とある映画の台詞ですが、これを聞いたとき、じゃあ私は大丈夫だと思いました。
しかし、私は今現在、綾瀬はるかさんのおすすめする銀のお薬を呑んでいます。
だからなんだって言う話です。
「いよ~し!4人揃ったことだし軽音部の活動開始だー!」
「とりあえず、これからの事も含めて色々相談しませんか?ケーキ持ってきたんです」
「・・・なんか軽音部のこれからが目に浮かぶような・・・」
私を受け入れてくれた軽音部の皆さん。
これから私はこのクラブで、このメンバーで3年間を過ごしてゆきます。
何も話せなかった私を、それでも支えると言ってくれた優しい人達。
「湯宮さんも、行こう?」
秋山さんが声をかけてくれます。
「・・・はい」
その優しさに、またためらうような返事を残してしまいます。
でも、それでも。
「最初からじゃなくていいからさ・・・ゆっくり・・・」
最後までは言わずに、微笑んでくれました。
「2人とも早くこーい!紅茶が冷めちゃうぞー」
「はいはい・・・行こう?」
手を差し出して。
私は握ります。
「・・・はい!」
「じゃー、どうやったらプロになれるか話し合おうぜ!」
「いきなり・・・まずはちゃんと演奏が形になるかどうか考えるのが先だろ?」
「確かに・・・私達のバンドはギターがいないものね」
皆さんが口々に話しています。
私は気になったことを聞こうと思ったのですが・・・こんな大勢の前で話すのなんか緊張してしまいます。
でも私も軽音部になったから頑張って、積極的に・・・!
「・・・あ、あにょ」
まだまだ!
「ん!?どした!?」
田井中さんが嬉しそうにこちらを向いてくれます。
なんだか申し訳なくなってきます。
「みにゃあさんがやってる楽器ってなんなんでしか!?」
伝わってください!
3人がなんだか震えて下を向いています。
笑われてるんでしょうね。
「「「か、かわいい」」」ボソ
何か言いましたか?
「えーっとだな・・・私はドラムだ!チマチマした演奏は嫌いだからな。豪快に叩くぜ!」
「律はガサツだからな・・・よく走った演奏するんだ。」
やれやれ・・・とため息をつく秋山さん。
なんだか苦労してる・・・のでしょうか?
「なんだとぅ!?澪だってチマチマイジイジしてるから人見知りが直らないんだぞ!」
「なっ!?今それは関係ないだろう!?」
「あ、お、落ち着いてくだしゃい!」
喧嘩!?
喧嘩ですか!?
すると私の頭が撫でられました。
琴吹さんです。
「大丈夫よ。澪ちゃんと律ちゃんは幼馴染だから~」
・・・幼馴染だから?
ぽわぽわしてる琴吹さんはそれ以上何もいうことはなく、私の頭を撫で続けます。
「あ・・・あの・・・琴吹さん・・・恥ずかしい・・・です」
「あらあらまあまあ」
それでも止めてくれません。
なんだか気持ちよくなってきました。
「あふぅ・・・」
つい声が・・・顔が真っ赤になるのがわかります。
でも、私達同級生ですよね?
なんで、あやされてるんでしょうか。
やっぱりさっき、泣き喚いたのが影響してるんでしょうか・・・。
「あ、ムギ!ずるいぞ!」
田井中さん?
