けいおんにもう一人部員がいたら   作:アキゾノ

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第14話

Side 千乃

 

 

放課後になり、私と唯さんは和さんに別れを告げ、部室へ向かいます。

唯さんは、背中にあるギターが嬉しいようで、しきりにちらちらとギターを見るように後ろを振り返ります。

それが可愛すぎて私も自然と笑顔になってしまいます。

今日からいよいよ軽音部として練習が始まります。

いったいどんな練習になるのでしょうか・・・どきどきします。

 

 

「唯さん、ギター・・・嬉しそうですね」

 

 

「わかる~?すっごく嬉しくて昨日もいっぱい磨いたりしてたんだー」

 

 

このギターも唯さんと出会えて良かったですねと思いました。

そうこうしている間に部室へと到着しました。

まだ部室には誰もおらず、唯さんと私だけでした。

 

 

「いっちばーん!」

 

 

唯さんが走って中に入り、鞄を長椅子に置きます。

 

 

「さてと・・・ゆっきー、ギターの練習するから手伝って!」

 

 

「えと、私ギターに触ったことなくって・・・手伝うって行っても何をすれば・・・」

 

 

「あ、そっか・・・どうやって弾くんだろう」

 

 

そう言って指でギターの弦を弾くと鈍い音がでました。

 

 

「テレビとかで見ると、抑えたりすると綺麗な音がでるんだよね」

 

 

「もしかしたら、説明書みたいなのがあるかもしれません・・・音楽室ですし・・・」

 

 

「お、ゆっきーナイスアイディア!じゃさっそく・・・」

 

 

手当たり次第に、部室内にあった本を漁っていく唯さん。

私も手伝います。

 

 

「んーと・・・『ピアノの弾き方』に『サルでも叩けるドラム』に『人見知り克服の100の方法』・・・なんでこんなものがあるんだろう」

 

 

「・・・」

 

 

なんとなく最後のは澪さんのかなぁなんて思ってしまいました。

 

 

「ギター、ギター・・・ん?なんだろこれ」

 

 

「・・・?」

 

 

そう言って唯さんが手に取ったのは『女の子が好きで何が悪い!』と書かれた本でした。

なんでしょうかこのタイトル・・・ここ音楽室ですよね?

しかも、かなり読み込まれた後があるような・・・。

しかし、唯さんはそれが気になったらしくめくり始めます。

私はなんだか、人の前でそういうのを読むのが恥ずかしいと思って、先ほどの『人見知り克服の100の方法』を手にとって見ます。

ふむふむ・・・なるほど・・・ためになります。

でも、まずは相手に話しかけてみようってステップ1にあるのですが、それが無理なんですけど・・・。

そんな事を思ってると、唯さんが後ろから抱きついてきました。

けど、いつもみたいなギュってした感じではなく、包み込むような優しさで、ドキってしてしまいました。

 

 

「ゆゆゆゆゆゆ唯しゃん!?」

 

 

「ゆっきー・・・」

 

 

ど、どうしたんですか!?

後ろを振り返りたいんですが、何故か向けません。

力は強くないのに、それでも唯さんのほうを向けません。

そして私のおなか辺りに唯さんの手が来たときに、私の緊張は限界突破してしまい、変な声がでてしまいました。

それに驚いたのか唯さんが。

 

 

「あははごめんね、びっくりした?」

 

 

そう言いながら、手元にあった先ほどの本、『女の子が好きで何が悪い!』を見せてくれました。

 

 

「ここに今の抱きつき方が書いてあったの。どきどきした?」

 

 

・・・なんだ!

びっくりしました!

急にどうしたのかと思いました!

本に載ってあったことを実践しただけなんですよね!

はーびっくりです!!!

