インフルエンザとか気をつけましょうと思いました。
就職するにあたり、入社前に健康診断を受けるとか知らなかったです。
なにかいい歌手とか曲がないかなぁと最近色々掘り出し物を探しています。
なにかオススメありましたら教えてくださると嬉しいです。
ちなみに衝撃を受けたのはSIONの12号室という曲です。
曲調も独特で既存の曲に囚われない曲だと思いました。
歌詞もさることながら・・・。
いつか、作中で歌わせてみたい・・・けどその場面が思い浮かばないw
Side 千乃
私は今、雲の上にいます。
・・・はい、夢だってすぐに気づきました。
でも夢でもいいです。
風が気持ちよくて、雲の上に寝転がりこのまま眠りに落ちてしまいそうになります。
夢の中で眠るとどうなるんだろう・・・なんてどうでもいいことを考えてしまうほど、今の私は自由といいますか、何事にもとらわれない感じでした。
っていうかこの雲、凄くやわらかいです。
マシュマロみたいな・・・いえ、それ以上のやわらかさで、ついつい顔をうずめてしまいます。
ふわぁ・・・気持ちよすぎます。
あぁ・・・これが夢だと言うのが悔やまれます。
現実にこんな至高のやわらかさを持つものなんてないでしょうし・・・今はせめてこの夢を堪能するだけです。
思い出せないですけど、起きたらきっと何か悲しいことが待ってるような気がして。
「・・・んぅ」
「おはよう千乃ちゃん」
「おふぁようございます・・・紬さん」
耳元で聞こえてくる紬さんの声に返事を返しながら、起き上がろうとします。
すると何かやわらかいものが顔に当たってることに気づき、目を開けます。
ぼやけた視界には真っ白のものが見えました。
なんでぼやけてるんだろう・・・起きたてだからかなぁ・・・と思考もぼやけていてその顔に当たるものが枕か何かだと思いました。
紬さんの用意してくれたこの別荘は超がつくほどの一流のものであり、当然そこに用意されてる寝具も一流なのかなと。
「良く眠れた?」
「ふぁい・・・あれ、いつの間に寝たんでしたっけ・・・」
気持ちよすぎるその枕に、顔をうずめなおします。
だって気持ちよすぎるんですもん・・・。
「覚えてない?昨日の事・・・」
昨日?
昨日は確か・・・皆さんと海で遊んで、バーベーキューをして、そのあとにバンドの練習をして・・・澪さんが怒って・・・!
そうだ、私、澪さんを怒らせてしまって、その後に視界が急にぼやけて・・・喪失病。
急激に冷めていく体温。
思い出すのは昨日の感覚で、震える体と乱れる呼吸が私を・・・!
そうだ、私の目はおかしくなっちゃったんだ・・・いつまでたっても霞みがかってるのはそれが理由だったんでした・・・。
・・・ていうかなんでここに紬さんが!?
「よしよし・・・千乃ちゃんおちついてね?」
ぎゅっと抱きしめながら背中を優しく叩いてくれる紬さん・・・昨日取り乱した私を抱きしめ続けてくれたんだ・・・吐瀉物で汚れた私をそれでも紬さんが・・・。
一定のリズムでとんとんとしてくれる紬さんは、昨日の状態のままの私をまだ抱き続けてくれている。
綺麗にした記憶も、お風呂に入った記憶もないので紬さんが汚れてしまうと思った私は、今更ながら紬さんに言いました。
「つ、紬さん、私汚れてるから、離れてくださいっ」
けど、紬さんは。
「あら、もう今更だわ。それに千乃ちゃんなら例えどんな時でも抱きしめてあげるわ」
それに、と続け。
「あんなに気持ちよさそうに私に抱きついてきてた千乃ちゃんを見たら・・・離れられないわ!」
その言葉を聴いて、今の状態がようやく理解できました。
私が極上のマシュマロ枕だと思っていたのは・・・思っていたのは・・・紬さんの大きなお胸でした・・・!!!
