Dye Your Soul Your Color   作:鏡狼 嵐星

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想うことに意味は無い
生きることにも意味は無い
失うものは何も無い
されども我等は
心在るが故に望み
心在るが故に欲し
心在るが故に掌を見るのだ



Outside, Interest of you

黒と白の光が空を駆ける。白のそれに混じり合いながら、蒼い閃光が星のようにまばらに煌めく。それを浴びた黒のそれから生まれた緑が蒼と混じり合い、残光が弾ける。

 

「どうした? 滅却師の王の力を得た程度では今の俺についてくるだけで手一杯か、石田雨竜」

 

「君にそう言われるのは嫌味にしか聞こえないな!」

 

石田の神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)をウルキオラが『雷霆の槍(ランサ・デル・レランパーゴ)』で破壊していく。しかし、石田は霊子を収束させ、神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を再構成する。拮抗しているように見えるものの、ここにいるのは彼らだけではない。

 

狒骨大炮(ひこつたいほう)っ!」

 

地上にいる恋次のもう一本の腕、狒々王の手のひらに光る霊圧の塊が出現し、石田に向けて一直線にはなたれる。それを紙一重で躱すことができた石田。しかし、彼の元へと移動したウルキオラの雷霆の槍(ランサ・デル・レランパーゴ)が肩に突き刺さる。

 

「硬いな」

 

肩に浮かぶ静血装(ブルート・ヴェーネ)がその威力を抑える。だが、その威力全てを受け切ることはできず、大怪我ではないが出血していた。

 

「……君はもっと強かった。手加減でもしてくれているのかい?」

 

「言った筈だ。お前を試したいと。世魅は敵を直ぐに倒せとまでは命令しなかったからな」

 

ウルキオラが槍を握らない手の指先を石田に向ける。

 

黒虚閃(セロ・オスキュラス)

 

星くず(シュテルン・シュタウヴ)!」

 

迸る黒い閃光を避け、その側を飛びながら石田が神聖滅矢(ハイリップファイル)を再度纏めつつ、ウルキオラの元へ向かう。それを見てから、ウルキオラは自身の持っていた槍を石田へ目掛けて投擲する。

 

「っ!」

 

かつての姿でさえとてつもない破壊力を誇ったそれ。咄嗟に巨大化した5本の矢をその槍先にぶつける。青と蛍光色の閃光の中、石田の視界の端に見えるのは白い線の上に浮かぶ緑色の炎。それは悪魔のしなる尾。

 

「ぐあっ!?」

 

視界に一瞬しか映らないほどの速度で飛来したそれが腹に直撃した勢いで、空から地上へと叩き落とされる。姿勢を立て直そうとした彼の上に現れた恋次がその体へ剣を突き立てる。

 

蛇牙鉄炮(ざがてっぽう)ッ!!」

 

オレンジ色に輝く巨大な蛇の頭。それが石田の体に噛みつく。巨大な爆発が発生してそれが沈下するまでの数瞬、ウルキオラはこちらに近づくもう一つの影を認識する。

 

「何っ!?」

 

一方、渾身の技を静血装(ブルート・ヴェーネ)で受け切られた恋次は後ろへ後退する。再度、神聖滅矢(ハイリップファイル)を大量に展開したその時、甲高い声が響く。

 

「次の舞 白連!」

 

側面から迫る雪崩。自分が回避することを優先した結果、いくつかの神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)が雪にまみれてしまう。凍りついたことで制御を失い、地面へと落下し砕け散る。

 

「石田……」

 

表情が厳しい両者。ルキアは苦渋に満ちた表情で、石田は先ほどと変わらぬ表情で見つめ合う。

 

「終わったか?」

 

宙からウルキオラが声をかける。死神も滅却師も己の武器を構える。

 

「ルキア! 怪力女は?」

 

「向こうの巨人の元へ向かってもらった!」

 

手を振るうことで出現した大量の神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を待機させたままの石田に正面から向き合う恋次とルキア。それを空からウルキオラが眺めるという構図。一度止まった戦闘が、もう一度始まるまでの僅かな時間。

 

「……ルキア」

 

小声で恋次が話しかける。

 

「20秒、石田を止めてくれ」

 

「分かった」

 

およそ3秒のやり取り。沈黙を斬り、ルキアが走り出す。恋次がオロチ王を以前の狒狒王蛇尾丸のような形へと変形させた後、今の狒狒王の腕で掴み、振り回し始める。その光景を見ていたウルキオラはより空の上へ、より高い場所へと移動する。

