Dye Your Soul Your Color   作:鏡狼 嵐星

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躰は白亜たる(くろがね)
心は白金たる炭
熱に塗れて叩きあげる
燃えて削れて
灰燼と化すまで

未来を視定め
痛みを恨み
全てを取り戻さんと
立ち上がる王
貴方が感じた全てを
未知なる回帰へと誘おう
全知全能なるその瞳に
永遠なる眠りを




Original side, Future is Unknown

聖別(アウスヴェーレン)!!」

 

全知全能(The Almighty)』が正確に機能しないことを悟ったユーハバッハは残る滅却師の全ての力を回収しにかかる。

 

原則改新(ガゼッツ・アクトラジアム)

 

レヒトが自分の聖混文字(ゲミュシュト)の力と共に『過現未夢無限未知(かげんみむむげんのみち)』をユーハバッハが掲げる霊子球に向けて振るう。伸びる雲が絡みつくことでユーハバッハの手の内に光る聖別(アウスヴェーレン)の輝きがどんどん色を失っていく。

 

「レヒト、貴様ッ!!」

 

「もう犠牲はうんざりです」

 

感情を失った瞳でレヒトとユーハバッハが鍔迫り合いを始める。剣とは言い難いそれを両手で振り下ろしているが、レヒトにはもう一つ腕がある。その手が青い針を編み、ユーハバッハへと投げつける。

 

「裏破道、四の道」

 

霊子兵装を避けつつ、ユーハバッハは虚空より響く世魅の声を聞き取る。

 

「水刃殺」

 

圧縮された水の刃物。四方八方から迫るそれはレヒトごとユーハバッハを切り裂こうとするが、レヒトに触れる瞬間だけは柔らかく変化する。

 

「邪魔をするなッ!」

 

未来改変により、刃が砕け散る。

 

「グッ!」

 

弾丸のように射出された変幻自在無蔵がユーハバッハの頬を掠る。『既成(The Already)』により、未来改変を行う前にその結果が先取りされる。

 

(もう慣れてきているか)

 

世魅はレヒトをフォローできる形で、周囲一体に自分の一部を配置している。『既成(The Already)』による結果の先取りは本来、『全知全能(The Almighty)』によって封殺される力。だが、『過現未夢無限未知(かげんみむむげんのみち)』によって妨害されている今、ユーハバッハに見える未来全てを封殺するだけのリソースを割く余裕はないはず。そう考えていたが、滅却師の王はたった数回の攻撃で明確に慣れ始めている。

 

(今のユーハバッハは師匠の力、それも卍解と滅却師完聖体(クインシー・フォルシュテンディッヒ)を併用してどうにか抑え込める程度なのか。霊王を吸収したからかどうかまでは分からないが滅茶苦茶だ。まぁ、やるしか無い)

 

レヒトのすぐ隣に見た目だけ、人型の液体が現れる。

 

「見えるものばかりに警戒しているのは、霊王の次に全てを見通した王だからか? ユーハバッハ」

 

「私を馬鹿にしたいか。狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)の力が無ければ、私に手も足も出ないというのに」

 

黒い何かに覆われ、全身の目が蠢く王。

 

「少なくとも馬鹿にされている自覚があるのか、意外だ」

 

灰色一色の液体、その様々な場所から3本の腕と6枚の翼を生やすもの。

 

「陛下は隠し事をしないよ。良くも悪くも」

 

それを少量纏いつつある幾何学的な6枚の翼を持ちし白い堕天使。

 

「……良いだろう。お前たちを脅威と認めよう」

 

黒の王がその手に丸い円盤を手にする。正十字の文様が刻まれたそれが赤い輝きを放つ。

 

「ッ、纏状転化唯牙独存(てんじょうてんげゆいがどくそん)!」

 

空間更新(ラウム・アクトラジアム)っ!」

 

星章化(メダライズ)を知り、ユーハバッハの手にあるものは知らぬ彼ら。だが、彼が持つに値する卍解など数えるほどしか無い。加えて、侵影薬の影響を受けていないものとなれば。

 

「『残火の太刀』」

 

その名が告げられる前に、世魅がレヒトの体を覆う。レヒトは世界の法則を捻じ曲げ、襲来する究極の熱量の対策を設ける。

 

「……これが前総隊長の……」

 

