違法探索者の迷宮盗掘録 ゴミ溜めにいた男が英雄になるまでの話   作:穴熊拾弐

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第67話 白砂の迷宮第20層/踏岩山⑧

 

 

 

 それからルトフたちの報告をもとに狩場決めなどの一通りの準備を済ませ、決戦前最後の仮眠をとった。

 汚れも落として食事もとり、可能な限りの士気を高めた。

 ワーキルとウルファ、ジン辺りは意気投合して語り合い、酒でも入ってんのかってくらい騒がしくなり、各陣営の引き締め役にそれぞれ首根っこを掴まれていった。

 何してんだ……。

 

 そんなこんながありつつ――翌朝。

 恐らく早朝という時間に、俺たちは全員で主が見つかった東へと向かった。

 

 と言っても、仲良く隊列を組んで向かうわけではない。

 騎士団組の騎獣は馬で、『赤鎚』たちは牛と、俺たちの騎獣たちはバラバラだ。

 一緒に行動すると喧嘩をしだすため、基本的には距離をあけて行動する。

 

 

 その移動は当然、全員で天辺を駆け抜ける。

 

「行きますよー! えいっ! ……できました!」

「これは、凄いね」

「橋ができちまった……」

 

 カトルが氷で生み出した坂や橋を渡って、本来上に登れない騎獣たちも連れて駆けていく。

 ある程度距離があるとはいえ、それだけ集団で移動していると、流石の墜公佗児(シラビ)もそう簡単には襲ってはこなかった。

 

 たまに勇気ある挑戦者が飛来してくるが、それは大体最後尾にいる騎士団組を狙って来て――。

 

「――的中!」

 

 ワーキルの巨大弓によって正確に射落とされていった。

 奴は土属性の魔法使いでもあるらしく、身の丈程ある大弓から岩の矢を射放つのだ。

 それは墜公佗児(シラビ)の胸から肩のあたりを射抜き、力を失って墜落していく。

 

 俺みたいな目があるわけじゃないだろうに、熟練の技ってのは恐ろしい。

 

 そうして、全力で進んでいった先。

 再び空気の変わる気配がした。

 

「……そろそろか」

「うん、そうだね。……揺れが、凄い」

 

 今度は風や気温なんて細かな物じゃない。

 大きく、それでいてゆっくりとした地響きが周囲に轟き始めていたのだ。

 それは、巨大な質量が気ままに闊歩する余波。

 主に近づいていることを示していた。

 

『――アンジェリカ嬢』

 

 ふと、俺らの耳元にルトフの声が響いた。

 彼とジンが共同で起こしている風魔法で、一行の会話は共有している。

 

『なに?』

『そろそろ奴が見えてくる。僕らはここらで下を進むよ』

『わかったわ。道は必要?』

『降りるくらいならこっちでできるさ。……では、幸運を。後で会おう!』

 

 ちらと後ろを見れば、黒い光を放つ4体の騎馬が道を外れていったのが見えた。

 元々分厚い殻を持つ上に、騎士団の用意した専用装備を身に着けた武骨な旋角馬(カバク)

 その鍛え上げられた突撃は、この岩山地帯の染獣たちでさえ破壊しうるだろう。

 

 ……流石に、主までは貫けないだろうが。

 

 そうこうしているうちに、俺たちは奴の『周回跡』の大渓谷まで到達する。

 ここは昇降機から北北東に進んだところ。

 主は今、東の方角からゆっくりと北上してきている。

 

 ルトフたちは地上から南下し、俺たちは天辺を南下する。

 唯一、『赤鎚』だけはこのまま北上だ。

 

『じゃあオレらも狩場に向かうぜ。誘導、頼むぞ!』

『そっちこそ、ちゃんと準備しろよ!』

『任せとけぃ! ……あ、オレらは降ろしてもらえると……』

「……2人とも、行ってあげて」

「はいはい……」

 

 カッコいいんだか悪いんだかわからないまま、3頭の塞頭牛(ラタンカ)がカトルの作った氷の坂を走り抜けていった。

 奴らはそれぞれ大きな荷車を引いており、その中身は絡繰りだろう。

 

