凄くいい曲でした。
なんだか知らないものを誰かから教えて貰えると言うのが嬉しくて嬉しくて・・・。
また何かオススメありましたら、教えていただけたら嬉しいです!
そして更新が遅れてしまってすいません・・・。
ラジオ体操、第一。
きっと誰もが聞いたことがあると思われる音楽。
聞くだけで夏の始まりを感じ取ることができ、これから訪れる素敵な長期休暇および友達と遊ぶことに胸を膨らませることは間違いないはずです。
かくいう私も、やったことがある・・・はずです。
なんとなく覚えています。
内気で人見知りだった私には、前の世界では友人がおらず幼稚園の時代は親に連れられて、地域の集まりでやっていました。
なんで、こんな話をしているかといいますと、今まさにそのラジオ体操をしているからです。
たくさんの子供やおじいちゃんおばあちゃん達と一緒に。
ことの始まりは合宿から帰ってきたその日。
私を連れて、紬さんはある病院へと向かいました。
琴吹病院。
なんと琴吹家が作ったという病院だそうです。
ここはお金の少ない人達や、難病を抱えている人達が多く入院されているそうで、中には紬さんみたいにいわゆる令嬢と呼ばれる人達も入院されているとか。
普通の病院よりも優秀なお医者様が在籍し、日々研究も進み、技術を進歩させているそうです。
私の喪失病を紬さんは治療しようとしてくれて連れて来てくれたそうです。
紬さんに手を握ってもらって連れて行ってもらったお部屋には見るからに優しそうなお爺さんがいました。
しかも外国人です!
お口が見えなくなってしまってるくらいにお髭を蓄え、目元は少し垂れているこのお爺さんはこの病院で一番の名医さんだそうです。
紬さんも小さいころは良くお世話になっていたんだとか。
「やぁ、元気だったかい?紬ちゃん」
「はい。先生も」
「ほっほ。元気の秘密はな、子供達の笑顔じゃ」
そう言って笑ったお医者様は凄く嬉しそうで、そして私を見ました。
「君が千乃ちゃんかな?」
私の名前が呼ばれ、そのことに驚いてしまいました。
「あ、はい。湯宮千乃と申します・・・」
「そう畏まらんでもええ。話は紬ちゃんから聞いておる。とは言っても全部ではないがの」
にっこりと笑い、あったかいレモンティーとクッキーを出してくれました。
それを飲むようにいわれ、口に含むと心のうちからホッとしました。
あったかい・・・。
「儂のことはトムと呼んでおくれ。ここの子供達からはクマ先生と呼ばれとるがの。さて・・・この老いぼれに詳しく話してくれるかな?」
お髭を触りながら、またにっこりと笑いました。
なんだか笑うのが似合うと、そんな事を思ってしまいました。
なんと言ったらいいものか・・・信じて貰えるだろうか・・・頭の中で色々な考えが浮かびましたが、紬さんは隣で、両手で私の手を握ってくれたのでゆっくり話し始めることができました。
そして、私は自分の事を話します。
事故にあったこと、両親がいないこと、喪失病のこと。
話している最中、お爺さん・・・じゃなくてトム先生は何も言わず、ただうんうんと頷いているだけでした。
そして話し終えると、少し沈黙がこの場を支配します。
「・・・にわかには信じられん話じゃ」
「でも先生、本当なんです!千乃ちゃんは喪失病なんです!」
「あぁ、嘘を言っているというわけじゃなく、聞いたこともないから驚いているだけじゃ・・・喪失病か・・・それにご両親も。辛かったじゃろう・・・。
