Dye Your Soul Your Color   作:鏡狼 嵐星

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仲間のために怒り
体が朽ちても心は老いず
力のように真っ直ぐに
稲妻のように速く
敵を海淵に沈めよ
恐怖を微塵に散らせ
希望を隅々まで凍らせろ
奇跡を二つに叩き斬れ



Outside, この身に宿る刃

ヤミーの拳を『神の権能(アシュトニグ)』が盾で受け、『神の権能(アシュトニグ)』の剣を異形とかした片腕で掴み取る。

 

「クソうぜえなぁ、てめえ!」

 

「我の剣を掴んでただと済むと思うのかッ!!」

 

ヤミーの手の内にある希望の剣(ホーフヌング)が彼の硬い爪によって傷がつく。それがヤミーの体に反映され、切り傷が浮かびだす。

 

「ってえなあ、ゴミがッ!!」

 

希望の剣(ホーフヌング)を引っ張り、『神の権能(アシュトニグ)』を引き寄せる。無論、古代の戦士もただでは近寄らない。盾を構えて突撃するシールドバッシュで攻撃と防御を両立する。

 

「ゾーナ・セネスセンシア」

 

バラガンが腕を伸ばすと、『神の権能(アシュトニグ)』の肉体が動く速度が急激に遅くなる。ヤミーは顔面の前に構えられた盾を避けて、がら空きになった胴体にその拳を叩き込む。『神の権能(アシュトニグ)』はその威力によって、体を浮かせて地面に倒れる。

 

「ちっ」

 

ヤミーが舌打ちすると同時に、『神の権能(アシュトニグ)』がジャンプするように立ち上がる。

 

「なかなかの一撃だったぞ、悪魔よ!」

 

「……見た目と違って器用なカス野郎だぜ」

 

殴りつけた瞬間に背後に威力を流したことで、僅かな傷で復活した『神の権能(アシュトニグ)』。だが、バラガンはそこに小さな違和感を一つ感じた。

 

(なぜ防いだ? ヤミーの一撃を受けて、更に強く再生すれば良いものを。戦うものとしての反射的行動か、右なる神のおっしゃっていた能力の暴走が近いのか。まぁ、その程度のこと、確かめれば良い)

 

バラガンの口から漏れ出る死の息吹(レスピラ)が、バラガンの周囲を覆うような動きから、彼の周囲を根本に赤黒い骨の腕のような形状へと変化する。

 

老落の息遣い(エルビエオ・レスピラ)

 

腕となった死の息吹(レスピラ)が『神の権能(アシュトニグ)』へと襲いかかる。未だ動きの鈍い巨人はどうにか盾を投げることで防ごうとするが、その盾すら腕に触れた直後から速度を急激に劣化させ、崩れ落ちる。

 

「おのれ! 奇怪なッ!」

 

「起こしてみせろ、奇跡とやらを。我が神ですら絶対と言わしめた儂の『老い』の力に」

 

 

 

 

 

 

バラガンが参戦したことを確認した海燕と白哉と冬獅郎は、剣八を連れて彼等から少し距離を取る。

 

「はぁっ、はぁっ」

 

息が荒い冬獅郎。白哉は大紅蓮氷輪丸の氷華がもう散り切ろうとしているため、その限界が近いのだと察する。

 

「皆さん、集まって作戦会議ですか〜?」

 

「もう生半可な一撃じゃ傷も与えられないっぽい。どうすんだよ?」

 

そこへミニーニャとキャンディスが現れる。バラガンが参戦したことで、資料(ダーテン)からその能力を知る彼女達は隙を見て攻撃という手段すら取れなくなったため、死神と合流せざるを得なかった。

 

「おっ! おったおった!」

 

最後に合流したのは平子。今、探し始めたかのような様子だった。

 

「平子!? 他の怪我した奴らはどうしたんだよ!?」

 

「大分、離れたところまで連れてったで。まぁ、安心とは言えへんのやろうけど、伝えやなあかんことがあってな」

 

海燕の疑問に答えながら、平子が両手を重ねた後、両腕を伸ばす。

 

「縛道の七十七、天挺空羅」

 

すると、周囲の頭の中に声が響き渡る。

 

「聞こえるか?」

 

「リル!? どっから話しかけてんだよ!?」

 

脳内に響く声に、頭を抑えるキャンディス。

 

「そんなこと、どーでもいいだろ。兎に角だ。筋肉ヤローを倒せるかもしれねー。手を貸せ」

 

