Dye Your Soul Your Color 作:鏡狼 嵐星
今、それを返してもらいに行く
世魅がハリベルを倒した頃、他の十刃たちに対処する隊長格たちは苦戦を強いられていた。そして、巨大な
「久しぶりだな、世魅さん。もう十刃の一人を倒したのかよ」
「遅い。今まで何をしていた」
「……平子たちと合流していることには驚かないんだな。まぁ、あんたならそうか。いや~、迷ってたんだよ。この結界のせいで」
「事前に喜助に確認しておけ、馬鹿か」
「言い返す余地もねえ」
世魅は卍解で縛り上げたハリベルを連れ、地上に降り立ち、彼女の
「雛森、吉良、コイツらを縛道で雁字搦めにしておけ。松本、檜佐木、お前たちは補助だ。戦場が変わる。結界はより強固にしろ」
「……あのー、世魅さ~ん。そちらの方は、まさか志波海燕さんでは……?」
顔をヒクつかせながら、松本は前隊長の姿を思い出しながらその男の正体を推察する。といっても、彼女はその顔を知っており、逆に向こう側も交流があったため、確信に近かったのだが。
「おう、松本! 久しぶりだな。変わんなさそうで何より!」
「……わ~お、本物だわ。死んだんじゃ……?」
「そこら辺を話すと長いからよ、この戦いが終わったらな! じゃ、行くよな。世魅さんよ?」
「無論だ。お前はどうする、左陣。今なら絶好の機会だが」
驚きながらも黙々と作業する雛森たちを見据えて、世魅は狛村へと視線を向ける。
「……うむ、行こう。後は任せるぞ、鉄左衛門」
「承知しやした!」
世魅、狛村、そして志波海燕がその場を離れようとする。
「待ってください! 俺も、俺も連れて行ってくださいっ!」
檜佐木が声を上げる。それは未だに慕う敵の幹部への思いをつのらせた、苦悶の表情だった。そして、それに答えたのは狛村だった。
「世魅殿。もし貴公が断っても、儂が彼を連れて行く。構わぬな?」
「……せいぜい死なないようにすることだ」
何かを言いたげな様子の世魅だったが、言い争いをしている時間はないと切り替えた。
「はいっ!」
「無事ですか、浮竹隊長」
「ガッ、っく、あぁ、大丈夫だ。……随分、回道の腕を上げたな、都」
「えぇ、それはもう。練習する時間はいくらでもありましたもの」
崩れた住宅街の中で、浮竹は地面に横たわったままの状態で、都により腹に空いた傷を塞がれていた。浮竹自身も回道の実力が高く、最低限の治療はすぐに終わった。
「ありがとう。これでまだ生きていられそうだ」
「良かった。貴方に死なれたら、ルキアや清音が泣いちゃいますからね」
都が斬魄刀に手を添えながら立ち上がり、敵を見据える。その表情はとても鋭く、かつての優しさを含みながらも強い感情が見て伺える。
「……強くなったんだな、都。それに海燕も」
「はい、世魅さんにお礼をするために。そして、敵を倒すために」
決意を決めた彼女は浮竹に背を向け、敵のもとへ向かった。
「俺にはもったいない部下だ。そして、世魅。もっと手伝わなきゃならないんだが……。すまん、今の俺では足手まといにしかならない。頼む」
戻ってきたメンバーを含めた
「経てよ、『
都の声に応じ、彼女の霊圧から斬魄刀を通じて大量の砂が生み出され、
「水天逆巻け、捩花ぁっ!!」
砂に飲み込まれた
「都、無茶すんなよ」
「あなたこそ」
海燕は都に別れを告げ、有昭田鉢玄と共に砕蜂の元へ移動する。
「久しぶりだな、砕蜂隊長。それと希千代」
「……ってえ、お前、志波海燕じゃねえか!? 死んだんだろ!?」
「その話は後だ。鉢玄、とりあえず時間稼ぎだけはしとくぜ」
「お願いしマス」
海燕は一人、一歩前に出て骨の大帝と対峙する。バラガンはその顔の上に手を置き、やれやれと首をふる。
「〝老い〟を司る儂に〝時間稼ぎ〟とは。神に唾する行為だ。小さき者にしては大層な口を聞くな」
「ほお~、あんたが今の虚圏の神か。俺の知っている神様とは随分、雰囲気が違うな」
「……なに?」
海燕の発言に、バラガンがその声音を変える。
「あの人はめちゃくちゃ気前良かったからな。修行なりなんなりでお世話になりっぱなしだったぜ」
「…………貴様」
「おかげで会得できたもんもある」
怒りが滲み出ているバラガンに笑顔で返事をしながら、海燕が捩花を構える。その槍先から水流が溢れ出していき、槍全てを覆い始める。海燕がそれを手放したが、槍はそこに浮かんだまま。
「卍解」
瞬間、槍が回転し、そこに纏われていた水が爆発のように膨らみ、海燕本人を含めて周囲一帯を水の中に沈める。
「『
海燕が回転し終わった槍を掴み直す。中に浮かぶ巨大な水の塊は海燕を含め、街の上に海のように浮かぶ。そして、バラガンは自身の体を濡らすそれに不快感を示す。口を開き、発言しようとするが、ゴボゴボと漏れる空気が音を立てるだけだった。
「おっと、喋ろうとしても無駄だぜ。あんたがどういう理屈で喋ってんのかまでは知らないが、この水の中で呼吸ができるのは俺が許した奴らだけだ」
数秒の間ののち、骨の大帝は有無を言わず、
「あんたの力があらゆるものを老いさせるって能力なのはわかった。ただよ、
捩花を片腕で振り回し、その海の中にいくつもの海流を生み出し、バラガンへと向かわせる。対して、バラガンは
「危ねえ!!」
彼らを浸す海の一部が圧縮し、蒼い盾となるが斬撃そのものの威力で分断される。
「……ぬるい、実にぬるい」
バラガンの身体から強烈に濃縮された
「マジか。流石はメコニルさんの後任なだけあるぜ」
「蟻如きが……! あの御方の名を口にするなど、身の程を知るが良い!!」
バラガンが
(冗談だろ、俺の卍解で霊圧どころか呼吸すら抑え込んでんだぞ? どんな力してやがんだ、この王様はよぉ!)