周囲一体が強烈に熱い。加えて、口の中にひび割れが起こるほどの異常乾燥。真世界城(ヴァールヴェルト)を称える垂れ幕やカーペットが熱と乾燥で朽ち果てていく。

 

「あの男の力を使うことになるとはな。だが、狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)を滅ぼすためならば、()()も喜ぶだろう?」

 

右手にある焼け焦げた刀を見下しながら、ユーハバッハが『残火の太刀』をこれと吐き捨てた。

 

「…………お前は元柳斎総隊長を辱めるだけに飽き足らず。……流刃若火すらこれ呼ばわりかッ!!」

 

世魅にしては珍しい感情を含む声。当然のことである。彼もまた卍解を得たもの。斬魄刀との対話を続け、絆を築いたもの。レヒトのように譲り受けたのではなく、奪い取った挙げ句、その扱いだ。むしろ、怒るなというほうが無理な話なのだ。

 

「別に手を抜いていたわけじゃないが、お前を殺す理由が増えた」

 

「世魅」

 

「あぁ、感情を揺らして勝てる相手じゃないのは分かってる」

 

レヒトは言葉を掛ける必要はないと理解していても、声をかけた。世魅もまた荒立てていた感情を即座に収める。

 

(『全知全能(The Almighty)』と『残火の太刀』。最悪の組み合わせだ。だが……)

 

「残火の太刀、東。旭日刃」

 

迫りくる破壊の刃を、世魅が変幻自在未形無造によって生成された斥力の盾でそらす。その側にあった真世界城(ヴァールヴェルト)の柱に接触し、城の最上層、その上部分がその余波で消滅する。

 

「レヒト、近寄るなよ」

 

「分かってる!」

 

ゆっくりと歩みを進めるユーハバッハからレヒトたちは距離を取る。黒き王が近づくもの全てがその熱で溶けていく。彼の居城だと言うのに歩く場所全てを破壊していく。

 

「『影響改訂(アウスワークーゲン・アクトラジアム)』!」

 

レヒトの手で熱という概念に干渉し、その影響力を下げようと試みる。残火の太刀の熱量など抑え込めるものではないが、その範囲を大きく狭めることに成功する。

 

「甘いな、レヒト。私相手に他人の心配か?」

 

「今更でしょう!!」

 

過現未夢無限未知(かげんみむむげんのみち)』が強く輝く。

 

「『阿頼耶識:未然』!」

 

溢れ出る霧が大きく膨らむ。それがゆったりとレヒトの体にまとわりつく。

 

「残火の太刀、南。火火十万億死大葬陣、ッ!」

 

灰色の霧によってレヒトを含む周囲一体の『既知』の一部が抜け落ちる。それはユーハバッハの卍解の技を不発に終わらせた。動揺を感知すると同時に変幻自在未形無蔵が放つ不可視の刃がユーハバッハを斬り付け、その結果を先取りする。

 

「ぬうぅ!」

 

体からの大量出血、否、黒い液体を撒き散らした。先程までとは違い、明らかなダメージである。

 

「例えお前が万能だったとしても! 繋がりの無い卍解を使いこなせる訳はない!」

 

「よく喚くな、左刑部世魅!」

 

レヒトの鎧に備えられた銃口からマシンガンの如く発射される透明の弾。未来改変により、それら全てを避けた上で反射する。だが、弾丸は反射されたと同時に破裂して爆発を起こす。爆発する瞬間、『残火の太刀』を振るうことで、爆発そのものを吹き飛ばす。

 

「陛下! いくら貴方でも『残火の太刀』と『全知全能(The Almighty)』を同時に使うのは無理でしょう!」

 

「私に使いこなせぬ力があると思うか!」

 

ユーハバッハが『残火の太刀』を大きく振りかぶる。

 

「残火の太刀、北。天地灰尽!」

 

襲い来るであろう熱による衝撃波。その延長線上にいたレヒトが右手の一つを、手のひらが左を向くように前へ出す。鎧の一部、世魅である灰色の液体が高速で動き、左手のような形になるとレヒトの腕と反対の位置に出現する。彼らの手のひらそれぞれからわずかに配色が違う小さな光が生まれ、濃淡の異なる黒と白の光が混じり合おうと引っ付く。刹那、『既成(The Already)』によって、一つになる。