リルトットの提案に彼等は顔を見合わせる。

 

「一応、確認させろ。筋肉ヤローが真っ二つになった後に、再生の要となったのは滅却師十字(クインシークロス)で間違いねーか?」

 

その場にいる全員の視線が自然にキャンディスへと集まる。

 

「それはアタシも見た。なんか関係あんのか?」

 

「筋肉ヤローのコア、本体が滅却師十字(クインシークロス)かもしれねー。そいつをどうにか破壊する」

 

リルトットの発言がこの状況を打開できる可能性を示した。死神達の顔つきが変化する。

 

「……先ほどと同じ状況を作れと言うのか?」

 

「同じじゃダメだ。確実に滅却師十字(クインシークロス)を出現させる必要がある。加えて、筋肉ヤローが再生する前にそいつを破壊しなきゃいけない。難しさは段違いだ」

 

白哉の言葉をリルトットが修正する。剣八の手で真っ二つにされた時と違い、敵はより強力な肉体を手にし、滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)を解禁している。確かに難易度は桁が違うだろう。

 

「つっても、やることは変わらねー。そこにいる面々で筋肉ヤローの肉体を粉々にする」

 

「肝心の滅却師十字(クインシークロス)はどうするんですか〜? あれ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「更木剣八に任せる。傷を治せるジジはもう呼んだ。あいつの移動速度を考えると到着するまでにもう少し時間がかかるだろうが、あの破面達に任せときゃ時間は稼げるだろ。こっちの言うことを聞いてくれるとは思えねーが」

 

「ってことは、アタシ達でアレを粉々にしろってことかよ!?」

 

キャンディスの驚く様子とは裏腹に、白哉は既に次の手を考え始めていた。その目に映るのは膝をついた冬獅郎の姿。

 

「下がるのだ、日番谷隊長。兄はもう限界だ」

 

「問題、ねえ……!」

 

しかし、冬獅郎はそれを否定する。その直後、氷華が散り切った。

 

「俺は氷華が散り切ったら終わりだなんて言った覚えはねえぞ」

 

成長して大人の姿となった冬獅郎。周りの目が点になる。

 

「あの希望の剣(ホーフヌング)とやらは任せろ。使えなくしてやる」

 

一歩、踏みしめた大地を凍結させつつ告げた。

 

「俺は火力にならへんから、滅却師十字(クインシークロス)の位置を探るわ。七緒チャン、手伝ってくれるやろか?」

 

「ええ、分かってます」

 

結果、それぞれのやることが決まる。

 

 

 

 

 

希望の剣(ホーフヌング)が老衰の骨腕を斬る。崩れた希望の剣(ホーフヌング)の傷を置換されたバラガンの体に崩れたような傷跡がつく。

 

「フハハハ!! この程度の傷が通じると思ったか!!」

 

しかし、傷へと赤黒い霧が群がり、その崩壊を押し留める。そして、骨そのものが育つように傷を塞いでいく。

 

「今の儂は死の息吹(レスピラ)に意思を宿せる! 老いを与えるのも、老いを遠ざけるのも自在! 貴様の言う奇跡とはその程度だ!」

 

「おのれ! 魔の者が民の希望を折れるものかッ!」

 

神の権能(アシュトニグ)』がバラガンに視線を向けるが、それを許すヤミーではない。並の虚閃(セロ)を超える虚弾(バラ)が『神の権能(アシュトニグ)』の顔面へと炸裂する。

 

「よそ見してんじゃねえぞッ、ゴミカスがぁアッ!!」

 

再度、『神の権能(アシュトニグ)』とヤミーが殴り合おうとしたその時、『神の権能(アシュトニグ)』が振るおうとした希望の剣(ホーフヌング)全体が凍結する。しかし、そのようなことは関係ないとヤミーへと剣を振り抜き、ヤミーの拳によって粉々に破壊される。絶望がその身に刻まれると笑った『神の権能(アシュトニグ)』だったが、ヤミーに傷は現れない。

 

「何ッ!?」

 

戻りつつあっても剣も盾も失ったままのその体にヤミーの大振りが決まる。どうにか両手で押さえ込もうとするが、それを許すバラガンではない。赤黒い腕が『神の権能(アシュトニグ)』の片腕を掴み、老わせ朽ちさせる。

 

「ぬぐおッ!!」

 

ヤミーの一撃を抑え込めず、その勢いのまま背後に下がる体。何度目かわからない再生の最中、『神の権能(アシュトニグ)』は空に緑色の光を見る。

 