「儂は虚圏の王! あの御方に神であれとされたもの! 儂はこの世界を畏れさせるに値すると、そう我が神が仰ったのだ! 儂の元では全てが儂を畏れなければならぬ! 人間も虚も死神も
バラガンの口から
「助かったぜ、ハッチ!」
「少しの間とはいえ、相手をお任せして申し訳ありまセン」
「行けそうか?」
「無論だ」
鉢玄と砕蜂たちが海燕の隣に来る。砕蜂が強気な口調を返し、そして鉢玄が両手を合わせて、鬼道を練る。バラガンは再度、
「貴様等のような蟻がいくら策を練ろうとも、儂の力は絶対! 抗うすべなど有りはせん!」
バラガンは広がるように
「小賢しい、儂に時間稼ぎなど意味はない!」
「時間稼ぎではありまセン。準備は終わりましたカラ」
虎咬の城門から雀蜂雷公鞭を構える砕蜂を見たバラガンが一瞬呻くが、即座に
「させるか!」
結界内に満ちた海水が蠢き、バラガンの口元に流れが集中し、息を封じる。
「貴様等っ……!」
「雀蜂雷公鞭!」
黄色と黒のミサイルは水中でもその速度は変わらず、バラガンへと迫り、爆発した。四獣塞門にヒビを入れるほどの一撃に仕留めたかに見えたが、その結界が黒く変色して崩壊したことで全員にもう一度、緊張が走る。
「この儂にここまでの傷を負わせるとは絶対に許さんぞ、蟻共が……! 大帝に背いた不届きを、塵となって悔いるが良い!!」
頭蓋骨の一部が欠けた状態で出てきたバラガンはその怒りに任せ、
「ハッチ!」
「誰に向かって虚の真似事だ! 身の程を知れ! 我こそは〝大帝〟バラガン・ルイゼンバーン! 『虚圏の神』だ! 儂の眼には貴様らの命も、蟻の命も等しく同じに映っているぞ!」
一気に形勢を覆したように見えたバラガンだったが、機転を利かせたハッチにより、老いていく右腕を腹の中に転送され、自らの唯一絶対の力によってその身体を破壊された。
「おのれ、蟻が……! 許さん、許さん、許さんぞ、蟻共めが!!」
バラガンの雄叫びが響き渡る。塵と消えていく身体でどうにか
(貴様は殺す。この儂の手で必ず。この儂に力を与えたことを後悔するが良い。儂は王。儂は『神の座を預かるもの』。永久に死なぬ。永劫、貴様を狙い続けるのだ。藍染惣右介。…………我が神よ、この身、朽ち果てる、その時まで、貴方様がかえ、る、ばしょ……を……)
投げられた斧は、かの男に届くこと無く砕け散った。
海燕たちがバラガンと戦っている頃、スタークの元へラブとローズが、東仙要と狛村及び檜佐木が、市丸に対しては平子が戦いを繰り広げていた。そして、残る藍染にはリサ、ひよ里、都、冬獅郎及び世魅が対峙する。
「ハリベルでは今の君の足止めにもならないか。流石だよ、世魅」
「あれで足止めか。俺も舐められたもんだ。お前に傷を与えたことを忘れたのか?」
「いいや、忘れてはいないとも。彼女はただの試金石程度としか考えていないさ」
「感想は?」
「そうだね、思っていたよりも手こずっていたと思ったよ」
対面する人数が多いにも関わらず、藍染は世魅とだけ会話をしていた。他の死神たちは眼中にすら無い、そう感じさせるような態度に、日番谷は顔をしかめざるを得ず、ひよ里は苛立ちを隠さなかった。
「何二人で会話してんねん、世魅、コラァ」
「やめなさい、ひよ里ちゃん。会話に割り込むなんてはしたない」
「止めんといてや、都! うち、腸煮えくり返ってんねんで!」
「少なくとも、今は感情を荒げるときじゃないわ。そんな状態で勝てる相手?」
ひよ里が斬魄刀を握る手の上に、都が自身の手を置いて彼女を諌める。
「都の言う通りだ。虚化が出来る程度で藍染に勝てるなら、そもそもこんな戦いなんざ始まっていない」
世魅が卍解を体に這わせて纏う。ただ先程のような鎧のようにではなく、液体のままだ。
「斬拳走鬼全ての基礎能力だけでも桁外れ。加えて、喜助に匹敵する頭脳を持ち、前鬼道長を優に超える鬼道の使い手という死神の極致に立つ一人。そして、大半が並の隊長格を超える
世魅の言葉はこの場にいる味方全員の心へ突き刺さる。実力だけで言うなら藍染と最も近いであろう彼が、戦いにおいて一切の嘘を言わない程度には誠実な彼が、そう評価した。それを聞いていた藍染だけがぱちぱちと手を叩く。
