そして社会人になって半年がたとうとしています。
段々と疲れてきました。
朝起きても疲れが取れなくなってきました。
まあそんな話は置いといて。
今回は少しはやめ(?)の更新です。
けど例によって仕事の合間に書き上げたものなので・・・すいません。
またきちんと手直ししたいです。
それといつも感想をありがとうございます!
それだけが支えです。
これからもよろしくお願いします!
Side 和
ため息が出る。
外気との差によって白くなる私の息は、空に上って消えていく。
肌がぴりっと張っているのがわかる。
冬は毎年のこととはいえ、やはり身構えてしまうわね。
唯なんて毎年のように熱を出してしまうし、今年はまだいいけどこれが3年生になった時に体調を下してしまえば人生を左右しかねない。
まだまだどこの大学に行きたいかなんて決まってはいないけれど。
進学するかもわからない。
そして、怖い。
千乃の言った3年間という言葉が私を不安な気持ちにさせる。
ムギの好意で、治療は受けさして貰ってはいるけどどうなるのか・・・。
この季節はどうしてもマイナス思考になってしまう。
ダメね。
あの子が頑張っているのに私が勝手に落ち込んでしまっては。
けど・・・どんな気持ちなんだろう。
千乃は良くも悪くも、わかりやすい。
顔に出やすいというか、寝たきりの生活で誰かと関わることが少なかったためか、向かい合って話すとかわいいくらいわかりやすい。
うれしいときは笑顔になるし、人と触れ合うと恥ずかしそうに赤くなる。
あたりまえのことだけど、それが凄く尊いものに見えてしまう。
外見が外見だけに当たり前に普通の女の子の部分を見てしまうとそのギャップに、その、惹かれてしまう。
けれど、わかりやすいからこそ注意してみていないと。
解りやすい、顔に出やすいということは感受性が強いということ。
もっといえば、あの子は子供なのだ。
唯と同じように精神年齢が幼い。
唯と違うとこは、唯がオープンなのに対して千乃は1人で抱えがちなところだ。
宿題を教えて、テストどうしよう、お腹すいた、眠い、ギターが楽しい。
そんなことを口を開けば発する唯はなんでも溜め込まない。
自由奔放、純粋無垢。
その点だけは見習いたいと思った。
私もどちらかと言えば千乃タイプだ。
というかほとんどの人間はそうだろう。
ある一定のラインを、ほとんどの人間はもっている。
しかし千乃はそのラインが曖昧なのだ。
だから何かを抱えていても相談しに来ない。
きっと、相談することで相手を困らせると思っているのね。
前もそのことで少し怒ったけど、千乃はやさしいからそれでも1人でなるべく抱え込む。
だから注意してみてないといけない。
本当に手のかかる子。
でも、不思議と嫌な気はしないにはやっぱり、そういうことなのだろう。
やっぱり将来は外国ね。
・・・・・話が逸れたわ。
千乃は、千乃の目には世界はどんな風に写っているのだろう。
病気を抱え、3年と言われて。
健康な私たちに囲まれて。
薄荷色の宝石みたいなその目に、私たちはどうみえているのだろう・・・。
頭を振る。
これからクリスマスパーティーなのにこんな思考を持った人間がいたら盛り下げてしまうわね。
このことはまた千乃と2人のときに聞いておこう。
・・・・・・そろそろ千乃が来ても良いころなのに。
今私は駅前で千乃を待っている。
今日は人通りが多いから雪の1人じゃ危ないと思いこうして迎えに来ている。
澪と律は既に唯の家にいる。
飾りつけと料理の手伝い。
ムギはギリギリまで家の用事らしいわ。なんでも他の用事が入っていたのに無理してクリスマスパーティーに参加するために頑張ってるらしい・・・。
その理由はわかるわ。
・・・・・ていうかこれってかなりチャンスなんじゃないかしら?
ムギもいない。
世間はカップルだらけ。
きっと千乃は顔を赤くしてくるわね。
そこでちょっと寄り道して人気のないところに行って、千乃用に買っているこのプレゼントを渡して・・・その流れでこ、こ、こ、こくはくを・・・!
ごくりと、喉が鳴る。
い、いっちゃう?
さっきまでは少し冷えていたのだが今はマフラーを取ってしまいたいほど熱い。
色んな考えが頭をよぎる。
そしてそのどれもが上手くまとまらず浮かんでは消えていく。
その繰り返しで気づけば待ち合わせの時間を当に過ぎていた。
「・・・おかしい」
千乃は一度も待ち合わせに遅れたことはない。
遅れて相手に迷惑をかけることを嫌がり、早く来るくらいだ。
前なんて待ち合わせの30分前に来ており、次が私もそれに合わしたら、そのまた次は更に30分前に来ているという始末。
なのに、今日は来ていない。
現在は既に夕方。
もうそろそろ暗くなってしまう。
朝寝坊と考えるには無理がある。
お昼寝は、きっと千乃は今日を楽しみにしていたから寝付けないだろう。
なら・・・なぜ?