 

「「虚神閃(ディオス・レイ)!!」」

 

灰色の閃光が周囲を覆う。

 

 

 

 

 

 

 

真世界城(ヴァールヴェルト)、中腹。途中出現した太陽の如き熱波で身を守るため、一時動きを止めざるを得なかった一護たち。だが、途中でその影響が減り、どうにか立ち上がることが出来ていた。

 

「……ッ、ケホッ」

 

「平気か、井上!」

 

「だい、じょうぶ!」

 

程度が減ったとはいえ、凄まじい熱と乾燥。辛そうなのは井上だけでは無い。茶渡や岩鷲も苦しさが見える。そんな中、遙か上で巨大な爆音が発生し、瓦礫が降り注いだ。

 

「……黒崎、確認したい」

 

双天帰盾によって、体から全ての傷を消した石田が声をかける。

 

「今更なんだよ!」

 

「僕もメコニルさんや世魅さんについては少しだけ知っている。だが、レヒトという滅却師に関しては会ってすらない。君もそうだろう。信用できるのか?」

 

「するしないとか言ってる場合じゃねえだろ! なにより、世魅が一緒に戦ってんだぞ! 信用できるに決まってんだろ!」

 

石田の言った通り、彼はレヒトに関しては何も知らない。だが、ユーハバッハと戦っているであろう二つの霊圧。一つは知っているもの、一つは知らないもの。

 

「君に聞いた僕が馬鹿だった」

 

「うるせえ! なんて答えるか分かってただろ、お前!」

 

「…………その通りだよ」

 

彼らの様子を見ていたバズビーは、残る力である程度熱を緩和していた。しかし、今はそれをする必要がないほどに熱の影響が減っている。その理由に心当たりのある彼は叫ぶ。

 

「おい、黒崎一護! あと、石田雨竜!」

 

バズビーに視線を向ける彼ら。

 

「悪いが、俺にはもう戦える力は残ってねえ。ユーゴーのこともある。何も知らねえお前らにレヒトのことを任せるのは正直、心配だ。だが、石田雨竜だけならともかく、黒崎一護とその仲間は信用してやる!」

 

白い仮面に覆われたハッシュヴァルトを背負い、彼は部屋から外に出る。

 

「……あとは頼んだぜ」

 

そのまま彼は城を飛び降りた。それを見送った一護たちに対し、ウルキオラが上を見る。

 

「構えろ」

 

すでにボロボロの真世界城(ヴァールヴェルト)の上から、瓦礫とともに巨人の像が何体も降りてくる。その勢いや動きはなりふり構わないという態度を表しているようだ。

 

「うおおっ、巨人の一撃(エル・ディレクト)!」

 

振るわれた槍の一撃を茶渡が防ぐ。

 

「砂になあれ、石波!」

 

岩鷲が巨人の元へ滑り込み、その足を破壊する。しかし、すぐに周囲の瓦礫が集まり、修復する。

 

「なんじゃこりゃあ!?」

 

「……一護、こいつらは任せて上に行くんだ」

 

一護がばっと茶渡へと振り返るが、彼の表情を見た彼は意図をすぐに理解する。

 

「瞬閧・雷神戦形!」

 

夜一が巨人たちの群れに突っ込み、その場に道を作る。

 

「行くんじゃ、一護っ!」

 

邪魔させないように周囲の巨人たちを薙ぎ倒す彼女に礼を言いながら、一護、石田、井上が走り出す。その瞬間、壁の外から槍を振るうものがいた。それを察知した石田が霊子兵装を構えようとしたその時、黒い閃光が壁に穴を開ける。崩れた巨人が城から落ちていく。

 

「登るぞ」

 

ウルキオラが穴から外へ抜け、上へと飛び上がる。石田が自身の翼で飛び立ちながら、矢を集めて青い足場を2つ形成する。

 

「黒崎! 井上さん! 乗って!」

 

一護はその言葉が聞こえる前に、井上は聞こえた後にそれに飛び乗る。いつかの虚夜宮(ラスノーチェス)での一件を思い出させる光景だった。先に登っていたウルキオラが途中止まっているのを確認した彼らは、城の頂上から漏れ出ている灰色の靄を確認する。

 

「……なんだあれ?」

 