何がずるいんでしょうか。
「そうだぞムギ!」
「ほら!次!」
そう言って田井中さんは私の肩を抱いて、琴吹さんに言いました。
「私はキーボード担当で~す。」
撫で続けながら琴吹さんは言います。
「コンクールで賞を頂いたこともあるの~」
「す、すごい!・・・でっす・・・」
「そうだぞ~。我々軽音部はすごいのだ!」
「律は偉そうだなぁ・・・」
「実際に偉いんだ!なんせ部長だからな!!!ほら澪、次!」
「わかってるよ・・・」
何故か秋山さんは、琴吹さんと田井中さんを羨ましそうに見て私に視線を。
「私はベース担当なんだ。律とリズム隊なんだけど走り気味になるから抑えるのに苦労してる」
「そ、そうなんですか」
「だまされるな千乃隊員!澪が細かすぎるだけだ!」
「・・・な、名前」
「ん?あ、名前で呼ばれるの嫌か?」
そんなことない。
両親にもらった大事な名前。
呼んでもらえることなんてほとんど覚えていない。
和さんにはじめて呼んでもらって嬉しかった。
唯さんにも愛称で呼ばれて嬉しかった。
そしてまた、田井中さんにも。
「・・・すごく嬉しいです!」
大きな声で、田井中さんは目を丸くした後、ニ~と笑顔になりました。
「おう!じゃあ私の事も律って呼んでくれよな!」
「あ、ずるい・・・私も!私も名前で呼んでね千乃ちゃん!」
「わ、私も名前で呼んでもいいか・・・?呼んでくれたら嬉しいし・・・」
「・・・はい・・・グス」
「ま~た泣いた。泣き虫だな~」
「・・・すいません・・・嬉しいことがいっぱいで・・・」
「これで『嬉しい』が一個増えたな!」
「千乃ちゃん・・・!」ハァハァ
「ど、どうしたムギ?」
嬉しいことがいっぱい。
いつか失くすってわかってても。
手を伸ばさずにはいられない温かいもの。
「律さん・・・澪さん・・・紬さん・・・」
幸せを確かめるように口にする。
「もっと砕けて呼んでくれていいんだぜ?」
和さんや唯さんのときと同じで、そんな事をしたら幸せすぎて・・・また怖くなってしまう。
「・・・」
何かを察したのか、皆静かになってしまいました。
「「「・・・最初に、愛称で呼んでもらう・・・」」」ボソリ
???
今誰か何か言いましたか?
「と、とにかく私たちのパートはこんな感じだ」
「ギターが・・・居ない・・・ですか」
「そうだ。千乃ギター弾けないか?」
澪さんが聞いてきます。
「す・・・すいません・・・楽器はピアノしか・・・」
「私とお揃いね~」
紬さん、私、賞なんてもらったことないです。
家にあったピアノをお母さんに教えて貰ってただけで、比べるのもおこがましいです。
「そだ。ならこの際にギターやってみたらどうだ?」
「いいんじゃないか?」
「あ・・・」
正直、惹かれなかったわけではありません。
でも、私は喪失病で。
多分、また体を動かすのもいつか難しくなってくると思います。
そのときに、私がギターだと皆さんに迷惑をかけてしまうと思います。
それに・・・唯さんが音楽に興味を持ってくれてましたから、もしかしたらって期待もあります。
ので。
「・・・すいません、私には・・・でも、心当たりが・・・ある・・・かもしれません」
「え?」
「も・・・もしかしたらです・・・けど・・・もう1人・・・」
「本当か!?」
「まぁ!」
「もももも、もしかしたら!・・・です・・・」
期待させるだけさせて、やっぱりムリでした、というのは私は嫌いで。
「何組!?」
「あえっと・・・私と同じです」
「3組か!今から勧誘しに行くか!」
「今日は・・・もう帰ってます・・・すいません」
「千乃ちゃんが謝ることじゃないわ」
「・・・はい」
「まあじゃ明日勧誘だな!」
「その子はギターできるのか?」
「ギターはわかりませんけど・・・カスタネット・・・?」
「・・・・・・」
あれ、なんだか静かになりました。
「と・・・とりあえずこの話はまた明日だな・・・」
せっかく出してくれたので・・・というのは建前で先ほどからケーキが美味しそうで困ります。
紅茶もいい香りです。
「千乃ちゃん、どうぞ召し上がれ?」
!?
「ムギのケーキはうまいぞ~!」
「確かに・・・こんなに美味しいケーキいったいどこの」
律さんと澪さんがおすすめしてくれます。
「い、いただきまし」
・・・・・美味しい!!!
甘し!
さっとう!
・・・誕生日を思い出しました。
「喜んでくれて嬉しいわぁ・・・!!」
その時、紬さんの目が光ったような、頭のところに豪華な電球が現れたようなきがしました。
「千乃ちゃん・・・あ~んしてくださ~い!」
・・・?
紬さんが自分の分のケーキを、フォークに一刺しして私に持ってきてくれました。
「な!?」
「ムギ!」
律さんと澪さんがなんだか怒ったように声を出します。
お行儀が・・・悪いからでしょうか。
「・・・はむ」
いつまでも紬さんが動かないので、申し訳ないですし頂きました。
すごく嬉しそうな顔です。
ケーキが好きな私にわざわざ自分の分を・・・優しい人です。
「私、こうやってあ~んってするのが夢だったの~」
・・・紬さんも紬さんで結構ずれてるんじゃないか思います。
「もう一口・・・」
言い終わる前に澪さんが。
「れ、練習!練習しよう!」
「おぉ!ナイス・・・アイディア澪!やろうやろう!」
「練習・・・ギターいないんじゃ・・・」
「明日、千乃の友達連れてくるんだから、その時用になにか練習しとこう!」
う、もう明日来ることになってるんですね。
・・・唯さんの居ないところでこんなに話を進めてしまって構わないんでしょうか?
