Dye Your Soul Your Color   作:鏡狼 嵐星

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ヤミー、ヤミー
ぼくらのせかいに
かみさまがきたよ



Original side, When the black moon fall

藍染惣右介が黒崎一護に敗北し、その後始末をする死神たち。彼らの静かな勝利を邪魔しないように、少しづつ、だが確かにその処理が行われていく。

 

「惣右介は夢にたどり着けなかったのか。惜しいなあ、あいつなら可能性は十分にあっただろうに」

 

世魅が歩く傍で、メコニルが一般隊士には見えぬように霊圧を隠しつつ、感知能力の高い隊長格にはわかるように気配を残しながら偽物の空座町を進む。その先には、大怪我を治療される仮面の軍勢(ヴァイザード)の面々と卯ノ花烈の姿があった。

 

「……おおきにな、卯ノ花さん」

 

「生きてたのか、真子」

 

「開口一番、物騒なこと言うんとちゃうで、世魅、お前なぁ。んで、お隣の御方、ここにおってええんか?」

 

「心配するな、並の死神には感じられないようにしている。雑談していても平気だぞ?」

 

「……器用な真似なさるわ、ホンマに」

 

メコニルの笑顔が持つ屈託の無さに平子は押し負けた。

 

「久しぶりですね、狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)。いえ、今はメコニル、でしたか」

 

卯ノ花の声掛けに反応して彼女の方を向いたメコニルは暫くの間、不思議そうに彼女のことを頭の先から足先まで見続け、少し考えた後、目を見開いた。

 

「お、お前、八千流か!?」

 

「卯ノ花烈です」

 

「……いや、同じ苗字があったのはてっきりお前の弟子が隊長を担っているのものとばかり。それにしても随分と変わったな。われ、ここ最近で一番驚いたかもしれん」

 

「むしろ、あなたは変わらないですね。他者の戦いを観察しに来るあたりは特に」

 

「いやいやいや。われもだいぶ変わったが、お前の変化具合がやばすぎるぞ。……すごいな、剣八」

 

彼らの会話に平子たちが頭をかしげる中、真実の一部を知る世魅はなんともいえない表情を浮かべる。

 

「っと、メコニルさん、ちょっといいか」

 

不思議そうな顔をしているメコニルに、海燕が声を掛ける。

 

「ん、海燕か。感じたぞ。しっかり卍解を扱えていたではないか。良き良き」

 

「……俺はあんたの過去の仲間を倒したんだぜ? 恨み言の一言くらい聞くつもりだったんだが」

 

「何を言う。戦った以上、両者とも死ぬ覚悟があったはずだ。なによりもわれはどちらが勝とうが負けようが、その両者を応援しただろうし、祝福しただろう。今のわれにとって、死神と虚に大きな違いはないのだ。お前たちが戦いに勝ったのだから、それを誇るがいい」

 

けらけらと笑うその姿に周囲の面々は思わず唾を飲み込んだ。精神性はもちろん、虚とは思えないその視点の異様さにだ。仮面の軍勢(ヴァイザード)となってから浦原の協力者かつ世魅の師匠であるため、メコニルと多少の交流があった彼らだが、それでも理解できない一面もある。海燕は少し下を向いた後、胸を張って、おうと答えた。

 

「そういや、世魅、お前、 あの卍解なんやねん。卍解ぐらいは使えるとは思っとったけど、二種類あるのはどういうことなんや。……それに、お前、いつ虚化が使えるようになったんや?」

 

「卍解はさっき見せたのが本当の卍解だ。今までのはあくまでもその一部。真名を削るなんて手間のかかることをさせたがな」

 

「……もう何も言わんわ。んで、虚化に関してはどうしたんや。屈服とか一人やとできんやろ?」

 

平子は呆れたように世魅を見る。観念したように世魅は話を始めた。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「……は?」

 

流石の平子を含む仮面の軍勢(ヴァイザード)も目を点にするか、豆鉄砲を喰らったようになってしまう。世魅は彼らを半目で見る。

 

「そもそも、だ。俺の親は誰だと思ってる? 俺は生まれの時点で虚の要素を持っていた。加えて、師匠の手によって()()()()()宿()()()()()それをな。一般的な死神が始解を納める時と同じで、それを屈服させることが俺の死神としての修行の始まりだった。ただし、俺の内なる虚は()()の一部だ」

 

世魅は、とてもイイ笑顔でその話を聞いている元凶(メコニル)を指さす。

 

「俺の問題は虚化する際の負荷を受けられる体ではなかった、単純に霊格が足りなかったことと()()()()()()()()()()()()()()こと。霊格を鍛えて、喜助のワクチンを接種したことで扱えるようになった」