 戦場の準備を整え、後はそこへ誘導するだけだ。

 賑やかな連中が消え、俺たちもそのまま南へと進んでいく。

 

 走ること小一時間程。

 揺れと音がどんどん増していき――遂に辿り着いた。

 

「見つけた」

 

 緩やかに湾曲する崖の向こう。

 渓谷に埋もれるようにして進む、巨影が姿を表していた。

 

 地響きと、それに揺らされた大気が波のように押し寄せてきている。

 吹き上げる風と砂塵の向こう。それでも隠し切れない、200mを超す深さの大渓谷に埋まる巨体。

 

 その見た目は、とにかく巨大になった大蜥蜴に近かった。

 前肢はやけに横に開かれ、片腕ずつ、這うように前に進む身体は分厚い岩の鱗に覆われている。

 腕が叩きつけられる度に地面が揺れ、嫌な轟音を響かせる。

 それに続いて左右に()()()身体と長い尻尾が、左右の壁を削って落石が起きている。

 

 コの字に開かれた前肢に支えられるようにして持ち上げられた顔は、巨体にしては細長い流線形。岩を食う際に放出する酸が口から洩れ、ぼたぼたと垂れ流しになっている。

 ……どうやら食事をしたばかりらしい。なら、しばらくは止まらずに進み続けるな。

 

 蛇みたいなその顔も、分厚い岩の鎧に覆われている。

 首から下は蜥蜴らしく鱗を持つが、それら全てが分厚く硬そうな岩でできており、染み出た岩石は斜め後ろ方向に鋭く隆起する。

 その一本だけで直径も長さも3mを軽く超す。

 物によっては10mに達するものもあるだろう。そんな棘を大量に身体から生やし、ひたすらに前へと蠢く怪獣。

 

 全てが規格外。蠢く岩の城郭。

 太く鋭い岩の棘を纏った岩喰らいの大蜥蜴。それがこの20層の主――『踏み鳴らし』である。

 

「うわ、デっかー。あれ本当に生き物なの?」

「残念なことに生きてるらしい……」

「でも、本当に見た目は蜥蜴だね。なんか、ごつごつしてるけど」

「あんな蜥蜴がいてたまるか……」

 

 礫蜥蜴(クラバ)を何十倍しても足りない巨体は、縮尺がおかしすぎて眩暈がしてくる。

 歩くだけで足元が揺り動かされ、まだ遠いってのに身体が震えだす威容がゆっくりとこちらに近づいている。

 

 なんだあれは。あんなのが存在するってのが全くもって理不尽だ。

 あんな歩き回って岩を喰うだけの生き物に何の意味があるんだ?

 迷宮とは、あまりにも理解不能な場所だ……。

 だが、あれを倒さなければ先には進めないのだ。

 やるしかない……。息を吐き出しつつ、隣のジンを見た。

 

「ジン、平気そうか?」

「うん! ……ごめん、ちょっとだけ嘘ついた。見てよこの腕」

 

 そう言って掲げた腕はぶるぶると震えていた。

 やはり、恐怖はそう簡単には消えてくれないか。

 ただ、その顔には笑みが浮かんでいる。

 

「――でも、心は大丈夫! 俺はやるよ!」

 

 気合の声を出しながら、自分の両頬を叩いて両手を振り上げた。

 その様子に、少なくとも怯えは見えない。

 ……大丈夫そうだな。

 

「よし。鉄塊、どう行く?」

「……腹の辺りが一番横に広い。そこの、最も太く長い棘を探そう」

 

 当然、ゆっくりとはいえ動き続ける相手に飛び乗ろうとしたら最悪の事故が待ってるだろう。

 そこは、ルトフたち地上組の出番。

 だから俺らは早々に飛び乗る場所を決めて合図を送らなければならない。

 とりあえず、1つ目。

 

 俺は用意していた筒を取り出し、空へと放った。

 赤い光を放つ曳光弾が、空へと高く飛んでいく。

 

