『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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久々投稿です。


第47話 Pの誕生 / 襲撃開始

ーーーー園咲邸外郭・南側ーーーー

 

 

決行時間の5分前。俺は園咲邸の南側で息を潜めていた。隣には『ガイアドライバー』を装着した椎ちゃんもいる。

屋敷の北側には『仮面ライダーW』。東側には『仮面ライダーアクセル』。西にはアンナと若菜お嬢様。そして、南には俺達という陣形だ。能力差や戦闘経験も踏まえてこんな陣形になっていた。

 

 

「椎ちゃん」

 

「ん? なに?」

 

「君まで巻き込んじまって、すまーー」

 

「ーー謝ったら怒るよ」

 

「ぐむっ」

 

 

椎ちゃんの言葉に俺は咄嗟に口をつぐんだ。

 

 

「『財団』で実験動物扱いだったボクを助けて、居場所をくれたのはお兄さんだった。親に捨てられたボクにとって、家族を教えてくれたのはお兄さんと雪南ちゃんだったんだよ」

 

「……椎ちゃん」

 

「ねぇ、ボクは『久永椎』だよ。お兄さんが……ううん、『遠治お兄ちゃん』が妹を助けたいのと同じように、ボクだって『雪南お姉ちゃん』を助けたい」

 

「っ」

 

「もう家族のつもりでいたんだけど、違う?」

 

 

そんな風に言って、真っ直ぐな目を向けてくる椎ちゃん。ズルいよな。そんなことを言われてしまったら謝ることも断ることもできなくなる。だから、俺は一言だけ告げて、彼女の頭を撫でる。

 

 

「……危なくなったらすぐに助けを求めてくれ。俺はこっちの可愛い『義妹』にも危険な目にあってほしくねぇからな」

 

「うん!」

 

 

頷き、目を細める椎ちゃん。そんなやりとりをしてる間にも時間は進む。開始まであと1分。じっとその時を待つ。やがて、

 

 

ーードゴォォォッーー

 

 

「「!」」

 

 

屋敷の北側『W』がいる方向から爆音がした。離れてても分かる派手な開戦の合図だ。あの音に反応し、ここいら周辺の天使像たちもそちらへと飛び立とうとしていた。

 

 

「行こう」

 

「うん!」

 

 

天使像の意識がそちらへ向いた一瞬を突いて、俺達は屋敷に向かって駆け出す。

無事に辿り着いた屋敷の中。目の前に巨大な階段がある広間にも当然、天使像はうじゃうじゃいた。侵入者である俺達にそいつらが対峙する。流石にこの数は避けては通れない。見える範囲には井坂もソフィーも勿論、雪南もいないから、極力戦闘は避けたいんだが……。

 

 

「遠治お兄ちゃん! 行って!」

『イマジナリー』

 

「! 分かった!」

 

 

椎ちゃんがメモリを起動すると同時に、俺は走り出した。そんな俺に向かってくる天使像の軍勢。だが、そいつらの動きが止まる。

 

 

『ボクのお兄ちゃん(大事な人)に触れるなッ!!』

 

 

彼女の声を後ろに聞きながら、俺は階段を駆け上がった。

 

 

ーーーー園咲邸・2階ーーーー

 

 

屋敷の構造を知ってる若菜お嬢様によると、恐らく雪南がいるのは、この屋敷の地下だろうとのこと。そこが一番ガイアメモリの力を引き出せる場所らしい。2階廊下の突き当たりに、地下へと降りるエレベーターがあることも、俺達と同じ『転生者』であるソフィーは知っている。アンナの予想を信じ、俺はその場所に向かう。その途中、

 

 

「遠治くん!」

 

「アンナ!」

 

 

同じくエレベーターに向かうアンナと合流できた。

 

 

「若菜お嬢様は?」

 

「天使像を引き付けてくれてるよ。原作ほどではないけれど、『エクストリーム』の力を取り込んだようでね。天使像をバッタバッタと薙ぎ倒してるところさ」

 

「それは……心強いな」

 

