Dye Your Soul Your Color 作:鏡狼 嵐星
背後に希望を感じたとしても
打ち立てた残骸を背負ってでも
いつかそれを数える時まで
お前に逃れる場所はない
「ルキア……!」
「あぁ。しばらく見ぬ間に随分逞しく……なってないわッ、たわけェッ!!!」
「痛ぇっ!」
一護の感動を押しのけるように炸裂するルキアのツッコミ。彼は思わず、素の状態で反応した。その後、銀城の持つ疑問は、ルキア1人で黒崎一護の死神の力を取り戻させることは出来ないという事実は、上空から現れた幾人かの死神によって肯定される。
「恋次っ、白哉っ、冬獅郎っ、剣八っ、一角っ!」
各々が黒崎一護と関係が深い者たち。そして、もう一人。
「お前も大概、面倒事に巻き込まれる体質だな。一護?」
「世魅……!!」
世魅がふわりと一護の下へ降り立つ。その顔を見た銀城は顔を歪ませた。
「てめえ、世魅か!」
「久しぶり、と言っておこうか。銀城」
明らかに知り合いだと言わんばかりの雰囲気に、周囲が少しざわめく。この場に援軍に来た死神たちでさえ、その事実を知らなかったからだ。
「どの面下げて俺の前に出てきやがったっ!!」
「この面だ。むしろ、わざわざ出向いたんだがな」
激情する銀城に対し、冷静に返す世魅。状況が混沌としてくるが、一護は不思議とその理由がわかっていた。何故かわからない。だが、僅かな付き合いではあるが、この男が持つ覚悟の重さを感じているからかも知れない。
「世魅、あんた……」
口を開こうとした一護を世魅が手で制する。同時に指を鳴らし、周囲一帯に結界のようなものを展開した。
「一護。覚悟があるなら、お前も聞いておけ」
そう言うと、彼は少しだけ歩みを進める。そして、頭に左手を添えると、光が生まれる。それに目を剥いた銀城と月島、そして一護。それは
「良し、だいたい把握した」
「……てめえ、なんで、それが、使えんだよッ……?」
「何故? 別に難しい理屈はない。俺もお前達と同じ才能を持っていた。ただそれだけのことだ」
怒りから一転、信じられないものを見るような目をした銀城に対し、世魅は告げた。
「さて、
「知る限りのこと、だと……!?」
銀城空吾にとって明確な敵は
「そうだ。聞きたいことはあるだろう。残念だが、浮竹
「ッ!! ……いいぜ、聞かせろよ。かつて、俺の仲間を殺した理由をよぉっ!!」
銀城が放ったその言葉に、剣八を除く背後の死神たちが一瞬、目を見開く。
「理由か。お前たちの持っている力を回収するためだ」
「そんな事を聞いてるんじゃねえっ!!」
「正確には、その力の
銀城が荒げた言葉を返すことを知っていたかのように、彼は言葉をもう一度返す。疑問を抱かせる言葉を。
「元となったもの、だと?」
「お前たちが
「それは生まれる前に虚に襲われたからだ!」
「因果関係が逆だ。虚に襲われたから力が宿った訳じゃない。力があったから虚に襲われた。お前たちの魂が偶然、宿してしまったそれに誘われた虚にな」
「……!」
思わず口を噤んだ銀城に世魅は続ける。表情を固めていく様子を見つつも、彼は全く気にしない。
「時間があった以上、おおよそのあたりはつけていたんだろう? たかが虚に襲われた程度の影響で、お前のような
「……ッ」
銀城は完全に反論の余地を失った。隣でその様子を伺う月島は、大丈夫なのかと心配でしょうがなかった。
「じゃあ、何で殺したんだ。その元となったものだけ回収すりゃいいじゃねえか!!」
「……それがどれだけ難しい技術なのか分かってるのか? まぁ、それがあったとしても、
知識的な意味で技術者としての面を持つ世魅は、銀城の嘆きを理解しつつも呆れながら答える。そして依頼者という単語に銀城の霊圧が上昇する。
「浮竹ぇっ……!!」
「俺は依頼者の名前が浮竹さんだと言った覚えはない」
「……あぁ!? じゃあ、誰だってんだよ!?」
銀城は情報の奔流を受け止めきれず、半分激昂状態にあった。
「悪いが、それは言えない」
我慢の限界と化した銀城は世魅に『クロス・オブ・スキャッフォルド』を振り下ろす。月牙天衝を加えたうえで振り下ろされたそれに対し、世魅は鬼道を手に纏い、受け止めた。その衝撃で一切、後ろに下がることも無く、受けきった。
「んなっ、馬鹿な……!」
一護の力を奪い取って放ったそれを斬魄刀を使わずに、ただ鬼道と膂力だけで受け止めたのだ。銀城が驚くのも無理はない。
「多少は強くなったらしいが、それはこちらも同じだ。まだ力を扱いきれていない状態で勝てると思ってるのか?」
反射的に距離をとった相手を追わず、そこに立ったままだ。霊圧で威圧することもない。だが、目の前にいるその男の底知れなさに、体が震える。