「溟海行宮捩花ッ! 海深沈界(かいしんしんかい)ニライカナイッ!!」

 

霆滅刑(ドンナーキューション)!!」

 

神の権能(アシュトニグ)』の体が海燕の卍解に覆われると、巨人の肌が青く染まっては身体中に珊瑚が数多生え、その動きを阻害する。そして、空の光が一瞬だけ消えたと思えば爆発的に輝き直す。自分の体に落ちた大きすぎる雷撃と珊瑚が爆発した衝撃に、体が痺れて揺れる。足さえ自由に動かせなくなり、吹き飛ばされた勢いを殺す手段を無くした巨大な体は地面へとひっくり返る。

 

「大紅蓮氷輪丸を解放して、四歩の内に踏みしめた空間の地水火風の全てを凍結する」

 

冬獅郎が誰にも邪魔をされることなく、完成した卍解の真価を発揮する。

 

「四界氷結」

 

地面に横たわった状態でその全身が氷で覆われた『神の権能(アシュトニグ)』。しかし、バキバキと音を立てて、叫びと共に立ち上がろうとする。

 

「凍らぬッ! 我は神の戦士ッ! この世の元素になど囚われぬ筈だッ!」

 

奇跡としか例えようのないその行動。しかし、まだ死神達の手は終わっていない。

 

「んん〜〜! 『全力(The Power of Rearmament)』っ!!」

 

足元に移動していたミニーニャが『神の権能(アシュトニグ)』の足を掴み、転倒させる。

 

「ッ、ミニーニャ・マカロン!!」

 

「殲景・千本桜景厳。奥義・一咬千刃花」

 

満足に動くこともできない『神の権能(アシュトニグ)』の頭目掛けて、千本桜景厳を刀として固めた刃たちが殺到する。

 

「『虚神の暴力(エルポール・ポーニポラ)』〜!」

 

ミニーニャの体に浮かび上がる動血装(ブルート・アルテリエ)が青からピンク色へ変化する。その細腕は巨大化することなく、頭が吹き飛んだ氷の巨像の腹へと叩き込まれる。凍った巨人は数え切れないほどのヒビと共に破壊された。

 

「縛道の五十八、掴趾追雀!」

 

破壊された直後、平子が地面に印を描き、詠唱を唱え終わる。

 

「おった! けど、不味いな!」

 

掴趾追雀で発見した滅却師十字(クインシークロス)の位置は先程まで『神の権能(アシュトニグ)』の心臓があったあたりの部位。しかし、いくら破壊したとはいえ、粉々に出来たわけではない。示された座標の上にはまだ凍った肉塊が残っており、目的のものがその中にあることを意味していた。超遠距離から天挺空羅を維持し続ける七緒の力で、その位置座標を正確に理解する周囲の仲間達だが、大業を放ったために発生した次へ動くまでのタイムラグ。ほんの僅かな時間だが、『神の権能(アシュトニグ)』の再生の方が速い。

 

「くそッ!」

 

海燕が叫んだその時、急激な霊圧の高まりが発生する。その場所はもう一人の巨人の口元。

 

「邪魔するんじゃねえッ、クソチビどもがあッ!! 『憤獣・巨怒激昂(エル・ギガンテ・デラ・イーラ)』ッ!!!」

 

放たれる黒一色の虚閃(セロ)。あまりに太すぎるそれが残った肉塊へと浴びせられる。それが横向きであったこと、その射線上に何もなかったことは幸いか。その憤怒の一撃を浴びたのは『神の権能(アシュトニグ)』の残骸だけ。数秒に満たない虚閃(セロ)が撃ち終わった時、そこに浮かぶのは()()()()()()()()()()()()()滅却師十字(クインシークロス)

 

「あれを浴びて、それだけしか傷がつかねえのかよ!?」

 

残っていた電気を使い尽くしたキャンディスが叫ぶ。

 

「『枯滅の斧(デカデンシア・カイーダ)』」

 

死神達の様子を観察していたバラガンが、老いの力を帯びた斧を投げる。それは滅却師十字(クインシークロス)に直撃するが、傷を与えられずに跳ね返される。だが、明らかに再生しようと放出される光の速度が遅くなった。

 

「ちょっ、まだ腕が引っ付いただけなんだけど!?」

 

「問題ねえ!」

 

「死にかけの人の動きじゃないにゃん!」

 

