Dye Your Soul Your Color 作:鏡狼 嵐星
振るえぬ力ならば
教えに添えぬ信徒ならば
礎となれ
その身に光ある限り
空を舞う巨大な大鷲。鳥で言う翼角部分に存在するジェットエンジンのような機構が音を鳴らしながら、上下左右に体を移動させながらし飛行し、ヒットアンドアウェイを繰り返す。
「アンタっ、ねえっ!」
霊子で固めたカトラスを振るうバンビエッタだが、巨大さに似合わない素早さでまともに一撃が当たらない。
「サァ、ドウスルノカ、キメタ?」
「何の話なのよっ!?」
「マダ、イワセルノ? アナタハ、キヅイテル」
彼女の顔が歪む。それは怒りでは無く、恐怖によるもの。目の間のそれが何なのかを、視覚で、聴覚で、感覚で強く理解させられるからだ。
「……嘘よ」
「ウソダト、シンジタイ、ヨネ」
「そんなことッ……!」
「デモ、メヲ、ソラシチャ、ダメ」
巨鳥の羽ばたきが増す。紅い羽根が何枚もひらりひらりと落ちては、光を帯びて矢のように射出された。バンビエッタも咄嗟に霊子弾を放ち、お互いの弾を撃ち落とし合う。
「告白?懺悔?どっちでもいいよ、僕達はさ!!」
空を舞うカトラリーたちを、アスキンは手で払いのけ、足で弾き、弓で叩き落とす。カトラリーたちは撃ち落とされた後はギャリギャリと回転して再度突撃を繰り返す。
「さっきからずっとこれじゃねえか!? 俺、飽きてきちまったぜ!?」
「ならもっと!沢山!激しく行く!?」
カトラリーが割れるように分裂し始める。それぞれがそっくりそのまま増えて、『
「おいおい、別に続けようって意味合いじゃねえよぉ……」
塊のまま、蛇のようにうねりながら『
「いいの?構わないの?毒にしちゃうぜ?」
「その数を体で捌くのは無理なんでな。リスクがあっても、こうしなきゃ俺が死んじまうぜ」
引き絞られた絃から指が外れようとしたその瞬間、吹き飛ばされてきた人影が射線上に入ったことよって、アスキンは反射的に射線を上にずらして放って、人影との直撃を避ける。山なりに打たれた矢は小さな多量の刃へと変わり、『
「致命的!致命的!」
本来の威力を出せなかった矢では、『
「ぐっ、キッツイぜ……」
アスキンは刺さったカトラリーよりも先に、残りのカトラリー達に視線を向ける。螺旋状に蠢きながらも、襲ってくる様子がない。警戒を保ちつつ、体のカトラリーを抜こうとするが、刺さった先で形状を変えているのか抜けない。
「意地が悪いじゃないの……!」
「褒め言葉なの?それとも褒め殺しのつもり?ヤッター!」
「同じ意味じゃねえかよ!?」
「楽しそうね、『
傷つきながらも、彼は隣から聞こえた声に反応して弓を構える。
「あら、私は貴方に対しては攻撃しないわよ?」
『
「……さっき吹き飛んできたのはリルトットかよ」
僅かに黄色いその存在が視界の隅に入るようにしながら、彼は突撃を再開した『
「さて、私たちも続きを再開しましょう?」
「…………」
「あら、どうしたのかしら?」
僅かな黒い水面に寝転がったままリルトットは、『
(浸っていても
決して傷や痛みで動けないのではない。心の迷いでまともに戦える状態ではないと自分自身でも分かっていたし、現状では戦いで勝利することが全てを解決するとは考えていなかったためだ。
「そうね、ここは
(……ここがレヒトの精神世界なら、これは好意は振りまいても肝心なところまで踏み込んでこない。……そんなレヒトの性質を表してるってところか……)
「分かっているなら、貴女は自分のすべきことが分かるんじゃないの?
