けいおんにもう一人部員がいたら   作:アキゾノ

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風邪が治らない・・・いつもなら次の日には治ってるんですが。


今回で、唯ちゃんも軽音部に仲間入りです。
こっから原作の本筋を辿りながら、オリ話とか織り交ぜつつ最後までいけたらなと思います。

これからも、どうかよろしくお願いします。



第10話

Side和

 

 

「千乃、おはよう」

 

 

朝、教室で友達の姿を見かけたので、挨拶をする。

結構まだ寒くて、朝は気が滅入る気がするわね。

 

 

「の、和さん・・・おはようございます!」

 

 

けど、この笑顔を見たらそんな気持ちも吹っ飛んでしまった。

振り向いたその顔は、満面の笑みで、なんというか子犬が嬉しそうに尻尾を振っているようなイメージを持たせた。

この子は本当に・・・かわいいわ。

昨日、学校で別れてから何かいいことでもあったのだろうか。

それくらいに、声が弾んでる。

 

聞いてみるとどうやらクラブに入ったみたいだ。

運動系・・・じゃなく音楽の。

ちょっとだけ心配してしまった。

正直、千乃は初対面の人とのコミュニケーションはお世辞にも得意だとは言えない。

だから、そんな千乃がクラブでやっていけるのだろうか。

お節介だとは自覚はしているわ。

でも、心配なんだもの・・・仕方ないわ。

でも、聞いてる分だと、クラブの人達は言い人ばかりのようね。

軽音楽部・・・たしか廃部になりかけてたはず。

千乃いわく、立て直そうとした矢先、同じ考えの人がいたみたい。

まるで運命を感じるような話ね。

でもまあ、同級生だけなら千乃も気兼ねはしないでしょう・

しかし・・・千乃は思ってたより行動力があるわね。

昨日の今日・・・正確には一昨日の昨日でもう入部してしまうなんて・・・。

まだまだ付き合いは短いけれど、やる時はやるのよ。

これから千乃は軽音部の仲間達と仲良くなっていく・・・嬉しいことなのに、どうしてか胸が落ち着かない。

この気持ちはなんなんだろう。

置いてかれそうな気がして、つい千乃を撫でてしまう。

気持ちよさそうな顔・・・。

私に出来る事は、千乃を支えることと・・・友達としてね。

 

千乃がちらちらと何か言いたそうね。

 

 

「あの、えっと、携帯電話・・・モニョモニョ」

 

 

・・・私も聞こうとしてたこと。

千乃から言ってくれるとは。

 

 

「あぁ、そういえばまだ交換してなかったわね」

 

 

声が弾まないように、なんでもないように振舞いながら、私は携帯を取り出す。

しかし、千乃が携帯を出さない。

なんでも、携帯電話を持っていないようだ。

珍しい、と思った。

いまどきの若い子は必需品とさえ言えるものなのに。

でも、千乃にはなにか理由がある。

それは一昨日と昨日でわかってること。

だから私は、それを追及したりしない。

いつか、千乃自身から教えて欲しい。

 

 

「それでね・・・もし迷惑じゃなかったら・・・家から掛けたいから、和さんの携帯番号・・・教えてくれませんか?」

 

 

まったくもう・・・なんでこの子はこんなにかわいいのかしらね。

困ったことがあったらいつでもかけるように言い渡す。

凄く嬉しそうな顔が、また私の胸を撃つ・・・。

私達の会話を聞いていた中島さんが近づいてきた。

 

中島さんとも携帯の番号を交換し、メモ帳を宝物のように抱きしめてる・・・かわいすぎる。

そこに唯がやってきた。

また遅刻ギリギリね。

挨拶を交わしていく。

千乃も挨拶を返した。

けど次の言葉で私はフリーズしてしまう。

 

 

「あ、あのね唯さん!放課後・・・大事なお話がある・・・んですけど・・・」

 

 

クラス中が、騒然とした。

大事・・・な、はな・・・し?

えーっと・・・つまりどういうこと?

 

 

「なになに、告白してくれるの~?」

 

 

!?

いや、だって、女の子同士で、そんな・・・いえ、最近はそういう子も多いって聞く!

