違法探索者の迷宮盗掘録 ゴミ溜めにいた男が英雄になるまでの話   作:穴熊拾弐

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第23話 白砂の迷宮10層/鎧密林①

 

 

 

 5層を踏破してから2日が経った。

 その間、俺たちは迷宮には潜らずに10層踏破のための準備を行った。

 

 俺は部屋に籠って資料を読み込み、作戦を練る。

 カトルたちが何をしていたかは知らないが、時折強い魔力を感じていたので、なにかしら特訓でもしていたのだろう。

 

 ミンナが用意してくれたお菓子を堪能しながら地図を読み込み、主や染獣の生態を調べ上げ――俺は1つの方策を立てた。

 

 これなら主を倒して踏破できる……かもしれない。 

 そして今日、それを実地で確かめるために10層へと潜る。

 そのために俺たちは朝早くから協会へとやってきていた。

 

 探索地域申請のためにルセラさんのいる受付へと向かい、2人で探索証を差し出した。

 

「お願いします」

「承りました……あの、本当に10層に潜るんですか?」

「ええ。潜るんです……どうしてこうなったんでしょうね……」

「私に言われても……」

 

 心配そうに尋ねてくれるルセラさんに、演技ではなく本気の呟きを漏らす。

 だって10層とか潜ったことないもの。

 てかなんで潜ることになったんだ? 夢か?

 

 ……なんて愚痴を言っても仕方ないので、せめて手続き中のルセラさんから話を聞く。

 情報は少しでも多い方がいい。

 

「普通、10層踏破ってどれくらいかかるんですか?」

「そうですね、才能がある方で1年は最低でもかかるでしょうか……この協会の探索者も半分程は10層未踏破ですよ」

「……ですよね、はは……」

 

 それをこっちは5日でやろうとしてるんだよな。

 そりゃ達成したら偉業だよ。

 

 深く溜息を吐き出していると、ルセラさんが作業の手を止めて覗き込んできた。

 

「あの、ゼナウさん、大丈夫ですか……? 危険ならやめた方が……」

「ああ、いえ。そこは平気です。今日は様子見だけですから」

 

 そう、今日はあくまで仮説が効果あるかどうかの確認、そして本番に向けた下見と仕込みをするだけだ。

 流石に階層に住む普通の染獣たちには負けるつもりもないので、そこは問題ない……筈だ。

 潜ったことないから憶測でしかないが。

 

「だ、大丈夫です! ゼナウは私が守るから」

 

 そう告げるカトルの声は震えている。

 

「……カトルさんこそ大丈夫ですか? 震えているようですが……」

「こいつは人混みにビビってるだけなんで平気ですよ」

「うう、言わなくてもいいじゃない……」

 

 早朝ということもあって、周囲では多くの探索者が手続きや準備をしている。

 ここは各地からの探索者への依頼を掲示しているために、手続き以外でも人が滞留する。

 

 大体が『〇〇の素材、この部位をこれだけ集めてくれ』といったものなので、探索時に持ち帰る素材の目安にするのだ。

 迷宮の素材は買い取らないということはないが買い叩かれはする。

 底値の素材を持ち帰れば大赤字は必至。

 なので集める素材をここで決めるらしい。

 

 そして人見知りを発動しているカトルは早速人混みに酔っていて、俺になんとかしがみついて立ってる状態だ。

 8年引きこもってたからなあ……。

 昇降機まで行けば治るだろう。

 

「俺らは素材集めは不要なんで、手続き終わったら直ぐに潜りますよ」

「それが不安なんですけど……まあ、あなた方にはもう不要な心配ですかね」

 

 そう言って、ルセラさんは探索者証を返してくれた。

 それには9層まで踏破の証がしっかりと刻まれている。

 

 ……うわあ、まじで刻まれてるよ。

 俺、6層しか潜ったことねえのに……とんでもないことになったもんだ。

 

 だがこれは紛れもないチャンス。

 踏破すれば待ちに待った深層へ行けて、仲間も増えるのだ。

 絶対にものにしてみせる。

 そのためにも……。

 