「え、や、あ、ごごごごごごごめんなさい!!!」
慌てて離れようとするのですが、がっしりと紬さんに抑えられて離れることができませんでした。
「紬さん!?」
「落ち着いて千乃ちゃん。昨日の事思い出したのよね?なら、急に動くと危ないわ」
パニックになりかけてた私は、その言葉でまた紬さんに迷惑をかけていたことに気づきます。
喪失病によって視力が失われつつある私は、当然のことではあるのだけれど前よりも、視界が見難くなっているのです。
そんな状態で急に動くと危ない、とそう言ってくれたのです。
「あ・・・ごめんなさい・・・」
「いいのよ」
ゆっくりとベッドの上で座らせてくれた紬さん・・・今は紬さんがこうやって手を貸してくれましたが、これから私はずっとこんな感じで、1人でやっていかないといけないのです。
喪失病の再発と、その事実にかなり落ち込んでしまいます。
でも、それでも以前ほどではないのは何故でしょうか・・・?
一度体験していて、再発することはわかっていたからでしょうか?
それとも・・・紬さんが支えてくれていたからでしょうか?
取り乱した私を、抱きしめてくれる友達ができたからでしょうか?
前の世界では、悩みを打ち明けられる友達はいなかった。
けど、今は違います。
だから今私は、自分でも驚くほど冷静でいられるのでしょうか。
ほんの少しだけ震えてる私の手を紬さんは優しく撫でながら、微笑んでくれています。
「紬さん・・・昨日はすいませんでした・・・そして、一緒にいてくれてありがとうございました」
「ふふ、どういたしまして!」
「えっと・・・澪さんは、その・・・」
「そうね。色々と話したい事もあるし、とりあえずお風呂に入りに行きましょうか」
「・・・え?」
「千乃ちゃんに言いたいことも相談したいこともあるし、お風呂に入ってさっぱりしながら、ね?」
お風呂・・・確かに入ってさっぱりしたいと思いました。
でもその前に澪さんや他の皆さんの状況だけでも知りたいとも思いました。
「まぁまぁ・・・とにかくお風呂に行きましょう?みんなが起きる前に、ね?」
なんでこんなにお風呂を勧めてくれるんでしょうか・・・やっぱり結構汚れてしまってるからでしょうか。
「さぁさぁ浴場はこっちよ」
手を取って歩き出す紬さん。
廊下にでて、ぼやける視界におぼつかなくなってしまった私の足取りをフォローしてくれる優しさに感謝しつつ、お風呂場に向かいました。
「こっちよ・・・」ハァハァ
連れられたのは脱衣所で、紬さんが私の服に手をかけます。
びっくりしてしまったのですが。
「大丈夫よ千乃ちゃん、慣れるまでは私が手取り足取りサポートしてあげるからね」
すごく・・・嬉しいんですがやっぱり息が荒くなる紬さんに少しだけ恐怖を覚えながら、けど大切な友達がせっかく手伝ってくれるので、私はそれに甘えることにしました。
「まてまてまてまて!!!」
律さんの声です。
「ムギ!お前また!」
「・・・ッチ」
何か聞こえた後に紬さんが。
「おはよう律ちゃん。早かったのね」
「トイレに行こうと起きたら声が聞こえて・・・ってそうじゃなくて本当にそういうの犯罪だからな!?」
「やだわぁ・・・千乃ちゃんも同意の上よ?」
「絶対、千乃にはその意味がわかってないだろ・・・」
そしてこちらに向き直って。
「千乃・・・大丈夫か?」
「えっと・・・はい」
「・・・昨日のことで話したいことがあるんだ。今から来れるか?」
「まって律ちゃん。その前にお風呂に入らせてあげて」
「ムギ・・・今は冗談とか無しでいきたいんだ」
「冗談なんかじゃないわ。千乃ちゃん、昨日もどしちゃって・・・」
その言葉に私と律さんは目を見開きました。
私は、なぜそのことを律さんに言うのかという理由で。
「そ、そうだったのか・・・ごめん!気づいてなかった・・・ゆっくり入ってくれ。出てきたらリビングに来てくれるか?」
