Dye Your Soul Your Color 作:鏡狼 嵐星
食い
生き
満ちるために
俺達は
血の海を泳ぎ
骨の大地を踏みしめ
灰を食らって
歩むことしか出来ない
空座町上空。転界結柱で囲まれた偽物のそこに、虚圏に向かわなかった隊長恪全員及び数人の信頼に足る戦闘員が集まった。そして、虚圏から侵攻してきた藍染の軍のうち、藍染惣右介及び市丸ギンと東仙要は、総隊長の一撃で炎の檻の中へと閉じ込められる。その後、バラガン・ルイゼンバーンの臣下たる
「いいのか、世魅。京楽隊長についていなくて」
「あの人を心配するだけ無駄だ。それに冬獅郎のところに来たのは、十刃が実力順なら眼の前の女
「……ねぇ、たいちょー。世魅さん、とんでもないこと言ってません?」
「言うな。世魅が滅茶苦茶なのは、今に始まったことじゃねえだろ。だが、これほど頼りになる言葉もねえな」
口調を崩している世魅を見て、乱菊はご愁傷さまですと手を口元に当て、冬獅郎は腕組みをしながら笑みをこぼす。いつもは礼儀正しく振る舞う彼が口調を崩す時は、決まって尊敬を払わなくていい場合であるためだ。
「おい、黒髪! てめえ、ハリベル様が弱そうとか抜かしやがったか、アァ゛? ひょろい見た目しやがって。更に小さいガキと並んで、おままごとでもすんのかよ!」
「なんだ? 見た目で判断していいなら、お前が一番弱そうだが、そう判断して良いのか、角有り?」
「なんだと、テメェ!!」
エミルー・アパッチの煽りを、世魅は難なく返す。逆に、彼女は返された煽りに乗ってしまう。世魅のハリベルが弱そうという発言に加えて、自分が一番弱そうと言われた事にブチギレた。
「やめろ、アパッチ」
「ですが、ハリベル様!」
「あの黒髪の男は藍染様に傷をつけた男だ。その実力は私に匹敵するものと考えて良い。お前たちでは勝てん」
「んなっ、あいつが!?」
ハリベルの返答にアパッチの驚く声が返される。その近くにいるフランチェスカ・ミラ・ローズとシィアン・スンスンも声は上げなかったが、表情自体には驚きが含まれている。
「匹敵、か。少なくとも藍染と戦える程度の実力はあるつもりだが?」
「お前が私と同格なのは認めるが、藍染様ほどではない」
「そうか。まぁ、藍染の前の肩慣らしとさせてもらおう」
世魅とハリベルがその霊圧をぶつけ合う。彼らはそれぞれの仲間に視線を向け、察した日番谷たちと三人の従属官は場所を変える。お互い剣を抜き、世魅とハリベルは改めて向き合う。
「名を聞いておこうか、女
「
「八番隊第三席、左刑部世魅」
全てが灰色に染まった斬魄刀と刀身の中心に穴が空いた斬魄刀がぶつかり合う。しばらく、ただ斬魄刀をぶつけ合っていたが、まずハリベルが動く。刀身の中心に黄色い霊圧がこもると、その刀身のスピードとパワーが増加する。世魅はそれに反応し、変幻無蔵をトンファーのような形状に変形させると、それを高速で回してハリベルの一閃にぶつける。甲高い音が上がり、彼らは再度距離を取り合う。
「腕試しはこの程度でいいか? おれはまだ実際に
「……そう易々と見せると思うか?」
「思うな。さっきの言動からして、お前は仲間を大事にするタイプだ。そして、お前の従属官たちの実力を見るに、冬獅郎には勝てない。それこそ特別な能力がなければ、きついだろう。眼の前の俺をさっさと片付けて参戦したいと見たが、どうだ?」
