違法探索者の迷宮盗掘録 ゴミ溜めにいた男が英雄になるまでの話   作:穴熊拾弐

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第52話 クランづくり?①

 

 

 

 翌日、俺は1人協会支部へとやってきていた。

 その理由は、立ちはだかる最難関課題を解決するため。

 

『20層攻略のために、仲間を集めるわよ』

 

 今朝、珍しく4人が勢揃いした食卓にて、アンジェリカ嬢がそう宣言した。

 いつも通りの滑らかな青のドレスに長手袋(イブニンググローブ)を身に着けた彼女はパン、と手を叩く。

 

『もう知っての通り、20層の主は途方もなく巨大な染獣よ。岩や金属のどでかい殻を纏っていて、その突破は容易ではないの。いくら私たちが強くても、4人では無理ね』

 

 だから、と彼女は続ける。

 

『20層攻略には十数名で挑むことが義務付けられているわ。誘導に殻の破壊、後は取り巻きの排除……やることは多岐にわたる。だから最低でも10名……つまりあと6名は一緒に戦う探索者を集める必要があるわ』

『最低6人なら2パーティーくらいだよね。誰でもいいの?』

『当然、駄目よ』

『うっ……駄目かあ』

 

 珍しく顔を歪ませたカトルの問いを、アンジェリカ嬢が満面の笑みでぶった切る。

 

『基本的には中級――それも15層踏破済みの探索者で組む必要があるわ。一応、人数が集まらなかった時のため、2名までは上級を組み込んでも平気だけど』

『そうなんだ。……厳しいね』

 

 妥当だろ……とは言わないでおく。

 実際これまでは少数で良かったのに、いきなり10名以上で組んで倒さなきゃならない主が登場するんだ。

 それだけ深層の主が凶悪になっていくというわけだろう。てかそもそもたった4人で潜るのがおかしい。

 

 普通は同世代の仲間や派閥の先輩後輩たちと協力しながらクランを作っていき、そのメンバーで20層以降を踏破していくのだろう。

 だからそこまで到達できる連中には大した問題ではない筈だ。

 

 だが、俺たちにとっては事情は大きく異なる。

 人数をそろえること自体が最大の障害だと言っていい。

 なにせ俺たちパーティーは……その、変なのしかいない。

 

 民間上がりな上、そもそも違法に迷宮に潜ってる外国人(おれ)

 数年間屋敷に閉じこもっていた、皆に恐れられる氷姫――という名の人見知り(カトル)

 悲劇のせいで国外に逃げたと思われてる上に、2大派閥の頂点たる王子様から睨まれている怪物令嬢(アンジェリカ)

 そして一番頼りになるかと思ったら一番無口で他人と交流している気配のない要塞様(アズファム)

 

 人見知りと、皆が避けるヤバい奴しかいないパーティーだ。

 

 よく考えなくても、喜んで協力してくれる探索者なんてほとんどいないだろう。

 

 え? ほんと、どうすんだこれ。

 頭を抱える俺を余所に、アンジェリカ嬢はカトルにしっしと手を振る。

 

『安心しなさい。あなたには一切期待してないから』

『本当!? 良かったー』

『……あなたの将来が不安だわ』

 

 素直に喜んでいるカトルを見て、溜息を吐くアンジェリカ嬢であった。

 

『……ともかく! 20層突破には人数を集める必要があるのよ。それも、できれば長期的に付き合える、信頼できる人間をね』

『信頼?』

 

 これまた奇妙な単語が出てきた。

 一時的なパーティーじゃないってことか?