「ギターいなくて、ベースとドラムとキーボード・・・簡単な曲ならなんとか」
「なんとか形になればいいさ。あとは千乃が歌えば完璧!」
「じゃあ何を練習しよう。時間もないし・・・」
「みんなが知ってる曲・・・泳げたい焼きくんとか?」
「やれるモンなら見てみたいわ!っていうか澪のセンスは私にはわからん…」
「可愛い曲なのに…」
「もうここは合唱曲とかどう?それならみんな歌ったこともあると思うから練習しやすいんじゃ?」
「ムギの案を採用!」
「合唱曲・・・翼をくださいとか?」
「千乃ちゃん、いけそう?」
めまぐるしくはずむ会話についていけませんでしたが、この歌なら知ってます。
「はい・・・大丈夫です」
「よっしゃ!じゃあ練習だー!」
Side 紬
私は今幸せです。
あの歌を歌っていた子が私達の部室で歌っていたこともそうですが、その子がすっごく可愛かったからです。
穢れも知らない純真無垢な少女。
お人形さんのような女の子。
歌っている姿は、白い肌もどこか物憂げな表情も相まって、天使のようにも見えました。
・・・実は私・・・女の子が好きと言いますか・・・女の子同士が『仲良く』してるのが好きといいますか・・・。
と、とにかく!
こんなに可愛い子に出会えたのは奇跡だと思いました!
だから、歌い終わったあとに勧誘すべく押しかけました。
小動物が天敵に見つかったときのような顔をしてたのがまた可愛かったです。
でもその女の子は私たちが声をかけたら、泣いてしまいました。
理由はわからなかったですけどその泣き顔がまたもの凄く破壊力があって・・・女の子には申し訳ないと思ったのですけど、すごく胸がきゅんきゅんしちゃいまして・・・フフ。
もっと見たいと思いましたが落ち着かせるためにもお茶をお出ししました。
顔を隠したいのか、カップを両手で持ってゆっくり飲んでる目の前の女の子・・・可愛すぎます。
もって帰りたいな・・・とか思いました。
私が美味しい?って聞いたら、まるで迷子の子供のように少し怯えながらも美味しいといってくれました。
・・・本当にお持ち帰りしちゃいましょうか。
自己紹介のときもおへその辺りで手をもじもじと・・・クハ!
するとまた涙が・・・自然と私は息が荒くなってしまいました。
よく見ると澪ちゃんも?
ま、まさか・・・キマシ!?
泣いていた理由は昨日、律ちゃんが言っていた「売れる」という発言でした。
どうやら自分が売られると勘違いしたようです。
・・・言い値で買い取りましょうか!
でも、そんな勘違いをするなんて、普通の女の子なら思わないと思います。
もしかしたら、この子も私と同じで一般常識と言いますか、いわゆる普通の生活を送ってこなかったのでしょうか?
湯宮千乃さんを軽音部へ勧誘すると言うこと。
私たちはそれを、昨日の声を聞いたからという理由で行いました。
それは間違ってないと思いますし、実際に話してみて一緒にバンドをやりたい、友達になりたい、と思うようになりました。
けれど、湯宮さんは。
律ちゃんの再三にわたる勧誘は。
明らかに湯宮さんを動揺させていました。
体が震え、顔は下を向き、一瞬見えた表情は絶望そのものでした。
なぜ?
バンドを、音楽をやることがそんなに嫌なの?
なら・・・どうして歌っていたの?