一護の漏れた言葉のすぐ後、上で衝突する三つの霊圧が急激に高まる。それも生半可な大きさではない。そして、先程よりも大きな爆音と衝撃波が城を揺らした。真世界城(ヴァールヴェルト)が大きく崩れ、ひび割れた壁が彼らの元へ崩れてくる。

 

「っ、月牙天衝!!」

 

一護の月牙天衝によって破壊された瓦礫を石田が近しいものだけ撃ち落とす。舞い上がった砂煙が晴れると、そこにはすでに真世界城(ヴァールヴェルト)がほとんど無く、上空に立つ影が二つ見える。刀身が黒焦げの斬魄刀を握るユーハバッハと、灰色の鎧と立方体の翼を生やす白い少年だった。

 

「ユー……!?」

 

敵の名前を呼ぼうとした一護から声が出なくなる。周囲の面々も声を出せない。

 

(聞こえてるな?)

 

(世魅っ!?)

 

脳内に響く声に驚くも、なんの音も出ない。身動きした際の布がかすれる音さえもしない。

 

(ウルキオラ。井上を守ってろ。配慮はできない)

 

「分かりました」

 

ウルキオラが井上を見る。井上は共に戦えると言うつもりだったが、声が出ない。

 

(一護、細かい状況を話している暇はない。()()して飛び込んでこい)

 

そこで一護はようやく自分の中に卍解という言葉が、今までの戦いの中でちらりとも浮かんでこなかった違和感を覚えた。

 

(石田。お前にはこれを)

 

いつの間にか石田の手の中に存在する()()()

 

(竜弦から預かった。お前が撃つべき鏃だと。()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

真世界城(ヴァールヴェルト)はもう残骸ばかりが残るだけとなった。僅かに息を荒げるレヒトに対し、ユーハバッハに疲労は見えない。

 

「ふっ、ふふふ、はっはっは! 確かに狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)が遺した力は私を動揺させるに足る力だと認めよう。だが、それは私の力を封じるものではない! これがある以上、いずれお前たちは崩れ去る。たとえ、私が未来を変えずともな」

 

今のユーハバッハは周囲に気を使う必要がない。味方の星十字騎士団(シュテルンリッター)聖別(アウスヴェーレン)を使った時点で考慮する対象でないのは明らか。真世界城(ヴァールヴェルト)でさえ、破壊しても構わないのだろう。世界の理を書き換えた後に作り直せば良いと考えているのだろう。

 

「…………陛下」

 

「もう陛下などと呼ぶな。貴様に敬われたところで気分が悪い」

 

ユーハバッハがレヒトを見下し続ける。

 

「虚化を使って私の聖別(アウスヴェーレン)を無効化したのだろうが、今の私ならば直接触れれば全てを奪える。貴様を殺してから、お前も、お前が助けたかったものの全てを奪おう」

 

「…………」

 

レヒトはその言葉を飲み込み、右手に手にしている灰色の雲を前に突き出す。

 

「貴方と戦う前。僕は貴方にとって、一番恐れることを考えました」

 

ユーハバッハの表情に疑問が僅かに浮かぶ。

 

「誰よりも死の恐怖を知る貴方。誰よりも何も出来ないことの辛さを知る貴方。誰よりも五体不満足の苦しみを知る貴方」

 

過現未夢無限未知(かげんみむむげんのみち)』がまた霧を吹き出す。

 

「この子の力は『既知』を『未知』にすること。分かっていることを忘れることなく分からなくするだけ。この子の一番恐るべきことは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ユーハバッハが眉をひそめた。

 

見えざる帝国(ヴァンデンライヒ)に侵入してきた先生がどう名乗ったか、覚えていますか?」

 

王は答えるつもりなど無い、だが、言葉に反応して答えを思い浮かべてしまう。(R)イド・(R)イドの変貌を見破ったときの言葉を。

 

メコニルだ。二度は言わぬぞ、ユーハバッハ。

 

近づいた眉が目を開くのと同時に離れる。

 

「気づいたようですね」

 

ユーハバッハの頭から狂幻興凶元(きょうげんきょうきょうげん)の姿が消えたことはない。それほどの恨みがある。あれがいなければ千年前に死神たちを滅ぼせたかもしれないのだ。そして、メコニルという名も聞いたはずだ。忘れるわけがない。あの大虚に関する情報が()()()()()()()()()()()など信じがたい事実だった。