「……あ! 来たよ、青いの!」

 

 崖下を見ていたカトルが声を上げる。

 俺の合図を受け、ルトフたちも青の曳光弾を上げたのだ。

 これはそれぞれの開始準備が整った合図。

 次は俺らが飛び乗り位置を決める。

 

「さあ――走りましょう!」

「風よ――!!」

 

 騎獣とジンが走り出す。

 行く先は、地響きを鳴らし続ける巨大蜥蜴。

 まずは奴の背に乗る。

 そのためには――ルトフたちの活躍が必要になる。

 

 

***

 

 

「上がりました! 曳光弾、2発目です」

 

 上空を見つめていたワーキルが声を張り上げた。

 待ちに待った瞬間に、感情が抑えきれないのだろう。

 同じ感情を抱いていながら、表情はいつも通りのルトフが頷いた。 

 

「ああ、わかった。じゃあやろうか。……巨獣狩り、ワクワクするね」

「おお!!」

 

 咆哮を上げながら、一行は騎獣である旋角馬(カバク)を走らせる。

 砂塵舞う渓谷の底を、4つの騎馬が速度を上げて進み始めた。

 

「……戦闘狂どもめ。あれを見てよくそんなことが言える……」

 

 1人常識人枠らしい女騎士のクリムが、ため息とともに視線を上げる。

 地響きとともに迫る大蜥蜴は、まだ1km程距離があるというのに、見上げなければならない程に巨大。

 同じ地面に立っている筈なのに、奴の動きは妙に緩やか。

 ただ、とにかく大きいせいでたった一歩でぬるりと視界を埋めるように進んでくる。

 距離感だけでなく平衡感覚すらおかしくなりそうな化け物だ。

 

 身体を支える前肢だけで100mはある化け物に、今からたった4人で立ち向かうというのに、後ろを進む2人はやけに楽しそうである。

 

 ――なんでこれで私が先頭なんだ。理不尽でしょう……。

 

 自分(クリム)は盾役。ワーキルは弓使いなのだから仕方ないのだが、納得はいかない。

 溜息を吐いてから、背後を走るもう1つの騎馬へ振り向いた。

 

「その点、カイは落ち着いてるね」

「……ええ」

 

 振り向いた先、同じようにして巨獣を見上げる青年騎士がいる。

 カイと呼ばれたその青年は、一見するとぼおっとしているように見える。

 だが実際はその研ぎ澄まされた神経で、常人には知覚できない何かを感じ取っているのだとクリムは知っている。

 

 ――魔剣士カイ。

 別の騎士団の見習いだった彼をある日ルトフが連れてきた時は正気を疑ったが、彼はすぐにその実力を証明してみせた。

 

 当時の金蹄騎士団、その極僅かな上位陣を除いて、ほとんど全員を模擬戦で倒したのだ。

 終盤は100人組み手に近い、ほとんど休憩なしの連戦だったというのに、彼は圧倒的な力と技術でそれを成した。

 ……クリムはなんとか勝てた側。ワーキルは当時別の騎士団だった。

 今では単純な個人戦であればルトフに並ぶ最強候補として名が挙がるくらいにはその実力は騎士団内に知れ渡っている。

 

 ――今戦ったら、勝てないかもなあ。

 

 などとどうでもいいことを思いながら、カイへと問いかける。

 

「騎士団の未来とまで言われた君に、あの化け物はどう見える」

「どうって……大きい蜥蜴?」

「……凄いこと言うわね、君」

 

 小首をかしげて恐ろしいことを言う。

 恐怖なんてみじんも感じていないのだろう。

 

「流石、ルトフさんと並んで騎士団最強を欲しいままにする騎士ね。言うことが派手だわ」

「そういうのは、よくわからないですけど……」

 

 困惑しつつも表情一つ変えない彼は、でも、とすっと巨獣を睨む。

 

「あんな巨体じゃ、こっちを認識できないでしょう。道幅も狭い。とれる攻撃手段は魔法を除けば踏むか払うか噛み付くか……精々3つくらいだ。そんな相手には負けませんよ」

 

