Dye Your Soul Your Color   作:鏡狼 嵐星

29 / 45
もう一人じゃない
また隣に居られるんだ
二度と失ってたまるか



Outside, 聖混文字(Stigmata of Chaos)

「能力の内容はザクッと説明されたとおりだ。眼帯ヤローの力は防御する手段がねー。発動した時に斜線上にいたが最後、貫かれる」

 

「なんとも面倒な能力だな。というか、そんな能力相手になんで俺なんだよ。振り分け間違えてるぜ、神様」

 

「文句言ってんなよ、スターク! あたしたちが頼りにされてんたぞ!」

 

「世魅くんが割り振ったわけだし、何かしら意味があるんだと思うよ。それに、レヒトくん、だっけ。あの子もメコニルくんの子なんでしょ? なら、世魅くん並に頭が切れるだろうしねえ」

 

「いや、確かに頭が回るやつなんだが……」

 

「無駄話している暇はありませんよ!」

 

ユーハバッハによって変形した霊王宮の町並みを走るのは、滅却師と破面、そして死神二人という目を疑う混成部隊。そして彼らの走る先にいるのは、身長ほどのライフルを構えた片目を瞑る滅却師。

 

「陛下を裏切るとは。愚かな判断だよ、ランパード」

 

正確無比な弾丸が彼らを狙い撃つが、事前にその戦法を共有している彼ら全員が紙一重でかわす。リジェ・バロは二回目を撃とうとする時、奇妙な声を聞いて後ろを振り返る。すると、そこには京楽が現れており、彼の持つ銃であるディアグラムを切り裂いていた。一瞬で彼方へと走り去った京楽とその能力について行った伊勢を見ていたリルトットたちはその後を追う。

 

「二代目の総隊長をしてるだけのことはあんな、あのオッサン」

 

「こっちはかつて殺された相手だ。侮れるわけねえ」

 

賞賛を送りながら、リルトットとスタークはリジェの元へと向かう。

 

「一応聞くが、眼帯ヤローへの対処法はあんのか?」

 

「まぁ、無いわけじゃねえよ」

 

「ならいい」

 

リジェと京楽の元についた彼女たちは、既にリジェが目を開いている状態になっていることを確認した。

 

「へぇ、やるじゃねーか」

 

「褒めてくれるのは嬉しいねぇ。僕の身内はあんまり褒めてくれないから泣いちゃいそうだよ」

 

京楽の言葉を聞きながら、リルトットはリジェに向かい合う。

 

「……弁明を聞くとしよう、ランパード。何故陛下を裏切った?」

 

「あ? わけわかんねーこと言ってんじゃねーよ」

 

リルトットが霊子兵装を構えるが、リジェは避けようとする気配さえ見せない。

 

「訳が分からない? それはこちらのセリフだよ」

 

心底からそう思っていると言わんばかりの彼に、リルトットは自身の牙を見せながら答える。

 

「命をかけて戦うのと、命を捧げるのとじゃ意味が違うだろーが」

 

「馬鹿な。僕たち星十字騎士団(シュテルンリッター)の役目を忘れたと言うのか?」

 

「そもそも俺たちは俺たちのために戦ってたんだ。ユーハバッハにそこまでの忠誠心は元からねーよ」

 

心底信じられないと言わんばかりのリジェにリルトットは告げる。

 

「俺たちの命をどうとも思ってねー王よりも、俺たちのために泣いてくれるやつの手を取った。それだけだろ」

 

射出された霊子兵装はリジェの体をすり抜ける。

 

「………愚かすぎて何も言えない。過大評価していたようだよ」

 

目を開いた彼から放たれる緑色の光と共に、リジェの姿が変わる。箱のようなものに入った体と8枚の翼。

 

「『神の裁き(ジリエル)』」

 

その姿になった瞬間、ババッと音が鳴り、放たれるいくつかの弾丸が動けない京楽を襲う。リジェが弾丸を撃つと同時に彼の体を覆うように2発の極大の蒼い虚閃(セロ)が襲いかかる。

 

「無駄だ」

 

リジェはそれを全てすり抜け、無傷の姿を見せる。もちろん、スタークはそんなことは理解している。それは時間稼ぎの一撃だからだ。

 

「『虚神の飢餓(ガガガ・ガガエル)』」

 

黒と黄色が混ざった霊圧が彼女の吹き出る。牙を生やした6枚の翼が上側の翼、真ん中の翼、下側の翼それぞれが牙を鳴らす。光輪が牙を薔薇の如く生やす。その姿を見たリジェがその体を震えさせた。