 

(まぁ、本来はワクチンが無くとも、霊格さえしっかりすれば扱えたのだろうが……。世魅のことだ。レヒトのことを考えて誤魔化したな? 流石にそれを言うのは野暮か。われはちゃんとそのことを察して黙っているのであった)

 

得意げなメコニルを、世魅は半目で睨みつける。メコニルはわざとらしそうに口笛を吹いた。

 

「……かぁっ〜、お前も親御さんも、ホンマ、ヤバいわ。言い方悪いけど、イカれ過ぎやろ」

 

「今更すぎる」

 

平子の疑問はもっともだ。虚化が可能であるということは、彼らが受けた体験を世魅がしていたということになるはずだ。虚化の暴走を抑え込むということがどれほど難しいことなのかを彼らは知っている。それが途轍もない苦労の先にあることも知っている。世魅が手に入れた力、その経緯が不明だっただが、その謎はすんなり終わってしまい、関心を過ぎて呆れでも文句は言われないだろう。

 

「死神化した内なる虚を屈服させていた以上、俺が死神として覚醒したのは尸魂界に来る前だ。斬魄刀こそ持ち合わせていなかったが、内なる虚から派生した死神としての力で戦っていた時に拳西に見つかった。つまり、俺にも虚化を扱える力があったが、それを使う資格を得るのに苦労しただけの話だ」

 

「お前、ホンマにどこまで強くなる気やねん」

 

「決まってる。師匠の未知となれるまで」

 

静かな決意を見た平子は何も言えないわと、呆れ果てる。

 

「……真子、お前たちはこの後、どうする気だ?」

 

「どうって、そりゃ、現世で放浪する気やけど? 次の目的を作らなあかんなー」

 

「尸魂界で隊長の枠が空いているんだが、戻って来る気はないか?」

 

世魅の言葉に平子たちが驚きながら、お互いを見つめ合う。その言葉の真意が分からなかったからだ。

 

「正直に言って、今の尸魂界の中に三人の隊長を務められる死神がほとんどいない。卍解を会得したやつは何人かいるが、隊長としては頼りないと判断されるだろう」

 

「それがなんで俺達が隊長になるって話になんねん?」

 

「藍染のやったこともあって、中央四十六室も変わっている。尸魂界が大きく変わるときに、隊長がいないでは話にならない。少しでも隊長らしい隊長がいるだろう。それにお前たちが虚化しているからと尸魂界側に戻さない選択肢を取るなら、同じ力を持つ俺も自動的にそうなるはずだが、俺を追放というのはどういう体をとっても無理だろう。だから、お前たちを誘ってる」

 

「……世魅さんが隊長になりたくないだけなんじゃないの?」

 

鳳橋の一言に彼は視線をずらす。答えているようなものだった。

 

「世魅さんが隊長にならなくて、誰がなるんだと言いたいところデスが」

 

「権力と自由は等価交換だ。強くなるためにはこれ以上、権力はいらない」

 

この場にいる仮面の軍勢(ヴァイザード)たちがお互いに顔を見合わせる。強くなるという言葉を使う世魅に嘘はないだろう。そう分かるから、これからどうするのかを考え始める。

 

「お~い、世魅、海燕!」

 

傷だらけの体で咳き込みながらも、浮竹が彼らの元へやってきた。メコニルの存在も見つけたため、少し驚いた様子だったが、すぐに平静を取り戻した。

 

「浮竹隊長、まだ動いてはダメですよ。怪我、まだ治ってないんですから」

 

ふらつく彼を都が支える。彼女も藍染との戦いで傷を負ったうえ、まだ包帯まみれではあるが、卯ノ花によって大きい傷のほとんどが治されている。

 

「いやあ、すまんな、都。あぁ、昔を思い出すなぁ」

 

「ノスタルジックになってないで、横になってください」

 

倒れそうになっている浮竹をどうにか壁にもたれかからせ、都が回道をかける。彼はその状況を嬉しそうに見ながら、メコニルに声をかけた。

 

「……こうやって対面するのは初めてだな。えっと、メコニルと呼べばいいのか?」

 

「構わんぞ。では、われは十四郎と呼ばせてもらうとしよう」

 

「じゃあ、メコニル。海燕を鍛えてくれたそうだな。礼を言わせてくれ」

 

「われとしては楽しめたから良き。それに世魅が世話になっているようだし、これで相殺としよう」

 

メコニルは浮竹に近づくと、掌から液体のようなものを生み出して彼にかける。何事かと注目する周りだが、浮竹の体の傷がみるみる治っていく。

 