瞬間、嫌な予感がした。
確信はない。
けど、見過ごせない。
思い過ごしならそれが一番良い。
携帯電話があればいいのだけど、千乃は持っていない。
家にかけてみる。
出ない。
ますます焦燥感があふれ出る。
家の場所はわからない。
こんなことなら聞いておけばよかった。
唯の家に電話をかけ、律、澪、唯にこのことを話す。
不安だけが募っていく。
誰も千乃の家を知らない。
律が山中先生にかけ、折り返すという。
私は走る。
大体の位置ならわかる。
初めて千乃と出会い、その帰り道で大体ここら辺だということを聞いていた。
だから私は走る。
1人暮らしをしているのだから一軒家ではない・・・はず。
ならマンションかアパート。
何件も何件も走り回りたどり着いた、一つのマンション。
綺麗なその造りが、何故か千乃にぴったりだと思った。
その時、律から電話がかかってきた。
結果、千乃の住んでいる場所は今私が目の前にしているここだった。
事情を話し、千乃のいる5階まで開けてもらう。
インターホンを鳴らす。
・・・でない。
ドアノブをまわす。
ダメもとの行動でしかなかった。
確かにかかっていた鍵は、まるでなにか不思議な力が働いたとでもいうように、カチャンと音を立てて開いた。
そのことに疑問もあったけどいまはどうでもいい。
急いで中に入ると、床にうつぶせで千乃が倒れていた。
血の気が引くのがわかった。
夢中で駆け寄る。
「千乃!」
返事は無い。
抱きかかえる。
体が震えてる。
体は冷え切っていて、氷を触っているように感じられた。
きっと床に長時間触れていたからだろう。
根こそぎ体温が奪われてしまっている・・・のよね?
仰向けにしようとして、千乃が声を発する。
「和ちゃん・・・」
体の震えに負けないくらい、その声は震えていてこの世の何よりも弱弱しく思えた。
そして。
「お願い・・・します・・・そのままで・・・」
私はその言葉を、抱きしめて離さないでとそう捉えた。
捉えてしまった。
いまだうつ伏せの千乃を暖めようと、仰向けにした。
「大丈夫よ!絶対に離さないから・・・」
そう叫びながら、千乃の顔を見る。
そこにはいつもの千乃はいなかった。
鼻からは真っ赤な血が流れた痕があり、額には青あざがあった。
そして何よりもその目には涙が溢れ続けており。
その顔は今まで見たこともないくらいに歪んでいた。
「お願い・・・見ないでください・・・!」
必死に搾り出すその声に私はどうしたらいいかわからず。
「・・・ごめんなさい・・・なんだか、体がうまく動かなくて・・・朝起きた時から、なんだか変で・・・それで、それで・・・」
スロー映像のように、千乃の手が動き起き上がろうとしている。
そして理解した。
喪失病。
千乃は視力の次に、体が動かなくなってきている。
「っ!」
頭では理解したくないことを、それでもなんとか飲み込む。
目の前の千乃は泣きながら戦っているのだから。
「・・・大丈夫よ千乃。安心して、ゆっくり・・・そう、大丈夫。私がついてるわ」
懸命に立ち上がろうとする千乃を励ます。
そして思う。
あぁ、なんて私は無力なんだ。
声をかけるだけしかできないなんて。
出来る事なら変わってあげたい。
その病気を、私も背負ってあげたい。
だけどそんなことできるわけもない。
だから、無責任に声をかけるだけ。
歯を食いしばって、泣きながら一人で戦う千乃を、私はただ外側から応援するだけ。
何がクリスマスパーティーだ。
何が告白だ。
私がそんな事を思っているときに、千乃はたった一人でもがいていたんだ。
冷たい床の上で、血を流して。
ふいに目が熱くなる。
鼻をさす痛み。
私が泣く資格なんてないのに、こんなにも弱い私を許して欲しい。
「の・・・どかちゃん・・・泣かないで。お願いだから・・・泣かないでよぉ・・・」
震える
指先が私の鼻にふれる。
そして、なぞるように口、頬、そして涙をぬぐってくれる。
今私はどんな顔をしているのかわからない。
力いっぱい千乃を抱きしめる。
「ごめん・・・千乃・・・ごめんね」
そうじゃないでしょ私!
千乃に気を使わせてるんじゃない!