ただひたすらに爆弾を打ち込んでいる。目の前にいるヘンテコな鷲もあたしと同じようにそれを撃ち続けてる。
「ソロソロ、キメヨウ?」
「何でっ、何でなのよっ!あたしは、あたしはっ!ちゃんと、レヒトを選んだわよっ!!」
「……ジボウジキニ、ナッチャダメダヨ」
どれだけ打ち込んでも、そいつは全て撃ち落としてくる。分かる。こいつの方が格上なんだって。あたしなんか、やろうと思えばいつでもやれるんだ。
「タイミングだって! あの時、あたしはちゃんとっ!」
「ダマセナイヨ、ジブンノコトハ」
「違う、違う違う違うぅっ!レヒトが、レヒトと一緒にっ!」
「オチツイテ、ムキアウノ」
「うるさぁいっ!! 黙ってっ!!」
「……イイヨ。チョットダケネ?」
………………何で……黙るのよ。
「…………罵りなさいよ」
「ドウシテ?」
「あたしは、レヒトを傷つけたんでしょ!? 怒りなさいよ、叫びなさいよ、痛めつけなさいよっ!! ……何で貴女はそんなに落ち着いてるのよぉっ……?」
あたしは自分で何を言っているのかわからない。
「ワタシハ、アナタ。ダカラ、アナタノイタミモ、コウカイモ、キョウフモワカル」
「……あんたはあたしにっ……」
あたしの半身なら、もっと。
「シュガ、ソウアレトノゾンダノ」
「…………あたしがレヒトのことを傷つけたのに、あんたは……何も言わないの……?」
我儘を言うと思ったのに。
「ソレヲフクメテモ、アナタトイッショ」
「あたし……レヒトがいなかったら……」
握りしめた手が痛い。目頭が熱い。霊子が震えている。答えが、分かるからだ。
「
「っ……うぅ、あたし……やっぱり……」
「シュハ、アナタガ、リーダーデ、ヨカッタト、オモッテル」
ッ、レっ、ヒトォッ……!
「ヤサシイヨネ。シッテル」
「…………」
「イイタイコト、ワカッタ?」
……認めたくない、だけ。それが、答えなら。それは……。
「ジブンガ、ユルセナイ」
「自分を赦せない……」
そっか、一緒なんだ。なんだか心にすとんと何かが入ってきたような気がする。
「イッタデショ?アナタハ、ワカッテルッテ」
もう、音は止んでた。
「うぅ、あたしっ、だってぇ、ぐすっ、あの時ぃ」
目の前のあたしを見つめる。翼があたしの頬を撫でた。
「イイタイコト、ゼンブ、シュヘ、ツタエテ」
「わっ、分かってるぅ、わよっ!」
近づいてくる『
「名前、言えばっ、いいのよねっ!?」
「ウン」
「行くわよっ、『
「……ヨウヤク、ヨンデクレタネ」
「はい、もう一回!あそれ、もう一回!」
「……ッ!」
これで5回目だ。こいつ、『
「体大丈夫?心折れてない?」
「あぁ、今まさに折れそうなくらいポキポキ鳴ってるぜ」
「キャハハハ!まだ余裕そうだね?まだやれそうだね!?」
群れの塊のように動いていた『
「やめてくれよ、キツイって!」
「頑張れ!頑張れ!次は鋭く!次は速く!いっくぜ?」
……もう戦いで終わらすのは無理っぽいな。仕方ねえか。
「なぁ、俺ってさ。まだレヒトには直接、
ピタリ、と周りの動きが完全に止まる。さっきまで、お互いがぶつかることで騒がしかった『
「そうだね。そうだね。それで?それで?どうするの?どうするの?」
ひゅう、声音が大人びたなあ、おい。さっきまでの雰囲気どこ行ったんだよ?