「あ・・・はい、わかりました・・・すいません」
「なんで謝るんだ・・・千乃、眠いのか?」
「え?」
「いや・・・なんか目が眠そうというか・・・」
どきりとしました。
さすが律さんです。
私たちの部長は、部員のことをちゃんと見ていてくれているんですよね。
「いえ、そんなことないですよ」
「・・・そっか。ならいいんだ。ムギ、私らは出とこう」
「私もお風呂に入るわ」
「・・・なんで?」
「その理由も含めてまた後で話すわ」
「・・・絶対だぞ?」
そう言って、律さんは出て行きました。
私は、紬さんの言ったことが気になって仕方ありませんでした。
だって・・・まるで私が隠したいことを言ってしまうような言い方で。
「あ・・・あの紬さん」
言いかけた私を遮り。
「わかってるわ・・・ちゃんと聞くから、まずはお風呂に入りましょう・・・」
さきほどまでの雰囲気とは打って変わり、すこしトーンが低めです。
私はそれ以上なにも言えず、お洋服を脱ぎます。
今更になって気づいたのですが、お風呂に入るってことは裸になるということで。
私の裸を紬さんに、紬さんの裸を私が見ると言うこと・・・いや私は目がおかしくなってしまったから紬さんの裸はあまり意識しなくてもいいのでしょうか・
とたんに恥ずかしくなってしまい・・・どうしようかと思っていたら紬さんが一気に私の服を脱がし、タオルを巻いてくれました。
「本当はもっと雰囲気のある感じで楽しみたかったんだけど・・・今回は真面目に話したい事もあるから」
そう言って、また私の手を取ってくれてゆっくりと歩き出しました。
段差があるよ、そこ滑るからゆっくりね、と優しく導いてくれる紬さん。
「じゃあ、シャワーをだすわね」
イスに座った私に、シャワーをかけてくれます。
「髪も洗ってあげるわね」
「じ、自分で洗えますよぉ」
「よいではないか、よいではないかぁ」
ヒヤッとする液体を頭にかけられ、紬さんの細い指で洗われます。
絶妙な力加減で、すごく気持ちがいいといいますか・・・。
「どう千乃ちゃん、気持ちいい?」
「ふぁい・・・きもちいいです」
ずっとやってて欲しいなぁ・・・と思ってしまうほどです。
ちょっとだけむずむずします。
紬さんが洗い流す時に、思わず『あ・・・』と声がでてしまいました。
もっとやってほしいなんて、言えるわけないのでちょっと恥ずかしかったです。
「じゃあ、次は体を洗ってあげるわぁ」
「!?そそそそsれはいいです!大丈夫です!」
さすがにそんなことまでして貰うのは申し訳なさすぎます!
それに体だったら、ちょっとくらい目が見えなくても十分洗えますし!
けれど紬さんは頑として首を縦には振らず。
「いいからいいから!」
そう言って洗いはじめました。
やわらかいスポンジのようなものに泡をたたせ、まずは腕を撫でてくれます。
次の首を、そしてそのまま下へおろしていきます。
なんでしょうか・・・女の子同士でお風呂に入るのは普通って聞いてたのに、こんなに恥ずかしいのは何か理由があるんでしょうか・・・。
私が普通に耐性がないだけならいいのですが・・・もしかして私は紬さんをそういう目で見ているのでしょうか・・・つまりは、私は女の子が好き・・・!!!!
いやいやいや!
確かに紬さんは美人で綺麗で可愛くて優しくて良い匂いもしてやわらかいですけど・・・友達をそんな目で見るわけ・・・ないです、よ、ね?
あと何故か女の子が好きなのかって考えた時に、和さんの顔が浮かんできたのは・・・もう考えるのはやめとこう・・・なんだか変になっちゃいそうです。
「千乃ちゃんの肌・・・きれい」
妙に熱っぽい紬さんの声に、どきどきしてしまいます。
頭に、昨日の水着に着替える時のことを思い出してしまいました。
紬さんの指が私のおへそに、って何を考えてるんですか私は!
