『永遠』のガイアメモリを手に入れた男は風都で平穏に暮らしたい   作:藍沢カナリヤ

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第50話 Pの誕生 / 決着

ーーーーーーーー

 

ーーパァァァァンーー

ーーパァァァァンーー

ーーパァァァァンーー

 

 

2発、3発と放たれた銃弾は、雪南の四肢へと当たり、その体を俺から離していく。赤色の光弾。見覚えがありすぎるその攻撃は、俺に心の余裕を与えていた。

 

 

『は、はは……」

 

 

頼もしすぎる、本当に。安心して、思わず気が抜けたせいで変身が解けてしまう。そこにひとつ、声がかけられる。

 

 

『お兄ちゃん!』

 

「っ、椎ちゃんか!?」

 

 

声はせずとも、姿は見えない。

 

 

『って、そうだったそうだった。これで……よし!」

 

 

『イマジナリー』を解除して、椎ちゃんの姿がやっと見えた。擦り傷は多く、ところどころ血も出ている。無理をさせてすまねぇ。そう言おうとすると、椎ちゃんは俺の唇に指を当て、塞ぐ。ああ、そうだな。

 

 

「ありがとう」

 

「うん!!」

 

 

にこっと弾けるような彼女の笑顔に、張り詰めていた緊張がほぐれたような気がした。さらに、

 

 

ーードゴォォォォォォンーー

 

 

響く轟音。それは井坂の方から。見れば、井坂は誰かと対峙していた。『ウェザー』の背丈の2倍以上の巨躯をもつ黒い『ドーパント』。あれは一体、誰だ?

 

 

「若菜ちゃんだよ」

 

「!」

 

「『エクストリーム』、だっけ。その力を取り込んだんだって。すべては雪南ちゃんを助けるために」

 

「…………っ、そうか。頼もしいお嬢様だ、本当に」

 

 

若菜お嬢様も駆けつけてくれた。あ、でも、どうやって? この屋敷には天使像がうじゃうじゃいたはず。それを全部倒してきたってことか!?

 

 

「ううん……って、本当に余裕なかったんだね。少し前に、ほら」

 

「え……?」

 

 

苦笑いする椎ちゃんが上を指差す。それに釣られて、俺は空を見た。快晴。屋敷を覆う『ヘヴン』の膜がいつの間にか消えていた。そうか。つまり、これはーー

 

 

「…………アンナ」

 

 

アンナが『ヘヴン』を、ソフィーを撃破したんだ。確かに周りを見渡せば、あれだけいた天使像はもうどこにもいない。

 

 

「翔太郎さんたちもこっちに向かってるよ! 屋敷の構造もあって、少し時間はかかってるみたいだけど」

 

「……………………ふ」

 

「? 遠治お兄ちゃん?」

 

 

 

「はははははっ」

 

 

 

思わず、俺は笑っていた。同時に体に満ちていた『力』が抜けていくのを感じる。

 

 

「え? ええ? えっと、えっと?」

 

「ああ、悪い悪い。なんかおかしくなったんだ」

 

「おかしく……?」

 

「ああ、俺さ、椎ちゃんたちと作戦を立てて皆で戦っているのは分かってたんだ。だけど、やっぱり雪南が、自分のたった1人の妹が、奴の手に落ちているからなんだろうな。『俺がどうにかしなきゃ』……心の中ではたぶんそう思い込んでた」

 

「…………」

 

「でも、そうだよな。みんなが助けてくれるんだ。みんなが戦ってるんだ。雪南を助けたいって思って、全力で頑張ってる」

 

 

それを思い知らされた。

俺ではできない雪南を攻撃して時間を稼いでくれる彼女に。

決して強くないメモリでもボロボロになって戦ってくれた彼女に。

自分の身体に未知の力をを取り込んでまで戦う彼女に。

圧倒的に不利だったはずの戦況をひっくり返した彼女に。

思い知らされた。だから、次は

 

 

「俺の番だ」

 

 

俺にしかできないことを、やり遂げる。

 

 

「お兄ちゃん?」

 

「悪い、心配かけたな、椎ちゃん。もう、大丈夫だ」

 

「! うんっ!!」

 

 

『ロストドライバー』に右手をかけ、左手でメモリを掲げる。取り戻そう。俺の『平穏』をすべて!

 

 

 

『エターナル』

 

 

 

「………………変身」

 

 

 

炎が身体を包んでいく。熱くはない。じんわりと熱が内側から広がる感覚だ。やがて、俺は『エターナル』に、『仮面ライダーエターナル』へと変身を遂げた。

 

 

『…………ふぅ』

 

「お兄ちゃん……」

 

『ん?』

 

「雪南お姉ちゃんを、お願い」

 

『おう!』

 

 

ーーーーーーーー

 

 

『ぐ……っ」

 

『フフフ、『エクストリーム』の力を取り込んだようですが、数多のメモリを取り込んだ私には及ばない』

 

「化物……」

 

『それは最高の褒め言葉ですよ』

ーーブンッーー

 

 

ーーガシッーー

 

 

『よう。うちのお嬢様に、手を上げないでもらおうか』

 

 

若菜お嬢様に振り下ろされた『ウェザー』の拳を止める。

 

 

「遠治っ!」

 

『すみません、遅れました』

 

「っ、遅いッ!」

 

 

手厳しいお嬢様からの一言に、また力をもらったような気になる。

 

 