 

「……光の雨(リヒト・レーゲン)

 

石田が手を向けることで射出した神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)たちはまっすぐルキアの元へ飛ぶ。だが、ルキアの顔に焦りはない。

 

「卍解」

 

白く染まる彼女の体。漏れ出る吹雪。周囲全てを覆い尽くさんと出現した冷気の根源。

 

白霞罸(はっかのとがめ)

 

彼女に襲いかかった神聖滅矢(ハイリップファイル)全てがその根本まで全てが凍りつき、その役割を失う。このまま攻撃することに意味がないことを察した石田は凍った神聖滅矢(ハイリップファイル)を含めて、周囲の霊子を聖隷(スクラヴェライ)で分解して再回収しようと試みる。しかし、回収できるはずの霊子は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。その事実を理解した頃には石田の足が地面に張り付く形で凍りついていた。莫大な冷気を防ぐために、残る神聖滅矢(ハイリップファイル)を自分の前に隙間なく展開することで冷気の直撃をかろうじて防ぐ。しかし、神聖滅矢(ハイリップファイル)の壁の外に出ざるを得なかった翼は使えなくなっており、飛ぶことは出来ない。加えて、彼の体も凄まじい勢いで凍りついていく。

 

蛇骸絶吼(ざがいぜっこう) ッ!!」

 

美しい氷の人形を俊足で飛び越える真逆の熱波。巨大な猿の左腕が大蛇の骨を()()()()()()()()。凍った弓矢はそれを間近にしても引き絞ることが出来ない。

 

「ぐあッ!!」

 

直撃。静血装(ブルート・ヴェーネ)による防御でもその全てを受け止められない。凍った体がバキリと大きな音を立てて宙に舞う。体中にヒビを入れながら空を吹き飛ぶ石田だが、どうにか翼を動かそうともがく。それを許さぬ影が一つ。無論、それを見逃す石田ではない。

 

「っ、フェーダー、ツヴィンガー……ッ!」

 

凍えて震える体に鞭打ち、残る矢を五本にまとめる。自由にならぬ体であるが、何故か真っ直ぐこちらへ飛んでくるウルキオラを捕らえられぬ訳では無い。

 

「冷静であるのは変わらないようだが、同じ轍を踏むのか?」

 

ウルキオラの周りに浮かぶ五本の矢が繋がり、霊子の帯が白い体に刺さろうと伸びる。しかし、ウルキオラの体にも浮かぶ全てのヒビが、穴が、二本の角が強く輝く。

 

「ルス・ヴェルデ」

 

白と黒の体がまばゆく緑色に光る。蒼い矢が光を受けた場所から緑に染まり、その力を失って自壊する。自身の翼すら緑に染まり始めたことに目を疑う。

 

「お前の腕を掴むのは二度目だな、石田雨竜」

 

吹き飛ぶ傷だらけの体の右腕とその喉を、悪魔の手が掴む。

 

 

 

 

 

 

真世界城(ヴァールヴェルト)に到達し、遥か高く聳えるその塔を登る一護とその仲間達。城の中には明らかな戦闘音が響いており、ところどころがドロドロに溶けて熱気を放っている。

 

「なんでこんなに壊れてんだよ!? しかし、あっちぃなぁ、おい!」

 

「俺が知るか! そっちも知らん!」

 

岩鷲と一護の軽い愚痴り合いを聞き流しながら、夜一が建造物の構造を把握しながら最短ルートを探る。

 

「こっちじゃ!」

 

彼女の指示に従う彼ら。その上にある天井が一気に赤色へ変色し、溶け落ち始める。

 

「っ、急げ!」

 

夜一の声かけもあり、仲間達は辛うじて落ちてきた溶岩を避けることができた。そして、同時に天井から落ちてきた2人の滅却師の姿を確認する。

 

「お前は……!」

 

両者とも、一護にとっては見覚えのある人物。一人は侵攻時に卍解の刀身を叩き折ったユーハバッハの側近らしき金髪の人物。もう一人は霊王宮に向かうユーハバッハを止めようとした時に、邪魔をしようとしてきた赤髪のモヒカンが特徴的な男。

 

「あん? てめえ、黒崎一護じゃねえか!」

 

バズビーの声に反射的に剣を構える一護。

 

「何してやがんだ! てめえの敵はここにゃいねえよ! さっさと上へ急げ!」

 