 あっさりとそう言い放つ彼に、クリムは口笛を鳴らした。

 それを言っても問題のない実力がこの青年にはある。

 足りないのは場数――経験くらいだ。それも今、凄まじい速度で積んでいっている。

 まさしく騎士団の未来。精々置いていかれないように頑張るかと、再びクリムは息を吐き出すのだった。

 

「さあ、お喋りはそこまでだ。クリム、先導を。ワーキルは後ろから援護を頼むよ」

「「了解」」

「カイは僕に合わせて。できるよね」

「……勿論です」

 

 そうこうしているうちに、奴の足下に到達する。

 巨木のような、30mはあろうかという太い右前肢が、遥か高く持ち上げられ――落ちてくる。

 

 ずん、と地響き――否、地鳴りといっていい程の衝撃が大地を駆け抜ける。

 馬の身体もふわりと浮き上がり、直後着地した。

 ただ歩いただけでこれ。

 もし肢の()()()に周囲にいれば、それだけで吹き飛ばされ、騎獣が走行不能になる可能性が高い。

 

 巨大というのは、ただそれだけで凄まじい脅威となるのだ。

 だが、同時にその動きはとんでもなく()()

 

 ゆっくりと片肢を上げている内は、もう片方の肢は必ず地面に固定される。

 地響きを避けながら、巨体を支えている方の肢を攻撃し続ける――それが、小さな人間にできる数少ない攻撃手段だ。

 

「総員――」

 

 腰から双剣を引き抜き、クリムが声を張り上げる。

 煌めく銀の刃に魔力を纏わせ、たった今着弾したばかりの右前肢へとその切っ先を向けた。

 

「突撃!!」

 

 4体の騎馬が、塊となってその足へと突き進んでいく。

 その初撃は、当然の如くクリムが受け持つ。

 

「――――!!」

 

『踏み鳴らし』の手足の構造は基本的に蜥蜴と同じだ。

 細く伸びた5指は人間のそれと酷似しており、細長く鋭い。

 また今はその全てが岩の蛇腹に覆われていて、分厚く、硬い。

 

 だが、それでも突ける場所はある。

 伸びる腕の裏側――手と腕を繋ぐ関節部分。

 そこは他と比べれば、あくまで比較的だが、薄い。

 

 激突しないすれすれまで近づいて、クリムは両手の剣を、その硬い表皮へと叩き込んだ。

 

 ぎちり、と岩をひっかく嫌な音と火花が上がる。

 全力の魔力を込めた刃であっても、硬い表皮を僅かに削っただけ。

 

 ――硬い!!

 

 いくら薄い場所でも、その岩の殻は数十cmに及ぶだろう。

 そう簡単に削れは――。

 

「カイ、合わせて」

「――はい」

 

 直後、2閃の光が瞬いた。

 

 轟、と恐るべき速さで振られた剣戟が、ほとんど間を置かずに、クリムが傷をつけた場所に正確に叩き込まれたのだ。

 その結果――硬い筈の腕から血が噴き出した。

 

『■■■■――――!!』

「うわっ!?」

 

 頭から叩き潰すような咆哮が響いてきた。

 地の底から鳴り響く、蜥蜴の悲鳴が上がったのだ。

 

 奴の巨大な腕に対して、ついた傷はほんの僅か。

 人間で言っても、少し皮膚が切れたかな、程度の浅いものだ。

 それでも、堅牢な身体を持つ『踏み鳴らし』にとっては異常事態だった。

 

「離脱します!」

 

 全速力で壁へと駆け抜けた直後、右前肢が大きく振り上げられ、そのまま地面へと叩きつけられる。

 大地震かとおもう衝撃がやって来る。

 

「……っ! 耐えて……!!」

 

 飛び跳ねる馬体をなんとか制御して、そのまま壁に沿って前進を続ける。

 ただの癇癪みたいな動きでこれだ。

 負わせた怪我の代償にしてはあまりにも大きすぎる。

 