『また、ですか。既に貴方への興味は失せている。邪魔が入ったとはいえ、そもそも先程、勝負はついているはずでしょう』

 

『ああ。勝負は俺の敗けでいい』

 

『…………ならば、なぜまた向かってくる』

 

『大事な人を取り戻すため』

 

『下らないッ! 力もない君に、何ができるッ!』

ーーブンッーー

 

 

ーーバギィィィィッーー

 

 

奴の拳が俺の腹へ突き刺さる。だが、

 

 

『倒れるかよ』

 

『っ、くどい!!』

ーードゴッーー

 

 

さらにもう一撃。

 

 

『やはり、再変身することがやっとなのでしょう。その証拠に、『白い炎』はおろか『黒い炎』すら出せていない。両腕の炎の刻印も消え失せている』

 

『…………』

 

『ドライバー使いなど、所詮はその程度!!』

 

ーーゴゴゴゴゴゴッーー

ーーザァァァァァァーー

ーーゴゥゥゥゥゥゥーー

 

 

竜巻、洪水、灼熱。『ウェザー』の能力を十全に使った攻撃。以前とはパワーもスピードも大違い。天気が、俺を覆い隠す。

 

 

『仕上げです』

ーーギュンッーー

 

 

トドメとばかりに、奴は雷の鞭をこちらへと放った。それを俺はーー

 

 

ーーガシッーー

 

 

 

掴む。

 

 

『っ、効かねぇなぁ!!』

ーーグググッーー

 

『ッ、調子に乗るなッ』

ーーバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂバヂーー

 

『ーーーーッ』

 

『ゴールドランクのメモリを取り込み、強化アダプターでアップデートした『ウェザー』の電撃だ! 骨も残さず消し炭になりなさいっ、久永遠治ッ!!』

 

 

鞭を手繰り寄せる俺と、鞭にさらに電撃を加えていく『ウェザー』。痛みはある。けれど、

 

 

 

ーーボッーー

 

『倒れるわけにはいかねぇだろうが』

 

 

 

『な、鞭が!?』

 

 

ボロボロと『ウェザー』の鞭が崩れた。突然のことに狼狽えた奴の攻撃が一瞬止まる。その隙を見逃さず、前へ。そして、拳を思いっきり振りかぶり、

 

 

ーードゴッーー

 

『が……ッ』

 

 

奴の腹、『ドーパント』の球体状のコアへと拳を叩き込んだ。膝をつく『ウェザー』。だが、すぐに体勢を立て直していて、こちらへと向かい合う。

 

 

『はぁっ、はっ……やはり、その程度、ですか。不意を打たれましたが、攻撃力自体は『黒い炎』の方が、能力自体は『白い炎』の方が厄介でしたねぇ』

 

『…………』

 

『出力の落ちた劣化品に負けるわけが…………うぐぅっ!?』

 

 

余裕のある声から一転。奴は苦しみ出す。そうして、奴のコアから何かが飛び出した。

 

 

『ゾーン』『ゾー ン』『ゾゾゾ ゾーン』

ーーパリンッーー

 

 

それは『ゾーン』のメモリだ。奴が取り込んだ『力』の一端が、零れ、砕けたのだ。

 

 

『な……『ゾーン』のメモリが、排出された……? これは……一体……』

 

『隙だらけだぜ、井坂!!』

ーードゴッーー

 

『ぐ、ウゥぅっ!?』

 

 

『エンジェル』『エン ジェ ル』『エンン ンジ ェェル』

ーーパリンッーー

 

 

追撃のニ撃目。奴の顔面を捉えた俺の拳は、またも奴から『力』を奪う。

 

 

『くッ!?』

ーービュゥゥゥゥゥゥーー

 

 

竜巻を起こし、こちらと距離をとる井坂。

 

 

『『マキシマムドライブ』でもないのに、メモリを破壊する、だと? 力を失ったわけではない。それは、その『エターナル』は!?』

 

『さぁ?』

 

『ッ、ふざけるなっ!!』

 

 

ふざけてなどいない。本能的に俺は攻撃しただけで、力の正体は分からない。

後から探偵事務所のフィリップから教えてもらった、俺の『エターナル』の力。『マキシマムドライブ』を使わずとも、メモリを隷属させる。それがこの『エターナル』ーー『クリアフレア』の能力らしい。それを今の井坂が、俺が知る由はない。それに、そもそもーー

 

 

『知る必要もないんだよ』

 

 

『っ、何を』

 

『俺が求めるのは『平穏』だ。みんなと仲良く過ごせれば、それでいいんだよ。過ぎた力は必要ない。俺の大事な人たちを守れるだけの力があれば、それでいい。だから』

 

 

 

『エターナル』『マキシマムドライブ』

 

 

 

腕が熱くなる。空気が乾き、音が消える。極限にまで研ぎ澄まされた感覚は、奴の動きをスローに見えてくれる。俺はただそこに拳を置いて、振り抜くだけ。

ゆっくりと、拳に感触がある。『ウェザー』の装甲を砕くような感触が。やがて、音が、返ってきて。

 

 

「あ、あぁ……ぁ、あ……」

 

『………………』

 

 

背後から聞こえる小さく呻くような声。

『力』を求めた男・井坂深紅郎。『平穏』を愛する俺からしたら、こいつの気持ちは分からない。だが、きっと奴にとって『力』を失うのは、何よりも辛いことなのだろう。だから、俺は告げた。

 

 

 

『さぁ、地獄を楽しみな』

 

 

 

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次回、エピローグ!!
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