 

「……私からあれの存在を消したところでどうなる? それが私の恐れることだと言いたいのか?」

 

「いいえ。それは分かりやすく提示しただけのことです」

 

レヒトの目が冷たくユーハバッハの体を見回して、最後にその双眸に向く。

 

「未知への回帰。それは何も知らぬ無垢という原初へと戻ること。貴方が感じた恐怖も辛さも不満も痛みも苦しみも全て、未知へと帰しましょう。原初の海での霊王との、アドナィエウスとの会合も超えて」

 

レヒトが『過現未夢無限未知(かげんみむむげんのみち)』を自分の下へ引き寄せて撫でる。刀身どころか、それが武器どころか存在するものなのかさえ疑わしいそれを撫でてみせた。

 

 

 

 

 

分からない。霊王の、自分の父の名がなんだったのかを。

 

「………………まさか……」

 

ほんの少しの間に、直ぐにレヒトが何をしようとしたのかを理解した。『既知』を『未知』に転ずるその卍解。『全知全能(The Almighty)』さえ妨害できるそれで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それは事実上、命を奪うことなく私自身を殺すことができる。

 

「……!」

 

即座に割けるだけのリソースを全てを使い、その灰色の霧を破壊しようと試みる。名を知り、能力を知っているのだから、破壊できぬわけはないはずなのだから。未来全てで折ることは出来ずとも、今この場で折ることに意味がある。

 

「無駄だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

だが、灰色のそれを壊せない。頭の中に浮かぶはずなのに。『過現未夢無限未知』という名前が。

 

「もう一つ、伝えておく。所有者だけが何を未知にしたのかを、本人から教えられる。レヒトはもちろん、前も今も同じ体である俺も教えてもらってるから分かる。あぁ、()()()()()()()()()()()()()()()。それは変わらない。ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

空に大聖弓(ザンクト・ボーゲン)を生み出し、巨大な神聖滅矢(ハイリップファイル)を放つ。だが、避けたという結果を先取りされたため、レヒトがそのまま前に出る。灰色の雲を左手に移し、二つの右手で弓を引き絞った。

 

外殻……!?」

 

あったはずだ。静血装(ブルート・ヴェーネ)を応用して、体の外に展開して防御する技が。分からない。名前が、性質が、使い方が理解できない。

 

「レッ、ヒトォッ!!!」

 

私の叫びに合わせるように、神速の神聖滅矢(ハイリップファイル)が射出される。左刑部世魅の手で当たったという事実を先取りされかけるが、どうにかその未来を改変する。しかし、レヒトの卍解を回避する未来までは変えられず、それに斬られる。だが、私の体に傷はない。

 

「この子が斬るのは既知だけ。陛下の知る全て、斬り変えましょう!」

 

何を斬られた? 私の何を斬った? 回る頭の中で、自分の手に()()()()()黒焦げた刀に思考が向く。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「『偽形:滅火皇子(エスティンギル)』!」

 

鈍る思考によって一瞬、反応が遅れる。咄嗟に黒焦げた刀を振ろうとするが、レヒトの右腕の鎧から伸びる銀色の多腕が刀に触れることを許してしまう。いくつかの腕が熱によって溶けていくが、刀に触れる腕も現れる。ドロドロになりながらも、一つ一つの腕が赤く染まっていく。刀が持っていた熱がどんどんその腕に奪われていく。

 

「触れるなッ!」

 

敵がそれを押さえ込もうとしたのだ、この刀は重要な力を持つはず。名も知らぬ刀を振り、左刑部世魅の体を弾く。刀が抱く熱量が明らかに減っている。力を大きく削がれたようだ。恐らく、私は大きく不利な状況に押し込まれている。

 

「……まさしく悪夢と言うべき状況だ」

 

笑いが込み上げる。脅威と認めたのも事実、レヒトの言葉に恐怖を感じたのも事実。だが、それがとても面白い。

 

「だが、私の前にその全ては意味を為さぬ!!」

 

もう名も分からないその刀から残った力を奪い、捨てる。全力で『全知全能(The Almighty)』の力を使う。知るきっかけが無ければ、未知は既知に戻らない? その未来すら書き換えてやろう!