しかし、一護たちに背を向ける形で彼はハッシュヴァルトと向き合う。少し前までとは真逆の立ち位置にいるバズビーに思わず、一護は顔を呆けさせる。

 

「石田雨竜のところにはマユゲとちっこい女が行ってるから心配はいらねえ。仲間なんだろ?」

 

悪魔のような姿になったバズビーの発言を一瞬疑う。だが、先ほど出会った茜雫といい、世魅の言葉といい、この場所で起こっている摩訶不思議な現象たち。眼の前のそれを信じることが出来ないと同時に、信じたくなる気持ちもある。

 

「こいつは俺の獲物だ。邪魔すんじゃねえ!」

 

その時、壁を突き破って、白い影がこの場に放り込まれる。受け身をとって立ち上がった彼はハッシュヴァルトと対するバズビーに近い位置取りに立つ。光輪(ハイリゲンシャイン)のない滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)を纏う者。ただし、その姿はボロボロだ。

 

「石田っ……!」

 

思わず漏れた一護の言葉。石田もこちらに顔を向け、複雑そうな表情をする。

 

「何をしている」

 

直後、高い場所に開いた大穴から声が聞こえる。その声音に心当たりのある一護と井上はゆっくりとその元へ視線を向ける。形と色味は少し異なるが、かつてやるせない別れをした敵。暗い空に映える白い体。黒い髪は真っ白に変わっているが、その瞳が語るものは変わらない。

 

「……ウル、キオラ」

 

その表情にも以前から変化は無い。四枚の翼を動かすこと無く、ウルキオラがゆっくりと穴から降り、一護と石田の元へ歩みを進める。

 

「何をしているのかと聞いたはずだ」

 

「……っ、お前なのか、どうしっ!?」

 

一護の言葉を聞き届ける前に、その首先に添えられかけた蛍光色の槍を短い斬月で受け止める。修行して強くなったはずの一護でも目で追い、反射で受けるのが精一杯なほどの速度。受け止められた槍を下げ、彼も背を向ける。

 

「行け。()()()()()()()()()()()()()敵は何処だ?」

 

ウルキオラの言葉に黙らざるを得ない一護。

 

「ウルキオラくん……」

 

漏れ出た井上の言葉。

 

「俺の名はウルキオラだ。人間のように呼ぶな。()()()()()()

 

言葉の節々に現れる、彼が彼であるという証明。だが、一護はウルキオラの前に出る。

 

「今。俺が戦うべき相手は石田だ」

 

「…………そうか。好きにしろ」

 

彼は素直に槍を消し、一護と石田の様子をただ見つめ続ける。その光景に目を見開いたのは石田1人だけ。ウルキオラの目がほんの少しだけ閉じ、また開く。

 

「見ものだな、黒崎一護」

 

虚圏での戦いとは立場が余りに違う。一護が両手に斬月を構え、ボロボロの石田と向き合う。

 

 

 

 

 

石田を真世界城(ヴァールヴェルト)めがけて吹き飛ばした後、恋次は高熱を帯びたオロチ王を剣状に戻して遠くへ射出しつつ、狒狒王の腕と全身で彼女を庇う。蛇骸絶吼(ざがいぜっこう)によって、宙を舞った僅かな瓦礫たちから、ルキアを守っていた。

 

「解けるか?」

 

ルキアが白い息を吐きながら、視線で訴える。心配は無用だと。

 

「……無茶させて悪かったな」

 

「馬鹿者!」

 

少しずつ元の体色を取り戻していく彼女が申し訳無さそうにする恋次に一喝。

 

「私は命をかけて戦ってなどおらぬ。お前を信頼しただけだ。謝る必要など無いわ、たわけ!」

 

元に戻るやいなや、真世界城(ヴァールヴェルト)へ体を向け直して走り出した彼女に、頭を掻きながら恋次は笑顔で追いかける。

 

「それにしても、あれで良かったのか?」

 

「何がだ?」

 

「石田をウルキオラに任せて良かったのかと聞いているのだ」

 

少し考えた恋次は悩んだ様子もなく答えた。

 

「勘だ」

 

「なっ、恋次! 貴様、何を考えておるのだ!?」

 

「分かるだろ。今のウルキオラは明らかに俺たちより強え。復活した十刃たちはどいつもこいつも異次元の強さだ。それは以前の十刃と戦ったから分かるし、空座町での戦績を聞いても納得できる」

 

事実を指摘されて、彼女は口を噤む。

 