 

『どうしてです?』

『話した通り、私たちの目下の敵は第三王子とその配下たちよ。……状況次第では、第一王子の騎士団とも揉める可能性だってある。当然、それに対抗する力は我が家にもあるけれど、それはあくまで地上の話。迷宮内じゃ事情は異なるわ』

 

 シュンメル家は私兵団もあれば貿易のための海軍すら持っているらしい。

 それにいざとなれば、監獄島の連中だって使えるだろう。

 だが現在、このワハルの迷宮内ではまだこの4人だけの、弱小勢力でしかないってわけだ。

 

『少数でいい。ただ信頼のおける精鋭を数名確保しておきたいのよ……というわけで、ゼナウ』

『……はい』

 

 彼女が俺を見る。

 告げられる言葉が分かりきっているので逃げたくなるが、残念ながらそうもいかない。

 

『信頼できそうな、もしくは使えそうなパーティーを見つけて、勧誘してきなさい。一緒に20層を攻略しましょう……ってね』

『俺ですか……』

『あなたは不思議と縁を作ってくるのよね。だから、期待してるわ』

 

 そこはアンジェリカ嬢と鉄塊が1つずつ連れてくれば良いじゃないかと、そう思うのだけれど、当の鉄塊は目を瞑ったまま微動だにしない。……何となく分かっていたが、お前もカトルと同類なんだな……。

 

 監獄島の頃、口数が少ないのは喉か口に大怪我でもしてるのかと思ったが、ただ無口なだけだった。

 

 こうしてパーティーになったってのに、迷宮に潜ってる時以外は殆ど会話をしていない。

 相変わらず謎な人物である。下手したらルセラさんについての方が詳しいぞ、俺。

 

 まあともかく、こいつについては全くもって不明だが、今こいつは頼りにならないということははっきりとしている。

 どうやら、俺が頑張るしかないらしい。

 

『私の方で1つ当てがあるから、探すのは1パーティーで良いわ。ただし、上級は駄目よ? あなたの知り合いはやけに上級が多いけど、それを決めるのは最後の最後。できるなら頼らずに攻略したいからね』

『……了解です』

 

 

 ――と、いうわけで、俺は1人支部へとやってきたわけだ。

 

 ちなみにカトルも誘ったが満面の笑みですすっと部屋に消えていった。

 鉄塊に至っては気付けば屋敷にすらいなかった。あいつらめ……覚えてやがれ。

 

 まあいい。俺には最高に頼りになる女神ことルセラさんがいる。

 あの人に頼めばなんだって解決だ。

 

 ……と思ったんだが。

 

「いないな……」

 

 軽い気持ちでやってきたワハル支部の受付に彼女の姿はなかった。

 どうやら今日は不在の様だ。

 よく考えれば俺たちが探索する際に必ずいたことの方がおかしい。

 彼女だって人間。休みは必要だ。

 特に担当である俺らが潜らないと伝えているわけだからな。今頃休みを満喫しているだろう。

 

 だがそうなるとどうしたものか。

 アンジェリカ嬢には謎の期待をされているが、俺、この国では一番の新参者なんだがなあ。

 

「……仲間、仲間ねえ」

 

 受付広場にある椅子に腰かけてうんうんと考える。

 アンジェリカ嬢には謎の期待をされているが、探索者の知り合い、全然いないんだよなあ。

 

 ウィックたちはまだまだ浅層だし、ギステルやスイレン達は上級だから誘えない。

 ああでも、スイレンのクランの人たちに協力して貰うのはありか?

 ただ信頼できるかって言われると中々厳しいよな……。

 なにせ俺たちは犯罪者集団で、未来の国賊。下手したらどころか結構な確率で王子様との対立が確定している。

 

 そんなもんに気軽に誘うわけにもいかないだろう。

 まあ、一時的な助力ならいいんだろうが、それにしたってこれ以上スレインに借りを作るのは個人的に避けたい。

 さて、どうしたもんか……。

 

「……あ」

「ん?」

 

 ふと聞こえてきた声に顔を上げると、そこには男が1人。

 たまたま通りかかったのだろう。こちらを見て思わずつぶやいてしまった様に固まっていた。

 赤い髪に均整の取れた体つき。そして何よりその整った顔には見覚えがあった。

 

「先輩じゃないか」

「……ルイだよ。その呼び方はやめてくれと言っただろう」

 