「どうやら君だけが私の実力を図れているらしい。だが、君の目は私に負ける気には見えないな」
「お前が格上であることなんざ知ってる。それがどうした。強くなるという目的があって、お前と戦わない理由がどこにあるんだ、藍染?」
灰色の液体を被ったままの世魅が左手を頭の上に重ねる。発される
「万物万視」
球体である根本から周囲に向けて、蜘蛛の巣のように銀色の網が立体状に広がる。網の所々には小さな矢印が存在し、それらが藍染の方向に向く。
「お前ら、藍染の位置を教えてやる。もうすぐ援軍も来るだろう。一先ずは俺達で抑えるしか無い」
藍染が目の前に居るにも関わらず、矢印はその位置をずらしていく。周囲の死神たちにとって、五感と霊覚全てが目の前に入ると告げているにも関わらず。
「いいか、自分が得る感覚はすべて信じるな。変幻自在無蔵が示している先だけを狙え」
世魅がいる球体から射出された弾丸が、矢印の向く方向に飛び、なにもない空間のはずの場所で剣戟の音とともにはたき落とされた。周囲の死神たちがその技の真価を、目で見てようやく理解する。
「この能力を使っている間、俺はまともに行動できない。精々、牽制ぐらいはしてやるから、どうにかしてみせろ」
虚夜宮、その天蓋の上。一護の完全虚化と戦い、その強さに蹂躙されたウルキオラだったが、当の本人が暴走を始め、再起不能になった彼の止めを制止した石田まで手に掛けた。だが、それを好機だと考えたウルキオラは肉体を僅かながら再生させ、不意打ちで彼の仮面の角を切断し、
「俺が怖いか、女」
「怖く、ないよ」
「……そうか」
ウルキオラが伸ばした手は織姫が触れると同時に崩れ去る。ウルキオラはそれに動揺すること無く、一護と織姫を見つめながら、満足げに塵となって消えていった。
その姿を虚夜宮の周りにある六本の巨大な柱の一本、その上から覗き見していたメコニルはその終わりを見て、目を閉じた。その身体には傷などは一切なく、苦しむ様子もない。
「満足のいく終わりだったか、白い子よ」
目を開いた彼の手には僅かな量の灰が握られていた。
「それにしても、一護の内なる虚はものすごく優しいな。……そういえば、一護は浅打を持っていないはず。なら、あの虚は斬魄刀でもあるのか。あの性格の主では甘くもなるだろう。あっはっはっは!」
手にした灰を口の上に持ってくると、さらさらとそれを下へと落とす。全ての灰を舌へのせると口を閉じ、ざりざりと噛みしめ、擦り潰し、嚥下した。
「さて、ヤミーはまだ帰刃してはいないようだし、先に現世に向かうとしよう。世魅が無茶をしていないといいのだが。……いや、するわな。少し急ぐか」
【死神図鑑ゴールデン】
さて、われ一人の解説だ。
今回は世魅の用いる
完現術と呼ばれる能力は物質に宿った魂を引き出して使役する。物質と言うが、その対象は結構広い。世界に存在するものであるならば、まぁまぁ対象内だ。なんなら霊子で構成されていても、それが物として認識可能ならオッケーだったりする。
で、世魅の対象は『世魅が未知だと思ったものを含む空間』となり、その力は死神の霊絡のようなものを広げ、その範囲内に存在するもの全てを俯瞰して見るというもの。
これは世界から、つまり第三者視点から見たもののため、あらゆる幻術や鬼道、斬魄刀を含むどんな力の影響も受けつけない。今回の場合は、惣右介の持つ鏡花水月の影響は完全に無視できることになるな。
ただし、この能力ではあくまでも俯瞰して見ることだけ。そのため、見た情報をまとめることは自分がしなければならない。あと、どう見えるかなのだが、例えると3D映像を色んな視点から生身で見ているようなもので、超気持ち悪いぞ。われ、ちょっと未無で体験してみたが、最初は吐くかと思った。
さて、世魅はこれからどうするのかな?
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感想お願いします(挨拶)
そして、みえるさんを含む他の方々、誤字報告ありがとうございます!
あと、アニメには間に合わなかったです。仕事大変ですわ。