このサイトをもっと前から知っていればなぁと思います。
これは疑問なんですが、1話は大体何文字がベストなんでしょうか。
気になります。
今回は原作に入る導入です。
よろしくお願いします。
文才欲しい・・・
眩しい。
幻聴だったのか、よくわからないけれど、あの声がしてから、光が眩しい。
喪失病によって、8歳の頃に視覚を失ってから、見ることの無かった光が、今、目の前に。
これは夢なのでしょうか。いつかは覚めてしまうのでしょうか。
だったら、見ないほうがいい、なんてもう言わない。
文字通り、夢にまで見た光景が、光が。
忘れていた。これが光。本当に。
なんて、眩しい。
そして、つんと、鼻に何かが香る。わからない、なんだろうこの匂いは。
昔、私とお父さんとお母さんで歩いた光景を思い出した。
たしか、あれは、桜っていう花でした。
あぁ・・・この匂いが。
深呼吸するように、胸いっぱいに息を吸う。
音が聞こえる。騒がしいような、でも決して耳障りではないような、そんな音が。
本当に・・・私は・・・。
涙が溢れてくるのがわかりました。喪失病により全てを無くした私が、涙が頬を伝うのがわかったんです。
あとは、目を開けるだけ。それだけで、私は、きっと。
・・・・でも、これが嘘だったらどうしよう。
全部、私が作り出した妄想だったら。目を開けて本当は病室で寝たきりの私だったら。
あんまりにも、惨め過ぎます。
目を開けるのが怖いです。
閉じている目に、ぎゅっと力が入ってしまいます。
懐かしい、手の感触が、握りこぶしを作っているのがわかりました。ビリビリと血が流れているのがわかりました。
目を開けるのが怖いです。
でも、それ以上に、何も出来ないことが怖いということを、私は知っているから。
そっと目をあけました。
あぁ・・・あぁ・・・。
目に飛び込んでくる、全ての光景が、信じられません。
凄い・・・私、制服を着てます。ペラペラの紙のような患者衣じゃない、かわいい制服を。
自分の手を見ると綺麗な手でした。チューブが刺さっていた痕もない。
木って、あんなに大きいのですか。桜って、こんなに綺麗なんですか。
空って、こんなに青いんですか。
あ、涙が止まりません。
私、本当に、一回死んで、生き返ったんだ。
本当は、何度も死にたいと思った。お父さんとお母さんがいない世界で、一人で生きていくなんて怖かった。
寂しかった。私も2人のところに行きたかった。でも、生きていれば、良い事があるって思ってた。喪失病に罹って、全部失って、それでもその思いは捨てられなかった。
何度も何度も、死にたいと思ったけど、その分、何度も何度も生きたいと思った。
生きてて・・・生き返らしてくれて、本当にありがとうございます。
感動は止まらないですけど、とりあえず周りの状況を確認しなくちゃ。
現在、私は自分の足で、校門の前に立ってます。
立ってる・・・立つことができてる・・・また泣きそうです。
えーと、私は今、制服を着て、校門の前に立っています。
高校名は・・・私立桜が丘女子高等学校?
校門に掲げられている名前を見ていると、どんどん同じ制服を着ている女の子達が、校舎へと向かっていく。
そちらへ目を向けると、入学式とでかでかと書かれた立て札が立っていました。
なるほど、入学式ですか。
でも、私、このまま会場に向かってもいいんでしょうか。
私の最後の記憶だと、病室で寝てて、声が聞こえて・・・って感じなんですけど。
なんとなしに、鞄に目を向け、中に手を入れてみる。
そこには筆記用具と、一冊のノートが入っていました。
とりあえず、ノートに手を伸ばしてみると、表紙に
『千乃ちゃんへ』
と書かれていました。
明らかに私のものではいですけど、私宛にはなってるので、恐る恐るあけてみると、メッセージが書かれてました。
『千乃ちゃん。無事にそっちの世界へ送ることが出来てよかった。
もう気づいているかも知れないけど、僕が君を送った、いわゆる転生をさせた者です。
神様って呼んでくれても、あながち間違いではないです。
まぁ僕のことはどうでもいいです。
千乃ちゃん。君はこの世界では、家族はいない。小学校の入学式の日に両親を事故で無くした。これは変わっていない。ただ千乃ちゃんだけは事故にあわなかった。そんな世界に君は今いる。事故にあわなかった君は、両親の遺産や保険を全部相続し、祖父や祖母が君の身元引受人になってくれている。といっても君は今日から一人暮らしだ。
祖父母らは遠い田舎にいる。お金も、高校三年間だけなら暮らしてゆけるほどある。
だが、喪失病だけはなくすことは出来ない。これは絶対なんだ。
この三年間でまた症状は出てくる。
きっかり3年後、全ては失われる。それだけは忘れないでおくれ。
さて、これから君は、高校三年間を、本来ならなかったはずの人生を歩んでいく。
それがどんな人生になるかは僕にもわからない。けど、君は、君なら大丈夫だ。
このノートは餞別に贈らせてもらう。特別製でね、思いを込めることができるノートなんだ。いきなりこんなこと言われても普通は理解できないだろうが、思いを込めたこのノートのおかげで、ややこしい過程を吹き飛ばして、理解できたと思う。これがそのノートの力だ。
今、僕が記したのは文字だが、使い方によっては面白いことも出来る。有効活用してくれ。
さて、まずは、入学式だ。君が夢見た入学式だ。高校生活だ。
楽しんでおくれ。
P.S 家とか生活用品とかは一式用意してある。生徒手帳に住所も書いてあるので、そこに帰るように。』
・・・・なるほど。神様だったんですか。びっくりです。
事故にあって、喪失病になって、神様を恨んだことはいっぱいあります。
恨まなかった日なんてなかったかも知れません。
何で私が。なんでお父さんとお母さんが。
そう思わなかった日は一度もありません。
なのに、なんで今更、生まれ変わらせてくれたんでしょうか。
でも、いまだけはどうでもいいです。
本当に、ありがとうございます。
・・・今まで流さなかった分、涙もろくなってしまっているようです。
とにかく!