 そうそう、ルイ先輩。10層で俺とカトルが一緒になって4本腕を倒した『炎砂』ってパーティーのリーダーだ。

 彼はあの時とは異なる鎧姿――それも以前のよりいくらか武骨で強そうなものに身を包んで立っていた。てことは……。

 

「まだ迷宮に潜ってたんですね」

「はあ? 当たり前だろう。2年も10層で燻ってたんだ。今は周囲に追いつこうと必死だよ」

「……おお」

 

 てっきりあれでもう探索者をやめると思っていたが、しっかりと探索を続けていたらしい。

 確か父親の夢を叶えた?とかなんとかで、号泣していたからもう潜らないと勝手に思ってたんだが、彼もちゃんと探索者だったらしい。

 

「なんか、すみませんでした……」

「何がだい!? ……まあいい、それで、どうしたんだ」

 

 そのまま俺の前の椅子に腰かけると、先輩はそう聞いてきた。

 

「へ?」

「そんな風に1人で頭を抱えて、何か悩んでるんだろう。僕で良ければ聞いてやるよ」

「……先輩!」

「だからやめろ、その呼び方!」

 

 なんだよ、先輩、めっちゃいい人じゃないか!

 

 確かにこの人なら探索者歴もそれなりにあるし、なにより俺らが知りたい中級辺りの探索者に詳しいだろう。

 ルセラさん程じゃないだろうが、相談先としては最適だ。

 持つべきものは先輩である。 

 

 そうして、俺はここに来た経緯を伝えるのだった。

 

 

「――というわけでして」

 

 あくまで20層踏破のための仲間集め、という所を先輩に伝えた。

 信頼云々はややこしいので伏せておく。

 第三王子との対立も勿論隠したが、そもそも先輩は俺らがどの派閥にも所属してないことも知ってる。

 細かく伝えなくても、大体の事情は理解してくれるだろう。

 

「なるほどね。20層のメンバー募集……というか、君たちはもう15層を突破したのか……」

「まあ、仲間が強いんで」

 

 白んだ眼を向けられたので、笑みを返しておく。

 この人相手だともう演技も不要だから気が楽だなあ。

 

「それについていっている君も十分化け物だけどね。……でも、アンジェリカ様にアズファム様もいるのなら納得かな」

 

 アンジェリカ嬢に、鉄塊まで様付けか。

 

「やっぱり有名なんですか?」

「有名なんてものじゃない! 王族のパーティーだぞ? 皆の憧れの的だったさ。うちのラースなんて、アズファム様に憧れて盾役になったくらいだからね」

「へえ……」

 

 家じゃ寝てるし、仲間集めからは逃げたけどな、そいつ。

 ただ、確かに盾役としては超一流だろう。

 事実、閃旋角馬(カバク)と骨染獣の連戦で、誰も死者を出さずに守り抜いたんだ。

 並の探索者にできることじゃないだろう。

 実績も十分だし、憧れる奴がいるのも無理はない。

 ラースってのは、確かあの丸盾(ラウンドシールド)持ちの男だったな。

 

「でも、盾役って大変ですよね。染獣相手に最前線で耐えるなんて俺にはできる気がしませんよ」

「それはそうだね。でも、本人たちは考えることが少なくて案外楽、なんて言うけどね」

 

 マジかよ。信じられん。

 確かに鉄塊は寝てるか黙って外見てるかいないかの3択だが……ん?

 ……本当かもしれん。

 

「ただ、負傷が一番多い役目なのは間違いない。今もラースの休息のために休んでるしね。……っと、話が逸れたな。それで、仲間の募集だったね」

「ええ。先輩たちやりません?」

 

 一度命を預け合って戦った仲だし、なによりカトルが平気なのがいい。

 

「無茶言うな! 僕らはまだ11層に潜ったばかりだぞ。20層なんて行ったら死ぬだけだよ」

「ですよねえ……あ、騎獣は何にしました?」

「いちいち話を逸らすな! 旋角馬(カバク)だ!」

 

 おお、それっぽい。

 この人、定番のものが好きそうだしな。

 

「まったく、こんな奴にあっという間に抜かされたのが腹が立つ」

「すみません、ふざけ過ぎました。……それで?」

 

 この人相手だとつい気が緩んでしまう。

 面倒見もいいし、声を荒げはするが怒りはしない、というか怖くない。

 きっと周囲にも好かれる人柄なのだろう。

 

 だから、いいパーティーの紹介を、ぜひ!