そんな疑問が頭をよぎっては消えていきます。
ふらっと、体が揺れ落ちてしまいそうな湯宮さんを見てると、どうしようもなく悲しくなってきて。
「待って・・・湯宮さんどうしたの!?気分悪いの!?」
と、体に触れようとしました。
けれど、その手は拒まれてしまいました。
「いや・・・いらない・・・」
消え入るような、そんな声で湯宮さんは言いました。
生まれて今まで、私の望むものは何でも手に入って。
望まないものも手に入ってきました。
だから、拒否されたその手が信じられなくて。
その事実が信じられませんでした。
でも。
「いらない・・・いらない!」
大きな声で、我にかえります。
湯宮さんが叫びました。
その言葉は、私の心を抉りました。
先ほどまで聞いていた曲とは正反対に私の心を抉っていきました。
私は何を勘違いしていたんでしょうか。
目の前の女子。
天使のような、人形のような。
可愛い、女の子。
可愛いだけの、女の子。
私と同じで、親に過保護に育てられ、危険なんてない人生を歩んできた、女の子。
そんな風に、勝手に見てしまっていました。
少し前の私に、怒鳴り散らしたいと、そう思いました。
目の前で感情を爆発させる女の子は、私の知らない何かを抱えているんだ、そう理解したと同時に、どこか遠くへ行ってしまいそうな気がして。
私は、湯宮さんを抱き寄せていました。
私の手の中で、湯宮さんがもがいていますが。
「大丈夫・・・大丈夫だから」
そう、言いました。
抱きしめないとわからないことがある。
いつかそんなフレーズをどこかで耳にしたことがあります。
湯宮さんを抱きしめて、この子はアンバランスだって感じました。
何故そう思ったのかはわかりません。
でも、何かが抜けているというのか。
天使のようで、人形のようで、かわいい湯宮さんは。
ただの女の子だったんです。
そう思ったとき、私は今まで以上に湯宮さんが愛おしく思えて、頭を撫でて、まるで赤ちゃんをあやすように優しく抱きしめ続けました。
同級生だけど、歌うときは圧倒的な存在感で、だけど今はどうしたらいいのかわからず泣き叫ぶ赤ちゃんのようで。
この女の子はいったいなんなんでしょうか。
私はこの子をどうしたいんでしょうか。
律ちゃんと澪ちゃんは、外に出てくれてました。
泣き叫ぶ湯宮さんは、なにを言ってるかわからないほど感情を爆発させていました。
時より、『失いたくない』や『3年間』というワードが聞こえ、耳に残りました。
泣き疲れたようで、すんすんとしゃくりあげる湯宮さん。
その顔は、幾分か晴れたようにも見えましたが、それでもやっぱり悲しそうで。
私に何が出来るんでしょうか。
お金ならいっぱいあるのに、それで解決は出来ない、そう思いました。
私は結局、そういったものしか持ち合わせていないのです。
そしたら律さんが。
「・・・湯宮さんがなにを抱えてるのか、私らはわかんないけどさ。支えることはできるぜ?」
そう言いました。
私はその言葉がすごく眩しいものにみえて。
私にも出来る、そう思ったら嬉しくなって。
湯宮さんが泣きそうな顔で。
「・・・もし・・・嬉しい楽しい・・・幸せがいっぱいでも・・・最後にはやっぱり悲しいで終わるなら・・・普通の悲しいよりも・・・もっと悲しいから・・・」
そう言います。
けれど、私にも出来る事がある。
「・・・それでも、嬉しいや楽しいを友達と感じることが出来たら・・・。 きっと後悔はしないと思うの。人生に正解なんてない。だから、選んだ道を一緒に正解にしましょう?」
一緒に。
この言葉がこんなにも嬉しいものだったなんて、知りませんでした。
このメンバーだったら、湯宮さんと一緒だったら・・・。
一緒に同じ道を歩いていける、そう思いました。
「湯宮さんが私たちといたいって思ってくれるなら、それが嬉しいな」
本心です。
もちろん、湯宮さんが辛いときは支えます。
一人になんてしません。
湯宮さんが、軽音部に入部を決めてくれたのは、このすぐ後でした。
Side律
晴れて4人!
こっから軽音部はスタートするぜ!
まぁ正直、千乃がなにか変なヤツだってのは驚いた。
見た目はかわいい女の子~って感じなんだが、なにか抱えてる。
それがどんなものなのか全然わからないけど、あそこまで泣くんだからかなりのものなんだろうな・・・。
支えてやりたいって思ったよ。
打算とか抜きにしても。
会ってまだ初日だけどさ、そう思っちゃったんだもん。
澪もムギも一緒のようで、千乃をみんなで支えようって言わなくても通じたような気がした。
やっぱりどこかぎこちないっていう感じはするけど、名前で呼んだら千乃も名前で呼んでくれた。
めちゃくちゃ嬉しかった。
名前を呼ばれただけ、けど初めて仲間になれた気がした・・・単純で悪かったな。
なにはともあれ、軽音部はスタートした。
誰がなんと言おうとスタートしたんだ!!