「あぁ、あれなら心配はいらないだろう。本当は私が引き受けると言ったんだけれど、ソフィー姉さんと戦うなら手の内を知っている私の方がいいだろう、と」

 

 

ある程度片付いたらこちらへ合流すると言っていたから、その時は戦力になってもらおう。そう言うアンナに頷き、俺達は歩を進める。しかし、

 

 

「…………アンナ」

 

「そうだね。この廊下に天使像がいないのは些か不自然だ」

 

 

『W』や椎ちゃん、若菜お嬢様が引き付けてくれているとはいえ、本丸に警備兵がいないのはどう考えてもおかしい。天使像を出す限界があるのか、それとも罠か。

 

 

「誘い込まれていると考えるのが順当かな」

 

 

まぁ、そうだろうな。覚悟を決めつつ進むと、廊下の突き当たりに辿り着いた。だが、突き当たりには天使像が積み上がっていた。まるで壁のようだ。幸い動くことはないが、軽く叩いて分かるその壁の強固さ。変身して破壊を試みてもいいけれど、若菜お嬢様曰く、地下へのエレベーターは大広間にもあるらしいから……。

 

 

「そちらから回ろう」

 

「あぁ」

 

 

アンナも同じ考えだったようで、俺たちはそのまま大広間へ向かう。いつか通されたこともあるその場所に、そいつはいた。

 

 

「お前……」

「ソフィー姉さん」

 

「…………」

 

 

ソフィーは一瞬こちらへ視線をやるも、黙々と食事を続けている。ナイフとフォークを使ってはいるが、その食べ方は決して上品とは言い難い様子で、なおかつ量が異常だった。俺でも到底食べられない量の料理が天使像によって運ばれ、テーブルに置かれた瞬間にそれに手をつける。それを繰り返していたのだろう、彼女の前には数十枚の空皿が積み上がっていた。

 

 

「井坂深紅郞と同じ……」

 

「……それはわたくしにとって、最上級の褒め言葉ですわね」

 

 

一旦、食事を止めたソフィー。口元をナプキンで拭きながら、立ち上がる。見たところ『ドーパント』にはなっていないが、

 

 

「『ハイドープ』になって、この天使像もほぼ無限に出せるようになったのはいいのですが、如何せん欲求が抑えきれなくて困りますわ」

 

「食べるのも程々にしとかないとスタイルが崩れるよ、姉さん」

 

「フフッ、それでは軽い運動をさせてもらおうかしら。付き合ってくれます、アンナ?」

『ヘブン』

 

「お断りだ」

『ヘル』

 

 

『天国』と『地獄』の名を冠するメモリを使用し、2人の姿が変わる。『ヘブン』は目が眩むほどの閃光を、それに対して『ヘル』は青黒い汚泥を繰り出し、それらがぶつかる。

 

 

『遠治くん! 奥の扉へ!』

 

「分かってる!」

 

 

2人の攻撃がぶつかったことで目眩ましになっている。その隙に、俺は奴の死角を突いて、エレベーターに繋がる扉へと足を向けた。だが、その行動は読まれていたようで、俺の前に天使像が立ち塞がる。アンナとソフィーの実力が拮抗している今、天使像は俺が止める以外の選択肢がない。

 

 

『エターナル』

「っ」

 

 

『エターナル』を起動し、『ロストドライバー』に装填する。だが、展開の寸前に一瞬躊躇う。頭を過るのは『エターナル』に発現した『黒い炎』のこと。見ないふりをしていたが、あれは……。

 

 

『クスクス、躊躇っていていいんですの? 早く行かないと、先生があなたの妹を壊してしまいますわよ?』

 

「………………変身」

『エターナル』

 

 

癪に触るが、確かにここで迷っている時間はない。躊躇を振り切り、『ロストドライバー』を展開する。『永遠』を纏う。同時にグツグツと心の中が、感情が沸騰していく。目を閉じ、拳を握り締める。その隙を見逃すソフィーではなく、天使像が向かってくる。

 

 

『退け、雑魚共』

ーーボゥゥゥッーー

 

 