その・・・いわゆる『女の子を好きな女の子』が。

確かに、桜が丘高校は女子高で、その手の話はよく聞くって先輩が言ってたわ。

千乃が・・・女の子に告白・・・唯に告白・・・!

なんで?とか、千乃はそういう子だったの?とかの疑問ではなく、胸が痛くなるのはなぜ?

この痛みの理由は?

それにたどり着く前に。

 

 

「え、や、そういう意味じゃなくって!なんていうか、全然ちがくて!!」

 

 

千乃が必死に否定する。

まあ冷静に考えてみたら、恥ずかしがりやの千乃がこんなところで告白なんて出来るわけもなかったわ。

『女の子が好き』疑惑が晴れてほっとするのと同時に、モヤモヤしたものを感じる・・・。

 

話をまとめると、千乃は唯をクラブに誘ってるという話で。

放課後に、見学にどうかとただそれだけのこと。

以上、2人の私の友達の話でした。

 

 

 

 

 

Side 唯

 

 

まだまだ朝は寒いね~。

少し早歩きで教室に行こうっと。

そうすると、和ちゃんとゆっきーが話してるのが見えた。

おはようと挨拶をすると返してくれる。

ゆっきーは多分まだ緊張してるのかなー。

どことなくぎこちない気がする。

けど、ゆっきーが何かを言いたそうにこっちを見てる。

なんだろうと思ってると。

 

 

「あ、あのね唯さん!放課後・・・大事なお話がある・・・んですけど・・・」

 

 

そう言われた。

ゆっきーはそんなつもりで言ったんじゃないんだろうけど、今の台詞はけっこう大胆。

だって告白みたいに聞こえるんだもん。

ゆっきーは、誰かと付き合ったこととかないのかなぁ。

見た目も仕草もかわいいけど、どこか抜けてるというか・・・。

そういう経験がないから、今みたいな台詞がぽんとでるのかも。

私も無いけど・・・。

結局、放課後にクラブに見学に来ないかという話でした。

音楽に興味がある、確かに嘘じゃないけど楽器なんて出来ないよ。

でもまあ軽音部、軽い音楽って言うくらいだから多分大丈夫だよね~。

口笛、カスタネットなら得意だよ!

それにゆっきーの歌が聞けるならそれだけで入る価値ありだよ~。

和ちゃんが羨ましそうに見てたのは気のせいかなぁ?

 

 

 

放課後、ゆっきーと一緒に部室へ!

その途中で私は今更ながらどんな人達がいるのか気になってしまいました。

ゆっきーは、みんな同じ学年の人って言ってたけど、怖い人がいたらどうしよう・・・。

でもゆっきーはすごく嬉しそうに紹介してくれました。

 

 

「はい・・・んと、部長の律さんはドラムで、元気いっぱいでみんなを引っ張ってくれる人で、面白い人です・・・ベースの澪さんは綺麗でかっこよくてしっかりした人だけど、可愛いところもあります。キーボードの紬さんは・・・おっとりぽわぽわしてる人で、すごくあったかい人です。なんていうか、全体的にやわらかいと言いますか・・・」

 

 

ちょっと驚きました。

だってゆっきーは、いつも自信なさげで、お話しするのも得意じゃないって感じだけど、すらすらと紹介してくれました。

だから私は。

 

 

「ゆっきーはみんなのこと大好きなんだね~」

 

 

そう言いました。

きっとそうなんだと思います。

まだ友達になって少ししか経ってないけど、ゆっきーがこんなに嬉しそうに話すんだから、きっと良い人達に決まってます。

楽しみだなぁ!

そして、なんと私のために軽音部の皆さんが演奏してくれるみたいです!

凄い!

嬉しい!