「私の仲間を舐めるな。彼女たちはお前が思うほど弱くはない」
「そうか。なら、いい」
普通の人間でも見えるほどのゆっくりなスピードでトンファーを回していた世魅は、それを前に突き出すと手放した。
「卍解」
落とされた斬魄刀が溶け落ち、世魅の背後に流れ、巨大な球体を造りあげる。
「変幻自在無蔵」
藍染を傷つけたとされる卍解の出現に、ハリベルの緊張感が一気に張り詰める。それに反応したのか、変幻自在無蔵が球体から触腕を何本も伸ばし、彼女を襲う。ハリベルは斬魄刀で切り払おうとするが、一発目の触腕にめり込んで動かなくなってしまう。さらに追撃の触腕が迫る中、彼女は叫ぶ。
「討て、
解放と同時に出現する強烈な水圧で、へばりついていた変幻自在無蔵を吹き飛ばす。吹き飛ばされて欠片となった変幻自在無蔵は世魅の背後にある球体へと戻っていく。
「なんだ、割とあっさり解放するんだな」
「言ったはずだ。私はお前を同格と認めている。卍解に対し、
「道理だな」
ハリベルの持つ大剣から水流の斬撃が放たれるが、世魅の卍解も同様の形態となり、それを撃ち落とす。次に水の弾丸を放つが、これも小さく分裂した灰色の球により撃ち落とされる。最後に、巨大な刀身をもって
(硬い。加えて、私と同じ液体を操作する能力だとしても、その性能は私のものよりも自由度が高い)
「今の所、お前の攻撃は俺に通らないが?」
「心配するな。すぐにその余裕を崩してやる」
すると、少し離れた場所で大紅蓮氷輪丸の氷が天を貫くように生成されるが、すぐに破壊される。世魅がチラリと視線を向けると、日番谷がビルほどの高さのある巨大な虚と戦闘を繰り広げていた。
「なんだ、あれは。あんなメチャクチャな混ざり方をした虚、いたか?」
「あれが私の部下の力だ。舐めるなと言ったはずだが?」
「それは惜しいことをした。あれとやり合うのも面白そうだったな」
「よそ見している暇はないぞ!」
ハリベルが剣を上へ構え、周囲の水という水が集まりだし、巨大な水球を作りあげる。それは徐々に変幻自在無蔵よりも大きくなっていく。
「
高水圧による激流が世魅の正面上から襲いかかるが、世魅は回避する素振りすら見せない。背後の変幻自在無蔵が彼を包み込むと、溝が掘られたドリル状へと変わり、高速で回転を始める。受ける構えだった。
「舐めるな!」
ハリベルは
「どうやらそれがお前の大技のようだが、次はどうする?」
世魅の余裕ある表情を見て、ハリベルは背を向けて移動を始める。無論、世魅もそれを追いかける。波の上でサーフィンをするかのように、変幻自在無蔵を動かしてその上に乗ることで、瞬歩を超えるスピードで追走しながら、空を飛ぶ武器を射出して追撃する。
「
「
背後に向け、水の大砲を撃つことで、空に浮く武器を叩き落とす。そして、冬獅郎とアヨンによる戦闘によって残された氷の塊たちに向け、ハリベルが剣を向ける。
「
すると、氷輪丸によって作り出された氷が溶けて水になり、ハリベルの周囲に展開される。水量が先ほどの一撃と倍近く違うものの、
「氷輪丸の氷を利用するのはいい手だ。敵の力を利用するのも戦略の一つ。ただ、威力を上げるだけでさっきと同じ技ならやめとけ。通じないからな」