 縋る様に見つめていると、ため息とともに口を開いた。

 

「僕の知り合いで良ければ、1つ心当たりがある」

「おお、本当ですか……!!」

 

 流石先輩。

 自分たちが言うのもなんだが、俺たちは相当紹介するのに難があるパーティーの筈。

 それでもこの早さで提案してくれるとは……。人脈ってのも探索者に重要な資質なんだな。

 

「その人たちも僕らと同じで、中々20層を突破できずに苦しんでるんだ。僕が知り合ったのも、そう言った縁でね。今度は先輩たちに協力してくれると僕としては嬉しい」

「それは勿論。その20層を突破するための仲間集めですよ。まあ、最終的に決めるのはアンジェリカ様ですけど……どんな人たちなんです?」

「……」

「……?」

 

 だが、先輩の反応は芳しくない。

 ……なんか、嫌な予感がするんだが。

 

「その人たちはなんというか……個性的でね。そのせいで実力はあるんだが、中々仲間に恵まれなくてね……」

「ああ……」

 

 そうだよな……。

 俺たちみたいな連中に紹介できるなんて即答できるのは、そういう連中だよな……。

 

「だが、君たちなら大丈夫だろう? 変度合いで言ったら、君たちと同じくらいだから!」

 

 おい、馬鹿にしてるだろ。憧れの人はどこに行った。

 

 ……まあ、他に当てもないし、とりあえず会ってみるか。

 先輩に従って、変人パーティーの元へと向かっていくのだった。

 

 

***

 

 

 同日。

 迷宮の第10層にて。

 

『――――……』

 

 分厚い断末魔を上げ、巨大な猿――王鎧猿(ガイエン)は息絶えていた。

 ここは10層の奥、主である彼の巣だった場所。

 周囲には無数の鎧猿(ガイエン)の死骸が倒れており、更に奥に潜んでいるだろう小さな個体以外は生き残りはいない筈だ。

 

「……よし、ここまでかな。帰ろうか」

 

 主が完全に動かなくなったのを確かめてそう呟いたのは、青髪の騎士ルトフ。

 所属する金蹄騎士団の団長より急遽迷宮に潜ることを余儀なくされた彼だが、その表情は楽し気だ。

 

「やっとですか……。長かった……じゃあ解体しちゃいましょう。ワーキル! こっちへ」

「おう」

 

 彼が選んだ3人の騎士たちも疲れてはいるが明るい顔を浮かべている。

 なにせ彼らは皆、最近の騎士団の重要任務であった水源探し――通称『穴掘り』から解放された組。

 いくら掘っても変わらない地面より、危険はあるが変化だらけの迷宮の方が余程楽しい。

 

 ――本当に、いい時期に任命された。ありがとう、アンジェリカ嬢。

 

 それだけは感謝しながら、ルトフ一行は解体を終えて地上へと戻っていくのだった。

 

 

「お疲れ様でした。ルトフ様。……あの、こちらを」

「……?」

 

 そのまま戻ったルトフに、担当の受付嬢が紙片を手渡してきた。

 回りくどいそのやり方は口に出すのが憚れる内容ということ。恐る恐る中身を見て、その表情が盛大に歪んだ。

 

「……待ってるって?」

 

 問いかけにはこくりと頷きが返ってくる。

 

 ――皆を先に帰らせて良かったよ。

 

 今度は盛大に溜息を吐き出してから、ルトフは指定された部屋へと向かった。

 パーティーや支部の人間が内緒話に使う会議室。その中でも秘匿性の高い最奥の部屋へと入ると、案の定の人物が腰かけて待っていた。

 