目を見開き、奴を直視する。瞬間、『黒い炎』で天使像たちが燃える。奴らの動きが止まった。そこへ俺は拳を叩き込む。風化したかのように、ボロボロと天使像が崩れ去る。

 

 

『やはり『白い炎』とはずいぶん趣が違いますわね。なんて野蛮で、乱暴な……』

 

『っ、遠治くん、無視していい。ここは私に!』

 

『…………任せた」

 

 

アンナにこの場を任せ、俺はエレベーターへ続く扉に飛び入った。

 

 

ーーーーside:アンナーーーー

 

 

『クスクス』

 

 

遠治くんがエレベーターに消えたのを確認した姉さんは、ふっと力を抜いた。私の汚泥が光を飲み込み、押し込む。姉さんの前には複数の天使像があり、私の汚泥はそれに阻まれた。

 

 

『いいんですの、あれ?』

 

『……なんのこと?』

 

『久永遠治のことですわ。あの『黒い炎』、かなり異常ですわよ? 『ヘル』の汚泥でも削りきれなかった天使像を一瞬で消し去る。あんなもの、なんの副作用もなく使えるわけないでしょうに』

 

『…………』

 

 

分かってはいた。勿論、私も彼に、この戦いが始まる前に指摘はしていた。けれど、彼は大丈夫だと言って。

 

 

『クスクス、あの『黒い炎』最初に見たときは相当強力なものだと思いましたが、今は無意味ですわね』

 

『なにを……言ってる?』

 

『確かにあれは強力です。しかし、厄介さでいえば、メモリの毒素を浄化する『白い炎』の方が上』

 

 

『黒い炎』は恐るるに足らない。姉さんはそう言って笑う。『黒い炎』で攻撃されれば、いくら『ウェザー』とはいえ、無傷ではすまないはず。だというのに……。

私の疑問が伝わったようで、彼女はまた笑う。

 

 

『言ったでしょう? 『今は』無意味だと』

 

 

ーーーー園咲邸地下・side:遠治ーーーー

 

 

エレベーターには閉じるボタンしかなく、乗り込むと自動的に俺をその場所へと運んでくれる。浮遊感が消え、俺はその場所に降り立った。ここが園咲邸の地下、『ミュージアム』の根幹か。何かの発掘現場とおぼしきだだっ広い空間で、地下にも関わらず明るい。照明設備が引かれているからだけでは説明のつかない照度は、この空間の中央から来ているようで。そこには人影があった。

 

 

「おや、ずいぶんと早い来訪だ」

 

 

元凶・井坂深紅郎。そいつは俺の方に向き直る。余裕が窺えるその表情に、俺の中の怒りがまた再燃していく。

 

 

「井坂深紅郎、雪南はどこだ」

 

「フフッ、彼女なら今、お色直し中ですよ」

 

「っ、ふざけんなッ」

『エターナル』

 

 

変身し、殴りかかる。『黒い炎』を纏った拳を、井坂は受け止める。いや、正確には殴れていない。殴ったのは奴の前にある空気の層。

 

 

「『ウェザー』をアップグレードしたおかげで、こんな芸当もできるようになりました。『気象』を操るこの多彩な能力……やはり素晴らしいですねぇ」

 

『うるっ、せぇっ!!』

ーーボゥゥゥッーー

 

「おっと」

 

 

殴れないのなら燃やせばいい。拳が接している部分から『黒い炎』が燃え広がり、すぐにその抵抗がなくなる。

 

 

「なるほど。その『黒い炎』……酸素を無くしたとて消えるものではなさそうだ。実に強力だ。『女王』の降臨まで、しばし私がお相手しよう」

『ウェザー』

 

『フンッ!!』

ーーボゥゥゥッーー

 

 

奴が黒と金の『ウェザー』に姿を変える寸前に繰り出した追撃の一振りは、奴の作り出した大雨の壁に阻まれる。精製速度が圧倒的に速い。拳を止める質量の雨を一瞬で……だが、関係ない。『黒い炎』は空気だろうが、水だろうが焼き尽くす。蒸発したところへ飛び込む。