つつ、と紬さんの指が背中をなぞって、変な声が出てしまいます。
その声に呼応するかのように、紬さんはさらに指を動かして、背中だけじゃなくて脇やおなかも・・・頭がくらくらしてきました。
変なことを言うようですけど・・・気持ちが良くて、こんなこと今まで感じたことのない感覚でした。
喪失病で視覚を少し失ってしまった私は、失った感覚を補うようにその新しい感覚を受け入れます。
自然と体に力が入るのですが、足や手には力が入らず、むしろ抜けていきます。
「・・・これ以上すると戻れなくなりそうね・・・私が」
紬さんの声が聞こえて、指が止まります。
「今日はどうしてもこれ以上できないけど・・・今度は終わりまで・・・」
どういう意味かはわかりませんが、きっとその終わりまで言ってしまうと私も私でなくなってしまう気がしました。
そして綺麗に洗ってくれて、一緒にお風呂につかります。
ちょっとすでにのぼせ気味ではあるのですが、紬さんと一緒なら。
そして少し無言が続き。
「あのね、千乃ちゃん」
紬さんが口を開きました。
「昨日の事、みんなに話すべきだと思うの」
「・・・え?」
唐突に紡がれたその言葉の意味が私にはわかりませんでした。
何を言ってるんでしょうか。
この間、紬さんは内緒にするって言ってくれたのに。
「千乃ちゃんの病気のことも、症状がでてきたことも、みんなに言ったほうがいいと思うの」
「・・・いや、えっと」
「千乃ちゃんの言いたいことはわかってる・・・この病気のことを言うとみんなに心配かけちゃうとか、もしかしたら嫌われちゃうかもって思ってるのよね?」
一息溜めて、続けます。
「でも・・・もし私がその事実を知らなくて、千乃ちゃんが3年後に急にそのことを教えてくれても・・・嫌だもの」
「・・・・」
「友達だからこそ、教えておくべきだと思うの」
「でも・・・でも・・・皆さんはきっと」
「それも含めて、伝えるの。みんな千乃ちゃんを心配して、心を痛めちゃうかもしれない。けどみんな一緒なら乗り越えられる、千乃ちゃんをもっと支えてあげられると思うの」
だから、ね?と。
「傷つけたくないから言わないなんて・・・そんなのダメよ・・・」
私は何も言えなくなりました。
本当はもっと言いたいこともありました。
どうしたらいいのかわからないんです。
本当は言いたい、皆さんに言ってしまいたいのです。
言ってしまって、楽になってしまいたいのです。
でも、それをすると皆さんはきっと私という存在に少なからずの重さを持ってしまうと思うのです。
可哀想とか、思ってしまうのです。
「大丈夫・・・みんな受け入れてくれるわ。絶対に。そしてみんなで一緒に歩きましょう?」
「・・・・こわいんです。皆さんに嫌われることも、負い目を作って今の関係が壊れることも・・・私は身近なものを失うのがとにかく怖いんです!」
「・・・わかるわ。でも、言うの。言わないといけないの千乃ちゃん」
紬さんはかたくなで。
「お願いします、言わないでください・・・お願いします」
水面に移る私の顔はやっぱりぼやけていて、けどくしゃくしゃになっているのがわかります。
「千乃ちゃん・・・ダメよ、言うの」
「こわい・・・こわいの!紬さんにはわからない、この怖さは!」
一度目の人生では私には無縁だった感覚。
手に入れたかったけど手に入れられなかった友達というもの。
けど、この世界では私には大切な友達ができて・・・せめてこの世界でだけは大切にしていきたい、嫌われて失いたくない・・・そう思っていた。
だから、私には皆さんに伝えてこの夢みたいな世界を壊したくない・・・現状維持でいいじゃないですか・・・。
「それでも言うの、千乃ちゃん!苦しくても怖くても泣いてしまっても、言わないといけないの!」
「なんで・・・どうしてそんなこと言うんですか?」
「私がそうだったからよ。千乃ちゃんに私は自分の心を伝えることができて、救われたの。もちろん怖かったわ。言うのは苦しかったわ。でも勇気を出して伝えて・・・いまこうして千乃ちゃんといることができてるの。友達以上・・・私にとってはそれくらい千乃ちゃんが大切に思えるの。だから・・・千乃ちゃんが1人で苦しむのが嫌なの・・・今は怖くてどうしようもないくらい、震えるのもわかる・・・けど、一生懸命に伝えるの。どんな稚拙な言葉でもいい、噛んでもいい、きっとその先には光があるから・・・今の私みたいに」
ずるい。
そんな・・・そんなこと言われたら。
もう何もいえないじゃないですか。
「大丈夫・・・1人が怖かったら、私が隣にいるから」
手をそっと握ってくれて、言います。
「私の事、信じられない?」
「・・・ううん。そんなこと、ないです」
「・・・ありがとう」
お風呂から上がり、紬さんと私服に着替えてる間も、私はこれからの事を考えて泣いてしまいそうになってしまうのですが、その都度、紬さんが励ましてくれます。
手を握ってくれたり、頭を撫でてくれたり。
思えば、あのお洋服屋さんの更衣室で、紬さんと話してから、紬さんに触れられるのが好きになってしまっています。
おかしいですね。
やっぱり、私って、変な子なんでしょうか。
女の子が・・・好きなんでしょうか。
そんなことはない!と言い切れなくなってきてしまってます。
・・・きっと紬さんのことが好きなだけで、ろくに恋もしたことがないからそう思ってるだけですよきっと、うん、そうにちがいないです。
「どうしたの?」
ぽーっと紬さんを見てたら、首をかしげてこちらを見てくる紬さんと目が合ってしまいました。
慌てて首を振り、なんでもないことを伝えます。
「そう?」
うぅ・・・なんだか紬さんの顔を見れません。
さっきのお風呂でのことも思い出して、綺麗なはだとか濡れた髪とか・・・!!!
