『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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6ヶ月ぶりの更新らしいです!!


第48話 Pの誕生 / 恐怖の女王と黒い炎

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目の前で、雪南が『テラー』へと変貌を遂げた。その事実は俺にかなりの衝撃を与えていて、

 

 

『がら空きですよッ!!』

ーーバヂバヂバヂバヂッーー

 

『ぐ、が…………っ」

 

 

『ウェザー』の雷の鞭によって、強制的に変身を解除させられてしまう。転がりながらも、どうにか体勢を整え、向き直る。

 

 

「っ、雪南ッ!!」

 

『…………』

 

 

園咲琉兵衛より二回り小さな『テラー』。その小柄な姿も相まって、俺に現実を突き付けてくる。いや、だが、『エターナル』の『マキシマムドライブ』なら、メモリの能力を無効化できるはず! それなら!

 

 

「変ーー」

 

『いいんですかねぇ、『エターナル』を使ってしまって』

 

「っ」

 

 

奴の言葉に、俺は展開しようと『ロストドライバー』にかけていた手を止めた。『テラー』のメモリはまだ雪南に完全に適応していないはず。だから、その戯言は適応するまでの時間稼ぎ。

 

 

『私の言葉がただの時間稼ぎでないことは、君が一番分かっているはずだ』

 

「ぐっ」

 

『君のその『黒い炎』。それは『白い炎』よりもずっと強大でしょう。だが、『白い炎』のようにメモリの毒素をも消す厄介なものではなく、対象を完全に消滅させるものだ。つまりーー』

 

 

『君に『テラー』は倒せない』

 

 

「っ」

 

 

この『黒い炎』の力、変身している俺本人でさえ制御できない溢れ出る感情の渦。井坂に言われずとも気づいていた。殺意ともいうべき『黒い炎』は、雪南ごと消し去ってしまうであろうことに。

 

 

『ああ、そうだ。『エターナル』の『マキシマムドライブ』を使うのもオススメしませんよ。私の助手の彼女曰く、あれにはメモリ使用者を即座に死に至らしめる効果も秘めている。確率にして、12.5%』

 

「…………ハッタリだ」

 

『フフ、かもしれませんねぇ。だとしても、可能性が0でない限り、あなたはそれを使うことはできないでしょう?』

 

 

こちらの胸の内を見透かしたように、井坂は笑う。なら!

 

 

『う、うぅぅぅぅ……っ』

 

「っ、雪南ッ!!」

 

『おっと。『女王』の機嫌を損ねてしまいましたか』

 

『あ゛ぁぁぁぁぁぁ……!』

ーーズズズズズズズーー

 

「くっ、変身っ」

『エターナル』

 

 

雪南の叫びと共に青黒い何かが吹き出た。恐怖を増幅させる『テラーフィールド』は無差別に辺りを汚す。その出力は園咲琉兵衛のそれと遜色ない範囲の攻撃だった。俺は咄嗟に変身し、後ろへと跳ぶ。

 

 

『はっ、はぁっ……雪南っ!!』

 

『流石はゴールドランクの『テラー』です。私があそこまで丁寧に彼女に調整したとて、容易く扱えるものではない、ということか。ですが、出力は十分です。数刻もすればーー』

 

 

井坂はそんなことを意気揚々に言う。その声色が、また俺の中の殺意を掻き立てる。ぐっ、駄目だ、抑えろ。じゃなきゃ、雪南を救えねぇ!

 

 

『アぁっ、あぁっ……あぁァァぁっ!!』

ーーズズズズズズズーー

 

 

頭を抱え、悶え苦しむ声をあげる雪南。それに呼応するように『テラーフィールド』が蠢き、その範囲を拡大していく。青黒いドロドロが見る見るうちに、屋敷の地下を覆っていく。くそっ、見てるだけじゃどうしようもーー

 

 

『そちらへ意識を割きすぎですよ』

 

『っ』

 

『ここでは『女王』の覚醒の邪魔になる。舞台を変えましょうか』

ーーバサッーー

 

 

雪南の方に気を取られていた俺は背後から『ウェザー』に首を掴まれる。そのまま翼を広げた『ウェザー』は園咲邸の地下から屋敷、そして、天井を突き破り、屋敷の上へと俺を掴んだまま駆ける。