ゆっきーの歌が聞けると思うと、早く部室へ行きたいと思うようになって、手をとって走り出しました。

けど、私は昔からおっちょこちょいで、人のことを考えていませんでした。

急に走りってしまったので、ゆっきーが転んでしまいました。

ど、どうしよう・・・ゆっきーがケガしちゃったら・・・。

 

 

「どこか痛む?怪我してない?ごめんねゆっきー・・・ごめんね!」

 

 

必死に謝ります。

ゆっきーは、大丈夫と言ってくれたけど・・・でも足が痛そう・・・。

本当に大丈夫と、言うけど一応保健室に行くというので私も!と思ったんだけど・・・。

あまり保健室に大人数で行くのは迷惑かもしれないとゆっきーが言います。

自分がケガしたのに、他の人のことを考えてる・・・私は自分の事が恥ずかしくて。

 

 

「本当にごめんね」

 

 

そんな言葉しかでない。

今回は幸運にも大事にはならなかったけど、少し間違えたらきっと危なかった。

 

 

ゆっきーが、辛そうな顔をしてる。

やっぱりどこか痛むんじゃ・・・。

そう思ってたら。

 

 

「唯さん、そんな顔しないでください・・・唯さんの顔は笑ったほうが好き、です」

 

 

そう言って、頭を撫でてくれました。

・・・なんで?

なんで優しくしてくれるの?

ケガさせたの私なのに・・・。

辛そうな顔は私を気遣ってのことだとわかった瞬間、また私は自分が恥ずかしく思いました。

保健室に向かうゆっきーをただ見てることしか出来ませんでした。

 

 

階段を上る足が重いような気がします。

ゆっきーを怪我させてしまったことをなんて説明しよう・・・。

 

部室の前、中を覗いてみると3人の姿が見えた。

カチューシャをしてる人が田井中律さんで、黒い髪のかっこいい人が秋山澪さん、金髪で眉毛が特徴的な人が琴吹紬さん。

ゆっきーの言ってたとおり、みんな優しそうな人ばかりで。

それが私の心をちくちくとさせる。

きっと怒られてしまう。それは良い。

当たり前なんだから。

悪いことをしたら怒られる。

でも、ゆっきーは怒ってくれなかった。

優しいからかなぁ。

もし、軽音部の人達も怒ってくれなかったら・・・。

 

 

ノックをしようとして、ためらってしまう。

けど、私は。

 

 

「すいません・・・」

 

 

「お・・・え~と、平沢さん?」

 

 

田井中さんが聞いてきます。

 

 

「はい・・・あのぉ~・・・」

 

 

「よく来てくれた!いや~期待の新人(?)なんだよな!?」

 

 

「だ、誰がそんなこと!?」

 

 

「千乃が誘うくらいだからかなりの腕前なんだろう?」

 

 

「!?」ブンブン

 

 

首を精一杯横に振ります。

ゆっきー・・・私楽器なんて出来ないよぅ・・・。

 

 

「っと・・・自己紹介しなきゃな・・・私が部長の・・・」

 

 

「あ、ゆっきーから聞いてます・・・田井中律さんですよね?」

 

 

「お、紹介されてたか・・・どんな風に?」

 

 

なぜか、眼が変わったような気がします。

それは後ろの2人も同じようで。

 

 

「えっと・・・田井中さんは、元気いっぱいで頼りになって、面白い人・・・って。」

 

 

「な、なんか照れるな・・・」

 

 

「平沢さん!私、私は!?」

 

 

「琴吹さんは、おっとりしてて、優しくて、すごくあったかいって言ってました」

 

 

「まぁ・・・!」フンフン

 

 

「わ、私の事は・・・?」

 

 

「秋山さんは・・・かっこよくて、綺麗で、でも可愛いところもあるって。」

 

 

「う・・・恥ずかしぃ」

 

 

そのわりに、顔は緩んでました。

 

 

「まあ、ゆっくりしていってくれよ。ムギ!お菓子を!」

 

 

それは秋山さんだけじゃなくて、田井中さんも。

 

 

「は~い!」

 

 

琴吹さんもでした。

 

 

「練習しようよ・・・ところで千乃は?」

 

 

「そういえば・・・一緒に来るって言ってなかったか?」

 

 

「あ、あの!」

 

 

「どうしたの平沢さん?」

 

 

「ゆっきーは、その・・・私がケガさせちゃって・・・」

 

 

「なにぃ!?」

 

 

田井中さんが大声を上げる。

 

 