まだどきどきが止まりません。

自分でおなかに触っても何も感じないのに、唯さんが触るか触らないかのところであんなに緊張してしまうなんて・・・。

 

 

「は、い・・・かなり・・・」

 

 

「ゆっきー、さっき可愛かったよ!」

 

 

「・・・!」

 

 

声にならない声で抗議をします。

それを笑ってみる唯さん。

ここであることに唯さんが気づきました。

 

 

「あれ・・・この本、琴吹出版社って書いてある」

 

 

「琴吹・・・紬さんのお父さんの会社でしょうか」

 

 

「多分・・・」

 

 

なんともなしに、お互い黙ってしまい、しまう事にしました。

・・・実は読んでみたかったりもします・・・誰もいない時にこっそり読みたいです。

 

 

「・・・あ!ギターの本を発見!!」

 

 

「・・・結構これも使い込まれてますね」

 

 

その本は、カバーがけっこう古くなっており、付箋もいっぱい貼ってありました。

中をパラパラとめくってみると、かなり書き込まれてます。

私はギターの事が良くわかりませんが、事細かにいろんな事が記されてます。

残念ながら誰のものか名前は書いてなかったのですが、ここにあるということは少なくともこの学校の誰かのものであります。

唯さんが集中してます。

邪魔にならないように、本を片付けていると一冊の本が落ちてしまいました。

それはアルバムのようで、写真にはおそらく以前の軽音部の人達が写っていました。

これが・・・先輩たち。

綺麗な人達が演奏してる姿や、記念写真、そしてこの部室で楽しそうに笑ってる姿でした。

・・・いいなぁ。

私達もこれからこんな風に、一緒に演奏してもっと仲良くなれるかなぁ・・・。

ペラ、とまためくります。

すると、先ほどまでとは打って変わって、すごい格好の人達が写っていました。

なんでしょう・・・悪魔みたいな?格好です。

周りのお客さんもちらちらと写ってるんですが、同じように奇抜な格好をしてます。

ちょっと怖いな、なんて思ってしまいました。

 

 

「なに見てるのゆっきー・・・うわ!」

 

 

横から覗いてきた唯さんは、驚いたようで持ってた本を落としてしまいました。

私も、本を持つ手が震えてしまってます。

その時、律さんと澪さん、紬さんがやってきました。

 

 

「おーす」

 

 

「2人とも早いな」

 

 

「あら・・・唯ちゃん、千乃ちゃん何を見てるの?」

 

 

「こ・・・こんにちは。それが・・・」

 

 

事のあらましを説明します。

唯さんのギターの教科書を探してたら、アルバムがでてきたこと。

 

 

「そんで、この写真か・・・ヘビメタっていうのか?」

 

 

「というよりデスメタルじゃないかしら?」

 

 

「うぅ・・・怖いのは苦手だ!」

 

 

「こんな人たちが昔の軽音部だったのか・・・なんか時代を感じるな!」

 

 

「あ・・・なんだろうこれ」

 

 

唯さんが戸棚の置くからカセットテープを取り出します。

 

 

「桜高祭って書いてあるな・・・」

 

 

「先輩達が学際で演奏したやつじゃないか!?」

 

 

「聞いてみるか?」

 

 

そして、備え付けのカセットデッキにいれ、再生ボタンを押します。

そこから流れてきたのはかなり上手な演奏でした・・・デスメタルの。

かなりハードで正直何がどうなってるのかわからなかったんですが、それでもこれだけ弾けるのは並みの腕ではないと思います。

律さんも唯さんも紬さんも感心しています。

澪さんは耳を塞いで部屋の隅っこで震えています。

 

 

「はぁ~・・・こんだけ上達するにはどうしたらいいのかなぁ~・・・」

 

 

唯さんがそうため息をつきます。

 

 

「そりゃ練習あるのみだ」

 

 

「・・・だよね!よし、私頑張るよ!」

 

 

「その意気だ!ギターなら澪に聞け!」

 

 

「そうだな・・・まずはコードを覚えるところからだ」

 

 

頼られて嬉しいのでしょうか、澪さんはいつのまにか復活していて唯さんの持ってた教本のコードのページを開きます。

 