「すまんが、いくらわれでもお前の喘息は治してやれん。それは宿()()のようなものだからな」

 

戦いの傷がすっかり治った浮竹は立ち上がり、自分の体を確認する。

 

「すごいな! これは回道か!?」

 

「類するもの、とだけ言っておく。あまりやりすぎると怒られてしまうからな。あと、それ相応の体力を消耗する。余り興奮するなよ?」

 

メコニルの忠告の通り、浮竹はすぐに貧血らしき症状を出し、倒れそうになる。それを再度、都に支えられ、事なきを得る。そんな中、メコニルがピクリと反応し、背後を見やる。

 

「どうやら尸魂界組が戻ってきたようだな」

 

すると、穿界門が開く。そこから浦原をはじめ、虚圏に向かったルキアや恋次、さらわれた井上を含む現世組が現れた。しかし、一護の姿は見えない。

 

「朽木、無事だったか!」

 

「浮竹隊長、ご無事、で……ッ!!」

 

ルキアが浮竹を視認すると同時に、海燕と都の姿を目にする。瞬間、ルキアが斬魄刀を引き抜き、構える。

 

「貴様っ! まだ死んでなかったのか!」

 

「……ルキア?」

 

都に向けて鋒を向ける彼女の表情は怒りに満ちており、都は困惑せざるを得なかった。

 

「海燕殿まで……! どれだけ私の思い出を踏みにじれば気が済むのだ!」

 

「待て待て、朽木! 何があったのかは知らないが、彼らは正真正銘、本物の海燕と都だ!」

 

浮竹が体に無理をさせて、彼女のもとへ駆け寄る。だが、ルキアは苦しげな表情で変わらない。

 

「そいつ等は本物だ。俺も保証しよう」

 

世魅がルキアの元まで歩いてきて告げた。

 

「……貴方が殺したと、そうおっしゃった、では、ありません、か?」

 

ルキアの表情はすぐれない。未だにこの状況を受け入れるべきなのか、本当に心を許していいのか分からなかったからだ。

 

「虚化した都を助けるための処置だ。それに言ったはずだぞ、朽木。好きに恨めとな」

 

まっすぐ彼女を見つめる世魅に、ルキアは力を失い、刀を下ろした。そして海燕と都を改めて見据える。

 

「朽木ぃ、先輩の奇跡の帰還を祝う気になれたか?」

 

「……おかえりなさいませ、海燕殿っ、都殿っ!!」

 

泣きそうになりながら彼らの帰りを喜ぶルキアを、都が駆け寄って抱きしめる。彼女の顔にも涙があった。その様子を見た海燕と浮竹は安心したように息を吐いた。

 

「そうだ、海燕。お前は明日にでも十三番隊の隊長として働いてもらうから覚悟しておけ」

 

「……は!?」

 

世魅の一言に、海燕が驚きから姿勢を崩す。しかし、世魅はそんな海燕を無視して続ける。

 

「お前を現世に逃がした後、浮竹隊長と色々取引してな。お前が戻ってくるようなことがあれば、すぐにでも隊長の役目を交代させることを約束した。悪いが、お前だけ選択肢はない」

 

「浮竹隊長!?」

 

「すまんな、海燕。そういうことだ。これで俺もやっと引退できるな!」

 

はははっと笑う浮竹に、頭を抱える海燕。都はため息を付き、仮面の軍勢(ヴァイザード)たちも苦笑い。メコニルは彼らの様子を見て、笑みを浮かべていた。

 

「楽しそうっすね、メコニルさん」

 

そんなメコニルの傍に寄り、その真意を浦原が伺う。

 

「喜助か。惣右介の事も含め、その全てがとても面白かったとも。一護の件に関しては残念だが、お前のことだ。もう策は考えているのだろう」

 

「……お見通しッスか」

 

「無論だ。そうそう、われは暫くの間、虚圏に籠もるつもりでいる。現世のことを頼むぞ」

 

笑みを消し、真剣な表情をするメコニルの珍しさに浦原が戸惑いながらも情報を集めようと質問を続ける。

 

「何のため、ッスか」

 

「やっておくことができた。わが子のためにな」

 

 

 

 

 

 

 

 

全てが終わった後の虚圏。崩壊した虚夜城(ラスノーチェス)に吹き抜ける風が、その中にある砂を巻き上げていく。小さな犬のような虚であるクッカプーロはかつての主人の霊圧、その残滓を感じながら、巨大な気配たちがくるまでの少しの間、幸せな思い出を逡巡していた。

 