「あとすみません、聞きたいことがあって」

「はい、なんでしょう?」

「10層踏破間近のパーティーって、近くにいます?」

 

 まずは情報収集である。

 

 

「それでは、いってらっしゃいませ」

「はいっ、いってきます!」

 

 2度目の挨拶を交わして、俺たちは昇降機区画へと向かっていく。

 

 

「――待ってくれ! 僕らも乗るよ」

 

 10層行きの昇降機へ乗り込み、動き出そうとしたところ、そう言って駆け込んできた連中がいた。

 4人組。戦闘の男は赤銅色の髪のさわやか男児で、鎧姿に背には分厚い刃の両刃剣。

 仲間は魔術師らしい軽装の男女、分厚い鎧と丸盾(ラウンドシールド)を腕につけた大男の編成だ。

 

 それぞれ前衛が染獣を引き付け、魔術師たちが後ろから撃滅するよくある戦法をとるのだろう。

 俺やカトルと同じくらいの年齢に見える。それで10層に挑んでいるのなら、結成2年目辺りの勢いがあるパーティーということなのだろう。

 

「……そこの君たち、2人かい?」

 

 ふと、さっきの赤銅色の髪の男が声をかけてきた。

 

「ん? なんだ?」

「他にパーティーメンバーはいないのかい?って聞いたんだ。その様子ならいなさそうだね。……ってことは、君たちが一昨日大活躍した新人だね? 民間上がりと、呪いの氷姫様」

「……それがどうした?」

 

 明らかに挑発的な態度だが、なんかしたか?

 ……したか。協会か騎士団のどっちかは知らないが、早速邪魔が来たってところか。

 ちらとカトルを見たら、いきなりのことにぎょっと固まっている。ビビりすぎだろ……まあ余計なことしなさそうだからいいか。

 

「いやね、まさか探索者になりたての身でいきなり10層に挑むなんて、随分と命知らずだろ? 先輩として気にかけておこうと思ってね」

「へえ。随分と優しいことだ。でも平気ですよ。今日はただの様子見なんでね」

「……様子見? なんだい、降りて観光でもして帰るのかな? ならその間守ってあげようか? 僕らも10層攻略に忙しいからね。柱周辺を10分くらい案内すれば満足だろ?」

 

 赤髪と男の方の魔術師が笑う。

 よく喋るなあ……。

 

 流石に襲い掛かっては来ないだろうが、同行なんてする筈もない。

 ……ただ、わざわざ向こうから絡んでくれたのだ。丁度いいな。

 俺らのためにも、彼らに頑張ってもらうとしよう。 

 

「そんなことしてる暇、ないでしょ?」

「……何?」

「あと3日で俺らは10層を踏破する。急がないとその命知らずに負けた雑魚になりますよ、先輩方」

「君らが? 3日で? ……アハハ!」

 

 男は盛大な笑い声をあげた――かと思うと、笑みを消してこちらへとにじり寄ってきた。

 肩を掴まれ、気迫の籠った睨みを向けられる。

 

「ふざけたこと言ってんじゃねえよ。迷宮はそんなに甘いもんじゃねえんだよ」

 

 んなこた知ってるよ。……とは言えないので、笑みを浮かべて返してやる。

 

「なら人に絡むなんて小さいことせずにさっさと10層攻略したらどうです? そんなつまんないことしてるから停滞してるんでしょ?」

「……貴様」

 

『君』から『貴様』に見事格上げである。

 凄まじい目で睨まれ、横のカトルはあわあわとしている。

 剣を抜くかと短剣に手を添えていたが、彼はふっ、と笑みに戻した。

 

「流石は最短で5層を突破した新人だね。やる気が違う。……ただ、精々気を付けることだね、10層はそんなに甘くはないよ」

「ご忠告どうも」

 

 そのまま10層へと到達し、彼らは急ぐように出ていった。

 その姿が消えたのを確かめてから、俺たちも外へと出る。

 ようやく再起動したカトルがはっと声を上げる。

 

「ちょっと、ゼナウ! あんなことして平気なの……!?」

「ん? 平気だろ。奴らには何もできねえよ」

 

