けいおんにもう一人部員がいたら   作:アキゾノ

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卒業式が間近です。
いよいよ社会人になるのか・・・想像できませんね。
働き始めたら、こうやってサッカーとかゲームとか、このお話を書くことも出来なくなるのかなぁと思うと悲しくなっちゃいますね。

出来る事ならば、細々とでもいいから続けて生きたいと思いました。


これからもよろしくお願いします。


第32話

Side 千乃

 

 

肌を焼くような夏が終わり、季節は何かに備えるような実りの秋へと移った。

秋。

それは読書の秋、スポーツの秋、芸術の秋。

そして、食欲の秋。

 

 

「千乃って本当に美味しそうにご飯を食べるよね」

 

 

信代ちゃん(以前と同じようにちゃんづけで呼んでと言ってくれた)が若干、呆れたように私に言います。

現在、クラスにてお昼ご飯。

仲の良いグループでそれぞれが食事をしている。

私も和ちゃんと唯ちゃん、信代ちゃんと一緒に席を囲んでいる。

唯ちゃんは、妹さんの憂さんのお手製であろう、色とりどりのお弁当。

お姉ちゃんへの愛を感じさせられるそのお弁当は見ていて羨ましい限りです。

和ちゃんのお弁当はシンプルではあるものの、しっかりと栄養を考えられたもの。

小さめのお弁当箱も和ちゃんぽいです。

対照的に信代ちゃんは大きいです。

中身も豪快で、白いご飯が一面にしきつめられていて、しょうがのいい匂いがする豚肉が目に付きます。

 

 

「そうですか?」

 

 

「いいことよ。仏頂面で食べられてもこっちまで美味しくなくなるし」

 

 

「そうそう!それに信代ちゃんもすっごい笑顔だよ~」

 

 

「いや~・・・運動するとお腹へっちゃって!放課後には部活もあるしさ」

 

 

「バスケ部、どう?」

 

 

「うん、そろそろ地区大会予選だね。一生懸命練習してるよ~。レギュラーになれるかわからないけどさ、この間の軽音部見てたらやる気出てさ。絶対に選ばれてやるって感じ!」

 

 

「嬉しいね~ゆっきー」

 

 

「はい・・・嬉しいです」

 

 

「結構、影響されてる人達は多いよ。バスケ部でもいっぱいいるし」

 

 

「あれから知らない人に声をかけられることも増えたよね~」

 

 

「男子もいたらきっとモテモテだったね」

 

 

「!!」

 

 

「そんなに驚かなくても・・・はっはーん。千乃、男性経験ないな?」

 

 

「ちょっと信代」

 

 

「いいじゃん、気になるでしょ?」

 

 

「男性経験・・・?」

 

 

「簡単に言えば、男の子と付き合ったりデートしたことある?ってこと」

 

 

「ななないですよぉ!」

 

 

「ま・・・聞かないでもわかってたけどさ。そこまで慌てるなんてかわいいなぁ」

 

 

「まったく・・・でも軽音部は人気って言うのは当たってるわ。現に澪のファンクラブが出来てるくらいだし」

 

 

秋山澪ファンクラブ。

あの文化祭でのライブ以降、澪ちゃんにファンクラブができたと言うことはもう周知の事実で私たちも驚きました。

別に、澪ちゃんに!?っていう驚きではなく、物語の中のお話みたいで驚いたのです。

澪ちゃん本人が一番驚いていましたが・・・。

ファンクラブの人数は今も増えているらしく、会員カードまであるらしいです。

それでよく律ちゃんが澪ちゃんをからかっているのが最近の部室でのやりとりです。

 

 

「澪は美人だもんねー」

 

 

「私は~?」

 

 

「唯は・・・かわいい系ね」

 

 

「昔からよく口に食べ物を溜めると言うか、詰め込むタイプだったわね・・・その認識で間違いないわ」

 

 

「えー、私も美人がいいなぁ」

 

 

「なら宿題も家事も自分でやって、磨くことね。憂に任せっぱなしにするんじゃなくて」

 

 

「・・・かわいい系のほうがいい!」

 

 

「あ、あはは」

 

 

「千乃・・・もかわいい系かな」

 

 

「あら、千乃の噂もよく聞くけど、認識は人それぞれって感じね。千乃本人と認識があればかわいい系で、あのライブを見た人は綺麗だって」

 

 

「あー確かに。あの歌ってた千乃はかっこよかったしね。まさに魂の叫びって感じだった」

 

 

「あ・・・ありがとうございます」

 

 

うぅ・・・褒められるのは嬉しいんですけど、やっぱり恥ずかしいです慣れません!