ハリベルは世魅の言葉を無視して再度、
「ッ!」
一部といっても、ほんのわずかであるためか、難なく弾いたハリベルだったが、その原因が理解できない。その表情を見て、世魅がため息混じりに彼女に話しかけた。
「ほらな、言う通りだっただろ?」
「貴様ッ、何をした!」
「さあな。自分で考えろ」
ハリベルは自身の集めた水をいくつかの塊に分け、自身の前に出す。少しでも違和感を感じた時に即座に対処できるようにしつつ、攻撃に専念するためだ。
「トライデント!」
霧に紛れ、敵からは見えにくい斬撃をより巨大化させて飛ばす。しかし、変幻自在無蔵の本体から分かれて展開する、回る盾によって防がれる。加えて、空中に浮かぶ複数の武器たちが浮かぶ水球を狙い、破壊していく。そこで、ハリベルは破壊された水球の水と自身の霊圧を以て、津波を呼ぶ。
「はぁぁっ!!」
空を覆うほどの濁流であるそれが世魅を元へ流れる間、彼は球体を細かく分裂させ、自身を一つの球体の中へと入れる。津波に巻き込まれ、乱れる水流に飲み込まれるが、その水流に逆らわずに流れに身を任せる。
「行雲流水」
津波の勢いが減った時に見えた彼の体や卍解に傷は見えない。
(力を集中させた一撃でなければ、奴の卍解の防御を超えられん。やはり威力を増した
ハリベルは自身が能力の制御を誤るような柔な鍛え方はしていない。つまり、先ほどの能力の暴走は世魅の卍解によるものであることは間違いない。ではその力とは何か。見る限り、自在な形で攻撃できること以外に目を見張る点があるとすれば、凄まじい防御力を誇ること。少なくとも現状はハリベルの攻撃も通用していないが、彼の攻撃もまたハリベル有効となっていない。
「……一応、待ってみたが、さっきの
ハリベルが頭の中で次にどうするかを考えた数秒の間に、世魅は彼女の技に限界があることを見抜く。
「
今まで球状だった卍解が世魅の体に纏いつく。巨大だったそれが圧縮されてその体の鎧となる。腕と足の装甲は分厚くなっているものの、そこ以外はスーツのように薄い。液体が頭の下半分まで覆うと、外部に新たな装甲を生み出し始め、肩や膝などを保護した。頭の上半分以外の全てを覆う鎧のようではあるが、その圧は防御のために用いるものとは感じられない。
「さて、やるか」
すると、瞬歩によって詰めてきた世魅の拳とハリベルの大剣が爆音とともにかち合う。世魅の鎧の拳先が変形して攻撃を追加する。二重の一撃による重さを受けきれず、体勢を崩すハリベルを世魅の蹴りが追い討ちする。どうにか受けきっても、両手によるラッシュが始まる。先ほどの遠距離攻撃ばかりだった戦闘がガラリと変わって近接戦となった。
「虚閃ッ!」
近づいてくるのならと虚閃で薙ぎ払おうとするが、彼が腕を突き出し、虚閃が発射される前の球体を握りつぶす。手元で巨大な爆発が起こるが、彼はそれを気に留めた様子もない。ハリベルがその状況で反射的に剣を振るおうとするが、姿勢を変えた世魅に避けられる。そして、彼はハリベルの腹に両手拳を上下に並べて添える。
「双骨」
一閃。音が鳴ること無く、その衝撃波がハリベルを貫く。彼女が口から血を吹き出し、吹き飛んで真下のビル群に突っこみ、貫通して複数の建造物を破壊する。
「グッ、がぁあぁっ!