 本気で襲う気ならあんなとこで絡まず迷宮内で仕掛けてくる。

 それにカトルはともかく、俺は民間初の探索者。入って3日で殺すような指示は流石にしないだろう。

 個人的に恨まれたら別だが、それくらいなら追い払える。

 

「それより自分たちの心配だ。あいつらにはああ言ったが、実際10層は危険だからな。むやみやたらに攻撃を仕掛けないようにしてくれ」

「……わかった」

 

 俺たちの目の前に広がるのは――密林地帯。

 水の洞窟を抜けた先に広がる区画は、湿地と密林の広がる区画。

 じわりと汗をかく蒸し暑さ、何かの鳴き声やらざわめきが木霊する騒がしさがゆっくりと体力を奪っていく。

 何よりその視界の悪さが、ここを染獣たちの楽園と化している最大の要因である。

 

 ここの染獣は地上だけじゃなく、樹上や地下から襲い掛かってくる。

 基本足元を見ているだけで良かった5層までとは違う、全方位からの脅威に備えなければならない。

 10層までが危険といわれる理由がこれである。

 

 視界が狭いと俺の目もあまり機能しなくなるしな。

 気を付けて進まねばならない。

 

「1層の時とやることは同じだ。俺が先を行って、見つけた奴を数体狩るぞ。まずはここの連中に俺たちの攻撃がどれだけ通じるかを確かめる」

「うん!」

「その後は……あいつら次第だな」

 

 眼帯を外して、昨日のうちに当たりをつけていた場所へと向かう。

 5層まではただの案内役だったが、ここからは俺の仕事だ。

 後3日で10層攻略……やってやろうじゃねえか。

 

 

***

 

 

 一方、密林を進む先の4人組。

 既に『いつもの』道と化した獣道を進みながら、彼らは会話を続けていた。

 

「なあルイ。さっきの奴ら、放っておいていいのかよ。折角の賞金首だぜ?」

 

 つい昨日、彼らが所属する騎士派閥から指令があったのだ。

 あの2人組の10層踏破を妨害したものに報酬を払う、と。

 随分曖昧な指示だったが、その理由は直ぐにわかった。

 

「構わない。というか、僕らは直接手を出せないよ」

 

 念のためにと、探索者支部からあの民間上がりに何か危害を加えることは禁じられたのだ。

 勿論ここは迷宮。()()()()()はあり得るが、わざわざそんなことをして自分たちの未来を潰す理由はない。

 

 それに――

 

「彼らを邪魔したいならとっておきの方法がある。……僕らで主を倒せばいいのさ」

 

 主を倒せば()()()()()()()()

 本来は大して意味のない制限だが、今この時は大きな効果を発揮する。

 

「3日だっけ? その前に僕らが主を倒せば……」

「あいつらは踏破できないってわけだ」

 

 なるほどな、と魔術師の男が頷く。

 自分たちは深層に行くことができ、その上報酬まで手に入る。

 騎士団長の覚えも目出度いことだろう。

 良いことだらけである。

 

「でも、主なんて私たちもまだ倒してないじゃない」

「なあに、今まで長いこと準備をしてきたけど、僕たちはもう主を倒せる。いい機会だろ?」

「それはそうだけど……」

「予定変更だ。今日は主の住処を改めて下見して競合がいないか確認しつつ、子分の間引き。場を整えて、明日、主に挑もう」

 

 そう言って、ルイと呼ばれた男が剣を掲げた。

 

「あんな新人に抜かれる前に、僕たちの力を示してやろう」

「「「おお!」」」

 

 誇り高き探索者として、ぽっと出の新人に負けるわけにはいかない。

 何度も通った道を進み、彼らは主の居る場所へと向かっていくのだった。

 

 

***

 

 

 俺とカトルは密林を奥へと進んでいく。

 

「歩きづらい……」

 

 思わずカトルの愚痴が漏れるが、無理もない。

 分厚く長い葉や蔦が伸びる密林は、湿気った地面はぬかるんでいて足をとられる。

 事前に湿地用の靴に変えているから汚れの心配はないが、ただただ不快である。

 