もう、考えるのはよしとこうと思いました。
そして、着替えも髪を乾かすのも終わって、リビングに向かいます。
リビングには律さんと唯さん、それに澪さんがいました。
私は澪さんを見て、また怒らせてしまうのではないかと緊張してしまいます。
けど、今の私の隣には紬さんがいて、不思議と怖いものも受け入れられる気持ちでした。
「ゆっきーおはよ~!昨日寝ちゃうんだもん、枕投げできなかったね~」
挨拶をしてくれる唯さん、ですがそれを律さんがおさえます。
そして澪さんがやってきて。
「千乃・・・昨日はごめん!私がバカだった!」
と、いきなり澪さんは凄い勢いで頭を下げました。
私の目がおかしくなってしまったからでしょうか・・・残像が見えるほどの早さでした。
突然のことに私はきっと間抜けな顔をしていたと思います。
だって・・・澪さんが謝ることなんて何もないのに。
けれど澪さんは言いました。
「私・・・千乃に嫉妬してたんだ・・・だからあんなこと言っちゃってごめん!」
「あ・・・いえ・・・そんな」
「本当にごめん・・・それで、あの・・・もう一度、私と友達になってくれないか?」
「え?」
「いや・・・なんていうかその・・・ここから、もう一度はじめたいんだ・・・千乃、私と友達になってくれ!」
そう言って、また残像が見えるくらいのスピードで頭を下げた澪さんに私は駆け寄ってその頭をなんとか上げてもらえるようにします。
「ああああああの澪さん!頭をあげてください!」
頑としてう、動かないです。
「友達になってくれるまで動く気ないぞ、あれ」
「澪ちゃんもなんだかアグレッシブになったね!」
「ま、いい変化だな・・・千乃は困ってるけど」
「千乃ちゃん!澪ちゃんに一言、言ってあげるだけで元通りよぉ~」
そ、そうは言っても・・・なんて言えばいいのか!
「えっと・・・澪さん、私たち、友達です・・・」
すると、今まで以上のスピードで澪さんが顔を上げて私に抱きついてきました。
「本当か!?ありがとう!!」
く・・・くるしい!
首が絞まってます。
でも、澪さんと前みたいな関係に戻れたことに私はホッとしました。
そして、澪さんとも紬さんみたいに仲良くなれたことは嬉しいです。
澪さんの心は、人付き合いの未熟な私にとってはかなりびっくりするもので、まさか私なんかが誰からか羨ましがられるなんて思いもしなかったです。
ふと、気になりました。
紬さんや澪さんは心に溜め込んでいたものがあって、それは律さんや唯さんにもあるのでしょうか・・・?
なんて考えてたのもすぐに終わりました。
紬さんが私の手を握り、頷きます。
あぁ・・・怖い。
3年間、誰にも言う気はなかったものなのに。
紬さんに言ってしまい、今からまた言うのです。
言わなければよかったとは、思えないのですが。
けれど、私が1度死んで生き返ったことだけは言えません・・・そして3年後、綺麗さっぱり消えてしまうことも。
紬さんに言ったことは、私の過去と3年間で感覚が消えると言うことのみ。
これ以上はさすがに言えません。
「それで・・・千乃、昨日は大丈夫だったのか?」
ごくり、と緊張が私を支配します。
右手から伝わってくる紬さんの温かさだけが、私を奮い立たせてくれます。
手を握りながら話そうとする私に何かを感じ取ったのか、誰も何も話しません。
「あの・・・皆さんに聞いて欲しいことが、あります」
そして私は、事故で今まで病院生活だったこと、親がいないこと、そして喪失病の事を伝えました。
きっと3年後には歌うこともできなくなって、何も喋らない人形のようになってるということも。
上手く話せているのでしょうか。
きれぎれに、噛んでしまったり詰まったり・・・でも伝えたのです。
私が話すあいだ、皆さんからの声はなく、また私は顔を上げることはできませんでした。
そしてしばしの静寂。
その静寂は律さんの声によって破られました。
「そっか・・・そんなこと隠してたのか・・・」
怒鳴られるかな、悲しませてしまうかなと思っていたのですが、やれやれ、といった感じで律さんは言いました。
まるで子供のいたずらを叱るように。
「しょうがないヤツだな、千乃は・・・知られるのが怖かったのか?どうせ私たちが傷つかないようにって、そう思ったんだろ?」
その通りで・・・。
「それとも今の関係が壊れるとでも思ったか?」
はい・・・。
「バカだよ、千乃・・・本当に」
すぅ、と息を吸う律さん。
「私たちにも傷つかせろよ!私たちにとってお前は大切な友達なんだよ!お前は・・・いっぱい軽音部にくれた!軽音部の結束!その綺麗な声!期待の新人の唯!他にもいっぱい・・・!お前はいっぱい私たちにくれたんだ!そんな大切な友達なのに・・・なんで1人で背負おうとするんだよ!お前にとって私たちはそんなに頼りないのか!?