「・・・千乃、まずは体を温めましょう」
千乃をソファに座らせ、私が来ていたコートを羽織らせる。
洗面台に行ってハンカチを濡らそうと立つ私の手に千乃の手が触れる。
なんて、冷たい。
「ちょっと待っててね」
返事は無く、ゆっくりとただ小さく頷く千乃。
濡れたハンカチで千乃の血痕をふき取る。
その間、千乃は目を合わせない。
見ていてかわいそうになるほど小さくなっている。
歯がカチカチとなっている。
「千乃・・・」
隣に座る私に、体を震わせる。
今の千乃は、出会った当初よりも壁を感じる。
「千乃・・・ごめんなさい・・・私、あなたが1人で倒れている時、暢気に・・・」
私はそう呟く。
「独りにしないって・・・決めてたのに・・・もし、これがもっと取り返しのつかないことだったら本当に・・・怖い・・・口だけだわ・・・私はあなたの力になりたい・・・けど・・・けど・・・私は無力で・・・なにもできない・・・」
ダメだ。
言葉を紡ぐたびに目が潤んでゆく。
心では冷静に言いたいことを考えられているのに、それを声にするととたんに私に制御を離れて、こんなにも荒れ狂う。
私が私じゃないみたい。
自然と顔が下がっていってしまう。
許された景色は地面だけで。
泣きたいのは千乃のほうだ。
喪失病が進行し、たった一人で何時間もいたんだ。
だというのに。
千乃は震えるその手で、私を包む。
「の、どかさん。覚えてますか・・・はじめてあった時、階段から、おっこちた私を助けてくれたこと」
「・・・・・」
「話すのが苦手だった私を・・・自分のペースでゆっくり、話させてくれたこと」
「・・・・・・」
「唯ちゃんとも出会わせてくれました・・・お祭りにも連れて行ってもらいました・・・私の歌を綺麗だと言ってくれました」
「・・・うん」
「今でも・・・忘れられないです・・・私の数少ない胸を張って自慢出来る事なんです。私の初めての、友達・・・和ちゃん。何も出来ないなんて言わないでください・・・私は、和ちゃんと出会えて、ほんとうにほんっとうに・・・幸せで・・・本当は今、泣き叫びたいはずなのに、和ちゃんが隣にいてくれるから、こうして、いられるんです・・・和ちゃんの気持ちはちゃんと私の心に、花を咲かせてくれてます・・・だから・・・」
だから。
「だから、そんな悲しいこと・・・言わないでください」
千乃の顔を見る。
その顔はお世辞にも綺麗だとは言えない、涙をボロボロ流す初めてみる千乃の顔。
けれど、その顔に私は救われる。
こんな私を、千乃は・・・。
気づいたら私は千乃に自分の唇を重ねていた。
時計の針だけが静かに刻まれる。
何をしているのか、わかっている。
最低だ。
相手に断りもなくキスをするなんて。
でも、もう、どうしても抑えきれない。
どうしても渇望してしまうんですもの。
私は・・・千乃が、欲しい。
「・・・・ぅん!?」
今更になって千乃が事態に気がついたみたい。
眼鏡越しに見える真っ赤な顔が、愛おしい。
離れようとする千乃のぎこちない手を、私は抱きかかえ行為を続ける。
初めてのキスはレモンパイなんて、そんなこと考えてる暇はない。
「ん・・・の・・・のどかちゃ・・・」
千乃から微かに漏れるその声に私は罪悪間を感じつつも、もっと聞きたいとさえ思ってしまった。
さきほどまでとはおそらく違った意味合いの涙を流す千乃を見て、唇を離す。
そして、今更ながらのやってしまった感。
同時にここしかないと確信をさせるタイミング。
息づかいの荒くなった千乃の肩を掴み、視線を合わせる。
リンゴのように真っ赤な千乃。
その瞳に写る私も同じくらい真っ赤だ。
でも、もうダメ。
「はじめてあった時・・・人形みたいに綺麗だと思った・・・それ以上に勇気を振りしぼった千乃を見て・・・うん、その時からきっと千乃のことが好きだった」
言った・・・!!
「・・・ふぇ?」
「それからもあなたの一挙一動に私は・・・感動して、勇気を貰って、好きという感情がどんどん強くなっていったの」
そう。
日々、新しいことに感動する千乃に目が離せなくなっていく。
「だから・・・もう・・・」
・・・あぁもう!
頭が回らない!
千乃のこととなるとどうして!?
答えなんてわかってるわよ!
大好きだからに決まってるじゃない!
「・・・ガマンできないの。醜いなんて解ってるけど・・・千乃が私以外の誰かとそういう関係になっていくのが怖いの・・・私は・・・私が千乃の一番になりたいの!」
無茶苦茶なことを言ってるのは解る。
そして千乃はこういう経験はないはず。
もちろん・・・キスだってそう・・・そのはずだ。
なのにそれを私の都合だけで勝手に奪ってしまった。
本当に私は醜い・・・けど。
涙が止まらない。
自分勝手なことをしているのは私なのに、それでも千乃への気持ちが止まらない。
抑えきれない。
好きだ、好きだ、好きだ。
「大好きなの」
絞るように言った私の言葉は、果たして千乃にどのように伝わったのか。
気持ち悪いと言われるだろうか。
それとも無理に笑うのだろうか。
千乃は・・・・。
神様「oh...」
さて・・・和ちゃん告白タイムの巻でした。
ここから考えているルートはですね、和ちゃんルート、ムギちゃんルート、あずにゃんルート、ハーレムルートです。
大穴で信代ちゃんもあるでぇ・・・