けいおんにもう一人部員がいたら   作:アキゾノ

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台風のせいで、家から出られない・・・


なので一気に書き上げました。
おかしいとこあるかも知れません・・・。


あと、つい先日友達とカラオケに行きまして。
やっぱりセンスが違う人と行くのは楽しい!
メンバーは私(基本的に昔の曲)とデスボイス野郎、アニソン好きの3人です。
またいい曲を知ることが出来ました。
またここで紹介出来たらいいなと思います。

これからもどうかよろしくお願いします。


第7話

Side 千乃

 

碧の香り。

語りかけるように歌うこの曲は、もう会えない大切な人との思い出を歌ったものだと思ってます。

過去の自分との決別。

そんな意味を込めて歌う。

でも、全てを過去のものとして置いていくんじゃなくて、愛した思い出も心の傷も、全部受け入れて新しく一歩を踏み出す。

そんな曲です。

だから、私は歌います。

思い出は少なくて、傷だらけでしたけど。

和さん、唯さん。

今はここにいない私の初めての友達、握ってくれた手の感触、名前を呼んでくれたくすぐったい感覚。

今みたいに弱きになってしまっても、こうして私の支えになってくれる友達。

全部、わたしのこれからになって。

 

 

歌い終わった私は、音楽系のクラブが無いなら作ってみせます!と決意を新たに、顔をパンと叩きます。

まずは、やはり部室の確保でしょうか。

具体的なビジョンがないと勧誘しても興味を持つことは難しいと思いますし。

職員室に行って、この部屋を使わせてもらうことは出来るか聞いてみましょう。

まずは、そこから始めていきたいと思います。

軽音部を復活させてみせます!

唯さんも音楽に興味を持ってくれてましたし、入ってくれたら嬉しいです。

和さんは、生徒会だから難しいでしょうか。

すると急にドアが開いて。

 

 

「軽音部に入部してくれないか!?」

「さっき3組の前で会ったよね!?」

「美味しいケーキがあるんだけど!」

 

 

だだだだだれですか!?

びっくりしました!

言葉にするとただそれだけですが、私自身は心臓が本当に止まりかけました!!

目の前の女の子達が何か言って入ってきましたが、びっくりしすぎて内容が聞き取れませんでした。

 

 

「!!!???」ビクッ

 

 

何故こんなところに人がとか、歌ってたの聞かれてたとか、色々頭をよぎったような気がしましたがそんなことはどうでも良く・・・良くはありませんが、それよりも感情が追いつきません!

もしかして、ここは使っちゃいけないところだったのでしょうか?

私・・・また失敗しちゃいましたか・・・?

 

あれ・・・視界がにじんでいきます。

もう何がなんだかわかりません。

慌てて駆け寄ってくる女の子達、それだけかろうじて私の頭で理解できました。

 

 

声をなんとか出さないように泣いてた私を、黄金の髪のすごく綺麗な人がイスに座らせてくれました。

どこから出したのかわからなかったですけど、暖かくてほっとする紅茶も頂いちゃいました。

 

 

「どう?美味しい?」

 

 

そう笑顔で問いかけてくれます。

見てるだけで癒されるような笑顔です。

なんだか・・・私のお母さんに似てるって、ふと思いました。

顔とかはもちろん違いますけど、雰囲気っていうか、なんだか安心して眠くなっちゃうような、そんな感じです。

優しいお母さんって、こんな感じなんだろうなって。

和さんもお母さんって感じもしますけど、タイプがちがくて、和さんはしっかりしたお母さんのイメージです。

 

 

「・・・プハ。えっと、美味しい・・・れす。」

 

 

紅茶はすっごく美味しかったです。

正直、人生で初めて紅茶を飲みました。

どんな味がするんだろうってどきどきしながら口をつけたのですが、

日本人の私は今までほとんどお茶を飲んですごしてきましたので最初は正直美味しくないと思いました。

お薬の味がするって思いました。

でも、入院してからはほとんどお水でしたから、新しい飲み物に期待せずに入られませんでした。

また一口含みました。

すると最初ほどのきつい味、香りはせず、柑橘系?のいい香りが鼻から抜けていきました。

やっぱり感覚が敏感になってるんでしょうか。

じんわりと、私の体をめぐっていくのがわかりました。

あまりの美味しさにまた噛んでしまいましたが・・・誰も気づいていませんよね?

 

 

「あらあらまあまあ!」

 

 

嬉しそうに笑ってくれました。

するとカチューシャをした元気のいい女の子が。

 

 

「え~っと・・・名前聞いていいかな?あ、私は田井中律!」

 

 

私も答えようとしたのですがすぐに他の人達も自己紹介をしてくれて。

 

 

「琴吹紬です」

 

 

紅茶を入れてくれた綺麗な女の子が琴吹さん・・・。

 

 

「秋山澪です。あの・・・さっき・・・」

 

 

黒髪でロングヘアのこの人が秋山さん・・・あ!