「ほう、随分と小さな数字持ち(ヌメロス)がいたものだ」

 

突如、その隣に誰かが降り立った。クッカプーロはその声に主人に似たものを感じて、顔をそちらに向ける。

 

「……ヤミーの従属官(フラシオン)か?」

 

彼は座りながら、周囲に残る霊圧の残滓を感じ取り、クッカプーロに向けて問いかける。その顔はとても優しくて、思わずアンと返事をしてしまった。

 

「そうか。大切な相手との別れとはとても悲しいものだ。わかるとも」

 

男は右手を広げると、周囲の霊子を集め始める。数秒ののち、ほんのり赤みを帯びつつも、黒く固まったそれを彼は口の中に押し入れ、飲み込んだ。

 

「さて、ものは相談なのだが」

 

「……クゥン?」

 

「われはここでやることができた。しかし、それを達成するには少し時間がかかりそうでな。邪魔もされたくない。かといって、一人なのも寂しい。そこでだ。われの番犬をやらぬか?」

 

「…………?」

 

クッカプーロは隣の存在がとても、とても強い存在であるとわかっている。なぜそんなに強い存在が自分なんかを番犬にしたいのか分からなかった。

 

「なに、タダとは言わん。もしわれのやりたいことが完成した暁には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「!! アン!」

 

クッカプーロにとって、それはとても聞き逃せない言葉だった。

 

「おぉ、良い返事だ! そういえば、名を聞いていなかったな! なんというのだ?」

 

「アン!」

 

「ほう、クッカプーロか。ふふ、良き名だ!」

 

クッカプーロを撫でるその手はとても小さかったけれど、どこか懐かしかった。

 

「それにしても、このタイミングでレヒトに会ったのは英断だった」

 

歩き出した彼は右手を見つめている。クッカプーロは疑問を感じた。そこから変な匂いがする。まるで腐ったような変な匂いがほんの少しだけ。

 

「虚化を会得した滅却師か。自分で種を巻いておきながら、育って驚くなんてな! ふふふ、未知にはそれ相応の未知で返さねば。ユーハバッハにたちは返したが、レヒトにはまだだからな。……ん~、あの子なら同族を救う道を選ぶだろう。ならば、()()だな。貴重なデータが二人分ある! いや、目覚めていないものを含めれば三人分か? まぁ、いい」

 

ざくざくと砂を踏みしめる彼の後に、置いていかれないようにクッカプーロはついていく。その歩みは十分についていけるくらいの速度だった。

 

「世魅には……。うん、われの我儘を押し付けるような形になるかもしれないが、まぁ、構わんだろう! ()()()なら、惣右介も驚くだろうしな?」

 

クッカプーロは下から彼の左手を見上げる。その中に何があるのだろう? とても楽しそうに笑うその人の顔を視て、自分も嬉しくなる。

 

「さて、ザエルアポロ。悪いが研究室を借りるぞ」

 

クッカプーロはこちらを気にしながらゆっくり歩くその背中が、今は亡き主人のものと同じであるように感じた。

 




【死神図鑑ゴールデン】

まさか帰ってきて早々に隊長やらされる羽目になるとは……

いいじゃない。貴方は元から隊員たちに隊長って呼ばせたじゃないの。せっかく帰ってきたのよ? 隊員たち、空鶴ちゃんや岩鷲ちゃんも驚かせてあげましょう? 奇跡の生還をね。そうよね、ルキア?

は、はい! そ、それにしても私が副隊長でよろしいのですか?

あら、不満? 浮竹隊長の推薦よ? ……もう隊長じゃ無いわね。気をつけないと

け、決してそんなことは!

いいのよ。わたしは海燕を含めた十三番隊を支えたい。彼の隣はもう私のものだから、隊の隣まで私である必要はないの。それに死神としての信頼や実力なら、もう私よりルキアの方が上よ。自分を信じなさい

……はい!

さて、準備はできた? 新十三隊長さん?

分かった、分かった! 笑顔で詰めないでくれ! ったく、こんな形でやることになるとは思わなかったぜ!

全部、世魅さんの手回しがあったからよ。文句を言うんじゃなくて、感謝だけにしなさい。さぁ、会いに行くわよ

どうにでもなれだ! さっさと隊舎に行くぞ、都、朽木!

はいっ! 海燕殿!

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ようやく此処まで漕ぎ付けた。
自分で書いといて何言ってんだって話だけど、思いつくアイデア入れまくったらこの始末だよ!

では、改めて。感想いただければ、これ以上無く嬉しいです。誰かわしの作った伏線を見破ってくれ。

ここ好きも是非!!
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