 

「よーし!!」

 

 

数十秒後。

 

 

「ま、まずは、コードの読み方から教えてつかぁさい・・・」

 

 

「そこから!?」

 

 

そんなやりとりから1時間くらいが経って、休憩になりました。

私はこの1時間、紬さんと発声練習をやっていました。

休憩時間となり皆さんが席に着き、紬さんの持ってきてくれたケーキと紅茶を頂きます。

美味しいです・・・本当に。

この時間に、部長である律さんに、和さんから教えて貰ったことについて報告しようと思います。

 

 

「あ、あの・・・律さん・・・」

 

 

「お、なんだ?ケーキのおかわりか?」

 

 

ち、違いますと言う前に、律さんが自分のケーキを私の口に運んできてくれました。

そしてあまりにも美味しいケーキを前に、食べ物に長い間飢えていた私はついつい食べてしまいました。

 

 

「うまいか?」

 

 

「ふぁい・・・ありがとうございます」モグモグ

 

 

「千乃ちゃん!私のも!」

 

 

紬さんが同じように食べさせてくれようとするのですが、それがフォークから零れ落ちてしまい、紬さんのスカートに。

 

 

「あらあら大変!!早く取らないとシミになっちゃうわ(棒」

 

 

「あ、えっと・・・」

 

 

「千乃ちゃん早くとって!あ、手は駄目よ!口で取ってね!」

 

 

「え、えー!?」

 

 

鬼気迫る表情でそう言われてしまうと、なんだか本当にそうしないといけないような気分になってしまい。

恐る恐る、近づくと。

 

 

「・・・っ!」

 

 

ボタボタと紬さんが鼻血を出してしまいました。

 

 

「っは!しまった・・・つい・・・」

 

 

急いでティッシュを紬さんに渡します。

なんとかすぐ治まったものの、びっくりしまた。

その拍子に、ケーキも床に落ちてしまいガッカリした表情の紬さんは、悲しそうでした。

 

 

「そろそろ練習すっか」

 

 

「あ・・・あの」

 

 

「もうケーキはないぞ?」

 

 

「そ、そうじゃなくて・・・ええっと・・・軽音部の申請・・・」

 

 

「申請・・・?」

 

 

澪さんや紬さん、唯さんは『?』という顔をしています。

しかし律さんは。

 

 

「いっけねー忘れてた!」

 

 

「何の話?」

 

 

「いや・・・軽音部ってまだ正式な部として認められてなかったんだよ。4人集まった時点で申請用紙を提出しないといけなかったんだけど・・・忘れてた」テヘペロ

 

 

「っな!?」

 

 

澪さんがすごく驚いた顔をしています。

 

 

「バカ律!部長だから自分でやるって言ってたよな!」

 

 

「しーましぇーん・・・」

 

 

「まったく・・・千乃が言ってくれなかったら本当に潰れてたところなんだぞ」

 

 

「うぅ・・・ありがとう千乃―・・・」

 

 

「あ・・・いえ・・・私の、友達が・・・教えてくれたんです・・・」テレテレ

 

 

「とも・・・だち?」

 

 

紬さん、ちょ、ちょっと近いです。

 

 

「あー、和ちゃん?」

 

 

「はい・・・」

 

 

「誰?」

 

 

「私とゆっきーと同じクラスの友達だよー」

 

 

「その人にも感謝だな」

 

 

「それで律、用紙はあるのか?」

 

 

「それなら大丈夫!一度も鞄から出してないから!」

 

 

ゴン、と。

律さんはぶたれてしまいました。

 

 

「もういい・・・私が記入する」

 

 

そしてスラスラと記入していく澪さん。

しかしあるところで手が止まってしまいます。

 

 

「顧問って・・・」

 

 

「・・・そういや誰なんだろう」

 

 

「・・・職員室で聞いてみたらいいんじゃないかしら?」

 

 

 

 

というわけで、職員室にやってきました。

 