 事態の対処に必死なクリムとは異なり、表情一つ変えないままのルトフが冷静に声を放つ。

 

「ワーキル!」

「おう!」

 

 揺れが収まったその瞬間、最後尾を走っていたワーキルが、馬上で器用に身体を捩じり、真上へと弓を引き絞った。

 

「土よ――」

 

 番えた矢に岩の魔法が乗り、巨大な岩の矢へと変化していく。

 そのまま狙いを絞り――解き放った。

 

 ひゅう、と大気を切り裂く音が響いた、その直後。

 放たれた矢は凄まじい加速とともに撃ちあがり、巨獣の顎に激突した。

 

「――出ます!!」

 

 その瞬間を狙って、クリムは馬を一気に加速させ、奴の前へと躍り出た。

 

『■■■■――――!!』

 

 再び悲鳴のような咆哮が上がる。

 そして、岩の膜に覆われていた両目が開き、ぎろりとこちらを睨んだ。

 

 認識したのだ。

 

 足元を蠢く虫は『こいつ』だ、と。

 

「引き付け、成功です!」

『――――!!』

 

 奴の咆哮が再び上がる。

 その隙に、クリムは単独で再び奴の足下へと駆け出した。

 当然、虫を潰そうと奴は躍起になり、身体を捩じりながら左肢を振り上げる。

 

 その結果、もう片方の右肢は大地へと固定される。

 そのがら空きなもう片方の腕へ、2人の騎士が駆け抜ける。

 

「ルトフさん!」

「ああ!」

 

 ルトフとカイ。ともに騎士団の未来を背負うと言われ、探索者を除けば国内最高峰の剣技を誇る魔剣士2人。

 そんな彼らの剣閃が、先ほど負わせたばかりの傷跡を更に拡大せんと叩き込まれる。

 更に追い打ちとして、ワーキルの弓矢がその()へと鈍い音を立てて突き立った。

 

 立て続けの3連撃を受け、『踏み鳴らし』の手首――関節にそれなりの大きさの穴が開いた。

 

『■■■■――――!!』

 

 その痛みに、巨獣が思わず右腕を浮かせた。

 既に左前肢を振り上げた状況でそんなことをすれば――当然、その身体はバランスを崩す。

 

『倒れるぞ! 退避!』

 

 ルトフの風魔法による警告を受け、全員が全速力で騎馬を前へと走らせた。

 直後、姿勢を崩した蜥蜴は、渓谷の底へと()()()()()

 

『衝撃来ます! 備えて!!』

 

 直後、凄まじい揺れと砂塵が一行を襲った。

 

「……っ!!」

 

 まるで嵐の到来かのようなその猛風を背に受けながら、なんとか耐えきって外へと駆け抜ける。

 髪やら口やらに砂が入る不快感が凄まじい。

 だがそんなことも構わずに、ワーキルが歓喜の咆哮を上げる。

 

『ははっ、どんだけでかくても所詮は生き物! こかすだけなら簡単だなあ!!』

『あれで倒せたら楽なんだけどねえ……。残念ながら、大した傷じゃないんだよね』

 

 ルトフの言葉通り、倒れたのはほんのわずかな時間。

 すぐさま起き上がると、咆哮を上げて動き出した。

 

『■■■■――――!!』

 

 その視線は、しっかりと前を進む騎士たち(むし)をとらえている。

 今まで緩慢な散歩に過ぎなかった奴の移動は、獲物を追う追跡へと切り替わったのだ。

 

『……でも、作戦通りだ』

『お、曳光弾確認! 無事に飛び乗ったようです』

 

 奴の()()()()()から上る曳光弾が、作戦の成功を伝えてくれた。

 後は、彼らに任せて自分たちは逃げるだけ。

 時折意識を惹くための攻撃は続けるが、危険はそこまでないだろう。

 

「任せましたよ、皆さん……」

 

 今度は地図を広げながら案内役に徹するクリムは、奴の背に飛び乗っただろう仲間に向けて、そう祈りを飛ばすのであった。

 

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