 

 

「来年の部活勧誘、いっぱい軽音部増えそうだな~」

 

 

「後輩か~。楽しみだねゆっきー!」

 

 

「はい!」

 

 

 

余談ではあるのですが、この後、私をかわいい系とか綺麗だとか言ってくれた2人に同じように私のイメージを伝えると、何故か2人はそれきりそっぽを向いてしまいました。

 

 

 

 

 

 

放課後になって、唯ちゃんと一緒に部室へと向かいます。

その途中、何人かの人達の話し声が聞こえてきます。

文化祭のライブの影響でしょうか、聞こえてくる内容は全部は聞こえなかったのですが歌とか演奏とか聞こえてきます。

 

 

「私たち、有名人だね!この調子で一気にプロになれないかなぁ~」

 

 

と、隣の唯ちゃんが誇らしげに言っています。

 

 

「ところでプロってどうやってなるの?」

 

 

「え・・・っとですね・・・応募したりでしょうか?」

 

 

「路上ライブ、やっちゃう?」

 

 

「澪ちゃんが絶対いやだって言いますよ」

 

 

その場面が目に浮かび、笑ってしまいました。

すると唯ちゃんもつられたのか、笑顔になります。

 

 

「まー路上ライブはじょーだんにしてもさ、もっと色んなところで演奏したいね」

 

 

「そうですね・・・唯ちゃんのギター、すっごく歌いやすいですし」

 

 

「ゆっきー・・・なんだか照れますなぁ~!」

 

 

「今度は憂さんにも、聞かせてあげたいです」

 

 

「あ、憂も聞きたいって言ってたよ~ゆっきーの歌!」

 

 

「うぅ・・・練習しないとですね」

 

 

いつか、憂さんに披露することが出来る日を、今から緊張して・・・それ以上に楽しみにしています。

 

 

 

 

部室へ入ると、既に律ちゃんと紬ちゃんがいました。

2人はテーブルについていて、紬ちゃんの持ってきてくれる美味しいお菓子とお茶を飲んでいました。

私たちに気づいたのか。

 

 

「いらっしゃいませー」

 

 

と、かわいい声で紬ちゃんが小走りでぱたぱたと向かってきました。

 

 

「2名様でしょうか?」

 

 

「え・・・?」

 

 

どういう意味かわからなかったのですが、唯ちゃんが変わりに答えてくれました。

 

 

「2人でーす。あ、席は禁煙でトイレから遠いところでお願いします」

 

 

どうやらファミレスごっこのようなものらしいですね。

 

 

「かしこまりましたー。こちらへどうぞ」

 

 

すると急に私たちに耳打ちをする様に紬ちゃんが言いました。

(なんだか律ちゃんの様子がおかしいの・・・返事も曖昧だし元気もないように見えるし・・・澪ちゃんも一緒じゃないし・・・だからちょっと元気付けてあげましょう)ゴニョゴニョ

くすぐったくなる声で、唯ちゃんと私に話していきます。

見れば律ちゃんは確かに心ここにあらずという感じです。

打ち合わせが終わり、流れが始まります。

終始、笑顔だった紬ちゃんが私たちを席へ案内してくれます・・・とは言ってもいつもの場所なのですが。

 

 

 

「ご注文がお決まりでしたらどうぞー」

 

 

メニューもないのですが、唯ちゃんが。

 

 

「そうだなぁ・・・メロンソーダ一つ!」

 

 

「すいません、当店メロンソーダないんです~」

 

 

「えーないのー・・・じゃあコーラフロート一つ!」

 

 

「すいませんそれもないんですよ~」

 

 

「それもないの~?う~ん・・・じゃーきんきんに冷えたサイダーで」

 

 

「ばんざいさいだー!」

 

 

「・・・?」

 

 

「あ、ご存知ありません?ばんざいさいだー。長崎の名物なんです」

 

 

「知らないけど、それならあるの?」

 

 

「ないんですよ~」

 

 

「ないの!?もう水でいいです」

 

 

「はい、ヒマラヤ山脈から手に入った雪解け水1990年もの一杯2500円入りましたー」

 