 

「軽音部の顧問?」

 

 

「はい!」

 

 

綺麗な女性の先生に聞いてみました。

 

 

「えーっと・・・あ、ちょうど去年転勤しちゃったみたいね」

 

 

「なんと・・・」

 

 

「じゃあ新しく顧問をしてくれる先生を捜さないといけないって事?」

 

 

「そうみたいね・・・頑張ってね?」

 

 

そう言って対応してくれた先生はどこかへ行ってしまいました。

 

 

「・・・どうするんだ律?」

 

 

「今の先生さ、美人だし優しそうだし、顧問やってくれないかな?」

 

 

「まぁ!いいんじゃないでしょうか!」

 

 

紬さんがすぐに賛成の意を示します。

私も、すごく優しそうな先生に思えたので賛成です。

それに・・・どこかで見たような気が・・・?

 

 

「私もー」

 

 

唯さんも賛成のようです。

それならばということで。

 

 

「よし・・・じゃあお願いしに行こう!」

 

 

 

 

先ほどの先生は、廊下で生徒たちと話しているようで、笑顔が絶えません。

きっと人気のある先生なんだと思います。

すると律さんが。

 

「山中さわ子先生・・・わが校の音楽教師である。その綺麗な顔立ちとやわらかな物腰で生徒だけではなく教師陣の間でも人気がある。さらに楽器の腕前や歌声もすばらしくファンクラブが存在するほどである」

 

 

とナレーションのように話し始めました。

 

 

「あ・・・あの」

 

 

山中先生と呼ばれたその先生はこちらに気づき話しかけてきました。

 

 

「さっきからなに言ってるの?」

 

 

「実は軽音楽部の顧問になってほしくてお願いしにきたんです」

 

 

「・・・だから私の事、よいしょしてたのね・・・」

 

 

な、なるほど・・・律さんが急に山中先生のことを説明してたのはそういうことだったんですね。

 

 

「・・・でもごめんなさいね。私、吹奏楽部の顧問もしてるからかけもちはちょっと・・・」

 

 

「そんなぁ・・・・・・」

 

 

「本当にごめんなさいね」

 

 

「・・・今まで声をかけてきた男の人の数は数え切れず・・・」

 

 

「だ、だからおだてても駄目です!」

 

 

律さんは諦めておらず、畳み掛けています。

私の隣で唯さんがじーっと先生の顔を見ています。

 

 

「先生ってここの卒業生ですか?」

 

 

そんな唯さんの発言に。

 

 

「そうだけど・・・どうして?」

 

 

「さっき見た軽音部のアルバムに先生に似てた人がいたから・・・」

 

 

「っ!?」

 

 

一瞬で先生の顔が強張りました。

その瞬間、先生は走り出しました。

あっちは・・・軽音部の方向です。

 

 

「みんな、先生を追いかけよう!」

 

 

そう言って律さんは駆け出します。

唯さんがそれに続き、澪さんも置いていかれるのが嫌なのか走ります。

私も走ろうとしたのですが、運動不足といいますか運動音痴といいますか、うまく走ることが出来ず、どんどん皆さんと距離が離れていってしまいます。

『待って』なんて言えるはずもなく。

一生懸命走りますが、どんどん離れてしまいます。

けれど、紬さんが手を握ってくれて。

 

 

「ゆっくりでいいから、一緒にいきましょう?」

 

 

そう言ってくれました。

一緒に歩いてくれる友達に私は感謝しつつ、手を握り返します。

 

 

「あ、ありがとうございます・・・」

 

 

そう一言、伝えました。

 

 

 

 

 

 

軽音部の部室に着いたとき、山中先生が泣き崩れていました。

澪さんいわく、先生は軽音部にあるアルバムから自分の写真を消去しようと思ったらしく、急いでやってきたんだそうですが、既にその写真は律さんが隠し持っていたらしいです。

律さんもなんとなくって感じで気づいていたみたいです・・・さすが部長です!