「ケガって・・・」

 

 

「何があったの?」

 

 

「その・・・私がはしゃいじゃって・・・それで・・・ゆっきーが転んじゃって」

 

 

ちゃんと説明できたか怪しいのですが、それでも1から説明しました。

ついに耐え切れなくなって涙がこぼれてしまいました。

泣く資格なんて自分にはないのに、それでも泣いてしまいました。

 

 

黙って聞いてた軽音部の人達。

そこにゆっきーが来ました。

泣いてる私を見て、また悲しそうな表情をしてます。

違うんです、そんな顔しないでください。

もっと、怒ってください。

 

 

「わ、わたし・・・昔からこんなんで・・・楽器だって・・・軽い音楽だからもっと・・・楽なものだって思ってて・・・すいません・・・」

 

そう、昔から1人じゃ何も出来なくて。

何にも打ち込まず、なあなあで生きてきました。

他人に迷惑をかけることも多かったです。

妹に何もかも任せてきました。

そんな自分では、何も出来ないと思って。

高校では何か新しいことを始めたいと思ったけど・・・そうしようと思った矢先に迷惑をかけて・・・。

 

 

「ゆっきーに怪我させちゃったし・・・楽器だってできないし・・・だから・・・入部の話は・・・」

 

 

やっぱり止めます・・・そう言おうとしました。

けど、言い切る前にゆっきーが言います。

 

 

「そ・・・そんな」

 

 

ごめんね、せっかく誘ってくれたのに。

 

 

「ちょっと待った!」

 

 

「もう少し考えてくれないか!?」

 

 

「美味しいケーキもあるの!」

 

 

「4人いないと演奏できないんだ!」

 

 

「1からギター始めてみないか!?」

 

 

「美味しいお茶もあるの!」

 

 

ゆっきーだけじゃなくて、ほかの人達も・・・なんで私を叱ってくれないんですか?

大切な友達のゆっきーを怪我させちゃったのに。

それに、楽器をやったこともない私を入れるより、経験者に入部して貰えば良いのに。

私が入ったって・・・きっと足を引っ張るだけなのに。

 

 

「ゆ、唯さん!私達の・・・演奏を聴いてくれませんか!?」

 

 

・・・ゆっきー?

びっくりしちゃった。

大きな声、出せるんだね。

驚いてると。

 

 

「精一杯歌います・・・ので、聞いていってくれませんか?」

 

 

私の手をギュッと、握りながら。

下を向いてる私に目線を合わせようと、絆創膏をはってる膝を床に着けて、見上げるようにそう問いかけるゆっきー。

そのビクビクとうかがう表情が、すごく可愛くて。

なんだか顔が熱い・・・。

何も言えずにいると、気づいたらイスに座らせられてケーキも貰っちゃいました。

そして、今、軽音部が私のために演奏をしてくれるようです。

 

 

ゆっきーが大きく息をすって。

 

 

「翼をください」

 

 

翼をください。

この曲は知ってる。

学校の音楽の時間でよく聞く曲。

合唱曲として有名なのかな・・・。

でも、目の前の軽音楽部が演奏する曲は違ってる。

 