さっき廊下で落し物を拾ってくれた優しい人です!

 

 

お礼を言おうとしたら、田井中さんが秋山さんを押しのけるように私の前に立って、自己紹介を待ってます。

 

 

ですので。

 

 

「あえっと・・・湯宮千乃です・・・」

 

 

 

今度は噛みませんでした!

涙も止まりましたし、もう大丈夫です。

でも田井中さん、琴吹さん、秋山さんがじっとこちらを見ているので・・・すごく緊張してしまいます。

ごまかすために、指を絡ませてしまったり声も小さくなってしまったかもしれません・・・。

けど、田井中さんはそんなことは気にもせず。

 

 

「湯宮さん!軽音部に入部しない!?今、部員集めてるんだけど後1人いないと廃部になっちゃうんだ!さっきの歌も感動した!」

 

 

そう言ってくれました。

田井中さんたちは軽音部を廃部させないために勧誘をして回ってたそうです。

私と同じです。

同じ気持ちの人がいて、嬉しくなりました。

それに私の歌・・・褒めてくれるなんて。

だから入部してくれないか?って言葉がまるで運命みたいな気もして。

返す言葉で返事をしようと思ったのですが。

 

 

「昨日も歌ってたでしょ!?本当は昨日も大声で探してたんだけど見つからなくてさ!だから」

 

 

昨日の大声は田井中さんみたいです。

それを理解した瞬間に、涙がまた滲んできました。

昨日、大声で、田井中さんは言いました。

『高く売れる』と・・・。

今、この教室には4人。

私と、田井中さんと琴吹さんと秋山さん。

1対3です。

逃げられません。

今も優しい対応をしてくれて、秋山さんも荷物を拾うのを手伝ってくれて、琴吹さんも優しいってわかります。

でも、売られちゃうんです。

そう考えてたら、涙が溢れてきて。

でも怖がってるのがバレたら、ますます田井中さんたちが強気になるって思って、頑張って涙がこぼれないようにこらえます。

 

うぅ、売られたくない゛…!

 

 

そんな私を見て田井中さんたちは何故かあたふたしてます。

 

 

「え、ちょ、なんで泣く!?」

 

 

「だって、だって・・・売られだくない・・・」

 

 

声もたえたえになんとか振り絞ります。

 

 

「はぁ!?売る!?なにを・・・」

 

 

「!! 律が昨日大声で叫んでたからじゃないか!?」

 

 

「叫んだってそんなこと・・・あ・・・言いました・・・」

 

 

やっぱり!

売られてしまう!

 

 

「いや、確かに言ったけど!意味が違う!」

 

 

「・・・意味?」

 

 

「湯宮さんとバンドを組んで、プロを目指してCDとか出して・・・って考えてただけだって!本当!」

 

 

「・・・本当、ですか?」

 

 

「もちろん!・・・ていうか普通売られるとか考えるか?」

 

 

う、普通・・・ですか。

 

 

「・・・すいません、勘違いしてしまいました!」

 

 

「あーいや、こっちも紛らわしくて(?)ごめんな」

 

 

良かった・・・売られないみたいです。

 

 

「って、そんなことより!軽音部に入部してくれないか!?」

 

 

そうでした。

軽音部。

田井中さん達は軽音部を存続させるために頑張っていたんです。

偶然にも、私と同じで。

 

 

「あの・・・プロって・・・?」

 

 

お願いします!とは言えず、先に気になったことを聴いてみました。

田井中さんはプロにって、言いました。

 

 

「ん?あぁいや、やるからにはプロを目指さないと!ってこと」

 

 

「まぁ私たちはバンドなんて組んだこともないし、楽器だって中学からだけどな・・・」

 

 

「う・・・でも目標がないと駄目だろ!?」

 

 

「それは否定はしないけど・・・」

 

 

「だろ!?だからプロになって、CD出して!がっぽり稼いでやる!」

 

 

「な・・・なるほど・・・です」

 

 

プロになる。

先ほども言われましたが私にはあまり『普通』っていう感覚がないのかもしれません。

私もプロになりたいって思ってました。

それがお父さんとお母さんの夢で。

和さんも、唯さんも頑張れって言ってくれました。

だから、プロを目指したいって思ってました。

そして、今目の前に同じことを言ってる人がいます。

 

 

「だからさ!湯宮さんも軽音部に入ってくれないか!?」

 

 

嬉しい。

でも・・・でも。

 

忘れていました。

幸せなことがいっぺんに起こりすぎて、今の今まで忘れてたんです。

私の時間は3年間しかない。

バカですね、私。

3年間で、どうやってプロになるっていうんですか。

なり方もわからないのに。

 

胸が締め付けられたような気がしました。

 

そうですよ。

クラブに入って、頑張るのはいいです。

一緒にプロを目指すのだっていいです。

そして、仮にプロになれなくたって、それはそれでいいかもしれません。

 

でも、3年間のその思い出は?