「つまり、俺は選ぶ機会すらなかったと考えたいわけだが……」
「通用すると思ってないでしょ?納得すると思ってないでしょ?」
「当然だな。そこまで単純な話と考えてるわけじゃねえよ、俺も」
こいつらが怒ってる理由は感情的だ。理不尽だって感じるし、巻き込まれただけと思わないわけでもない。だが、俺は多少の情は持っているつもりだし、負けちまった以上、俺に文句を言う権利はねえわけで。
「重要なのは俺が興味を持てる相手であるかどうか、だぜ?」
「知ってるよ。分かってるよ。でも逆に言えば? 本音は?」
当然、最初からレヒトに興味はある。滅却師として異例の出生、あの空間では特異的すぎる在り方、そして自分もその証明となってしまった滅却師の虚化という偉業。加えて、正直なところ、俺はレヒトかユーハバッハのどちらにつくことになっても、忠誠の度合いは大して変わらないだろうという確信もある。
「実際、陛下がいなけりゃ、レヒトについていくのも悪くなかったんだが」
「それで?何なの?」
「あくまで俺個人は陛下に拾ってもらった恩がある。別にそれが忠誠に繋がっているわけじゃねえが……」
周囲のカトラリーの動きから注意を逸らさない様に気を張りながら、本音を話すってのはなかなか怖いもんだ。精神がすり減るぜ……。
「少なくとも、俺があの時、陛下の元で戦ったこと自体に後悔はしてねえ。自分の決めたことにあれこれ文句をつけるのはダサいだろ?」
……おっと? 『
「続けるぜ? 陛下が死んじまった今、レヒトに従うこと自体はいいんだ。ただ、俺が気にしてるのは……」
「
……バレてるって表現は正しくねぇよなぁ、ったく。
「致命的、だぜ」
うおお、俄然、距離を詰めてきた。話し合いを始めてから動きが止まっていたはずなのに、刺さっている奴らも霊力を広げようとしてやがる。どんどん、
「話、聞いてくれ、ねえの?」
「聞いてるよ?理解してるよ?でもさ?でもさ?」
目の、前まで、カトラリーが、迫ってきて、いる。いや、いや、怖え、よ。
「言い訳はいらないの。時間稼ぎも必要ないの。選んで。選んで。今この時。此処の場で。己の言葉で。己の意思で」
……結局、言い訳、だよな。今や、陛下は、いねえんだ、し。義理立て、るのは、此処、までにし、ておく、か。
「……なあ、レヒ、トはよ。次に何、するんだ、ろうな?」
『
「取り、敢えず、よ。暫く、付いてく、ことにする、ぜ? 後、レヒトに、何を、するか、聞くくらい、は許して、くれるよな?」
「…………ほーん?ふーん?」
っと、体のだるさが消えた。ふう、ゆっくり息ができるのはやっぱりいいぜ。生きてるって感じがすごくする。人間、空気が吸えてなんぼだ。零すように出した空気を吐き出しつつ座る。最早、濡れるとかどうでもいい。いや、実際は濡れやしねえんだが、いいや。疲れた。
「……まあ?……それでいいけど?……なんて言うか……何と言うべきか……」
「ああ、言いたいことはわかってるよ。何なら同時に言うか?」
息を整えて、呟く。
「致命的、だろ」「致命的?」
まったくその通りで言い訳の余地がねえ。レヒトのお陰で生き残っちまったにも関わらず、結論はどっちつかず。俺のスタンスはあいつが何をしたいかによって変わっちまうんだから、これ以上は言い換えようがない。本音自体は伝わったのが僥倖だろう。まぁ、助かった分くらいはレヒトに恩返ししとかねえとな。そうだろ?
「……ダサ」
「うぐぅっ!? それ、俺が一番ダメージ受けるって分かって言ってるだろ!?」
「だって?ねえ?自分でも思ってるよね?ねえ?」
「あぁ〜、こんなに自分が分かってるやつと会話するのがしんどいなんて……。というか、レヒトが人格決めてんのか? だとしたら何でこんな性格に……」
「その本人の影響を受けた性格らしいよ?と聞いたよ?」
……嘘だろ……。俺は本心でははっちゃけるタイプな訳……?
「ねえ!ねえ!名前!名前!」
「名前って、『
「それは器としての名前!君の力としての名前じゃない!」
「……いや、意味がわからねえんだけど。それはなんで必要なんだ?」
体に刺さっていたカトラリーが抜けていく。おおう、もう痛みがねえ。こいつが俺の抵抗力を上げてくれた、のか。
「僕たちが、君のものであるという証明がいるの!