聞きたいんじゃが、そう診断されたのじゃろう?どのお医者さんに診断されたか覚えておるか?」
「・・・神様、でしょうか?」
2人とも怪訝な顔をしています。
普通の反応ですよね。
急に神様に言われたなんて、誰も信じませんよ。
私が以前いた世界では、喪失病は世間に認知されていたのですが、こっちでは私1人と神様は言っていました。
だから、説明の仕様がないのです。
「あ、あの・・・本当なんです・・・」
何を持って本当だと断ずるのか・・・そう思っているとトム先生は頭を撫でてくれて。
「うむ、信じるとも」
そう言ってくれました。
「大きな声では言えんが、この病院にもたくさんの患者がおる・・・中には見たことも聞いたこともない病気の人もおった。そういった患者は神様が選んだ人なんじゃと思っとる。
つまりじゃな・・・その人なら乗り越えられると、神様は思ってるんじゃ。
だから千乃ちゃんに神様が言ったというのもわかる。千乃ちゃんなら負けないと儂も思っとる。
それに、新しい病気というのは珍しくない。
なんだって始めてはあるのじゃ。その新しい病気に名前をつけて初めて世間に認知させることができる。だから千乃ちゃんが抱えておる病気も信じる・・・辛いかも知れんが、君が始めての患者さんというわけじゃ。そういう患者をわし等はなんとか治療できんかと思って日々研究しておる。だから、千乃ちゃんの喪失病も、きっとわし等が何とかしてみせる」
今まで何人もの患者さんを救ってきたであろうトム先生の手は大きく、わしわしと頭を撫でられて、私の髪はクシャクシャになってしまいました。
でも嫌ではありませんでした。
優しい顔で私を見て、手のひらから伝わる温度が・・・何故か私のお父さんを思い出させました。
今はもうほとんど思い出せなくなっているそのお父さんを。
「先生・・・千乃ちゃんは高校を卒業するくらいに喪失病は進行しきってしまうって・・・」
「うむ・・・あまり時間はないのぉ」
「あの・・・無理を言ってるのはわかるんですが・・・」
私は言います・
「入院とか、したくないんです・・・」
「ふむ・・・しかし入院してもらったほうが何かあったときにすぐ対応できる」
「はい・・・治療して貰う身分でこんなおこがましいこと言えた立場じゃないんですけど・・・それでも、私は高校に通っていたいんです。大好きな紬さんや皆さんと・・・叶えたい夢があるんです」
「・・・・・」
「お願いします。きっと入院してしまうと、羨んでしまうと思うんです。元気な皆さんと、自分を比べて勝手に落ち込んでしまうと思うんです・・・そんなことしたくないんです。
大好きな人をそんな風に思いたくないんです・・・」
「千乃ちゃん・・・」
「だから・・・お願いします!」
「先生!私からもお願いします!」
紬さんが一緒に頭を下げてくれます。
「ふむ・・・ふむ!わかった。高校に通うことは良いことじゃ。負けない心を育むことができる!それに、病気が治った千乃ちゃんはそこからも人生が続いていくからのぉ・・・勉強はしとかんとな!」
ニカっと笑うトム先生。
あぁ・・・なんて安心する笑顔なんでしょうか。
「紬ちゃんよ、いい友達を得ることができたんじゃな・・・昔はあまり楽しそうではなかったが、安心したわい」
「はい・・・お父様の反対を押し切って自分で高校を選んでよかったと思っています・・・軽音部の皆さんと出会えたこと、今まで経験したことのないことを沢山できたこと・・・そして、親友が出来たから」
そう言って、こちらを見て笑ってくれました。
親友!?