 

「……貴様、貴様ッ、貴様ァッ!!! 陛下から与えられた聖なる翼をッ!! 穢れた力で汚したなァッ!!!」

 

先ほどまでの冷静な態度を急変させ、周囲に大量の光弾を生み出すリジェに、リルトットは慌てることなく、掌を向ける。

 

「マスティケイト・スポーク」

 

射出される円状の牙。本来ならば、避ける必要のないはずのリジェはその経験から彼女の攻撃を()()()。背後にあった巨大な塔が射抜かれた部分だけ存在しなかったかのように綺麗にくり抜かれる。

 

「……なんで避けんだよ、眼帯ヤロー。避ける必要はねーはずだが?」

 

「少なくとも君が無駄な努力をしないタイプだとは理解している。君がこの場にいると言うことは、あのレヒトがそう仕向けたということ。僕への対抗手段を持たせたと考えるのが妥当だ。……あの下物め、陛下のために死んでいれば良いものを!」

 

自身の発生させ、彼女の攻撃の射線上にあった光弾が()()()()ことを確認し、リジェはリルトットを警戒する。『万物貫通(The X-axis)』を対処してみせたレヒトと組んでいる以上、何かしらの形でリジェの力を無効化する手段があると考えるのが普通。そう考えた彼にリルトットは苛立ちから歯を鳴らしながらも、対象から視線を外さない。

 

「ケッ。そのまま喰われてりゃ楽だったのにな」

 

6枚となった翼をガチガチと噛み合わせる。

 

「虚化する時に渡された力で、俺たちの聖文字(シュリフト)聖混文字(ゲミュシュト)に変わった。今の俺の力は『喰いしん暴(The Glutton of Realism)』。この世にあるもの全てを喰う。能力だろうが、概念だろうが、その上からな」

 

「……僕の『万物貫通(The X-aix)』は全てを貫く。その汚れた力ごと貫いてやる!!」

 

リルトットが霊子兵装から神聖滅矢(ハイリップファイル)を連射する。黒く染まった口のような黄色の鏃はその牙を見せながら、リジェの元へと飛んでいく。それを光弾で撃ち落としながら、リジェは激情に身を任せてリルトットに突撃する。何故ならば、現状、リルトット以外に警戒する必要がないからだ。

 

「背中が留守だぜ」

 

スタークがリジェの背後から銃口を向ける。しかし、彼は気にする様子を見せない。スタークはため息をつきつつも、黒い銃を構える。すると、その傍に二丁の巨大な蒼い銃が出現する。

 

群狼・過散装填(レボルベル・ロス・ロボス)

 

放たれる蒼い虚閃(セロ)。空中でやり合う彼らを見ながら、次の作戦のために動いている京楽はかつて見た虚閃(セロ)が、『(プリメーラ)』であったときよりも、先ほど放った虚閃(セロ)よりも、圧倒的に()()ことに驚く。

 

「ガッ!!」

 

それはリジェの体に吸い込まれるように命中し、彼の体に穴を開けた。信じられないものを見るような表情となったリジェにスタークは面倒くさそうに目をそらす。

 

「俺は忠告したぜ?」

 

「貴様ァッ!!」

 

「うおっ、怖ぁ! さっさとやっちまおうぜ!」

 

「黙ってろ、リリネット」

 

大量に生成された光弾と共にリジェが彼に突撃する。霊圧で出来た蒼い双銃が変形し、刃のように変形する。ばら撒かれる光弾を切り飛ばしながら、スタークはリジェに迫る。

 

「下賤な虚如きが! 陛下の最高傑作たる僕の力を無効化するだと!?」

 

「いくら何でもかんでも貫通できるらしいあんたでもその能力を聞く限り、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()() 例えば、霊圧とか存在しても貫けるのものじゃねえしな。今、放った虚閃(セロ)は俺たちの魂を通じて()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。手間はかかるが、通用するみたいで安心したよ」

 

光弾を粗方落としたスタークは再度、蒼い双銃を展開し、細い虚閃(セロ)を連射する。リジェはそれを転移に似た移動で回避していく。

 

「バイト・スパイフ」

 

リジェの上に回ったリルトットが、片腕についている糸鋸のようなものを振り回す。

 

「面倒な!」

 

リジェの体に付随するように、展開される翼に存在する穴がリルトットを狙う。それに合わせて、彼女が口を開いたその時。

 

「女の子にそんな無粋なもの向けちゃだめだよ」

 