 

「ちょちょちょ、ぼったくり!どや顔シェフよりぼったくりー!しかもそんなのあるの!?」

 

 

「ないんですよ~」

 

 

「ないのに何でオーダーとったの!?」

 

 

「とっちゃったんですよー・・・」

 

 

ウェイトレスの紬ちゃんとお客さんの唯ちゃんのやり取り。

そして私が。

 

 

「もういいよ・・・どうもありがとうございましたぁ」

 

 

これできっと律ちゃんが食いついてくれるはずです。

唯ちゃんいわく、コテコテの漫才に、最後に急に出てきて〆た私。

お前は誰だ!と言うツッコミ、それにボケが無理やりということも律ちゃんの芸人魂を刺激するはず、らしいです。

 

紬ちゃんが荒ぶるような鳥のポーズを。

唯ちゃんが某車のライオンのポーズを。

そして私はピースを真横にしてそれを両目に当てたポーズを。

3人でポーズをとり、反応を待ちます。

 

 

 

しかし・・・木枯らしが吹くように、何の反応も示さない律ちゃん。

 

 

「じゅ・・・重症だよこれは」

 

 

「律ちゃんがツッコまないなんて・・・」

 

 

「そこまで驚くことなんですか?!」

 

 

とは言ったものの、確かにいつもと違う律ちゃん。

何かあったことは間違いないですよね。

 

 

すると、部室にもう1人。

ドアが開き、ミオちゃんが入ってきた。

 

 

「ごめん、ちょっと遅くなっちゃった・・・って、どうしたの?」

 

 

私たちが口を開いて説明する前に。

 

 

「遅かったな澪。さてはファンの人達といちゃいちゃしてたな!?」

 

 

今まで何も反応がなかった律ちゃんが、澪ちゃんに話しかけます。

そのことに紬ちゃんと顔を見合わせます。

どことなくですが、紬ちゃんは何かに気づいたような反応です。

 

 

「違うってば・・・ていうかそれ言うのやめろって言ってるだろ」

 

 

ここ数日は、律ちゃんが澪ちゃんをからかうことが増えています。

傍目から見ていても・・・少し頻度が多く感じます。

いつもの律ちゃんらしくないような。

そして澪ちゃんも段々とそのやり取りに対して、眉間にしわをよせるようにも。

そんな気さえもします。

 

 

「まぁまぁ」

 

 

紬ちゃんがそう言って、澪ちゃんを席に促します。

その席にはあったかいお茶が既に淹れられており、その場の雰囲気を和ませます。

全員が席について、少し閑談。

その際に、先ほどやった寸劇のようなものを澪ちゃんに話したところ、もう一度やってと言われ、顔を真っ赤にしながらやるはめになりました。

紬ちゃんと唯ちゃんは嬉しそうにやっていたということだけ付け加えておきます。

 

 

 

 

 

それは律ちゃんの一言から始まりました。

 

 

「これに出てみないか?」

 

 

お茶を飲みながらのお話もそこそこに、律ちゃんがおもむろに鞄から一枚の紙を取り出しました。

 

 

「これって・・・ライブハウスのチラシ?」

 

 

「そっそ。対バン!っていうかもう申し込んじゃった!」

 

 

紬ちゃんが紙を手に取り、律ちゃんが答えます。

澪ちゃんと紬ちゃんが驚いた顔をしています。

・・・対バンってなんんでしょう?

 

 

「対バンってなに~?」

 

 

「あ・・・あぁ、簡単に言うと複数のバンドが集まってライブをやることだ。勝敗を決めたりするのもあれば、ただお金を出し合って会場を借りて、あとは各バンドで順番に演奏していくだけのとか色々ある。利点としては今言った通り、用意するお金が少なくなると言うこととか、バンド同士の繋がりが出来るとか・・・あとは他のバンドを見に来た人達に、自分達の演奏を見てもらえるとかファンの獲得とかかな・・・」

 

 

澪ちゃんがそう唯ちゃんに教えているのを、私もなるほどと首を振ります。

 

 

「澪ちゃんくわしいねぇ~」

 

 

「まぁ・・・。律、申し込んだって・・・」

 

 

「忘れる前に申し込んどかないとって学んだからさ!」

 

 

「それにしてもちゃんと話し合ってからじゃないと・・・」

 

 

「なんだ澪は反対なのか?唯は?」

 

