『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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最終章『P』編、開幕です。


第46話 Pの誕生 / 告白

ーーーー鳴海探偵事務所・side:椎ーーーー

 

 

鳴海探偵事務所の地下、いつもフィリップさんが過ごしている秘密基地みたいな場所に、ボクも含めて6人の人がいた。翔太郎さんとフィリップさん、所長さん、照井さん。そして、若菜ちゃんだ。そこにボクも混ざって話す。話題は勿論、

 

 

「若菜姉さんたちの話を総合するに、井坂は父さんから奪った『テラー』を久永雪南に挿すことで、その力を成長させ、自らの物にしようとしているのだろうね」

 

「……えぇ、それは間違いないわ。あの男は……わたしの目の前でそう言っていたから」

 

 

フィリップさんの言葉に、若菜ちゃんは頷いた。

 

 

「準備はできたと言っていたらしいが、『テラー』は長年父さんが使用していたこともあって、久永雪南の肉体に再調整するまでは1週間ほどは必要だろう。こちらも十分に準備をしておくべきだ」

 

「……本当はすぐにでも……ううん、なんでもないわ」

 

「姉さん……」

 

 

2日前にあった園咲家での戦闘の後、ずっと若菜ちゃんは泣いていて。未だにまぶたの腫れはまだ引いてない。それでもお父さんの仇を討つって立ち直った。

 

 

「なぁ、若菜姫。目の前でお父さんを殺されたのは……なんだ、辛かっただろうが、復讐は……」

 

「止めておけ、左」

 

「……照井」

 

「復讐心が彼女の心を支えていることもある」

 

 

アンナちゃんに聞いた。照井さんはあの井坂って人に家族を殺されていて、復讐のために『仮面ライダー』になったんだって。それでも復讐を越え、人々を守るためにその力を振るう。そんな人の言う言葉は重くて、翔太郎さんもそれには言い返せない。代わりに、若菜ちゃんが口を開く。

 

 

「あの後、父を弔う暇もなく、あの女・ソフィーに屋敷は奪われたわ」

 

「あぁ、俺と照井で屋敷の周りを見てみたが、あれは異様だぜ。屋敷の周りを顔のない天使像が固めてる。間違いなくあの中に、井坂とソフィーって女、それから……」

 

「うん、雪南ちゃんがいる」

 

 

フィリップさんの『検索』によると、期限はあと5日ほど。とはいえ、雪南ちゃんのことを考えたら奪還は早いに越したことはない。敵の戦力を翔太郎さんと照井さん、フィリップさんが調べた後、すぐに園咲邸に奇襲をかける。決行は2日後。日付が変わったと同時に屋敷へと侵攻するということで話は終わった。

探偵事務所から出た後、ボクはそれらをすべて、アンナちゃんにメッセージを飛ばした。そして、若菜ちゃんに声をかける。

 

 

「……若菜ちゃん」

 

「遠治たちには?」

 

「うん、決行日も時間も伝えたよ」

 

「なら、行くわよ」

 

「うん」

 

 

ここからは探偵事務所の人達には秘密の行動。

あの化物と戦うには力が足りない。それは若菜ちゃんも感じていたみたい。ボクたちは戦える力を手に入れるために、アンナちゃんからとある人物のことを聞いていた。これから向かうのは、その人のところで。

 

 

「にしても、映画館にそんな人がいるとは思えないなぁ……」

 

「けど、今のところ強くなれる方法はそれくらいしかないもの。四の五の言ってないで、行くわよ、椎」

 

「うん」

 

そんな会話を交わして、ボクたちは風都の映画館『CINEMA T-ジョイ風都』へと向かうことにした。

 

 

 

ーーーー園咲邸を見下ろす丘・side:遠治ーーーー

 

 

「2日後の午前0時。屋敷の周囲4ヶ所から同時に奇襲をかける、だそうだが、異論はあるかい?」

 

「いや、俺はない」

 

「……貴女はどうですか、『シュラウド』」

 

『………………』

 

 

車椅子に座った『シュラウド』は、アンナの言葉を聞き、首を振った。2日前、園咲琉兵衛が死んだあの現場にも『彼女』はいたらしい。彼を倒すという目的を果たしたからなのだろうか。『彼女』からは以前のような生気を感じられなくなっていた。

 

 

『若菜も……戦うのね』

 

「はい。彼女自身がそう言っています」

 

『…………そう』

 

「まだ見つかってない冴子さんの方も今、霧彦くんが居場所を探してくれています」

 

『………………分かったわ』

 

 

アンナの言葉を聞き、俯く『シュラウド』。『シュラウド』が冴子さんや若菜お嬢様の母親だってことは、少し前にアンナから聞いていた。親として、娘には戦ってほしくない。そう思うのはごく自然な感情だよな。