彼女の口が弾丸を喰らうように閉じると同時に現れた京楽の手で、翼の一つは真ん中から2つになってしまう。追撃しようとしたリジェに向けて何本もの虚閃(セロ)の光が彼に追撃をさせない。

 

「おっと、君たちが干渉してる時なら僕でも斬れるみたい」

 

「レヒトを真似て、眼帯ヤローの能力を若干、喰ってみたが、一瞬しか役立たねーみてーだな」

 

ガチガチと自分の顎の噛み合わせを確かめる彼女に対し、血だらけの体を動かしている京楽は呆れた様子だ。

 

「いやいや、十分すごいよ。僕の攻撃、今のところ通じる気がしないからね」

 

「手ぐらいあんだろーな? 総隊長」

 

リルトットに睨みつけられた京楽は少し後ろめたそうに告げる。

 

「卍解なら出来なくないと思うんだけどね」

 

「……出さねーのは理由があんだな?」

 

「察するねえ。少なくとも、君たちが近くにいる限り使えないよ」

 

少し考える様子を見せるリルトット。

 

「ちょいちょい。未だに使うの渋るんじゃねえよ、総隊長さん!」

 

リジェのヘイトを買い続けるスタークが愚痴る。少し私怨が入っているような言葉遣いであることを感じた京楽は苦笑い。

 

「しゃーねー。おい、スタークって言ったよな。手伝え。隙、作るぞ」

 

「なんで、俺の周りは無茶振りしかしてこねえんだよ」

 

「あたしが無茶振りしてるような言い方すんなよ!」

 

「してんじゃねえか」

 

だるそうに頭を掻くスタークに対し、リリネットが声を上げる。そして、リルトットは()()()()()自分の体を確認しながら、考えた作戦概要をさらっと京楽に告げ、リジェの前に出る。

 

(そりゃそうだ。そもそも滅却師の体を虚化させたまま維持してるってだけでやべーのに、ユーハバッハの血杯を受け取った時と同じように力も与えられ、能力の強化までされてる。出たこと勝負なのは性に合わねーが、時間に余裕はねーし、やるしかねー)

 

リルトットは両腕を交差し、自身の翼を噛み鳴らす。ガキンガキンと音が響き、周囲に牙が生えた球体のようなものが大量に出現する。

 

「ゴールデン・クラッチャーズ」

 

その言葉を聞き届けてから、黄黒色の球体たちはリジェに飛びかかる。リジェもまた先ほどとは比べ物にならない量の光弾を生成し、周囲に区別なく、撃ち放つ。京楽がそれを避ける中、光弾で崩壊した建物の影にいた伊勢が姿勢を崩したのを確認し、手を伸ばす。その刹那に近づいた光弾に伊勢が覚悟を決めようとする直前、その弾をスタークが打ち落とす。

 

「リルトットォッ!!」

 

瞬間移動してきたリジェに、リルトットは焦らずに対応する。光弾を喰い荒らしていた球体たちが一斉にリジェの方を向き、口を開く。徐々に、開く口が大きくなっていく動きを察して、リジェが球体を撃ち落としにかかる。

 

「ガガエルズ・テーブルマナー」

 

リジェの背後に京楽が飛び込んできたことを確認し、リルトットは自身の顎を伸ばしつつ、展開した球体と共に、リジェと京楽の()()()()()()()()()()。すると、まるで時が飛んだかのように彼らが見えないほど、とても遠くに移動した。

 

「……あー、くそ、腹が」

 

新たに得た能力を使って、食べたことがない空間の一部を腹に収めたせいか、相当な満腹感と胸焼けを感じていた。

 

「頼むぜ、総隊長」

 

 

 

 

 

 

 

「此にて大詰、〆の段。『糸切鋏血染喉(いときりばさみちぞめののどぶえ)』」

 

『花天狂骨枯松心中』による首斬り。敵と自分を、遊女とその恋人の悲哀劇に重ねる幕間劇。霊圧を用いた必殺。本来なら、これで終わるはずだった。

 

「言った筈だ……」

 

傷だらけの京楽の胸を貫く霊圧の弾。

 

「言った筈だァ……ッ!」

 

頭から先が無いにも関わらずその体から漏れ出る霊圧が、激怒の表情のようなものを浮かべる。

 

「高が死神の卍解如きで! 神の使いが殺せると思うなアアアアッ!!」

 

無くなった頭が生える。先ほどのリジェの外見では無い、鳥のような頭。箱のような形だった体の外側に、新たに腕が形成されていく。

 

「僕は不死! 僕は無敵! 僕は特権を与えられた神の使い! 全ての罪深きものどもは神の使いの前に為す術など無し!」

 