「対バンか~・・・はっ!?ここで一気にプロ!?」

 

 

「その通り!私たち放課後ティータイムは文化祭での成功を収め、そしてこのライブハウスで出世街道まっしぐらなのだ!」

 

 

そう叫ぶ我らが部長。

けど・・・なんとなく、やっぱりどこか変な感じが・・・気のせいでしょうか。

 

 

「やるだろ?」

 

 

「私はやりた~い!」

 

 

ふんすふんすと、意気込む唯ちゃん。

紬ちゃんが私を見て、目で聞いてくれます。

特に反対する理由もなかったので頷きます。

 

 

「だってさ。澪は?」

 

 

「うぅ・・・」

 

 

先ほどまで、あれだけ詳しく説明してくれてた澪ちゃんは、今はその頼りになる面影がなくいつも通り萎縮してしまっています。

 

 

「なんだ、まだビビリ癖が治ってないのか?人気者の澪ちゃんなのになぁ」

 

 

と。

また律ちゃんがからかうように。

 

 

「っ、なんでそうやってすぐ嫌なことを言うんだ」

 

 

ため息混じりにそう言った澪ちゃんを、律ちゃんは目が見開くという表現がぴったりなほど張り詰めた顔をしました。

そして。

 

 

「だってそうじゃん。いつまでたっても同じことの繰り返し。いい加減に慣れろよな」

 

 

ピリっと、空気が変わったのをはっきりと感じ取りました。

この雰囲気は、合宿の時。

澪ちゃんがその心に溜め込んでいたものを吐き出したときのものに似ています。

 

 

「な・・・」

 

 

「ストップ!2人とも落ち着いて」

 

 

喧嘩に発展しそうなのを感じ取ったのか、紬ちゃんが2人の間に入って仲裁をします。

 

 

「どうしたの?いつもの律ちゃんらしくないし、今回はみんな都合がよかったけど、急に言われてもしかしたら誰か欠けていたかもしれないのよ?」

 

 

「悪かったって。でも結果おーらいじゃん。それに私たち軽音部の目標はプロだろ?遅かれ早かれこういうのに出とかないとさ。あ、出演するバンドは私たちも含めて6組だってさ。持ち時間は大体20~30分の間で、チケットのノルマはなし。会場自体は結構でかいってさ」

 

 

次々と話していく律ちゃんを、澪ちゃんが眉をひそめながら見ています。

 

 

「だから、今まで練習してたのをいくつかと、一曲新しく何かやらないか?」

 

 

「新しくって・・・ライブはもう次の休み、あと4日だぞ!?無理だ」

 

 

「はぁ~・・・プロになるんだったらこれくらい出来ないと無理だぞ」

 

 

「・・・律、どうしたんだ?」

 

 

「どうって?」

 

 

「お前らしくない」

 

 

「私らしくってどんなだよ」

 

 

「はいはい、話が逸れてるわ。時間もないしやるからにはちゃんと仕上げないと。今までの曲はともかく、新しくやるのはちょっと無理があると思うけど・・・律ちゃん、なにか考えがあるの?」

 

 

「・・・特に深い意味はないよ。やりたいって思っただけ」

 

 

「そう・・・なら今回は今出来る曲をブラッシュアップしたほうがいいと思うんだけど・・・」

 

 

「・・・唯はどう思う?新しい曲やってみたいと思わないか?」

 

 

「う~ん・・・やってみたいとは思うけど4日で私できるかなぁ・・・」

 

 

「出来るって!な?千乃も新しい歌、歌いたいだろ?」

 

 

「え・・・と」

 

 

「いい加減にしろ律!」

 

 

ここまで大きな声を出す澪ちゃんは今まで一回しか見たことがありません。

 

 

「なんか変だぞ最近の律」

 

 

一転、しんとなる部室内。

いつも太陽のような笑顔でいる唯ちゃんもこわばった顔をしています。

今までちょっとした言い合いはあったものの、こんな喧嘩のような2人を見た事がないからでしょうか、際立って異常に思えました。

 

 

「今日はもう解散しましょう。一回離れて少し冷静になってからまた話し合いましょう?」

 

 

紬さんがそう言うやいなや、律ちゃんが荷物を持って部室から飛び出すように出て行きました。

気まずい雰囲気が包む。

 

 

「はぁ・・・みんなごめん」

 