 

「私に見通せぬものはない! 未知だろうが、私の前に膝を折らせてやろう!」

 

見通す未来の範囲を狭め、数秒後の未来を確実に見通せるように見方を変える。既知と一言で言ったとしても、その範囲は多岐にわたるだろう。そして、未知にできるものに制限が無いのであれば、恐らく未知への転じやすさや未知へ変える順番に制限があるはず。『全知全能(The Almighty)』を未知に帰さないのはそうとしか説明できない。

 

「天地海総開闢!」

 

レヒトを覆っていた鎧が流れ落ちていく。空と地面に赤く染まった変幻自在無蔵が広がっていく。名前が出てこない。もうそれも折ることは出来ないと言いたいらしい。

 

「確かに恐怖したぞ、『過現未夢無限未知』の力には! ならば、奪おう! お前たちから、お前たちの『既知』を!」

 

周囲に散らばらせた我が霊子。我が身のものとなった我が父、アドナィエウス。例え、お前たちが狂幻興凶元の力を得ていようが、虚の体であろうが、触れれば奪うことが出来る。

 

「『偽技(ぎぎ):松明』!」

 

地面と空から熱を帯びた変幻自在無蔵が数多飛んでくる。それが私に当たる結果を先取りされる直前に未来を変え、攻撃を受けたが無傷だったとする。

 

「いくらでも未知にするがいい! もはや過去を振り返らぬ! 今もどうでもいい! 少し先の未来だけを見定める!」

 

レヒトに向けて迫る。我が怨敵、狂幻興凶元。滅却師としての力を全て費やす。奪い尽くした霊王の力も全て。まずはお前の持つ『既知』を奪う!

 

変幻自在無蔵 形転未化(ロス・アヴァターズ・デ・ラ・ヴィダ)』ッ!」

 

左刑部世魅の声が周囲全てから聞こえる。同時に襲いくる銀の水。だが、それは攻撃であると同時に囮。真の狙いは変幻自在未形無蔵による見えない一撃を決めること。足りぬ、それでは足りぬ。いくら未来を未知にしようと、いくら目の前のものしかはっきりと見えずとも、私の目に映る未来は星の数ほどある。例え、それが完全に見えずとも選びようはあるのだ!

 

「さぁ、どうする!?」

 

未来を何度も書き換える。左刑部世魅の攻撃を全て凌ぎ、防ぎ、砕きながら、レヒトの元へ向かう。レヒトに怯えは見えない。ただ真っ直ぐに私を見据え、灰色の何かを構える。

 

「終わらせましょう、陛下」

 

笑いが止まらぬまま、剣を振り下ろす。レヒトは右腕の片方で霊子兵装を作って受ける。『過現未夢無限未知』を霊子で作り上げた壁で包む。()()()()()()()()()()()()()()()()。例え、そうでなくとも、何かをしようとするなら未来を変えればいい。残るもう一つの右腕に白い光が宿る。虚閃(セロ)か。左刑部世魅は『過現未夢無限未知』を解放しようと気取られるように未来を変えておく。

 

苦悶の環(クヴァール・クライス)!」

 

光の柱を複数出現させ、そこから同時に神聖滅矢(ハイリッヒ・プファイル)を発射する。矢の軌道を操り、左刑部世魅を牽制しながら、レヒトの虚閃(セロ)を狙い撃つ。溜めきらぬままそれを放たせ、レヒトに残る手を掴む。目を開くその姿が見える。全ての未来でレヒトから力を奪う姿が見える。レヒトの手を取った直後、真下から突撃してくる一護の姿が見える。間に合わぬ! 狂幻興凶元の力を我が手に!!!

 

「全てをよこせ、レヒトッ!!!」

 

その白い腕に我が黒き血装(プルート)が伸びる。()()()()()()()()()()()()()()()()()が、どうでもいい! 未来は変わらぬッ!!!

 

「……差し上げます」

 

レヒトの腕が斬り落とされる。誰だ? ()()? 視界の端に見えるのは左刑部世魅の変幻自在無蔵、か?

 

「動揺したな」

 

左刑部世魅の言葉が聞こえる。何故だ。()()()()()()()()()()()()()。斬り落とされたレヒトの腕にある力を奪い取りながら、もう一度未来を、ッ!?