 

 

『らァァっ!!』

ーーガンッーー

 

『ずいぶんと、軽い……蹴りですねぇ!!』

ーーガシッーー

ーーブンッーー

 

 

『ウェザー』に投げられる。その先にあるのは、奴の作り出した水球。勢いを殺し切れず、俺はその水球に囚われる。

 

 

『感電死と凍死、どちらがお好みですか!!』

 

『どっちも遠慮する』

ーーボゥゥゥッーー

 

 

燃やす。視界が開けた瞬間に再度、俺の視界は奪われる。今度は竜巻が俺の周りを覆っており、奴の姿が確認できなくなっていた。さらに、

 

 

ーーバヂッーーーーバヂッーー

ーーバヂッーーーーバヂッーー

 

 

竜巻の外、四方向から放たれる雷撃。防ぎながらも分析を続ける。風に乗せて雷を放っているというよりは、例の『瞬間移動』を使っていると考えるのが妥当か。雷撃の方向に『黒い炎』を飛ばしても、きっとそこにはいない。ヒット&アウェイの完成形だな。

 

 

『ビビり野郎が』

 

『フッ、なんとでも言えばいい。こうしている間にも、『女王』の降臨は近づいている』

 

『…………『女王』……勝手に人の義妹をそんなものに祭り上げるな』

 

『それは無理な相談ですねぇ。彼女は私がより上の力を手に入れる、必要な生贄なのですから!』

 

『そうか』

ーーボゥゥゥッーー

ーーボゥゥゥッーー

ーーボゥゥゥッーー

ーーボゥゥゥッーー

 

 

やはりこいつとは話しても無駄だ。殺してでも取り戻す。

俺は溜めていた『黒い炎』を解放した。『黒い炎』は周りの竜巻へと向かい、中で爆ぜる。風を呑み込み、広がっていく炎。既にその竜巻の制御権は俺にある。巨大な火柱と化した風が『ウェザー』を襲う。

 

 

『その類いの攻撃は一度やられましたからね。対策済みです』

ーーパンッーー

 

 

『ウェザー』がひとつ柏手を叩くと、一瞬で火柱が消える。同時に、身体が重くなる。

 

 

『その炎は空気がなくても燃えるようですが、あなた自身はそうではない。真空で生きるほどの性能はその『ドライバー』にはないでしょう』

 

『……お嬢様が言ってた、空気の完全支配ってやつか』

 

『ご名答』

 

 

膝こそ着いていないものの、身体は重い。出現させた『気象』を燃やすのは出来るが、その逆、あったものをなくされた場合、『黒い炎』で燃やして対処できない。なら、

 

 

『おっと……メモリに手をかけるのは遠慮してもらいましょうか。『エターナル』の『マキシマムドライブ』はいくら私の『ウェザー』と言えど、対応できませんからねぇ』

 

『………………』

ーーボゥゥゥッーー

 

 

体に『黒い炎』を纏わせ、奴がこちらに手出しできなくさせてから、俺はメモリをスロットに挿入ーー

 

 

ーーーーーーーーカツンッーーーーーーーー

 

 

その直前、だだっ広い地下に、音が響いた。

ヒールの音。場違いなその音に振り返ると、そこには雪南がいた。群青のドレス、青のヒール。そして、顔を覆う青いベール。色こそ白ではないが、まるでそれは花嫁のようであった。

 

 

『っ、雪南ッ!!』

 

 

声を張り上げる。だが、俺の声に雪南はピクリとも反応しない。その様子を見て、井坂が笑い声をあげる。

 

 

『滑稽ですねぇ、彼女に声は届かないというのに』

 

『っ、それはどういう意味だッ』

 

『そのままの意味ですよ。彼女には既に意識はない。あるのは、そのメモリに適合する器だけですから』

 

 

そう言って、井坂は雪南を指差した。彼女の手には黄金のメモリがあって。

 

 

『っ、止めろっ! 雪南ッ!!!』

 

 

俺の声は、届かない。

 

 

 

『テラー』

 

 

 

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