……こいつらなりのけじめってやつか? あれだよな、
「そうだなぁ、お互い毒なんだから『
『
「異議なし!文句なし!」
満足してくれたらしい。一応、ひと段落か? まぁ、すぐに荒れるんだろうがよ……。
目の前にいる粘液状の自分。
「
諭すように使われる丁寧な口調。怒りを抱きながらもそれを表に出さない性格。口を使わずに相手を食らう力。
「……異なる自分、か」
『
「質問には答えてほしいところね?」
殺気を向けられているのは分かってる。だが、それでも今は起き上がりたくない。
「……意地を張ってる、か。そうだな、否定しようにもできるわきゃねーな」
「あら、起きないの? あと少しで死んじゃうわよ?」
目の前に黄色の粘液を広げられる。こう見ると掌みてーだな。
「ああ。俺が答えを言う前に殺すとは思えねーからな」
「……そうね、私ならそう考えるわね。とは言っても、時間はあまりあげられないの」
殺気が引いた。確信が当たったのに、あまり良い気分じゃない。
「3分ね。それ以上は
3分か。思ったよりも貰えんだな。
「確認したい」
「質問ばかりね。いいわ、もはや今更だもの」
「何時からお前らは自我があった?」
「
そう、か。だから、俺が最後までレヒトに答えなかった理由も
「……俺にとって、レヒトは聖者そのものだった」
どのような状況でも滅却師という種族のみならず、天敵でもある虚も含めて誰もかれも救おうとする優しくも強い存在。それを聖者以外に俺は表現できねー。
「あいつの愛情は誰にでも等しいものだと感じてた。多少の好き嫌いはあっても、そのスタンスは変わらなかったからだ。だから、俺はレヒトを特別扱いする気はなかった」
ユーハバッハの采配の前後で、レヒトは態度を変えなかった。晒される悪意に対して、何もしない俺たちに対して、怒りも悲しみも見せなかった。一つとして差し出されない手に対して文句一つ言わなかった。
「……だけど、あいつは俺だけに遺書を残しやがった。俺だけを特別扱いしやがったんだ」
俺が因縁に決着をつけるための戦いに行く前、俺は他の奴らを代表して約束させたつもりだった。あいつの力なら手紙なんか使わなくたって、もっと違う手段で思っていたことをより深く伝える方法があった筈だ。なのに、あいつは鍵をかけた個室の中に、わざわざ料理を作って出来立てを保っていた。わざわざ一言だけの手紙を添えて。
それは、明らかに俺に宛てたものだった。
「だから、俺は、もうあいつを前の感覚で見れない。同じ様に扱えねーんだ」
出立する時、わざわざ俺についてきた。メコニルが来ることを察していたから? 戦いの中、言葉を残せるのは一人だけだから?
「……分かってんだよ。それが違うことは」
初めて出会った時から、やたら俺に懐いてきた。キルゲには最初に見つけた責任とか言って、案内だとかメンバーへの紹介だとかを押し付けられた。面倒だと思う気持ちはあったが、それ以上にレヒトの顔が期待に溢れていて断りにくかったのをよく覚えてる。……まぁ、手を繋いでいたのを
「自覚はある。ただ、俺は認めたくなかった」
最初は興味や疑問の類だったが、次第に親愛の類に変わっていった。
「そんなことを考えている暇はないんだって見て見ぬ振りをしていただけだ。自己満足、自己保身、言い方は何でもいい」
ただでさえ、半年近く姿を見せなかったのに。
瀞霊廷に侵入する前に、一眼見れただけで十分だったのに。
約束を守る意思があるなら、それで良かったのに。
「バンビたちを含めて約束したつもりだったんだけどな。……結局は自分が言いたかっただけだ」
バンビやジジたちと同じで、入れ込んでいた理由を理解させられた。
レヒトの手紙を読んだあの時、嫌でも自覚した。
最後だと思ったレヒトのメシを食べた後は、何を食ってもうまく感じなかった。
「俺は、レヒトのことが好きなんだ」
『
「……意地か。そうだな、あいつは肝心なときに約束を反故にしやがった。それを、帰ってきたからって赦してやる気にはならなかった」
あいつが約束を守れないと伝えようとしたのは、俺に嘘をつきたくなかったから。
そんな事は言われるまでもねーさ。それでも……。
「だから、あの時、俺がやったことに後悔はねーよ。ダメだったのはタイミングだ」
それでも、俺は嘘を突き通してほしかったんだ。
「周りがどうだとかそんなことは関係ねー。あれは必要なことだったんだから、真っ先に動くべきだった」
重たい体を起こしながら、粘液の手をどかし、黄色い自分の前まで歩み寄る。
「其処だけだ。それ以外、俺は譲らねー」
顔もないそいつを睨みつける。今喋っていることに嘘偽りはない。何を言われても其処は変わらない。
「
「あぁ」
「……ふふふ、光栄ここに極まれり、ね」
あ? 何を言ってんだこいつは?