 代わりに、カトルのおかげで蒸し暑さとは無縁でいられる。

 ちょっと強めに放出してもらっている冷気で、むしろ涼しいくらいだ。

 なのでちょっとくらい喋っても許すとしよう。

 

 とまあ、不便で不快なことだらけな区画なのだが、湿地な分足跡は追いやすい。

 

 あまりに数が多いとぐちゃぐちゃになってしまうが、幸い、俺の左目は足跡の『鮮度』が分かる。

 一番新しく、かつ数が少ない足跡を追えばいい。

 

 ……こいつにしよう。

 

 背後のカトルに合図をして、最初の染獣を追いかけていく。

 しばらく進んだ先で、その背後をとらえた。

 

「見えた」

「あれ……猪?」

 

 鎧猪(ガガイ)という、金属のように分厚い角と、同じ成分の殻を前面に纏った巨大な猪のような染獣。

 俺がダンさんと作った罠、その獲物となっていた染獣だ。

 晴れてご対面である。

 あの時は良く知らなかったが、まさか10層に出没する染獣だとは思わなかったよ。

 

 背後のカトルを引き寄せ、耳元で囁くように喋る。

 

「あれの弱点は腹の下だ。普通は転ばせたりして殺すんだが……」

「私の魔法なら、あのままいけるね。……試していい?」

 

 頷きを返すと、カトルが地面に手を触れた。

 そこから青い光が鎧猪(ガガイ)へと駆け抜け――地面から氷の槍が現れる。

 奴の角より遥かに太い氷槍で、猪の身体は腹を刺され空中へと持ち上がった。

 

「……あれ、貫けなかった」

 

 ただ、槍は殻を貫くことはできず、そのせいで身体が持ち上がってしまったのだろう。

 

「奴の殻は硬いんだ。生半可な武器や魔法じゃ罅すら入らねえよ。……カトルの普通の魔法でも駄目か」

「ち、力をもっと籠めれば……」

 

 慌てて魔力を放とうとするカトルを手で制する。

 

「魔力の無駄だからやめとけ。ここにいる染獣は、ほぼ全てが鎧持ちだ」

 

 様々な手段で体力を奪ってくる密林に、生息するのは倒すのに労力がかかる分厚い鎧を纏った染獣たち。

 とにかく体力の要るのがこの密林地帯なのである。

 

 カトルだから魔力切れの心配はあまりしなくていいが、それでも気を付けておいた方がいい。

 なにせこの階層の主役は、あの猪ではない。

 

 がさりと、上方から音が響く。

 咄嗟に上へと視線を向けると、葉の隙間に濃く光る影があった。

 

 ……来たな。

 

 何か喋る前にカトルの口を塞いで、上を指さす。

 すぐさま鳴った葉擦れの音で、カトルも直ぐに理解してくれる。

 

 槍が砕けて地面へと落ちていた鎧猪(ガガイ)の死骸の傍へと、それは降り立った。

 その姿は、巨大な猿。

 光を受けてぬらりと照る、分厚い外皮を纏った巨大猿。

 名前はやはりそのまま鎧猿(ガイエン)が、この階層の覇者たる染獣である。

 

 密林の至る所から奴らは現れる。

 分厚い外皮に、凶悪な筋力でこちらの装備を上から叩き潰す。

 それが群れで襲ってくるのだから、生半可な実力では満足に密林を歩くことすら叶わない。

 体力も武力も試される、人間の限界を超越しないと超えられない階層。

 それがこの密林地帯なのである。

 

 10層ともなればどの個体も巨大で、その膂力もとんでもない。

 俺なら数発殴られれば死ぬ。

 ……本当に、どうしてこんな化け物だらけの場所に潜ってるんだ?