最初、ゆっきーが演奏なしに囁くように歌って。

その声は歌うというよりも、語りかけるような感じだった。

そしてそれは、不特定多数の誰かにじゃなくて、目の前にいる私に・・・。

私だけに。

そして一般的に言われる、サビを歌い終わると、私の知ってる合唱曲ではなくて、軽快でポップな演奏になった。

私には音楽の知識なんてないし、あんまり聴かないけど、ゆっきーたちがうまいって事はわかった。

何をやってるのかはわからないけど、3人はすごく楽しそうに演奏してる。

たまにミスをしたなって言うのがなんとなくわかるけど、それもカバーしあうように演奏をして。

そしてその演奏に、ゆっきーが声を乗せる。

ゆっきーの歌がひときわ響く時は、演奏のミスを帳消しにして。

3人の演奏は、ゆっきーがカバーしてくれると、もっとテンポが良くなり聞いててうまくなっていくのがわかった。

なんていうか・・・たし算やひき算じゃなくてかけ算のような・・・そんな感じ。

凄いって思った。

羨ましいとも思った。

私に出来ないことをやってのける目の前の4人も。

信頼しあう4人も。

演奏する4人を見て、演奏する4人の音を聞いて、私は始めて思った。

私もやりたい・・・って。

今までも思ったことはあるけど、それはやっぱり本気じゃなくて。

でも、今、この胸を動かす音は私が欲してやまなかったもの。

あれ・・・涙が出てくる。

さっきみたいな悲しい涙じゃなくて、嬉しいの涙。

お金も名声もいらない、自由の羽が欲しい、自由に生きたい。

そう歌うゆっきーの声が私の心に突き刺さり、『自由の羽が欲しい』というのが、私の事のように思えちゃう・・・のは都合が良いのかな。

自由に生きるための羽、生きていくために一緒にいたい人・・・そう思っても良いのかなぁ。

でも、私だけを見て歌うゆっきーが、そう言ってくれてるような気がしてるんだもん。

他の誰かじゃなくって、私のために・・・。

真っ白い肌は、歌ってるからかな、ほんのり赤くなってる。

なんかかわいいなぁ。

一生けんめい・・・私のために。

 

 

 

歌い終わったみんなは少し疲れたのか、肩ちょっと息が乱れてる。

 

 

「・・・ど、どうでしたか?」

 

 

そんな目で見ないでよゆっきー。

凄かったよ。

感動したもん。

このメンバーだったらプロにだってなれる、そう思ったもん。

だからいっぱい凄いって言いたい。

けど、私が言えたのは多くなく。

 

 

「なんていうか・・・すごく言葉にしにくいんだけど・・・」

 

 

「は、はい・・・」

 

 

「すごく感動しました!」

 

 

 

「ほ、本当ですか?」

 

 

「うん・・・だから私、この部に入部して一緒に音楽やりたいって思いました」

 

 

「じゃあ・・・?」

 

 

「入部させてください!」

 

 

「よっしゃー!5人目だー!」

 

 

「明日またティーカップ持ってこなくっちゃ!」

 

 

「いや、そのまえにギターとか教えないと・・・でも良かったな千乃」

 

 

「はい・・・唯さん!」

 

 

「ゆっきー・・・」

 

 

「入ってくれて・・・ありがとうございます・・・私、唯さんが入部してくれてすっごく幸せです!」

 

 

「ケガさせちゃったのに・・・そんなこといってくれるの?」

 

 

「そのことはもう、気にしないでください!」

 

 

「でもぉ・・・」

 

 

「確かに千乃がケガしたのは事実だし、そのことは反省してさ、次はないように気をつけたら良いんじゃないか?」

 

 

「田井中さん・・・ゆっきー、許してくれる?」

 

 

「は、はい!」

 

 

「ありがとうゆっきー・・・大好きぃ!」

 

 

「なぁ!?」

 

 

「ひ、平沢さん!?」

 

 

「唯さん・・・は、恥ずかしいです」

 

 

ついゆっきーに抱きついちゃった。

でも、ゆっきーは良いにおいがした。

他のみんなも驚いてるような怒ってるような・・・そんな気がします。

 

こうしてわたしは軽音部に入部しました。

これから訪れる楽しい3年間。

そのきっかけとなったゆっきー・・・。

ありがとう、ゆっきー。

 

 

 

 

 

Side 千乃

 

 

唯さんが軽音部に入部してくれました!

嬉しいです!

 

 

「あ・・・でも私、楽器できないよ?」

 

 

「そうだったそうだった・・・平沢さんさ、ギターやってみる気ない?」

 

 

「ぎたー?」

 

 

律さんが唯さんにそう薦めます。

 

 

「ギターはかっこいいぞ~。バンドの花形だからな!」

 

 

そう・・・なんでしょうか?