ハリベルはどうにか受け身をとって、残る全霊圧を消費した巨大な
「一骨」
巨大な水の瀑流は打撃の一撃と膨れた拳先の力によって破壊され、ただの水の固まりとなり、地面に流れ落ちる。全力の一撃をあっさり対処されたため、さすがのハリベルも目を疑うしか無かった。
「はぁっ、はぁっ、馬鹿、な……!」
「多少は霊圧を使ったが、想像よりも大したこと無かったな。ハリベル」
鎧が崩れ落ちるように液体に戻り、それが一気にハリベルを包み込むように襲いかかった。
「ハリベル様ぁ!!」
世魅がハリベルを拘束するのと同時刻、それを見た三人の
「あら、貴方のボスは世魅さんに負けたみたいね~。まぁ、あの人に勝てる存在ってのが想像できないけど」
「本当に世魅さん、勝っちゃったんですね……。すごいです。私も頑張らなきゃ……!」
それに対面するのは松本乱菊と雛森桃の二人。この戦いは最初こそ日番谷の手で有利な状況に持ち込み、雛森の手で刀剣解放まで追い込んだものの、
「アパッチ! 行け!」
「私たちはこの子達を倒してから行きますわ」
ミラ・ローズとスンスンの言葉を聞くや否や、アパッチはこの戦場を離脱し、ハリベルの元へと向かう。しかし、新たに現れた死神二人に道を遮られる。
「行かせるかよ」
「世魅さんの邪魔はさせません」
「っ、邪魔だぁ!」
檜佐木と吉良が斬魄刀を構えて、アパッチを止めようとした時。
「通せ」
灰色の液体が伸び、それがメガホンのようなものを作りながら世魅の言葉を彼らに届けた。
「しかしっ!」
「
檜佐木の言葉に、世魅が理論で返す。確かに十刃を倒した世魅よりも、苦戦している松本と雛森を助けに行くのは道理ではある。吉良は黙ったまま従い、檜佐木もアパッチを睨みながらその場を後にする。これはミラ・ローズとスンスンが片腕がない状態で副隊長二人を相手にしなかればならないことを示していた。だが、ここで助けに行くことは彼女たちへの侮辱だと信じて、アパッチは世魅の元へ向かう。
「お前でどうにかなると思うのか? 角有り」
「黙れぇッ!」
拘束されたハリベルに背を向け、アパッチの方を見る世魅に虚閃を放ちながら、彼女は距離を詰める。世魅はハリベルを拘束する卍解の一部を自身の手甲として変形させ、白打を用いてアパッチと打ち合う。元々、実力がかけ離れている上にアパッチが片腕ということも有り、完全に手加減されている状態だった。
(ハリベル様を舐めんなよ……!)
アパッチには勝機があった。今も拘束されているハリベルの足元に小さな水球ができていたことを視認したからだ。力尽きているふりをしている彼女をこの男が気づいていないのなら、不意打ちが出来る。刺し違えてでもこいつを止めると意気込み、その時を待つ。すると、世魅がアパッチの隙をついて蹴り飛ばし、呆れたような顔をして小手のように纏っていたそれを解く。
「やめだ。たださえ片腕がないお前相手に、卍解を使う必要はない」
「テメエ、ふざけんなァアッ!!」
剣も持たないまま拳を構える彼に、アパッチは激昂したように見せかけて飛びかかる。ハリベルが負けた時点で、彼女が勝てる可能性はゼロだ。ならばと攻撃するふりをして、捨て身の身体に放たれる白打を死ぬ気で受け止めた後、足と片腕を使って、彼に無理やり組み付く。
「ハリベル様ッ!」
その時、水球が弾丸のように飛び、その水圧の一閃は
「ガッ……!?」
崩れ落ちるアパッチの残った腕を世魅が掴み、力無く垂れ下がる彼女の身体を吊るすような形で支える。そして、ようやく意識が戻ったハリベルが目を開けた瞬間に映った光景がそれだった。
「アパッチ!!」
「ようやくお目覚めか? もうお前の部下は全員、落ちたぞ」
彼らの眼下では副隊長四人に善戦しながらも、敗北して地に伏せる二人の
「ミラ・ローズ……! スンスン……!」
歯ぎしりしながら水流を生み出そうとするが、生み出した側から水の塊が暴発してまとまらない。
「何故だ!?」
「……そろそろ教えてやろう。俺の卍解、変幻自在無蔵はあらゆる形状と性質に変化する。加えて、今まで見たように、分裂させて自由に動かすことも出来る。液体はもちろん、固体化させ武器として扱ったり、
最後の一言を聞いたハリベルが能力の暴走、その原因を導き出す。
「最初の
行っていた行動、全てが仕込み。ハリベルは思わず、歯ぎしりする。驕っていたわけではない。見下してもいない。だが、そこにあったのは、自身の能力を最大限利用した技と相手の思考を読み切る思考能力という純然たる実力の差だった。
(さて、聞こえているな?)