「何故言えないのかは教えてやる。それを知った時点で、お前は、いや、
緊張が高まったその場に、井上と茶渡が到着して事情を把握し始めるが、異なる記憶を挟まれた彼らは理解が及ばない。そして、異なる陣営だと表現するかのようにXCUTIONの他のメンバーたちが別の場所に集まってくる。
「さて、他に聞きたいことは?」
「…………お前なら、お前なら、この力を回収できたんじゃねえのか。いつから完現術を使えたのかは知らねえ! だがっ、お前ならッ、あいつらを救えたんじゃねえのかァッ!!!」
世魅は銀城の叫びを聞いて、真正面から彼を見据えて答えた。XCUTIONたちも彼の叫びに耳を傾けざるを得なかった。
「手段を選ばなければ、出来ただろう」
銀城はそう答えるだろうとほぼ確信しながらも、そう答えて欲しくなかった。自分では出来なかったのだから。
「だが、それは世界で
死神や完現術者たちが彼らに注目していたその時、世魅の背後に魂魄使役で移動した月島が斬りかかる。既に避けられない距離と判断した一護のフォローが入ろうとした直前、世魅は一護の斬月を自分の手で受け止め、月島の『ブック・オブ・ジ・エンド』を自ら受け入れた。月島の顔がニヤリと笑う。
「ッ、ガハッ!?」
一護が何故と尋ねようとした瞬間、月島が大量の唾液を吐き出した。胃の中のものを全て吐き出したのか、嗚咽して苦しみつつ、頭も痛いのか剣を手放して、頭を抱えて転げ回る様子を見せる。そんな彼に一護ではなく、世魅が尋ねる。
「……なるほど。
「お、お前ェッ!? 一体、なん、何なんだ!? 自分の中に
月島の絶叫の意味がわからない周囲は、疑問を抱かざるを得ない。月島の完現術を防ぐ方法はほぼないのだから。世魅は表情を変えずに、少し月島に歩み寄る。
「何人、か。事実とは少し異なるが、いい表現だ。答えよう、親代わりにして、幼馴染、兄であり弟らしい月島秀九郎。……随分、馬鹿にされている肩書きだが、まぁ、いい」
月島は世魅に対して、後ずさる。まるでとてつもないほどの大人数に対して、一気に記憶を挟み込んだような能力の負荷を受けた目の前の男。銀城のおかげで、力をコントロールできるようになってから感じていなかった恐怖。それを久々に感じて、息が荒くなる。
「
そして、混乱の中、どうにか精神を安定させようとした月島の表情が徐々に青くなっていく。
「……多少、俺の過去を整理できたか? なら、もう言葉はいらないな。それが
「おっ、お前、お前ェッッ!!!」
狂乱したかのように喚く月島を尻目に、世魅は背中を向けて歩き出す。もう興味はないと言わんばかりに。
「まったく、わざわざお前に斬らせるために銀城を煽ったんだがな。想像よりも時間がかかった」
月島の動揺っぷりに驚く一護に世魅は声をかける。
「一護、先を譲る。俺は手加減してやれるほど甘くはないんでな」
その言葉と同時に、銀城がXCUTIONのメンバーにむけて力を与えた。一護を、敵を倒すために。
一護と銀城が戦う黒い空間を見つめながら、戦いを終えたルキアは世魅の後ろから声をかけようとして、手を止めてしまう。口をつぐんでしまう。恋次も同様に、何か言いたげだった。
「海燕のように裏で匿っている、なんてことはない」
世魅が彼らに振り返ることなく、ただ告げた。2人が唾を飲み込む。
「言っておくが、今日のことは忘れろ。他言した場合の責任はとりかねる」
「世魅殿」
「なんだ、白哉」
「……このことを浮竹は」
「知らない。なんなら京楽隊長も知らないはずだ。敢えて言葉にしてないだけかも知れないが、
何故と言いたげな白哉とルキア。世魅はなんら気にしていないと背中で語る。
「いい取引ができたからな。まぁ、
世魅が頑なに名を語らない依頼者。彼の口ぶりからその人物像を察せられるその性格。この場でその男の心当たりがある者は白哉ただ1人。
「……方法は、他に方法は、無かったのですか……?」
ルキアがどうにか捻り出した言葉。
「お前は俺の性格を理解しているはずだ。
それを世魅はあっさりと切り捨てた。彼女は海燕と都の一件で確かに救われた。だが、その本人たちから、たまたま世魅の欲望に救われただけなのだと告白されている。つまり、ただの偶然なのだ。今、目の前で敵として戦っている男と海燕たちの違いは
「……あの、世魅さん。俺からも質問いいっすか」
「答えられる範囲ならな」
次に恋次が質問する。
「その、あいつらの力の元となったものって、結局、なんなんすか?」
「知らない方がいい。いや、
彼は知らないことを薦めるのではなく、知ってはいけないと断言した。思わず、恋次が反応しようとする前に、世魅が背後を振り返り、彼を見据える。