・・・照れくさいです・・・だって私の言葉でもあるのですから。
「あいわかった!じゃが、通院という形でほぼ毎日来てもらうことになるぞ?」
「はい、大丈夫です!」
「千乃ちゃん、クラブが終わったら私がそのまま送ってあげるから安心してね!」
「え、や、そんな、悪いですよ!」
「私が好きでやってることだからいいの!先生、私も付き添いできていいですか!?」
「ふむ・・・儂としては歓迎するが、千乃ちゃんもいいかの?」
お紬さんがきらきらした目で私を見ている・・・気がします。
病院という場所は、私にとってはあまりいい思い出がある場所ではなく、トム先生がどんなに良い人でも、やっぱり少しばかり緊張して足がすくんでしまいます。
なので、紬さんが一緒にいてくれると凄く安心はできるんです。
「・・・・・いいんですか?」
「もちろんよ!」
「じゃあ・・・お願いします」
「うん、任せて!」
「うむうむ!そうじゃ、夏休みの間はなるべく朝に来てもらえるかの?ちょっと頼みたいこともあるのじゃ」
「わかりました・・・あ、えっと、その・・・治療費って大体いくらくらいなんでしょうか・・・?」
神様曰く、高校生活の間分はお金が困らないくらいあるといっていましたが、病院の治療費の相場がわからなくて、恐る恐る聞いてみます。
「おぉ、そうじゃったな・・・うむ、明日祖手も含めて話すとしようかの。今日はもう遅い、帰ったほうがいいじゃろ」
「はい、ありがとうございました」
「先生、よろしくお願いします!」
「うむ、気をつけてな」
そして、私たちは病院を出ます。
「千乃ちゃん・・・私、一緒に歩くからね」
そう言って、紬さんは何も喋らなくなりました。
一緒に歩く、その言葉にどれだけの意味が込められていたのでしょうか。
私も、ただ、ありがとうと言ったきり、口を閉じました。
この心地いい空気を、味わいたくて。
翌日、朝、いつもより早めに起きて紬さんと駅で待ち合わせをしました。
病院からは駅から歩いて30分ほど。
車だと10分かからないそうです。
「おはよう千乃ちゃん!」
「おはようございます、紬さん」
麦藁帽子に、スカート、白いカーディガンの紬さんはやっぱり絵を切り抜いたように綺麗です。
周りの人達も見ているのがわかります。
「大丈夫だった?ここまで何もなかった?転んでない?」
「大丈夫ですよ。視力が失われたって言ったって、全部見えなくなったわけじゃないですから!それに、距離感だけはどうしても慣れませんけど・・・」
「今日、病院に行ったときに白状借りとこう?」
「えっと・・・」
確か、目が不自由な人が持って歩く棒のことですよね?
・・・あまり持ちたくない、というのが心情です。
だって、それを持ってたらやっぱり周りの人にすぐ気づかれてしまうし・・・なにより自分はどうしようもなく病気なんだと思い知らされそうで。
いや、これは独りよがりですよね。
心配してくれてる友達がいるのに。
「そう、ですね・・・」
だから、私は借りることができればいいなと思いました。
これで少しでも皆さんの不安が解消されれば、そんなに嬉しいことはないのですから。
そして病院に着きました。
受付で用件を伝えると、トム先生の部屋へと案内されました。
扉を開けると、昨日と変わらない先生の顔があり、安心してしまいます。
「おはよう、2人とも」
「「おはようございますトム先生」」
時刻は朝の8時。
「うむ、じゃあさっそく検査のほうを・・・の前に、千乃ちゃんに頼みたいことがあると昨日言ったね?」
「えっと、はい」
「・・・千乃ちゃん、この病院には沢山の患者がおる。その中には身寄りのない子供やお年寄り、わけありの患者もおる・・・というかほとんどがそうじゃな・・・」
しみじみと語るトム先生。
「無理にとは言わんのじゃが・・・できたらここの患者と仲良くしてやってくれんか?」
「え?」