3年後に必ずいなくなってしまうのがわかってるのに、それを、わかりながら、3年間、

苦楽を共にするであろう友達と過ごさなくちゃいけないんですか・・・?

 

体温が消えていくのがわかります。

その感覚に、私は更に血が引いていくのがわかりました。

まさか・・・喪失病?

・・・・・・・・いえ、どの感覚もまだ、大丈夫・・・なはずです。

 

支離滅裂ですよね。

生まれ変わったときは、それが嬉しすぎて。

3年後には消えてしまってもいいなんて言ってました。

でも、和さんと出会って、初めての友達になって。

唯さんも愛称で呼んでくれて。

歌って。

ご飯を食べて。

でもそれも全部、失うって。

幸せすぎて浮かれてたんですね。

失うのが、こんなに怖いのなんて忘れてました。

 

動機が早くなっていきます。

呼吸が、しんどくなってきました。

 

 

「お、おい、大丈夫?」

 

 

「律がまくし立てるから困ってるんじゃないのか?」

 

 

「え!?そ、そんなことないだろ!?」

 

 

「待って・・・湯宮さんどうしたの!?気分悪いの!?」

 

 

琴吹さんが私に触れました。

私は、それが怖くて。

その手を押しのけてしまいました。

 

思ってしまったのです。

どうせ失うなら、最初から何もいらないって。

 

 

「いや・・・いらない・・・」

 

 

最低です。

こんな自分が。

せっかく生き返らせてもらったのに。

頑張るって決めて、なんども決意したのに。

いざ、幸せが目の前に訪れたらそれを拒んで。

挙句、優しくしてくれた琴吹さんの手を、拒んで。

 

 

「やだやだ・・・怖い・・・いやだ・・・」

 

 

今度は涙が止まりませんでした。

頭が混乱して、なにがどうなってるかわからないと、冷静に見てる自分がいました。

この感覚は、私が入院して、寝たきりだったときに似ています。

 

 

「いらない・・・いらない!」

 

 

大声を出してしまいました。

恥ずかしい。

大きな声を出したことではなく、他人に当たることしかできない自分が。

 

嫌いです。

喪失病の私も。

生き返ったのに何も変わってない私も。

3年後には消えてしまう私も。

神様も。

そんな世界も。

私が消えた後も続いていく世界も。

全部、全部。

 

 

 

 

ぎゅっと。

なにかが私を包みました。

温かい。

琴吹さんが、私を抱きしめてました。

触れ合う体のところから、熱が戻ってきます。

さらさらの紙が少しくすぐったいなんて、思いもしました。

でもその温かさが怖くて、なんとか抜け出そうとしましたが。

 

 

「大丈夫・・・大丈夫だから」

 

 

そう囁いて、私の頭を撫でてくれて。

 

涙が止まりませんでした。

私、今なにを思ってたんですか?

全部が怖くて、憎んでしまって。

そんなことを考えたことが、怖くなって。

 

 

「わ、私・・・私!」

 

 

止まらない涙と嗚咽のせいで喋ることができません。

 

 

「よしよし・・・」

 

 

何も聞かず、嫌な思いをしたと思うのに。

琴吹さんはただ、私をあやし続けてくれました。

 

 

この世界に生まれ変わって、初めて大泣きしてしまいました。

感情が爆発して声にならない声で何かを訴えていたような気がします。

どのくらいの時間がたったかわかりませんが、その間もずっと頭を撫でてくれました。

 

 

泣き疲れた私が落ち着いた頃を見計らって、田井中さんと秋山さんが部屋に入ってきました。

私の気づかないうちに、2人は気を使って外に出てくれていたみたいです。

 

 

しゃくりあげる私の声だけが部屋で聞こえます。

 

 

「落ち着きました?」

 

 

琴吹さんが、腕の中の私を見て言ってくれます。

 

 

「・・・ごめんなさい・・・私・・・」

 

 

自然と見上げる形になります。

 

 

「いいんです」

 

 

笑顔で琴吹さんは、また頭を撫でてくれました。

 

 

「いや~・・・急に泣き出したときはびっくりしたけど・・・」

 