「――遅いわよ」

「……いきなり来てその言葉はどうかと思うよ」

 

 そこには先ほど感謝を述べたアンジェリカが待っていた。

 部屋に漂う甘ったるい香りに、相変わらず触れれば怪我をしそうな鋭い美貌の女性。

 先ほどの紙片は、この怪物令嬢ことアンジェリカ嬢からの呼び出しだった。

 

 顎で示されたので、対面へと腰かける。

 いかにもヤバい話をするという状況だが、身に覚えは全くないルトフである。

 

「それで、ご用件は?」

「あなた、迷宮に潜っているそうね。順調?」

「……ああ、順調だよ」

 

 誰のせいだ、と突っ込みたくなるのを笑顔で我慢しつつ、頷いておく。

 先ほどまでの感謝が霧散しそうだ。

 

「そうね。王鎧猿(ガイエン)を3体も倒して、協会も困ってるわよ?」

「ちゃんと毎回競合がないかは確認しているよ。それに、あいつは訓練に丁度いいんだよね」

「あれを丁度いいねえ……。相変わらずね、あなたは。配下の子たちも精鋭ぞろいなんでしょう?」

 

 そう言って呆れた様に笑ってから、アンジェリカは1枚の紙を差し出した。

 

「そんなあなたたちに、手伝ってほしいことがあるのよ」

「……やっぱりそういうことだよね。君が頼んでくるのはいつもこういう碌でもないものばっかりだ」

 

 こうして秘密裏に呼び出したんだから、騎士団を通したくない()()()なのだろう。

 学院時代から付き合いのある彼女。

 模擬戦闘でそれなりに戦えたことで気に入られてから、時折現れては厄介ごとを頼んでくる。

 王子の婚約者となって落ち着くかと思ったのに、今度は王子ごと厄介を持ち込み始め、その関係は例の事件が起きるまで続いていた。

 

 そして戻ってきた今、再びあの悪夢が始まろうとしている。

 ていうか始まっている。

 両足どころか腰くらいまでは絡めとられていそうだ。

 

「あら? ちゃんとしたお願いよ。表向きは」

 

 ――ほら、こうなる。

 

 諦めて、差し出された書類を見る。

 

「……20層の主討伐?」

「ええ。人員が必要なのは知ってるでしょう? それをあなたたちにお願いしたいの」

「僕らは10層を突破したばかりだよ? 知ってるだろう」

「たった半日で、無傷でね? しかも3回連続で」

「……よくご存じで」

 

 ルトフはそれなりに経験があったが、仲間内には迷宮の経験が殆どない者がいた。

 そんな自分たちにとって、密林とはいえ地上と環境が似ていて、主が人型の10層は訓練に()()()()()()

 実際、最初こそそれなりに苦戦したが、直ぐに慣れてこの成果。

 次からは15層に挑もうと思っていたが……。

 

「あなたたちなら15層も余裕でしょう? 騎士団特権でさっさと倒して、協力して」

「……わかったよ。急ぐとしよう」

 

 騎士団のこれまでの実績と巨大な派閥であることを利用して、道中の階層はすっ飛ばして挑むことができる。

 騎獣も騎士団管理のものを使えるから、明日にそのまま15層に挑むことができる状態ではあった。

 というか、騎士団長は最初からそれをお望みだったのを必死で説得したのだ。

 

 もう十分に経験はつめたから、倒すこと自体は問題ないだろう。

 ……目の前のアンジェリカたちが主を倒したばかりだから、その復活を待つ必要はあるが。

 

 まあそれはいい。

 さっさと深くに潜れという団長の要望も達成できるし。

 問題は、もう1つの――呼び出された真の理由だ。

 

「それで、もう1つの理由は?」

 

 絶対に碌なことじゃないのが分かる。

 案の定、アンジェリカは深く妖艶な笑みを浮かべながら、その恐ろしい提案を口にした。

 

「――あなた、自分の騎士団に興味はない?」

「……はあ?」

 

 そうして、怪しい密談は進んでいくのだった。

 

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