「以前のウルキオラでさえ、一護が勝ったわけじゃねえのはあいつの顔を見りゃあ分かる。なのに、世魅さんとその弟?の2人がかりで勝てなかった狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)の力を受け継いでるとなりゃ、妥当だよな」

 

「…………うむ」

 

「ただな」

 

恋次が悩むような顔では在るが、それを確信しているような声音で言う。

 

「あのウルキオラが石田を見ていた眼がよ。なんか、こう、なんていうか……」

 

「優しかった、か?」

 

「そう、だな。恐ろしい目だったのは確かだ。だがよ、敵に向ける眼じゃなかった気がするんだ」

 

「……それは、私も分かる気がする」

 

認識を改めあった2人は駆ける足の速度を上げる。一護たちの元へ急ぐ。

 

 

 

 

 

 

真世界城(ヴァールヴェルト)、最上階。天幕の前で目を瞑る滅却師の王。

 

「……よく来た。見えていたぞ」

 

開かれた扉の先にいたのは、左腕が二本の死神と右腕が二本の滅却師。それぞれが強く虚の気配を帯びている。死神は斬魄刀を持っておらず、代わりと言わんばかりに右腕が灰色一色になっている。滅却師は数え切れないほどの立方体によって構成された6枚の翼を広げた。

 

「6枚の翼、か。私への反逆とでも言いたいのか、レヒト?」

 

「反逆なんて大層なものじゃありません。ただ僕にも譲れないものがあります」

 

目元を黒く覆われたその存在が呆れたようにため息を吐く。

 

「奴といい、私への侮辱の術だけは豊富なようだ」

 

メコニルの記憶を知った彼ら。特にレヒトは、メコニルが彼なりにユーハバッハへの想いがあったことをより詳細に理解した。彼から漏れ出た霊圧を収めるように世魅が無言で制した。

 

「問答でどうにかなる相手じゃないだろ」

 

ユーハバッハが笑顔を浮かべるのと同時に響く鐘の音。

 

「『虚なる神(エルホロウ)』」

 

天使の如き灰色の翼。世魅の背後に生えた翼の数は、レヒトと同じ6枚。

 

「貴様が狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)の滅却師としての力を受け継いだか。左刑部世魅、未知数の対応よ」

 

「……未知数、か。随分と高評価だな、ユーハバッハ。今この場にいる俺達を見て、師匠の言葉が嘘だったのかと悪態をつくと思っていたが」

 

「元より、あの神もどきの言葉を信じていると思ったのか?」

 

ため息を吐き、表情を引き締めた世魅もまた少しずつ霊圧を放出し始め、右腕を前に出す。

 

「いくよ、未無」

 

レヒトが己に受け継がれた親の半身を構える。左手で握る斬魄刀を両手で抑え、ユーハバッハを見据える。

 

「卍解」




【滅却師資料】

……なんだよぉ、俺はまだここにいなきゃいけないのかよぉ。まだやんなきゃいけないことあるのか? もう無いよな? メコニルに残されたものもないぞ!?

まだある

うおあっ!? ぎ、銀色の液体!? これってあれか、変幻自在無蔵か!?

そうだ。レヒトの前座で悪いが

うおおい、左刑部世魅……! いや、その、一応、俺は敵じゃないの? んまあ、この場じゃ今更だけどよ

その通りだ。というわけで、今回は『分混(フェタイロン)』の解説をしよう。師匠が造り出した疑似聖別(アウスヴェーレン)、といってもその本質は大いに異なるが。

虚化、だもんな。つか、そんな安々と純血(エヒト)を虚化できんのもやばいけど

宿された虚は彼らの魂に喰い付き、同化している。聖文字(シュリフト)を使える場合、それが変質するのは体験した通り。この性質上、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ここが聖別(アウスヴェーレン)と一番違う点と言えるだろう。

それは安心というべきか、虚化に恐怖するべきか迷うぜ……。ん? 他に違う点があるのか?

あるにはある。分混(フェタイロン)聖別(アウスヴェーレン)のように力だけを渡せない。虚化の性質上、内なる虚には意思があるからだ。今はレヒトによって統括されているようだが…………

難しい顔してどうしたよ?

いや、なるようにしかならない。レヒトが選んだ道だ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ルッキャさんの出番を増やしました。アニメ恋次の盛り具合的にもっとあってもいいと思うの。

それではいつも通り、感想お願いシャッス!
正直、書く時間が無さ過ぎてぎりぎりになりつつあります。お助け~
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