そりゃあ今初めて聞いて正直胸が痛いよ!張り裂けそうだよ!それでも一緒にいたいって思ったよなんでかわかるか!?」
「・・・・・・うぅ」
「千乃だからだ!!その綺麗な歌が聴けなくなっても千乃が私たちを感じれなくなっても、一緒にいたいって思うのは私たちの大切な千乃だからだ!」
「うぅ!」
私の目からは大粒の涙がぼろぼろと零れ落ちます。
「千乃・・・」
澪さんの声が聞こえます。
「千乃・・・本当に私、なんて事を言っちゃったんだろう・・・こんなに千乃が1人で頑張ってたのに・・・」
「み、澪さん・・・」
「これからは私も一緒に支える!大切な友達だから!」
「ゆっきー・・・私も一緒だよ・・・だからそんな悲しそうな顔しないで・・・笑ってよぉ」
ずっと、皆さんの顔を見ることはできなかったのですが、今、私の向ける視線にはいつの間にか多くの足が見えました。
それは律さんのもので、澪さんのものでもあり、唯さんのでした。
そして、私をずっと支えてくれていた紬さんも加わって。
「千乃ちゃん・・・もうみんな同じ気持ちよ」
「私は・・・うぅ・・・わたしはぁ・・・これからも、いっぱい、いっぱい自分のことで泣いたりします・・・皆さんといたら迷惑をかけるかもしれません・・・いつまでも、喪失病に囚われて、元気だった過去を思いだして、それにすがって・・・何度も立ち止まって、後ろを振り返ります・・・皆さんはこれからも前に進んでいくのに、私は進めなくなります・・・」
「それはおかしなことじゃないのよ千乃ちゃん。過去を思い出すのはみんなするの。私だって思い出すわ。みんなと出会う前の『琴吹』だった私を。でもね、それはおかしなことじゃないの。後ろを振り返るのは、前に進んでる証拠なの」
「紬さん」
「そうさ。それに何度も言うけど迷惑かけろ、自分だけで溜め込むな!友達だろ!」
澪さんも唯さんも頷いて、そこからはもう私は大声を上げて泣き喚き、紬さんも律さんも澪さんも唯さんも泣き始めて、収拾がつかなくなりました。
ここがプライベートビーチで良かったと思いました。
ただいま午前8時。
本日は快晴で、海は青く、空も負けないくらいに青く、私たちもそれに負けないくらい青かったのでした。
泣かせてしまった。
結局私は迷惑をかけてばかりです。
でも、笑ってもくれたんです。
泣きながら、涙を流しながら、私は鼻水も出てたかもしれません。
抱き合って泣きながら、でも抱き合う体から伝わる皆さんの体温や涙が嬉しくて、皆さんと笑ったのです。
病室で、ただ生きていただけの昔の私に教えてあげたい。
いつの日か私は、こうやって大きな声で泣いて、笑える日がくるんだよって。
それも1人でじゃなくて、友達と一緒に。
神様「最近歌ってへんなぁ・・・」
今回も読んでくださってありがとうございました。
おなべが美味しい季節になりましたので、そろそろ梅酒片手にコタツでゆっくりしたいです。
全然関係ない話なんですが、今回のガキ使はなにをやるのでしょうか・・・笑ってはけないやってほしいなー。
今回の話から千乃はもうちょっと明るくなりアグレッシブになります。
けど、それがまた問題を起こすのですが、それはもうちょっと後の話になりますです。
次回もなるべく早く更新できるように頑張ります。