 

澪ちゃんが言います。

 

 

「ううん、でも律ちゃんはどうしたんだろう・・・」

 

 

「わかんない。あんな律、見たことない」

 

 

「なんかイライラしてるようにも見えたよ?」

 

 

「私は焦ってるように見えたわ」

 

 

イライラと焦り。

今まで律ちゃんは私たち軽音部の頼りになるリーダーで、どんな時もまとめ役に回ってくれていて、私みたいな主張が苦手な人の声もちゃんと聞いてくれた。

だから、こんな姿、見たことなかった。

 

 

「とりあえず・・・新しい曲をやるとかはどう考えたって無理だ。明日それを説得させれればいいんだけど・・・」

 

 

消え入るような声は、それが難しいと言うことを示していた。

それは的中して、次の日。

学校に律ちゃんは来ませんでした。

澪ちゃんも理由がわからなくて、携帯にも連絡が帰ってこないのです。

そういうわけで部活を切り上げ、今お家の前にいるのでした。

インターホンを押すと律ちゃんよりも背の大きな男の子が出てきました。

視力低下のせいで、はじめは誰かわからなかったのですが、以前お会いした律ちゃんの弟さんです。

名前はさとし君。

 

 

「あ、澪さん。こんにちは」

 

 

「聡、律はいるか?」

 

 

「えっと・・・姉ちゃん風邪ひいちゃったみたいで。今は寝てるんですけど、皆さんが来てくれたって言ってきますよ」

 

 

「あ、いや、それならいいんだ。お大事にって言っといてくれ。あと携帯の返事も」

 

 

「わかりました。」

 

 

軽く頭を下げる聡君。

それ以上何かをいえることもなく、私たちは家を後にします。

 

 

「律ちゃん風邪だったのかー」

 

 

「だからいつもと調子が違ったのかな?」

 

 

「いや・・・うぅん」

 

 

唯ちゃん、紬ちゃん、澪ちゃんの順に話す。

確かにその風邪のせいもあるとは思うのですがそれでもしっくり来ません。

後ろを振り返り、律ちゃんのお家を見ると何か見えます。

目を細めて見るともぞもぞと・・・動いているのでしょうか?

すると手に持っていた携帯が震えました。

家に帰るまではマナーモード。

メールで相手は律ちゃんから。

1人で家に来てくれという内容でした。

窓のところにいたのは律ちゃんだったのでしょうか。

 

 

「じゃー今日も解散?」

 

 

「そうね・・・律ちゃんがいないと練習も出来ないし。」

 

 

「各自、自分のパート練習だけはしっかりしておいてくれよな」

 

 

そう言って分かれました。

唯ちゃんとは帰る方向が同じだったのですが、少し用事があるといって1人律ちゃんの家へと向かいます。

 

 

そしてインターホン。

 

 

「はーい・・・って湯宮さん?」

 

 

「あ、えっと!湯宮です、こんにちは・・・」

 

 

「え、や、こちらこそ・・・」

 

 

聡君が出迎えてくれたのですが、そういえば私ってこうやって年の近い男の子と話すなんて・・・したことがなかったのです!

緊張・・・。

 

 

「えっと・・・どうかしましたか?」

 

 

「あああああの、そのですね、律ちゃんに呼ばれたと言いますかなんと言いますか・・・」

 

 

「あ、そうだったんですか・・・」

 

 

会話終了。

きまずいです。

 

 

「・・・えっと!じゃあ部屋まで案内しますよ!」

 

 

「えぁっと・・・ありがとうございます!」

 

 

お互い、必要以上に大きな声になってしまうのは・・・きっと私のせいでしょう。

年上である私が情けない態度を取るから聡君も変に緊張してしまうのだと思います。

うぅ・・・憂ちゃんって凄いんだなぁって改めて思います。

 

 

そして部屋の入り口に案内して貰って、分かれます。

 

 

何故か緊張してしまうのはもう愛嬌です。

深呼吸を数回。

そしてノック。

 

中にいる律ちゃんが入ってくれと言いました。

 

 

ドアノブをまわし、中へ入ると元気のない律ちゃんがいました。

あくまでイメージですが、私は水の中にいるような息苦しさを覚え、大きな魚が後ろを通っていくような、得体の知れない不安を感じました。

 

 

 




神様「次回は律ちゃん回&黒髪ツインテールが登場!?」

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