 

 

『雪、南……っ、今、行くから』

 

『出来もしない約束はしない方がーーいいッ!』

ーーブンッーー

 

ーーゴンッーー

『が、ッ……!?』

 

 

天高く駆けた『ウェザー』が、掴んでいた俺を投げ飛ばす。抵抗する術なく、俺の身体は屋根へと叩きつけられた。

 

 

『は、ぐ……っ』

 

 

それでも変身はしていたから致命傷にはならない。大丈夫だ、まだ動ける。このまま雪南を助けに行かなくては……!

 

 

『どうやって?』

 

 

俺を嘲笑うような問い。黒と金の『ウェザー』は翼をたたみ、俺の眼前に降り立った。何の因果か、この屋敷の主を看取ったあの時と同じような構図になる。

 

 

『もう一度言いましょうか。君では彼女を救うことは出来ない』

 

『う、るっせぇ!!』

ーーボゥゥゥッーー

 

『おっと』

 

『…………そうだろうよ。だがなーー』

 

 

分かっている。今の俺じゃ『テラー』をメモリブレイクすることはできない。だが、こっちには『仮面ライダー』がいる。雪南を救うのは、俺じゃなくてもいい。俺がするべきは、ここに『仮面ライダー』が辿り着いた時にすぐに『マキシマムドライブ』を撃てるように、目の前の敵を排除することだ。こいつ相手ならば『黒い炎』も惜しみなく使える。

 

 

『はぁぁぁっ!!』

ーーブンッーー

 

『正面突破ですか。面白くもない』

 

 

俺の大振りの拳は呆気なく空を切る。だろうな、こっちは囮だ。

 

 

ーーグンッーー

『甘いッ!』

 

『ほう』

 

 

大振りを利用して、体を落とし、そのまま上段の回し蹴りに派生する。奴の側頭部へと『黒い炎』を纏った蹴りを放った。

 

 

『そちらこそ『ウェザー』を舐めすぎだ!』

ーーバヂバヂバヂッーー

ーービュゥゥゥゥッーー

 

 

雷を帯びた突風が吹いた。だが、それも関係ない。『黒い炎』は目に見えないものでも焼き尽くせる。足が押し戻される感覚がした次の瞬間には、その抵抗がなくなる。

 

 

『おらぁぁぁぁっ!!』

ーーグンッーー

 

 

これで、終わりだ!! 俺は奴の側頭部へと『黒い炎』を叩き込んだ。

 

 

ーービタッーー

『はっ、はぁっ……ッ』

 

『………………どうかしましたか。そのまま振り抜けばいいでしょう? 尤も、『ゾーン』でここへ呼び寄せた君の妹もろとも、でよければですがねぇ』

 

『あァァ、ァぁあ……』

 

 

井坂と俺の間には、『テラー』が、雪南がいた。

 

 

『ーーーーっ、井坂ァァッ!!』

 

『ふんっ!!』

ーーザバァァァッーー

 

『ぐ、が……っ!?』

 

 

井坂の召喚した濁流、その圧倒的な水量で俺の身体は呆気なく押し流され、そのまま屋根から落ちる。背中にもろに衝撃を受けたことで、俺の変身は再び解けてしまう。

 

 

「か、は……っ、はっ」

 

 

早く、早く息を整えろ! 痛みなんて感じる暇なんてない! こうしている間にも、雪南の体は『テラー』に蝕まれている。立つんだよ、立って、奴を焼け。そして、助けるんだ。

 

 

『無様ですねぇ』

 

「い、さ……かッ」

 

『おや、既に虫の息だ。フッ、地に這いつくばる君とそれを見下す私。この立ち位置こそ力量の差を表しているようではありませんか』

 

「っ、ふざけ……っ」

ーーガクッーー

 

『クックックッ、立ち上がる力もないと見える。いくらメモリが強くとも、使い手がこれでは意味がない。さて、そろそろ終幕といきましょう」

 

 

これで終わりだと言わんばかりに、井坂は変身を解く。そして、手を挙げた。それに呼応するように、中庭に落ちた俺に向かって、ゆっくりと首のない天使像が迫ってきていた。

 