私はバンドの全部の楽器がそれぞれ主役だと思ってるんですが・・・そう思ってたら澪さんが私にコソッと耳打ちしてくれました。

 

 

「律は平沢さんにギターやってもらいたいからああ言ってるだけだからな。ベースだってかっこいいんだ」

 

 

ちょっとムっとしたように言います。

紬さんも。

 

 

「キーボードだって負けません!特にボーカルと2人で演奏できるし」

 

 

「そ、そうなんですか」

 

 

弾き語り、見たいな感じなのかなぁ・・・。

唯さんは律さんに洗脳、もとい説明を受けて、目をキラキラさせています。

律さん・・・凄いです。

 

 

「ゆっきー!私、ギターやる~!」

 

 

また唯さんが抱きついてきて、そう言いました。

 

 

「わ・・・えと、良いと思います!唯さんのギター、楽しみです!」

 

 

「うん!だからギターの弾き方教えてね?」

 

 

「私、ギターの事はちょっとわからなくて・・・すいません・・・」

 

 

「平沢さん!私がギター教えてあげるから!」

 

 

澪さんが唯さんを引き剥がすように言います。

 

 

「ていうか平沢さん、まだギターないよね?買わなきゃだね」

 

 

「うん!5,000円くらいで買えるよね?」

 

 

「ない事もないけど・・・ピンきりだからなぁ・・・」

 

 

「普通はどれくらいのなの?」

 

 

「安いのだと、1万円台からあるけど、安すぎるとあんまり良くないから・・・最初は3万円くらいでいいんじゃないか?」

 

 

「さ、3万円!?」

 

 

「楽器って10万円とかもざらだぜ?」

 

 

「さ・・・3万、円・・・私のお小遣い半年分・・・」

 

 

「聞いちゃいない・・・」

 

 

「結構、お値段するんですね・・・」

 

 

「千乃も楽器、やってみたいか?」

 

 

「いえ、私は・・・歌い、たいです」

 

 

「・・・そうだな!」

 

 

「さ・・・3万・・・」

 

 

まだフリーズしてる唯さん。

 

 

「とりあえず、明日学校休みだしさ、楽器屋に行ってみないか?」

 

 

「そうね。もしかしたら安くていいものがあるかもしれないし・・・平沢さん、どう?」

 

 

「う・・・ん。お小遣い前借してみる。ありがとう!」

 

 

・・・明日の土曜日・・・軽音部のみんながお出かけ・・・わ、私も行って良いのかな?

 

 

「じゃあ明日、お昼の2時くらいに集合な!」

 

 

「寝坊するなよ律」

 

 

「そうなったら起こしてくれ」

 

 

「千乃ちゃん、明日楽しみね!」

 

 

「!!!」

 

 

私も行っていいんですか・・・!

友達と初めてのお出かけ!

休日ショッピング・・・!

楽しみすぎます!

 

 

「はい!楽しみでっす!」

 

 

「お、千乃も楽しみか!なら楽器屋だけじゃなくてどっか行くか!」

 

 

「まずは楽器屋だぞ?忘れないでくれよな」

 

 

「わかってるって澪ちゃんは心配性だなぁ」

 

 

「うるさい!」

 

 

澪さんが律さんを叩きました。

それを横目に、唯さんが。

 

 

「じゃあ明日は私服?」

 

 

私服・・・そういえば私、私服なんてありましたでしょうか・・・クローゼットの中、まだ見てなかったです。

帰ったらチェックしないとです。

 

 

「「「「千乃(ちゃん)(ゆっきー)の私服って・・・どんなんだろう」」」」

 

 

何か言いましたか?

 

 

4人がなんだかそわそわしてます。

とにかく、明日、凄く楽しみです。

明日はいったいどんなことが起こるんでしょうか。

 

 

 

 

 

 

「「「「私服・・・至福・・・」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 




神様「千乃の私服・・・どないしよう」


次の話は、買い物かいです。
千乃の家には、お金と家具、それと制服など、必要最低限のものしかありません。
下着類などもです・・・。
ですので、次の話はちょっとR-15かも・・・しれません。
私服を買いに行ったり、女性として必要なもの(美容関係な!)とかの買い物回です。

読んで面白いものじゃないとおもうので、飛ばしてくれても大丈夫かと・・・。
ちなみに私は、そういった日常回が大好きです。
他の作者様の、キャラが買い物したりご飯食べたりの話がすごい好きです。



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