 

 さて、肝心の鎧猿(ガイエン)は猪を掴み上げて殻を剥がしている。

 隙だらけだが……。

 

「……あれの弱点は?」

 

 今度はカトルの方が耳元でささやいてくる。

 

「顔や手足の裏は当然として、比較的脆いのは腰回り。後は、尻だな」

「お尻……?」

「ああ。奴らは腰かける体勢が楽だから、尻の皮が比較的薄い。厚いと邪魔なんだろ」

「結構無防備なんだね……」

「そうだな」

 

 この国の探索者が10層を踏破できるのも、その弱点が明確だからだと言っていいだろう。

 俺らも、この怪物の更に上の化け物を討伐しなければ、先へと進めないのだ。

 

「お尻は無理だけど、腰なら……狙うよ? いい?」

「……ああ。やってくれ。俺が引き付けるから、背後からもう一度狙ってくれ」

 

 頷いてから、腰の短剣を引き抜いた。

 カトルが狙いを定めて槍を放ったのと同時に――茂みから飛び出した。

 

『――――!?』

 

 鎧猿(ガイエン)の腰に槍が突き立ち、悲鳴を上げた。

 刺さりは浅く、すぐさま抜き取られて砕かれるだろう。

 その前に追撃をする。

 

 素早く駆け抜ける俺に気づいた猿が、動きを止めてこちらへと立ち上がる。

 迎撃態勢。

 このまま走れば、分厚い手に払われて吹き飛ぶだろう。

 

 奴の腕の範囲に入るその直前、俺は右奥へと進路を変える。

 弧を描くように間合いギリギリを駆け抜け、その身体の向きを変えさせていく。

 

『――――』

 

 奴は飛び掛かろうと、じっと俺の動きを見つめる。

 その視線を引き付けて――半周程進んだ時にその射程に足を踏み入れた。

 

『――――!!』

 

 瞬間、凄まじい勢いで奴が跳躍してきた。

 両手を組んで槌のように振り下ろしてくるのを、止まることなく前方へと飛び込んでなんとか回避する。

 

 空気の擦過音と、泥の弾ける音が鳴り響く。

 あっぶね! まともに喰らったら紙切れみたいに潰れるぞ……!!

 

 だが避けれた。その上奴は無防備にも尻を突き出している。

 その隙を見逃す彼女ではない。

 

 猿の背後から青い光が瞬き、破裂する。

 

『――ガッ!!?』

 

 鈍い声を上げ、その巨体がびくりと仰け反る。

 

 ――好機(チャンス)

 

 その隙に猿へと駆け、槍が刺さった方とは逆側の腰に灰短剣を突き刺した。

 硬い感触はほんの一瞬。

 ずぶりと柄まで埋まったそれを、全力で()()

 

『――――!!?』

 

 腰から腹までを、全力で切り開いた。

 

 すぐさま飛び退いて血が噴き出すのを必死で避ける。

 今日はまだこれからなのにまたびしょ濡れになってたまるか。

 

 猿はしばらく蠢いた後、力を失って倒れた。

 

「……ふぅ、終わったか」

 

 一体でこれか……。

 わかっちゃいたが、きついな……。

 

「ゼナウ、平気?」

「ああ。……来てくれ。解体する」

「うん」

 

 そのままカトルに警戒してもらいながら解体を進める。

 こいつの討伐証明は胸殻の一部。特徴的な形状で、嵩張らない。

 手早く解体を進めながら、話を進める。

 

「よし、単体なら問題ないな。次は2~3体の群れで確かめるぞ」

「でも、1体であれだけ苦戦してたでしょう? 今のまま戦って平気?」

「勿論無理だよ」

 

 さっきの4人組ならともかく、俺らは2人。

 いくらカトルの魔法が規格外でも、氷の壁を叩き割るだろう鎧猿(ガイエン)の群れ相手は絶対に死ぬ。

 

「普通の殴り合いは俺らには無理。だから例の作戦を早速試すぞ」

「……私としては、そっちも不安なんだけど」

「大丈夫だ。丁度良くこいつが()()してくれたからな」

 

 そう言って、俺は死体のそばに落ちていた、猪の死骸の方へと近づいた。

 

「明日にやることも決まったし、急ぐぞ」

 

 10層攻略のための作戦を、早速開始するのであった。

 

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