「完現術を初めて覚醒させたのは
考える余地だけを残し、彼は顔の向きを戻す。その際、気絶した井上と茶渡を抱えて、この場を立ち去っていく喜助と一護の両親の姿を見る。
(それにしても、師匠が一護に興味を持つ理由がよくわかった。死神、虚、完現術。既に3つの力を覚醒させた。そして、一護の母親を見て確信した。……運命は悉く一護を愛しているらしい)
世魅は銀城がいる空間を見据え、少し下を向いて呟く。
「謝る気はない。殺したいならいつでも来い。受けて立つ」
尸魂界。死神の力を取り戻した一護は銀城を弔うため、久しぶりにここを訪れていた。総隊長に許可をもらい、彼の死体を受け取るために安置所前まで来て、そこに世魅が待っていることに気づく。
「世魅……」
「まぁ、来るだろうとは思っていた」
世魅が真っ直ぐ、一護を見る。一護はその目に品定めされているように感じた。
「その甘さは嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。ただ、少し甘すぎるんじゃないのか?」
「……言いてえことは分かる。だけど、止めることはねえよ。これが俺だ」
心からそう答えた一護に、世魅はほんの少しだけ笑う。
「なぁ、世魅」
「なんだ?」
一護は彼のことを多く知らない。ルキアや恋次ほど背中を預けたわけではなく、一角や剣八、白哉のように死闘を繰り広げたわけでもない。だが、一護は彼にメコニルと同様の深い優しさを感じていた。
「あんたは俺らが知らないような重要ななんかを知ってて、それで、銀城の仲間を……」
「一護」
聞こうとしたことを察したのか、世魅は強い口調でそれを止めた。
「お前は俺に夢を見過ぎだ。俺の本質は藍染とそう変わらん。目的のために銀城とその仲間を斬り捨て、その人生を滅茶苦茶にした。それ以上でも、それ以下でもない」
世魅の言葉を一護は聞き取る。その目で見たものを疑わずに。己の心で感じた相手の声を疑わずに。
「……ただ、そうだな。あの行為が罪であり、それを背負っているつもりだ」
まいったと言いたげに、世魅は一護にだけ、僅かな本音を吐露した。
「だから、俺は止まるわけにはいかない」
彼は一護の前までくると、ゆっくりと拳を構え、彼の胸に触れるように突き出す。
「お前もそうなんだろ? 後ろを向くなとは言わない。進め。その先にお前が望むものがある」
「……あんた、本当にメコニルさんの息子なんだな。言ってることがそっくりだぜ」
一護の感想に対して、少し目を見開いた彼は少し複雑そうな表情をしながら、ため息をついた。
「そうか。それは嬉しいが、同じくらい複雑だ」
思わず、少し吹き出した一護。世魅は半目になる。
「一護。お前の戦闘方法について、言いたいことがある」
「え?」
「お前が使える技は月牙天衝、ただ一つなんだよな?」
「そ、そうだ」
「遠距離攻撃しか技として存在しないのに、なぜ近接戦を好む? お前ほどの霊圧なら近づかずにただ月牙天衝を撃ち込み続けるだけで、それを抜けてお前の速度に追いつくのは隊長格でも苦しいはずだが」
「そ、そんなこと、出来っかよ。卑怯じゃねえか」
「……お前な。意地で勝利を遠ざけるのか? ちょうどいい。お前の資質と実力を確かめてやる。銀城のことにケリをつけたら時間をよこせ」
一護はその後も、世魅によって戦術の拙さを指摘され続けるのだった。
【破面大百科】
ハリベル様!
……どうした、アッパチ?
ちょっと前に絡んできた
……わかった。今、行く。
また悩み事ですか?
スンスン。……大したことじゃない。アパッチ、後ろを頼む
はいっ!
…………やはり、戦いが終わってから、何かにお悩みですわね
あの黒髪死神のせいだろ。完敗した挙げ句、見逃されたんだぜ。私達は
馬鹿ですの?
あぁ!?
ハリベル様が、その程度で自分を見失われる方だと思っているかと聞いたんですの
…………それは
まぁ、私もその理由に関しては想像がつきませんの。お馬鹿なあなた達と同じであるということが悔しいのですけど
喧嘩売ってんのか!?
あの死神の影響がないとは言い切れませんけど、もっと何か別のものを知ってしまったような気がしますの
スンスン、お前、話聞いてんのか!?
一体何があったと言うんですの。藍染が負ける前からその素振りはありましたけど……
もはや、返事すらしねえのかよ!
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毎日仕事しながら、創作活動してる人たちってやばいんですね。
最近、身にしみるわ~。
続き急がねば。
感想、ぜひとも!