「入院している患者、特に子供達は長いこと入院してるものばかりでな、あまり病院の外には出れんのじゃ・・・出たいのはわかっとるんじゃが、それはできん」
なぜ?と顔に出ていたのでしょうか。
トム先生は困ったように、紬さんは下を向いて。
「外に出られるほど、みな健康じゃない・・・あんなに小さな子供達も・・・琴吹病院はそういった、他の病院では受け入れ拒否した患者を積極的に受け入れておるんじゃ」
「・・・・そう、なんですか」
「うむ・・・外が恋しかったり、外の人と話したかったり・・・目に見えての。じゃからどうか友達になってやってはくれんだろうか・・・」
老いぼれの頼みじゃ
頭を下げるトム先生に私は慌てて駆け寄り。
「あ、頭を上げてください!むしろ私に力にならせてください!」
入院している時の心細さは、良くわかっている。
あれは辛いものです。
「すまん・・・ありがとう!」
「先生、私も力になるわ!」
「紬ちゃんまで・・・ありがとう!」
そう言って私と紬さんを抱きかかえ、嬉しそうに涙を流すトム先生は本当に優しい人だと再認識しました。
「そうじゃ、昨日、治療費と言っておったが、これがそうじゃと思ってくれ」
「え・・と?」
「千乃ちゃん、つまりお金は要らないって事!」
「え、えぇ~!?」
「いいんじゃ!わしが一番ここで偉いから!」
豪快に笑うトム先生に笑顔の紬さん。
もしかして、昨日のうちに紬さんが何か手を回してくれていたのかと思ったけれど、このトム先生の態度はきっと今、初めて決めたんだと思います・・・。
でも、私としてもお金がかからないことはもちろん、昔の私みたいな子供達の力に慣れるなら・・・そう思いました。
「よし!この病院では朝にラジオ体操をしておっての。もうそろそろ始まるから2人も一緒に来たらええ。朝の体操は気持ちええぞ~!儂も毎日やっとる」
有無を言わさず、私たちを連れて行くトム先生。
今更ながらトム先生は体が大きいことをここに明言しておきます。
縦もさることながら、横も・・・なんだか本当にクマさんみたい。
そして、中庭らしきところに到着。
すでに多くの患者さん達が集まっていました。
子供も多く、その子供達は皆がみんな、患者なんだと思うと可哀想だと思ってしまいます。
でも、長い入院を経験している人からしたら、そういった同情というものは苦でしかないというのは身をもって体験しているので、そういった目では見ないように気をつけます。
「おはよ――――!!!!」
トム先生の大きな声に、患者さん達は大きな声で返事をします。
「「「「「「「「「「おはよ――――――!!!」」」」」」」」」」
「うむ、ええ元気じゃ!今日はみんなに紹介したい人がおる!この2人じゃ」
広場にいる皆さんの視線がこっちに向いたのがわかります。
「ほれ、自己紹介」
「え、え?えっと・・・私は・・・その」
広場には多分ですけど50人くらいいると思います。
そんな中で自己紹介・・・恥ずかしい!
なのでドモってしまいます。
皆さんも、どうしたどうした?みたいな感じでざわざわし始めました。
うぅ・・・貝になりたい。
「琴吹紬です。今日からみんなと友達になれたらいいなと思ってます。よろしくお願いします」
紬さんが、割って入ってくれたので、視線がそっちに向かいます。
紬さん・・・ありがとうございます。
「そしてこっちが私の友達の・・・」
「湯宮千乃です。わ、わたしも友達になりたい!・・・です」
よろしくお願いします、と頭を下げます。
紬さんがふってくれたのでその勢いに乗って自己紹介をしました。
声の強弱がバラバラだったと思われます。
うぅ・・・恥ずかしい。
「・・・・・・・」
周りの人達は何も言いません。
なんででしょうか・・・もしかして私のせい!?
変な自己紹介をしてしまったからでしょうか?
しかし。
「お姉ちゃんたち、きれ~」
きれ~・・・きれー・・・きれい・・・綺麗?