私は、人生を、やりなおすんだ!
やりたいことはいっぱいあります。3年間で全部やることが出来ればいいな。
とりあえずは、校舎に向かいましょう。
お父さん、お母さん。
千乃は、高校生になりました。
新入生の列に並び、校長先生が挨拶をしています。
周りの人達は期待を胸に、いい顔をしています。
けど私は・・・上手くやっていけるんでしょうか。
ずっと病院で、他者と交わることをしてこなかった私は、上手くやっていけるんでしょうか。
友達なんて、いなかったんです。友達の作り方なんて知らないんです。
私の世界は、お医者さんに借りていた音楽プレーヤーの中の歌だけ。
もしも、嫌われちゃったらどうしよう。不快な気持ちにさせてしまったらどうしよう。
いじめられたら、どうしよう。
おかしいです。
あんなに夢にまで見た世界なのに。
今、私は不安でいっぱいです。胸が苦しいです。気持ち悪い、です。
その後のことはあんまり覚えていません。
入学式が終わり、クラスに案内され、担任の先生が明日からの予定について、連絡をしていたのはかろうじて覚えています。
そして、先生の話が終わり、解散となったのですが、まだ帰らない人のほうが大勢で。
友達になったであろうグループが、話に花を咲かせています。
席に着いていた私ですが、
周りの人達が、こちらを見て何か言っているような気がしました。
けど私は、小さくなるばかりで、動けずにいました。
もしかして、何かもう、ミスをしてしまったんでしょうか。
あの子は変なヤツだと、指を指されているんじゃないでしょうか。
心臓が痛いほど、鳴っていて、手のひらがじんわりと、汗ばんでいます。
視界が滲んで。
私は、いったい何をしているんでしょう。
やり直すって、決めたのに。
気づけば、屋上にいました。
・・・この学校は、屋上が開放しているんですか。まるで、病院みたい。
気分が沈んでいきます。
病室で、寝たきりだった私は、この生活を手に入れたかったはずなのに。
それなのに、今ではもう、いなくなってしまいたい気分で。
自分で自分を抱きしめるように、小さくなって座り込んだ私は、情けない気分でいっぱいで。
どのくらいの時間がたったんでしょうか。
今では、もうほとんど生徒もいなくなり、寂しさが残る夕日を見て。
私は。
何のためにここにいるのかと。
改めてそう思いました。
生きたいんです。
3年後には消えてしまうけれど、それまで死にたくないんです。
光が見たいんです。
高校生活を送りたいんです。
カレーを、お母さんの教えてくれたカレーを食べたいんです。
花火もしたいんです。
旅行もしたいんです。
恋愛もしてみたいんです。
そして、それは、一人でじゃなくて。
誰か、素敵な、友人と。
・・・はい、私は友達が欲しいんです。
人と向き合うのは、怖いけれど。
付き合い方なんてわからないけれど。
いっぱい友達が欲しいんです。
いや、いっぱいじゃなくていい。
ほんの一握りでいい。
私のことを大切に思ってくれる、そんな友人がほしいんです。
私が困っていたら、いや私だけじゃなくて、誰かが困っていたら、助けてくれるような。
他人に対して、真剣になれるような。
そんな友人が欲しいんです。
そして、私も、そんな風に思える人間に、なりたい。
決意はできました。目標もできました。
あとは、私が動くだけ。
あ、あと、思いっきり、歌いたい。
・・・胸が高まる。
自然と、頬が上気する。
今から私がやることを思っただけで、私は私でなくなるような、そんな感覚がします。
でも、決めたから。
これはその証。
これからも、いっぱい迷ったり、不安になったりしてしまうと思うけど。
でも、この日を忘れない。
私が生まれ変わった日。
私が生まれた日。
私が決めた日。
私が、歌った日。
「Let It Be」
神様「ボッチはあかん・・・」
視点をどうするか、それが問題です。
次くらいに、原作キャラが登場します。
読んでくださった方に、感謝です!