声すら別人。滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)もの光輪(ハイリゲンシャイン)や翼も緑から金色へ。鳥のような頭に存在する目も上下では無く、左右に開く。

 

「何だよあれ! 気持ち悪っ!」

 

「……なぁ、あれが奥の手ってやつなのか?」

 

「……知るか」

 

消えかけたリジェの霊圧が復活したのを確認したため、全力で飛んできたリルトットとスタークはリジェの変わりように顔を顰めざるを得なかった。それは頭の位置はそのままに、首を回す。キリンのように伸びた首が捩れ、顔の向きを真逆にする。

 

「アァ、罪深いものたちばかりだ。アァ、アァ、罪深いものたちを見ると、目が渇くなァァァ〜〜〜」

 

ぐるりと周囲を見渡したそれはシャコシャコと目を動かす。

 

「レヒトを下物だなんだと呼んでたがよ。お前のがよっぽどバケモンじゃねーか」

 

リルトットの呟きは神の使いには聞こえない。

 

「リィルトットォ〜〜〜。君は特に罪深いぞ。君は神の力を穢したのだからァ」

 

言うや否や、腕を振るう。金色の破壊が目の前を覆う。

 

「ガガエルズ・テーブルマナー!」

 

咄嗟に空間を喰い、移動することで直撃を避けるが、既に至近距離にまで移動してきている『神の裁き(ジリエル)』に対応できない。

 

「食い散らかせ、スターク!」

 

蒼い双銃のうちの片方が、さらに巨大な狼へと変貌し、『神の裁き(ジリエル)』を丸々喰おうとその口を開く。

 

「卑しいぞ!」

 

頭がスライムのように広がり、それを振り回すかのように首が動く。四方八方に光弾が放たれ、スタークと呼ばれた蒼い狼にいくつもの穴を開ける。しかし、スタークも黙ってはいない。怪我をしていないはずの彼だが、いつのまにか血塗れになった自身の手にある双銃を真正面の『神の裁き(ジリエル)』を狙って構える。

 

「『無限装填王虚閃光(グラン・レイ・メトラジェッタ)』」

 

爆音。そして、空を覆う蒼い光。それは『神の裁き(ジリエル)』を覆い隠す。

 

「……ちょっと遅かったら、巻き込まれて死んでたじゃねーか」

 

「おいおい、助けたつもりなんだが」

 

「今のはどうかと思う!」

 

「何で俺の味方はいないんだよ」

 

どうにか、ピンチから抜け出したリルトットたち。

 

「罪を重ねるのが好きだな、お前たちは。罪深いぞ」

 

しかし、無傷の『神の裁き(ジリエル)』が無から湧き出るように現れる。

 

「うわ、出たぁ!」

 

「どう倒すんだ、この鳥」

 

「策なんかねーよ。やるしかねー」

 

彼女たちは再度、構える。

 

 

 

 

 

 

 

影の中。花天狂骨の力で京楽と伊勢はその中へ避難していた。そして語られる京楽の過去、伊勢家の呪い、彼女の母の願い。恐ろしいものではあるが、彼女に迷いはない。呪いそのものと言える斬魄刀を受け取り、外へ飛び出す。

 

「何だと!?」

 

神の裁き(ジリエル)』の隙を狙うために、その体にできたわずかな影から出たことで、『神の裁き(ジリエル)』が驚くが、リルトットとスタークは動揺せずにすぐ対応する。

 

「スワロウ・グラップキン!」

 

気を取られた『神の裁き(ジリエル)』の隙をつき、リルトットが両手を大きく横に振る。すると、黄色い布のような霊子の塊が周囲の破壊の光を覆い、纏わりついて消化するように小さくまとまる。更にスタークが巨大な蒼い狼2匹を出現させ、『神の裁き(ジリエル)』の翼の一部を噛み千切る。

 

「ゆ、ゆる、ゆるる、許さないぞ! 神の使いたる僕の翼をォォッッ!!!」

 

首を振り回し、瞼をシャコシャコと忙しなく動かし、『神の裁き(ジリエル)』はスタークに腕を天に向け、巨大な光を頭上に生み出す。それが隙だと判断した伊勢が八鏡剣で斬りかかる。しかし、逆の腕で防がれてしまう。

 

「君がわざわざ戦いに出てくるんだ、何か意味があるんだと思っていたぞ!」

 

逆の腕が散り散りに砕けて尚、『神の裁き(ジリエル)』は巨大な光を集めることをやめない。

 