1人の女の子、おそらくは小学校低学年くらいの女の子がそう言いました。
綺麗・・・確かに紬さんは綺麗です。
私もそう思います。
でも、私自身はそう思いません。
でも、この子は『たち』と言いました。
お世辞でも嬉しいなと。
それをかわぎりに、他の皆さんもいっぱい歓迎してくれました。
男の子達はやんちゃで、女の子達は色んな質問するほど好奇心旺盛で、病院に長い間入院しているとは思えないほど元気いっぱいでした。
そして冒頭のラジオ体操に戻ります。
歓迎してくれた子達の中でも特に目立つのがしんのすけ君にとおる君、まさお君にぼー君にねねちゃんの5人組。
ラジオ体操に不慣れな私たちに、お手本を見せてくれます。
良い所を見せることができるからか、ちょっと自慢げなのが可愛いです。
ラジオ体操自体は3分くらいなので、体力のない私でもなんとかついていけます。
というか、体操で疲れてしまう私っていったい・・・。
体操が終わって、皆さんが各部屋に戻る時、私たちも一緒にと言ってくれたのですが、トム先生が私の検査があるからと言うと凄くごねられました。
まだ会って少ししか経ってないのに、ここまで言ってくれるのは嬉しいですね。
だから。
「明日からも毎日会えるから・・・ね?」
そういうと、目をキラキラさせて。
「約束だよ!?」
と、指きりげんまんをしました。
5人と。
いつまでも私たちに手を振ってくれる皆さんに後ろ髪を引かれる思いではあったのですが、そこをあとにします。
「どうじゃった?」
「はい、みんなとってもいい子達でした」
「そ、それに・・・また約束してくれました」
「うむ!これからもよろしく頼むわ!わしには最近の子達のゲームやらアニメやらはわからんでな・・・」
寂しそうに背中がすすけて見えたのは気のせいだと思いました。
そして検査が始まり、見たことのない機械の中をくぐったり、写真を取られたり・・・気づいたらもう日が落ちていました。
その間も紬さんは何一つ文句を言わず、ずっと寄り添ってくれていました。
検査は終わり、明日からは研究とお薬の開発、などなど・・・だそうです。
ここまでしてくれるトム先生と紬さんのためにもなんとか病気を治せたらいいなと・・・いや、そんな人達とこれからも生きていきたいから、なんとしてでも病気を治したいと思いました。
紬さんと病院をあとにして、駅まで歩いていきます。
その手には、トム先生に借りることができた白杖。
周りの人達の視線が、今朝とは違うことを感じながら歩いてゆきます。
明日の朝、また駅で待ちあわせと約束をし、別れます。
紬さんの去り際に私は大きな声で、ありがとうございましたと伝えました。
遠く見える紬さんに届いたかは私の目にはわかりませんでした。
ある日の午後。
紬さんと病院から帰って自室でただ独り。
ふり返ると、まだ夏休みが始まって少ししか経っていないのですが、様々なことが起こってその出来事に振り回される毎日を過ごすことができています。
軽音部の合宿は、練習できた時間は微々たる物ではありますが、一層絆を深めていい感じだと思います。
練習していた曲はあと少しで完成できると思います。
夏休みが明けたら学園祭がありますので今から緊張してしまいます。
澪さんからのど飴を食べると良いと言う事、クーラーにあたってお腹を冷やさないようにと教えていただきました。
あとは・・・学生の身分なので宿題はもちろん、復習と予習は欠かさないようにしています。
家事はなかなか板についてきたと自負しています。
お料理のレパートリーも結構増えてきましたし!