けど、ギターがいない・・・練習ができん。
千乃にギターをやらそうかと提案したんだけど、どうやらアテがあるらしい。
ま、千乃には歌に集中してほしいし、もう1人部員が出来る事は良いことだ!
どんな子なんだろう・・・。
明日が楽しみだな!
そんな事を考えてると、千乃がケーキをむしゃむしゃと食べてる。
た、食べ方もかわいいんか・・・
しかしまぁ・・・美味しそうに食べるなぁ。
紅茶もそうだけど、初めて食べるみたいな感じ。
ケーキを食べ終わった後も、皿をじーっと見てる。
しゃーない・・・私のを少しやるか。
そう思ってたらムギが。
「千乃ちゃん・・・あ~んしてくださ~い!」
!!!???
なん・・・だと・・・!?
ムギのやつ・・・こんな大胆なことをするなんて・・・!
ていうか、なんで私はこんなに動揺してるんだ?
・・・わからん。
けどなんでかずるいって思ってしまう!
さらにムギが千乃に食べさせようとするが、澪がインターセプトして練習する流れに!
ギターがいない?それがどうした!
いないならいないでそういう曲をすればいい。
これには千乃もやる気があるらしく、曲はみんなが知ってる翼をくださいだ。
まずは私と澪、ムギの3人が慣らしていく。
う~む・・・初めての3人での演奏。
まだまだバラバラって感じがする。
最初からうまくいくなんて思ってないけど、プロになる!って豪語した手前、ちょっと恥ずかしかったり・・・。
・・・千乃は私たちの演奏をどう思ってるんだろうか。
ガッカリしてないだろうか・・・。
・・・・・・なんかキラキラした目で見てる・・・
ええい、そんな目で見られちゃやるしかあるめぇ!
私は力いっぱい演奏した。
こんなに本気で練習したのは始めてだった。
結局、曲をまともに演奏できるというところまででかなりの時間を使ってしまった。
その間、千乃は文句も言わずひたすら私たちも演奏を気持ちよさそうに聞いていた。
最後に一曲私達の演奏と千乃の歌を合わせようという話になったけど、さすがに遅くなってしまい、結局あわせることは出来なかった。
あ、明日はぶっつけ本番・・・!
「明日・・・大丈夫かな・・・」
「な、なんとかなる!!・・・はず」
弱気になってしまう。
最初の演奏は成功させたいなんて思ったりする分、余計に緊張しちゃうな。
「あ、千乃ちゃん。携帯の番号、交換しましょう?」
ムギが千乃にそう言っていた。
「そうだった、私も」
澪もそそくさと携帯を出す。
仲間はずれをとことんきらうからなぁ・・・澪は。
けど、千乃は頭をかしげて。
「携帯・・・電話?」
とおっしゃられた・・・まさか知らない・・・のか?
「す・・・すいません・・・私持ってません・・・」
「えぇ!?まじか!」
「いまどきの子からしたら珍しいわよねぇ・・・」
「じ、じゃあ家の番号は?」
「あ、家には電話あります!」
「そりゃそうだろう・・・」
「教えてくれるか?」
「・・・すいません・・・忘れました・・・」
「あらあら・・・じゃあ私の番号渡しておくから、帰ったら一度電話もらえる?」
「は、はい!します!絶対!」
「あ、私にもな!」
「千乃、私にもしてくれよ!?忘れないでな!?」
「はい!」
こうして最初の部活動が終わる。
千乃はやっぱり変わってるな。
携帯を持ってない、というよりも存在を知らなかったように思えた・・・。
いつかそういったことも含めて、あいつのこと教えてくれるといいなぁ。
とにかく、明日の演奏頑張ろう。
・・・もうちっと家で練習しとくか。
神様「ムギに吉影さんがログインしました」
原作と違う点がいくつか出てきました。
唯ちゃんよりさきに入部した主人公。
一週間待たずに入部フラグのたった唯ちゃん。
そして原作よりちょっとアレなムギちゃん。
はたしてここからどんなストーリーになっていくのか。
次回、ムギちゃんとキマシタワー建設!(嘘)
ちなみに、作中で泳げたい焼きくんを出したのは、つい最近お店で聞いただけで、特に意味はなかったりします。