 

そして、先生の過去話(好きな人のためにデスメタルをやり始めたなど)を自白し始め、現在に至るそうです。

でも、好きな人のためにここまでやれるなんてすごいと思いました。

私もそんな人に出会えたらいいなぁなんて。

唯さんが先生に問いかけます。

 

 

「軽音部にいたってことはギター弾けるんですか?」

 

 

「そっか!ちょっと弾いてみてくださいっ!」

 

 

「・・・・・・・・しゃーねぇな」

 

 

急に雰囲気が変わりました!?

目つきも鋭くなりました・・・ちょっと怖いです。

 

 

「オラオラオラオラぁ!」ピロリロリロリロ

 

 

「は、速弾き!?」

 

 

「無駄無駄無駄無駄無駄ぁ!」ティロロロロロロロロ

 

 

「タッピング!?」

 

 

「・・・っ!!・・・っっ!!」ドギャーーーーーzン

 

 

「歯ギター!?」

 

 

「あぁ・・・私のギターが・・・」

 

 

そして一通り演奏し終わった先生が。

 

 

「お前ら音楽室好き勝手に使いすぎなんだよ!!!」

 

 

「「「「「ご、ごめんなさい!!」」」」」

 

 

 

 

少し時間が経つと。

先生は以前の状態に戻ってくれました。

 

 

「ううぅ・・・先生になったらお淑やかなキャラで通そうって思ってたのにもうバレちゃった・・・」

 

 

グスグスとなく先生。

なんだか可愛そうです。

そんな先生に律さんが近づいて言います。

 

 

「・・・先生」

 

 

ポンと肩に手を置き。

 

 

「このことバラされたくなかったら顧問やってください」

 

 

「律ちゃん、たくましい子!」

 

 

先生が絶望的な顔をしています。

しかし、もう後戻りも出来ないようで、なくなくサインしていました。

い、良いんでしょうか?

 

 

「さ、顧問も決まったことだし後は練習あるのみだな!」

 

 

「無理やり顧問にされた・・・」

 

 

はぁ、とため息をつく先生。

紬さんが先生に近づきケーキを差し出して言います。

 

 

「先生もケーキ、お一ついかがですか?」

 

 

「・・・いただきます!!!」

 

 

すごくいい顔でした。

そしてティータイム。

私、この時間がすごく好きです。

こんな美味しいもの、食べられるなんて夢のようです。

 

 

「・・・この子、すごく美味しそうに食べるわね」

 

 

「千乃は可愛いからな」

 

 

「どんな理由・・・?」

 

 

でも、そんな先生もすごく美味しそうです。

 

 

「さて、これで本当の本当に軽音部が設立されたわけだが・・・なんか目標とか決めとくか」

 

 

「あ、それ良い~!」

 

 

「まぁ目標があるといいと思うけど・・・」

 

 

「じゃあまずは唯!」

 

 

「う~ん・・・じゃあ目指せ武道館!」

 

 

その言葉に先生と澪さんが噴き出します。

 

 

「むむむむむむむりだ!そんな大勢でなんて!」

 

 

「っていうか武道館て・・・」

 

 

「良い目標だな!じゃあムギ!」

 

 

「私は・・・このメンバーで仲良くずっとやることかしら」

 

 

「むぅ・・・」

 

 

「そうそう、こういうのが普通の目標なのよ」

 

 

「ぬぐぐ・・・澪!」

 

 

「いきなり言われてもな・・・私もこのメンバーでやれたらそれでいいって言うか・・・対バンとか興味はあるけど」

 

 

「うんうん」

 

 

先生が頷きます。

 

 

「ぐぬぬぬぬぬ・・・」

 

 

「律ちゃんはー?」

 

 

「私の目標はな・・・世界一有名なバンドになることだ!」

 

 

「おぉ~!さすが律ちゃん!」

 

 

「世界一って・・・」

 

 

「あらあらまあまあ」

 

 