突如、頭の奥に響く声に驚こうとするが、体を縛る灰色の液体が動き、彼女をさらに縛り上げる。驚きは苦痛によって出る声でかき消された。
(変に動くなよ。お前に許すのは瞬きすることだけだ)
ハリベルはただ世魅を見据える。もはや、彼女に出来ることはそれだけだったからだ。
(部下を助けるか、忠義を尽くすか。選べ。Yesなら一度大きく、Noなら二度連続で瞬きしろ)
巨大な水流を吹き飛ばす一撃の音が響く。少し離れた場所でアヨンと格闘する日番谷は、十刃を拘束している世魅の姿をどうにか観測していた。
「ほぼ無傷かよ。やっぱりあいつ、とんでもねえな」
大紅蓮氷輪丸で空を飛びながら、アヨンの攻撃を避ける。強力かつ高速ではあるが、その攻撃が酷く単調であるため、どうにか避けられている状況だった。
(松本と雛森が3人の従属官と戦っている。そこに加勢したいが、こいつをどうにかしなけりゃそうもいかねえ。ただ、いくら卍解でも普通の氷だけじゃ凍らねえ。どうする)
冬獅郎の脳裏に浮かぶ、世魅の言葉。
『卍解の巨大さは強みだが、同じ卍解なら一撃を凝縮させたほうが勝つ』
自身の大紅蓮氷輪丸を見直す。まだ未熟である自分の力では、世魅に匹敵するレベルの一撃は出せない。だが、彼の言葉を今実践しなければ、目の前の敵すら倒せない。かつての彼のように両手で斬魄刀を握り、力の制御に集中する。アヨンが子どものように手を振り、日番谷を叩き落とそうとするが、彼はそれを避けながら霊圧を込めていく。
(力を圧縮する。卍解の巨大さを小さく固める。倒すための一撃じゃなく、必殺の一撃を)
彼がいつも使う、氷輪丸そのものを生み出して攻撃する基本的な一撃。卍解状態であれば、それに翼が生えてより巨大さを増す。しかし、世魅が模倣した大紅蓮氷輪丸は日番谷が創り出したそれよりも圧倒的にシャープだが、彼の一撃は日番谷のそれを破壊した。あくまでも世魅は真似した卍解による攻撃でそれを実現した。ならば、日番谷にそれができない道理はない。
「頼むぜ。……大紅蓮、氷輪丸ッ!!」
斬魄刀を振り抜き、氷の龍を生む。ただ、その太さはいつものそれよりも随分と細い。アヨンはその違和感を感じ取り、腕を前に出してつかもうとするが、その龍はその手を貫通してその身体も含めて通り抜ける。
「…………?」
アヨンは凍った傷口を破壊して、身体から流れ出る血を確認する。その場所に傷を負っていない腕で叩くことでその痛みを認識する。そして大口を開け、目を見開き、轟音のような叫び声を上げる。ようやく本気を出したかと日番谷は息を整える。彼の背後に浮かぶ氷華は残り一枚。時間もないと判断し、氷輪丸の基本能力である天相従臨を用いて、それに暗雲を集め、白く輝く穴を開ける。
「氷天百華葬」
そんな現象を気にもせず、腕を巨大化させ始めるアヨン。日番谷に向けて走り出そうとしたが、その時点で降り注ぐ雪に触れて、その身体を凍りつかせ始める。腕を振り回して、無理やり破壊して突撃しようとするが、それを始める前に日番谷が斬魄刀を振り上げる。
「氷頭龍牙!!」
アヨンの身体ほどある巨大な龍の口が生成され、アヨンの体を噛み抜く。ボロボロと崩れ行くその身体を見ながら、日番谷は大きく息を吐いた。
「世魅、お前ばかりが強くなっていると思うなよ……!」
すべての隊長及び戦闘員がレプリカの空座町へと向かったその後。
「誰も隊長のいない尸魂界、か。これもなかなか乙なものだな」
懴罪宮、その頂点に腰掛け、尸魂界を見渡す男が一人。
「さて、今のうちにやれることをやっておくとするかな? 引きこもりたちに挨拶をするなら今が好機と見た」
彼は僅かに陰る地面に手を差し込み、死神の誰一人に気づかれること無く、そのまま底に潜るように消えた。