 

 

 

 

 

ユーハバッハがレヒトに迫っている時。真世界城(ヴァールヴェルト)の残骸の上で、一護の斬月に石田が触れていた。一護が卍解に加えて虚化を行うために滅却師としての霊圧を高めようとしたのを、上で戦う彼らにバレないよう石田が止める。事情を説明されたことで、一護が高めて漏れ出た霊圧を石田が集めることで解決している状態だった。

 

「……差し上げます」

 

そして、ユーハバッハがレヒトの手を掴む。不味いと判断した一護がその名を叫ぶ。

 

「天鎖斬月ッ!!!」

 

卍解と同時に虚化し、神速で突撃する。同時に世魅がレヒトの腕を斬り落とした。

 

「!?」

 

「ッ!」

 

速度を落とさずに驚く一護とユーハバッハが動揺したことを理解した石田。流れるような動きで銀の鏃を矢として番えて撃つ。

 

「動揺したな」

 

完全反立(アンチサーシス)』によって、骨となり落ちていくレヒトの右腕の1つが矢に変わり、()()()()()()()ユーハバッハの心臓を穿つ。

 

「雨、竜ッ」

 

銀色の血装(プルート)のようなものが一瞬で全身を巡る。それを確認する前に石田は胸ポケットから銀筒を取り出し、その蓋を開く。灰色の矢が彼の霊子兵装の手に収まる。

 

「わ、たしのッ! 能力を無効化したからなんだッ!!」

 

ユーハバッハが真下から来る一護の天鎖斬月を手で受け止めようと腕を伸ばす。一護は虚の力で王虚の閃光(グラン・レイ・セロ)を重ねた月牙天衝を放つために構える。ユーハバッハの後ろにいる世魅は人としての姿を現し、その左右に霊圧を濃縮したことで僅かに色のついた透明の刃を構える。正面にいるレヒトは『過現未夢無限未知(かげんみむむげんのみち)』を手放し、左手にもう一つの霊子兵装を生み出して灰色に染める。ユーハバッハの全身の目が蠢き、いくつかの目が唯一開いた空を見る。そこに広がるように浮かんでいる灰色の液体から一雫だけ滴る。

 

「『完全反立(Antithesis)』」

 

直後、出現する灰色の弓を構えた石田の姿。

 

「月牙っ、天衝ォッ!!」

 

形変(かたがえ)・恭順呼応」

 

生死静止(スティル・エンダン)ッ!」

 

ユーハバッハの手が一護の天鎖斬月に直撃し、砕け散って行く。世魅の刃がその体に突き刺さると同時に斬撃が右肩から左腰までを一閃する。灰色の霊子兵装が喉を穿ち、灰色の矢が脳天を貫いた。




……という訳で、何が起こったのかをワレが説明するとしよう。わざわざ説明してやるのだから、よく聞くがいいぞ!

まぁ、そんなに難しいことはない。ユーハバッハがレヒトの腕を掴むまで、ずっと世魅もレヒトも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。だから、ユーハバッハが見る間近の未来全ては2人にとって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()訳だ。なにせ、知らないのだからな。

だからユーハバッハはそれを防ぐことができなかった。反射的に吸収したレヒトの腕は更新の力で静止の銀と化していて、鏃の補助を行った。血を吐いたのはそのためだ。

一護と雨竜はそもそも知らないから問題無し。というか、雨竜にはもっと別の理由があるのだろうが。気になる!

ユーハバッハも本来の状態ならそれを含めた全てを見通せたのかも知れないが、ワレがそう易々とそんなことはさせるものか!

ん? ワレのことが気になるのか?

察しがついている癖に! まぁ、忘形見に少しばかり手を貸してやっただけのことだ。われの最後の願いだからな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
藍染様の出番は、ありませんッ!
いつから私が彼を使いこなせると思った?(未来改変、未知化にこの人加えると意味分かんなくなる上、表現できる文才はねえ!)。
残火の太刀もこれ以上どうすればええんや……。強すぎるんよ……。
止めは石田にあげました。いいよね、ちゃんイチ!
あと、メチャクチャ読みにくいと思います。でも書きたかったんや。
わかるようには書いたつもりですが、気になるという奇特な方はここ好き一覧からご覧ください(メタイ)。
最後に、感想くださいな(いつもの)!
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