「それくらい大きくってことだよ!・・・まあ前も言ったけどとりあえずプロになるところからだな!」

 

 

律さんは少し照れくさそうにそう言います。

でもその目はしっかりと私達を見ていました。

本当に、そうなることを目指すように。

 

 

「じゃー最後は、千乃だな」

 

 

私は決まっています。

 

 

「わ・・・私は・・・私も・・・プロになりたいです・・・」

 

 

お父さんとお母さんの夢。

私なんかに見てくれた夢。

もうそれを見せることは出来ないけど、それでも叶えたいんです。

 

 

「さすが千乃だぜ!」

 

 

律さんが肩を抱き寄せてくれます。

 

 

「まあ、バンドやってたらそう思うのも普通よね」

 

 

先生も若干呆れながら、頷いています。

 

 

「私もバンドやってた時は目指してたもんだわ・・・周りが結婚とかで結局は駄目だったけどね」

 

 

優しそうに笑って教えてくれました。

 

 

「・・・なら私もプロ目指すわ!」

 

 

紬さんがそう言って。

 

 

「軽音部の4人がプロを目指す・・・澪ちゃんはいいのかなー?」

 

 

律さんがからかうように澪さんに問いかけます。

 

 

「・・・うぅ、私も目指すからそんな言い方は止めてくれ!」

 

 

澪さんもそう言って。

これが軽音部です。

このやりとりが軽音部なんですねーと1人思ってると。

 

 

「ま、目指すのはいいけど、ちゃんと練習しないとね。あと、テストもそろそろ始まるからそっちもおろそかにしないように」

 

 

先生がそう言って、部活申請届けを持っていきます。

 

 

「生徒会に持って行っといてあげるわ」

 

 

「先生・・・ありがとうございます!」

 

 

「はいはい、顧問になっちゃったしね・・・とりあえず今度の学際を一つのラインにして練習するといいんじゃないかしら?じゃ、またね」

 

 

ドアを開けて出て行きます。

 

 

「・・・かっこいいな」

 

 

「クールな先生っていうか・・・頼りになるっていうか・・・」

 

 

「きっと先生にも思うところがあったんじゃないかしら?」

 

 

「どういうことー?」

 

 

「先生もプロになりたかったんじゃないかしら?それで私達が同じことを言ったから・・・」

 

 

「感傷・・・か」

 

 

「・・・私、マジだからな」

 

 

「わかってるよ。律が真面目な顔して言うことなんて年に1回あるかどうかだもんな」

 

 

「なんだとー!?」

 

 

「まぁまぁ・・・でも私も本気だよ!」

 

 

「私も。このメンバーだったらいけそうな気がするの」

 

 

「そのためにもまずは唯のギターの練習だな!」

 

 

律さんが笑いながら言い。

 

 

「そんでさ、プロになったら先生に恩返ししようぜ!」

 

 

「そうだな」

 

 

「よし・・・練習しよ!」

 

 

「千乃ちゃん、頑張ろうね」

 

 

「は・・・はい!」

 

 

皆さんの会話スピードに入れませんでしたが私もおんなじ気持ちです。

 

 

学際にテスト勉強とやることがいっぱいですが、それでも私、今すごく充実しています!

まずはテスト勉強!

頑張ります!!!

 

そしてその日は解散となりました。

いつもどおりに日記を書き、思考の海へダイブします。

明日はどんなことがあるんでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ???

 

 

「・・・・・・・私が置いた『女の子が好きで何が悪い!』、誰かに読まれた形跡が・・・千乃ちゃんかしら」グヘヘ

 

 

 

 

 

 

 




神様「犯人はムギ」



謎が謎を呼ぶ、迷宮入りのキマシタワー!
千乃が狙われ、唯も巻き込まれる!
そして案の定、ムギちゃんが流血を!
いったい最後のは誰なんだ!?
次週、世界の中心で百合を叫んだツムギ。
ヨロシクデース(ヤケクソ)

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