僅かな問答が、何かが血だらけで飛び上がる音によって掻き消える。野晒を持つ腕以外はボロボロの剣八が滅却師十字(クインシークロス)の元へと突撃する。しかし、滅却師十字(クインシークロス)の光が不自然に変化すると、滅却師十字(クインシークロス)に入った()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「あの程度の傷の置換を優先した、のか」

 

奥義である一咬千刃花による反動で、霊圧の消耗が激しい白哉が呟く。それは敵が追い込まれたが故の行動であることを察したからこそだった。剣八も状況全てを飲み込めてはいないが、その生来の勘で今ならば殺せると理解し、出血こそしたものの骨が折れていないことが分かるので気にしない。

 

「ケリをつけようぜ!」

 

野晒の切先が滅却師十字(クインシークロス)に吸い込まれる。直撃すると思われたその瞬間、それがまた強く輝き出す。何が何でもこの窮地を逆転する奇跡を起こさんと、無我夢中だと言わんばかりに。

 

そして、奇跡を起こす。

 

巨大化する前に彼が持っていたサイズの希望の剣(ホーフヌング)が野晒と滅却師十字(クインシークロス)の間に出現する。

 

「なん……っ!」

 

冬獅郎が瓦礫に体を預けながら目を見開く。今の剣八の一撃ならそれは容易く斬れるだろう。だが、それは同時に剣八の死を意味する。今は影すら無い『神の権能(アシュトニグ)』が笑い声を上げたような気さえした。

 

しかし、その小さな希望の剣(ホーフヌング)()()()()によって、刃の中心を撃ち抜かれて折れる。

 

「……ちっ」

 

振り抜かれた野晒。肉体とは違い、粉々に粉砕された滅却師十字(クインシークロス)

 

「つまんねえ幕引きだぜ」

 

地面に墜落したというのに、死人と言われても納得されるだけの傷だというのに、構うものかと剣八は大の字で寝転がった。

 

 

 

 

 

「やったみてーだな……」

 

巨人同士の死闘が繰り広げられていた場所から見て、隣にある円形の街。『神の裁き(ジリエル)』の破壊痕がその半分以上を占める真世界城(ヴァールヴェルト)の一角。リルトットがすぐそばで倒れそうになった相手を支える。

 

「はあっ……、はあっ……っ、ふうっ……」

 

息を荒げているのは2名。先程までずっと天挺空羅を維持し続け、情報共有の中間地点となり続けていた伊勢。

 

「……きっついぜ」

 

腹に大穴が空いたスターク。京楽は大きさは小さいが、自分の体にいくつか空いた穴を見ながら称賛する。

 

「流石だね。これだけ距離があるのに、一本の剣を撃ち抜くだなんてさ」

 

「副隊長さんがしっかり座標を教えてくれたからだよ。つっても、二度とごめんだな」

 

ため息を付く彼に、京楽は笑いながら問いかける。

 

「それはしっぺ返しの事かい?」

 

「こんな状況であんな小さいものを撃つことがだよ」

 

「いやあ、君は撃つ必要があったら撃つでしょ。そして当てるさ。それが仲間のためなら尚更」

 

スタークが物凄く嫌な顔をし、もう一度大きく息を吸い込み、わざとらしくため息をついた。

 

「今のはあんたらしいぜ。隊長さんよ」

 

「仲間のためならスタークは最強なんだぞ!」

 

「……うるせえよ」

 

スタークの顔はまんざらではなさそうだった。




【滅却師資料】

漸くこの時が来たぜ! 最後の聖混文字(ゲミュシュト)紹介の時間だっ!

……おかしくなっちゃったわね、こいつ

これ、どういう状況なんです〜?

知る必要ないわよ。ミニー、強くなった力を説明して!

えっと〜、今の私の能力は『全力(The Power of Rearmament)』です〜。力が強化されるって言うのが、色んな力に変えられるようになりました〜。

……具体的にはどんな感じなの?

そうですね〜。今までみたいにパワー!みたいなこともできますし、キャンディちゃんを助けた時みたいに速力特化みたいにできますし、滅却師の力を強化することもできます〜。この時の血装(プルート)はレヒトにも匹敵すると思うの

なにそれ、超便利じゃねえの!?

でも、切り替えないとダメなの。その時はどの力も強化できないから、見極める必要があるから難しいです〜

あ、一応、デメリットあるんだ……

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仕事がやばくなってきました……。来週の投稿がやばい……。
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