 

「・・すいません・・・」

 

 

「そうじゃないだろ、律」

 

 

「わかってるよ。

湯宮さん、なにが悲しかったのかわかんないけどさ。改めて軽音部に入らないか?」

 

 

・・・その問いに、私は答えることが出来ませんでした。

今は落ち着きましたが、結局世界は何も変わっていないんです。

いつまた、今みたいに感情が爆発してしまうかわからないんです。

間近で・・・眩しいものを見ていたら・・・その後の絶望も大きくて。

・・・なんで私、さっきまで軽音部を復活させようなんて思ってたんでしょうか。

わかってます。

バカで、浮かれてからです。

 

 

断るほうが、いいんですよね、きっと。

こんなに、優しい人達の傍にいると、自分がどうしようもないって思い知らされてるようで。

そしてなにより、私がいることで、嫌な思いをさせてしまうかもしれません。

いえ、きっとさせてしまいます。

だから、断ろう。

傷つくのがわかってて、それを乗り越える強さもなくて。

 

 

「・・・すいません・・・私は・・・」

 

 

「・・・湯宮さんがなにを抱えてるのか、私らはわかんないけどさ。支えることはできるぜ?」

 

 

「・・・え?」

 

 

「1人じゃ辛いときもあるだろ?そんな時はさ、誰かと一緒にいればいい。

・・・誰かといるのが辛い?それもいい。でもさ、誰かといるのって、楽しいぜ?

辛いこともあるのも当たり前、けど、楽しい事だってあるんだ。

1人じゃ重くて辛くても、2人なら半分こだ!それにここには私と、澪と、ムギがいる。

だから、その抱えてるもの、預けてくれないか?・・・かっこつけすぎか?」

 

 

「・・・律にしてはいいこと言うな。

でも私も同じ気持ちだよ。私だって1人がいいときもある。でも、1人は寂しいよ。

私たちが持ってる時間は長いようで短いから・・・悲しいことよりも嬉しいでいっぱいでいたい。」

 

 

「湯宮さんが、人生を『嫌い』や『寂しい』でいっぱいにするのは私も悲しいです。

だから、私たちと、バンドやりませんか?きっと、楽しいですよ。」

 

 

なんで・・・なんでこんなに優しいんですか?

 

 

「・・・もし・・・嬉しい楽しい・・・幸せがいっぱいでも・・・最後にはやっぱり悲しいで終わるなら・・・普通の悲しいよりも・・・もっと悲しいから・・・」

 

 

私は消え入りそうな声で言いました。

幸せを知らなければ、不幸だって思わない。

 

 

「・・・それでも、嬉しいや楽しいを友達と感じることが出来たら・・・。

きっと後悔はしないと思うの。人生に正解なんてない。だから、選んだ道を一緒に正解にしましょう?」

 

 

「・・・琴吹さん・・・」

 

 

「それにさっ!頑張って生きて、幸せな思い出がこれでもか!ってくらいに手に入っても、それでも悲しいで終わるなら、それはそれで笑えばいいじゃん!」

 

 

「・・・田井中さん」

 

 

「まったく律は・・・湯宮さん。私も人見知りで話すのが得意じゃないけど、ここにいる2人はそんなこと気にもしないよ。優しくて、支えてくれるよ。もちろん私もね。」

 

 

「・・・秋山さん」

 

 

琴吹さんは私を抱きしめ。

田井中さんは手を握ってくれて。

秋山さんは頭を撫でてくれた。

 

 

「わ・・・私がいると・・・迷惑をかけ・・・ちゃうかもしれない・・・」

 

 

「それは私たちが決めることだ!」

 

 

「そうね。そして、湯宮さんが私たちといたいって思ってくれるなら、それが嬉しいな」

 

 

 

 

そんなの・・・

 

 

「いたい・・・いたいです・・・一緒に・・・」

 

 

抱えてるもの・・・喪失病のことや生まれ変わった事・・・。

言えない。言ってしまったら気絶されそうで。

怖いけど。憎いけど。悲しいけど。

でも、一緒にいたい・・・それだけは本当で。

 

 

「なら、決まりだな」

 

 

「あぁ、記念すべき、4人目だ!」

 

 

「ふふふ、嬉しいわ」

 

 

 

 

「「「ようこそ、軽音部へ!」」」

 

 

 

 

 

 

「・・・いつか、抱えてるもの、教えてくれると嬉しい」

 

 

 

 

小さくそう、言ってくれました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




神様「原作キャラはええ子ばっかや・・・」


この話を機に、いままで同じところを回っていた主人公ですが変わっていきます。
もしよろしければ、これからもよろしくお願いします。

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