「それはそうでしょ?」
スライム状の体の内、伸びていた体の一部が俺の頭を覗くように動き、笑顔を浮かべる様に変形した。
「
「……趣味わりーな、お前」
「自分のことよ?」
いや、まぁ、そうか。そうだな。
「言っとくが、てめーにやる気はねーぞ」
「じょ、冗談でもやめてくれる? 不敬の極みよ、それは。聖職者が許してくれないわ」
『
「なぁ、聖職者と名乗ったあいつは「待って」……なんだよ」
除くような形の液体が開くように穴を開けた。奥の見えない洞窟の様だ。地味にキショいな。
「酷いわね。何度も言うけど、自分よ?」
「自分でもそういう考えが出ることはあるだろーが」
「もう、頑固ね。改めて言う必要はないと思うけど?」
「さっさとしろ、『
聞くや否や俺の上から、『
『因みに、さっきの疑問の答えはイエスよ』
体の中から聞こえる様に感じるその声に、思わず眉が寄る。
「……告解せよ。それが聖職者の言葉だった。俺たちが自分の罪を告白し、俺たちに宿る虚がそれを赦した。となれば、次は」
【漸く己の罪を理解したらしい。遅い、と言わざるを得ない】
っ! 世界に響き渡る様な、ノイズまみれのこの声! 聖職者か!
【愚王と共に心中する覚悟は無く、生き延びた事への感謝もまた無く】
周りからの戦闘音が聞こえない。愚王、は多分ユーハバッハのことだろうな。言動から考えるに、死んだやつはいないってことだ。全員が自分の虚を受け入れた、と考えておくべきか。
【彷徨う己の道標を欲することを否定はしない。軍律に従い続けることを非難はしない】
……戦争で負けた後のことを考えるやつはいない。考えても意味がないし、そもそも戦争を仕掛ける側がそんな事を考える訳が無い。
聖職者もそこまで責める気はないと言うつもりか? 俺が思ってるよりもずっと冷静らしい。それは
【されども、それが
目の前の景色が変わる。これはメコニル、いや世魅の『
まぁ、真似はあいつの十八番だもんな。
【己の罪を受け入れられたならば、私の名を知るに値する】
黒い波で吹き飛ばされる前の状態に戻っている。チラリと見た限り、いなくなっているやつはいないみたいだ。
【私は
滅却師に囲まれる形の黒い影。青い尖った頭とその四肢。空を見上げる様に目すらない頭を上に向け、空を見上げている。
【私は大いなる父より造られた、
……俺達の虚が名前を明かす前、最初の時点では黒と青で構成されていたこと。その虚たちは聖職者を上位の存在だと認識していたこと。何よりも、レヒトを
【我が
最初から、誰であっても答えが導ける様に示されていた。
【我が
青と黒の巨体に向け、周囲の黒い液体という液体が全てが聖職者、いや『
【
周囲から黒が消えてゆくことで、足元の地面が白かったことに気づく。しかも、マス目? いや、分かれ目にある黒線まで『
【示すがいい。その罪をどう贖うのかを】
……
何?
無茶です。選ぶべきです
何を?
救う滅却師を、です
何で?
失う記憶の量が計り知れません
それが何なの?
……
ダメ
…………何故ですか?
芽生える主人格が少しでも、みんなを傷つける可能性があるのならその手段は取れないよ
それでも、私の履歴を使うべきです。もし何かがあったときは、私が肉片の意を制御すれば何の問題もないでしょう
……僕はね、トレヒ。君のことも大事なの
それは私も同じことです
みんなのことも大事なの。それに先生が遺してくれたこのアイデアなら、みんなをちゃんと救えるから
違うの、トレヒ。違う。これは我儘なんだ、僕の我儘なの
……と、言いますと?
僕の記憶を元にしたいの。みんなに、宿るものだから。だから、僕がやる。分かった?
………………
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
忙しい時期を終えるはずが、既に忙しい時期に入っているという不思議。
どうも、仕事の残業で死にそうな作者です。
どうにも一万字弱で2ヶ月かかるのは、時間がかかり過ぎなのよね。
少なくともレヒト編はもうちっと続くのじゃ。お付き合い願いまする。
良ければ感想をお願いします。