正直、部外者の俺には『シュラウド』の感情にも、若菜お嬢様の決意にも口を出すことはできない。ただ、園咲琉兵衛から最期の言葉を預かった者としての責任がある。

 

 

「『シュラウド』」

 

『なにかしら』

 

「きっと冴子さんは見つかるし、若菜お嬢様は俺が……俺達が守るさ」

 

『…………』

 

「それとよ」

 

 

手段はともかく、あんたが園咲琉兵衛を倒そうとしたことは間違ってない。それを告げた上で、俺は続ける。

 

 

「園咲琉兵衛は家族を愛していた。後戻りができなくなったからそれを隠していただけで。その思いはたぶん、今のあんたと一緒だと思う」

 

『……えぇ』

 

「そんでさ……全部終わったら、冴子さんや若菜お嬢様とたくさん話をしてやってくれよ」

 

『………………ありがとう』

 

 

『彼女』は静かにそう言った。

園咲琉兵衛に託されてしまったのは、娘達のことだけではない。『シュラウド』……いや、園咲文音さんのことも頼まれているからな。彼女も安心させてやらなきゃいけない。

 

 

「改めて『ボム』とマグナムは借りていきます。あとは例のメモリをーー」

 

『調整はしておくわ。毒素も抑えられるように『ガイアドライバー』も貴女用と久永椎用に2つ、準備しておく』

 

「ありがとうございます、『シュラウド』。ちなみに、『強化アダプター』は……」

 

『調達は試みる。けれど……』

 

「分かっています」

 

 

あのソフィー姉さんのことですから、その辺りの施設は完全に抑えられているでしょうね。ダメで元々です。

アンナはそう言うと、『シュラウド』に背を向け、歩き出す。俺もその後に続く。チラリと振り返ると『彼女』は空を仰ぎ見ていた。その心中は俺には分からない。

 

 

~~~~~~~~

 

 

丘を降りた後、俺達は言葉を交わす。

 

 

「遠治くん」

 

「ん? なんだ?」

 

「改めて君は優しい人だね」

 

 

急に褒めてくるアンナ。なんだよと返すと、彼女は微笑んだ。

 

 

「『シュラウド』のことさ。『彼女』が今回の元凶である井坂にメモリを渡したことは話したよね」

 

 

聞いてはいる。『彼女』は園咲琉兵衛を倒すため、『仮面ライダー』である照井竜だけでなく、井坂深紅郎にもメモリを渡したと。彼女が言いたいのは、井坂にメモリが渡らなければ、雪南も連れ去られていなかったんじゃないか、とそういうことだろうな。けれど、それは……。

 

 

「井坂があそこまでの化物だってのは分からなかったんだろ。それは……『シュラウド』の責任じゃねぇよ」

 

「ふふっ、それでもあんな風に『彼女』の心を気遣えるんだ。やっぱり君は優しいよ」

 

 

またアンナは笑う。そして、

 

 

「流石は私の惚れた男だ」

 

「お、おう」

 

 

不意打ちのようにそんなことを口にしてきた。

……そういやそうだった。雪南が拐われたり、俺が意識を失っていたりと色んなことがあって棚上げにしていたが、アンナは俺に惚れている。なんだったら一線を越えかけた相手である。好意をストレートにぶつけられるのは、少し恥ずかしい。

ただ……。

 

 

「あー、なんだ、アンナ……そのだな……」

 

「あ、いや、すまない。今はそれどころじゃないのは分かってるさ。流石にそこまで節操なくはないよ。それに、私も雪南くんを助け出したい想いは一緒だからね」

 

 

アンナはそう言ってくれた。

 

 

「…………悪いな」

 

「ううん……ただ戦いが始まる前に1つだけ伝えておきたくてね」

 

「……ん?」

 

 

ポツリと呟くと彼女は立ち止まった。遅れてアンナが歩を止めたことに気づいた俺は振り返り、彼女の顔を見る。少しだけ照れたような、何かを決意したような表情で、彼女は言う。

 

 

「遠治くん、私は君が好きだよ」

 

「この戦いが終わったら……私と付き合ってほしい」

 

 

告白。それはもうストレートな告白だ。

続けて彼女は、その答えは雪南くんを取り戻した後でいい、と言ってはにかんだ。

……アンナの厚意に俺は甘えることにする。今は目の前の目的を果たそう。そして、戦いが終わったらーー。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

2日後。

各々が準備を整えて、園咲邸に集結する。

雪南を取り戻し、井坂とソフィーを倒すために。

 

さぁ、すべてを終わらせようぜ。

そして、この風都で『平穏』に暮らすんだ、みんなで。

 

 

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