「お前たち全員、『神の喇叭(トロンペーテ)』を聴いて死ね!」

 

空高く舞い上がった『神の裁き(ジリエル)』は巨大な喇叭をリルトットたちに向ける。その大きさから予測される破壊に対処できそうな手札を探す。リルトットは攻撃を喰うしか無いかと満腹で開きたくない口を開き、スタークは自身の背に伝う魂を詰めた銃弾を黒い双銃に装填しようと試みたその時だった。

 

「こっちだ!」

 

真下から響いた京楽の声。八鏡剣を構える伊勢の背後で攻撃を受けようとしている様子を見て、信じるしか無いとリルトットとスタークは京楽の背後に移動し、その背中を支える。

 

「なんてザマだ。揃いも揃って副官の背後に隠れるなんて」

 

神の裁き(ジリエル)』はその言葉を最後に喇叭を鳴らす。プアァという音とともに、『神の裁き(ジリエル)』の目下の大地が消え去った。伊勢が構える八鏡剣の後ろ側を残して。

 

「……ン?」

 

神の裁き(ジリエル)』は自分の左側の顔に触れるが、顔の一部がない。

 

「……ああ、そうか。ふふ、神の力を弾くなど……」

 

顔から始まったひび割れは、徐々に『神の裁き(ジリエル)』の全身へと伝わっていく。

 

「罪深いな」

 

その一言を最後に砕け散った。八枚の金色の翼が揺れながら落ちていき、霧散する。緊張の糸が切れたのか、伊勢が崩れ落ちそうになるのを京楽が受け止める。

 

「……しばらく何も食いたくねーな」

 

リルトットは滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)を解き、腹をなでつつ、胡座をかく。

 

「つっかれた~!」

 

「お前は何もしてねえだろ」

 

「緊張はすんだからな!!」

 

騒ぐ自分の銃に愚痴を吐きながらも、スタークは立ったままだ。

 

「僕はちょっと休ませてもらおうかなぁ。身体が痛くてねえ」

 

「隊長!」

 

京楽もまたふらふらと揺れながら、どうにか座り込む。伊勢もまた傷を追っているが、京楽に比べればまだ軽症のため、必死な表情で駆け寄る。

 

「それにしても、あんたが俺と戦ってる時にこの能力を使わなかった理由がわかったぜ。こんな無差別攻撃じみたもん、あの場じゃ使えねえよな」

 

「満足いただけたかい?」

 

「あぁ、見たいもんが見れた。神様に感謝だな」

 

スタークはかつてそれを引き出せなかったことを悔しげに、だがそれを見ることができたことに対して、満足気にそう言葉に残した。京楽の治療を行い続ける伊勢がリルトットに向けて、疑問を投げかける。

 

「……すいません、リルトットさん」

 

「んだよ」

 

「先ほどの姿については、何もご存知でないと言うことでいいですか?」

 

「……あぁ。少なくとも最後のアレは眼帯ヤローじゃねーな。あんな挑発には乗るようなタイプじゃねーし」

 

「……急ぎましょう。他の方々が心配です」

 

全員、目を見合わせて頷く。しかし、彼らも消耗が激しい。少しばかりの休息に体を委ねた。




『滅却師資料』

レヒトはよくコーヒーを飲んでるんだが、無糖派らしい。平気でそれだけで飲んでることが多かったよ。俺は無理だね。甘い飲み物に甘いものを重ねるのがベストさ

3度目だから、もう挨拶はいらねえかな?

今回は聖混文字(ゲミュシュト)についてだ。ていうか、毎回毎回、資料読むだけのコーナーで良いのかよ?

お前だけじゃねーから安心しろ

うおわっあっ!? いるならそう言えよ、リルトット!?

時間ねーから、説明に移るぞ。今回の説明は聖混文字(ゲミュシュト)全般というより、俺の聖混文字(ゲミュシュト)である『喰いしん暴(The Glutton of Realism)』についてだ

ほんほん

食うことは変わらねーが、食える対象が増えてる。物理的に存在しないもの、例えば空間とかを食うことができる。あとは相手の能力が及んでいるものも、その力の上から食えるから、妨害されねー

へー

ただ胃袋はほぼ変わってねーから、食える量には限度があるし、空間とか本来食えないものを食うとやたら腹が膨れる。増えた力の分だけ燃費が悪くなったことになる

ほえー

……毒ヤロー。試しに食われてみるか?

ふーん、ってやめろよ!?

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と言うわけで、今週も感想くださいな!(恥知らず)
あとどなたかはこちらではわからないのですが、ここ好きしてくれている方々、ありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。