喪失病でぼやけるようになった私の視界で、最初は慣れない事ばかりでしたが、落ち着いてゆっくり確実に物事に当たるようにしています。
その甲斐あって、最初はあちこちぶつけていたのですが、家の中だったら普通に家事が出来るようになりました。
軽音部の皆さんが練習で集まるたびに心配して、家事などの手伝いを申し出てくれるのですがそれは丁重にお断りしています。
また怒られるかもしれませんが、やっぱり貴重な夏休みを、私の手伝いで消費するのではなく有意義に過ごして欲しいということ・・・あと、私自身、1人でやっていきたいと思っているからです。
今はまだ視力だけですが、これからもっともっと大変になっていくと思うので、今から少しでもせめて家の中だけは目をつぶっても何でも出来るようになりたいと思っているからです。
全てのものは定位置を作り、使ったらすぐ同じところへ戻す。
たったこれだけで今のところはなに不自由なくやっていけているのだから、人間と言うのはすごいと思います。
まあ、もともと私の住んでいる家にはモノが少ないのですが。
紬さんに連れて行ってもらった病院でまた新しい出会いを得ることができました。
あれから喪失病は進行を見せず、いつ来るのか私は緊張しています。
これが合宿で発症したからまだ良かったのですが、学校だったらどうなっていたのでしょうか・・・。
そう考えるとちょっと怖くなってしまいますね。
神様から貰った日記(?)なのですが、不思議なことに何ページ書いても終わりがありません。
恥ずかしい話ではあるのですが、私は1日に何回もこの日記を書きます。
多いときだったら5ページくらい・・・。
書きたいことが多すぎるんです。
人から見たら、小さなことでも私にとったらそれは全部大切なことで。
ついついいっぱい書いてしまうのです。
だから、もうそろそろページが尽きると思ってたのですが、一向に終わりがないのです・・・いや、嬉しいことではあるのですが。
そういえば神様がなんだかそんな事を言っていたような気がします。
まだまだ厚さからしたら教科書ほどしかないのですが、それでも私の全てが詰まってるこの日記・・・誰かに見られたら恥ずかしいですね。
私が喪失病で消えてしまうとき、この日記も持っていくことはできないのでしょうか・・・。
持っていけたらいいなぁ、と思う私です。
っと、電話です。
時間はお昼過ぎです。
この時間ですと、律さんでしょうか?
「はい、湯宮です」
しかし、電話の相手は律さんではなく。
「あ、もしもし千乃?」
和さんでした。
自分でも笑ってしまうほど、テンションが上がってしまいます。
「和さん!」
「こんにちは千乃。元気そうね」
「はい!あ、あの和さんも、お変わりありませんか?」
「そうね、友達から夏休みに入って一回も連絡がないこと以外は変わりないわ」
その言葉に私は動揺してしまいます。
「あ、あああの、夏休みで、と、と、友達にお電話していい時間帯が、わからなくて、本当は何回かかけようとしたんですけど、結局かけられなくて・・・ごめんなさい・・・」
「冗談よ千乃。でも、そんなの気にしないで何時でもかけてきなさい。迷惑だなんて思わないから」
「・・・ありがとうございます」
「うん。それで用件のほうなんだけど、千乃、前言ってたお祭りなんだけど、明日だけど大丈夫?」
「あ・・・えっと、その・・・」
そう、和さんと夏休み前にお祭りに行く約束をしてました。
けど、私はそれを断ろうと思っていたのです。
だって目が見難くなって、そこから和さんに喪失病のこと、ばれてしまうと思うととてもじゃありませんが行けません。
「・・・?千乃?」
だから断ろうと思っているのです。
「もしかして・・・都合悪い?」
「いえ・・・明日、行けます」
断ろうと思っていたのですが、できませんでした。
だって、和さんとお祭り、凄く楽しみにしてたんです。
バカですよ、本当に。
どうするんですか、これから。
「そう?良かった。じゃあ明日、夕方6時くらいに駅で待ち合わせでいいかしら?」
「は、はい・・・お願いします」
電話が切れたあと。
どうしましょう・・・。
神様「めずらしくムギがまとも・・・・・・・・・・だと・・・・・・?」
今回はムギちゃんのダディあ経営する病院にて、新しい出会いの回でした。
この病院で書きたい話が合ったので、今回は1話まるまるその前準備で使わせて貰いました。
ちなみにトム先生ですが、フランス人です・・・どうでもいいですね。
あと、患者の中にもしかしたら知ってる名前が出てきていたかもしれませんが特に意味はないのです。
知ってたらイメージしやすいかな?とおもっただけです・・・すいません。
そして次は和ちゃん回です・・・私は和ちゃん大好きなのでどんな話にしようかと今からわくわくしています。
また機会がありましたら読んでくださると嬉しいです。