 

「ふむ、5体ですか。予想以上に『仮面ライダー』に戦力をとられているようですが、それでも生身の死に損ないを始末するには十分か」

 

『……ァぁァ』

 

「ん?」

 

『あ、あァ……に、さ……ん』

 

「これは驚いた。私の処置を受けて、その上『テラー』が身に入った状態で、まだ自我があるとは」

 

『に、い……ァぁぁぁァあア』

ーーズズズズズズッーー

 

「フフッ、では、その最期まで残った一欠片の自我に引導を渡しましょうか」

 

 

屋根上の井坂が再び手を挙げると、天使像が俺の近くから引き上げていく。その代わりに、そのうちの2体が雪南へと近づいていく。そいつらは雪南を両側から掴み、『テラー』を俺の目の前へ連れてきた。役目を終えた天使像は『テラーフィールド』に蝕まれ、ボロボロと崩れる。

 

 

「雪……南……っ」

 

『アァぁァァ……』

 

 

地に伏す俺とそれを見下ろす『恐怖の女王』に為りかけている雪南。俺達の距離は1mもない。

 

 

「久永遠治、君の人生は君自身が守ろうとした最愛の妹の手によって、終わりを迎える。なんとも情緒溢れる光景だ」

 

「さて、後悔に浸りながら死ぬといい。さようなら、『仮面ライダーエターナル』」

 

 

かざしていた手を井坂は下ろした。それと同時に、雪南の腕がゆっくりと俺の体へと迫る。掌からは『テラーフィールド』が展開されていて、触れれば一瞬で絶命するであろうことが分かる。

 

 

「雪、南っ、雪……南ッ」

 

『に、い…………さ、ん』

 

 

『テラー』の眼から青黒い雫が落ちる。それをきっかけに動きが止まるなんてことはなく、俺は雪南の掌に触れーー

 

 

 

ーーパァァァァァァンッーー

 

 

 

響いたのは銃声だった。いや、正確には銃を放った音そのものではなく、弾が雪南の腕に当たった音だった。

 

 

『あ、が…………ッ』

 

 

急なことに、雪南は仰け反る。なに、が……?

 

 

「『仮面ライダー』か!? いえ、彼らはまだ天使像の足止めを食らっているはず」

 

 

じゃあ、椎ちゃんかアンナか? いや、2人のメモリには銃弾を放つ力はないはず。

 

 

ーーパァァァンッーー

ーーパァァァンッーー

ーーパァァァンッーー

 

「!?」

 

 

続けざまに3発の弾丸が井坂の周りにいた天使像を砕いた。そして、もう一発の銃声が轟き、

 

 

ーーパァァァァァァンッーー

 

『ウェザー』

 

ーーバシンッーー

『………………弾丸。いや、それは圧縮されたエネルギー弾か』

 

 

攻撃を弾いた『ウェザー』の腕には、焦げたような跡が残っているのがここからでも分かる。よく眼を凝らせば、紅い軌道が残っていて。

 

 

「…………ハッ、本当に……かっこいい女だよ、あんたは」

 

 

 

ーーーー風都タワー頂上ーーーー

 

 

『…………下に10cmずれたわ。修正しなさい』

 

「うるさいわね。こっちも使い慣れない武器の仕様を把握するのに手一杯なのよ。そもそもこっちは肝臓に穴も空いているの、いくら母親とはいえ、人使いが荒すぎるわ」

 

「フフッ、人使いに対して、君が何かを言えた義理かな?」

 

「黙りなさい」

 

『今は夫婦喧嘩をしている場合ではない。すぐ『タブー』メモリの再装填を』

 

「言われなくてもやってる!」

 

「……さて、私はこちらに向かってくるであろう天使たちを露払いするとしようかな。キミに想いを寄せる彼と一緒にね」

 

「………………さっさと行って」

 

「フフッ、やっぱり荒いじゃないか、人使い」

 

 

『…………風速5m。北よりの風。軌道を修正、上方に12cm』

 

「………………修正完了」

 

『Fire』

 

 

ーーパァァァァァァンッーー

 

 

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