブンッーー

『なっ!?』

 

ーーザグッーー

 

 

空中の『ビースト』に向かって飛んできた何かは、『ビースト』には当たらず地面へと突き刺さる。見れば、それは『エンジンブレード』……つまり、投げたのは!

 

 

 

『何をしている! 左! フィリップ!』

 

 

 

照井さんーー『仮面ライダーアクセル』だった。彼はすぐに地面に刺さった剣を回収し、敵との距離を詰めて振るう。

 

 

「照井竜……!」

 

『何故変身を解いている!』

 

「今は変身ができない。ここは一旦退却してーー」

 

『! ならば、俺1人でもこいつと井坂を倒すッ!!』

 

 

『エンジンブレード』で斬りつけていく『アクセル』。けど、『ビースト』と『ウェザー』を相手にして、立ち回れるわけがない。少しずつ劣勢になっていく。ボクも加勢を、そう思ってもソフィーから目を離すわけにはいかなくて。

じり貧だ。そう思っていると、

 

 

「照井竜!」

 

『!』

『サイクロン マキシマムドライブ』

 

 

フィリップさんから投げ渡された『サイクロン』で必殺技を放つ『アクセル』。剣に纏わりついた風が暴風と化し、『ビースト』と『ウェザー』両方を襲う。

効いてる! すごい!

そう思って見ていたんだけど。

 

 

ーーズズズズズッーー

 

『!?』

 

 

風を阻むように立ち塞がる黒渦。それは2体の『ドーパント』を包み込んで消える。そして、

 

 

『ま、まて!』

 

「それではごきげんよう。アンナにもよろしくお伝えくださいませ」

 

 

ソフィーもその場から消えてしまったのだッた。

 

 

 

ーーーー風都駅前セントラルホテルーーーー

 

 

 

「おい! 熊はどうすんだよ!」

 

 

井坂先生に詰め寄る品のない男・有馬。原作通り、粗暴で知性のない男ですわね。本当はいますぐにでも消してしまいたいのですが、井坂先生の計画のためにはそうもいきません。

 

 

「ソフィーくん」

 

「はい、先生♡」

 

 

先生の呼びかけに、わたくしは頷き、もう1つの『強化アダプター』を手渡しました。先生はそれをそのまま有馬へと渡す。

 

 

「『強化アダプター』の力は使ってもらって分かったでしょう。もう1つ、これをお渡ししておきます」

 

「……これを鈴子に渡せってか?」

 

「はい。メモリは後ほど必ずお渡ししますよ」

 

「……ふんっ!」

 

 

井坂先生の手から奪い取る蛮族。そのままホテルの部屋を出ていきます。

本当に今すぐに殺してしまいたいのですが……。

 

 

「フ、フフッ、素晴らしい。『テラー』を奪う前に、ぜひあのメモリの力を取り込みたいものですねぇ」

 

 

井坂先生の機嫌はすこぶる良いのです。先生の笑顔に免じて、もう少し泳がせておいて差し上げましょうか。

 

 

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