また修正したいです。
それでもおkな人だけよろしくお願いします!
Side 千乃
ぼやける私の視界に、黄金の髪を揺らす紬ちゃんがいる。
肩で息をして、しかしそれでも腕を組んでその姿は威風堂々と。
きっと私をその綺麗な瞳で見つめているに違いない。
紬ちゃんはいつでも、そうだったから。
「つ、紬ちゃん」
何でここにいるのか。
家の場所がどうしてわかったのか。
思うことはたくさんあったはず。
だけど、そんなことよりも私は安心感で包まれた。
今の今までは、消えてなくなってしまいたくなるほどの思いに駆られていた。
大好きな和ちゃんに、私は残酷な仕打ちをしてしまったのだから。
でも、紬ちゃんが来てくれた。
きっと、うまくこの場をまとめてくれるはず。
他力本願になってしまうことに少しの罪悪感はあるものの、それが一番だと思った。
私の過去を最初に打ち明けて、それでも支えてくれた優しい紬ちゃん。
だから・・・和ちゃんのことも支えてくれるはず。
その結果、私がどんな風に思われてもいい。
そう思う。
だから、紬ちゃん。
どうか和ちゃんを・・・。
「千乃ちゃん・・・喪失病が・・・進行したの?」
「っ・・・はい・・・」
「そう・・・律ちゃんから電話を貰って、すぐに駆けつけることが出来たけど・・・まさかこんなことになってるなんて」
和ちゃんを見る紬ちゃん。
あのクールな和ちゃんが小さく見えてしまうのは、きっと私のせいだ。
私なんかを好きといってくれた和ちゃんに、私はどう償えば良いのか。
その答えを、紬ちゃんは教えてくれるはずだ。
「和ちゃん・・・ごめんなさい。私、和ちゃんの告白を聞いちゃったの・・・本当は少し前に着いていたんだけれど、和ちゃんが勇気を出してたから、すぐに入ることが出来なくて・・・それで聞いちゃったの」
だから、ごめんなさい。
と。
その言葉に和ちゃんは、首を横に振る。
しかし、言葉を出さない。
その理由を、本当に私の都合のよいように解釈をするならば。
するのならば、私が付き合えないと、謝ったから。
あぁ・・・なんて私は汚いんだ。
「凄い、と思った。
私だって何度も思ったことだけど、結局言えなかったことを、和ちゃんはこうして伝えたんだもの。だから、私も・・・もう逃げない」
そう言って私のほうを向く紬ちゃん。
そして、私の手を取って。
「千乃ちゃん。私も千乃ちゃんが好き。大好き。世界中の誰よりも千乃ちゃんが大好き。きっと何度生まれ変わっても、この気持ちは変わらない。何回言っても足りないくらい、千乃ちゃんが大好き」
じっと、私の目を覗き込むようにそういった。
もう、わけがわからない。
なんで・・・なんで?
「じょうだん・・・ですよね?」
「どうして?」
「だって・・・私なんか、好きになって、もらえるところ・・・ありません」
「それは私たちが決めるの。千乃ちゃんはすごくがんばり屋さんで、いつも一生懸命で・・・私を救ってくれた王子様で、お姫様だもの」
そして、和ちゃんのほうを見て、紬ちゃんは手を差し出す。
その手を、和ちゃんは一瞥し、躊躇うような仕草をして。
けど力強く握り、立ち上がる。
「その気持ちは和ちゃんも一緒なのよ?ね?」
「・・・えぇ、そうよ。千乃の迷惑になろうと振られようと、この気持ちだけは消えない。例え、喪失病でもこの思いだけは消えない」
「歌う千乃ちゃんが綺麗で」
「新しいものを見て、目を輝かせる千乃が愛おしい」
「おっかなびっくり、けど人の心に向き合う千乃ちゃんがすごくて」
「恋愛に不慣れですぐ赤くなってしまう千乃が宝物のように尊い」
「千乃ちゃんの好きなところを挙げようと思ったら、いくら時間があっても足りないわ」
微笑む紬ちゃん。
「ごめんなさい、千乃。でも・・・これが私たちの気持ちなの」
信じられない。
だって・・・だって!
「もう・・・やめて、ください」
これ以上は、もう・・・・!
「千乃ちゃん、逃げないで。
こっちを・・・見て?」
「千乃・・・」
やめて・・・やめてやめてやめてやめてやめて。
「やめてください!」
叫ぶ。
その反動で、体がぐらつく。
喪失病で上手く動かなくなった体には少しこたえるほどの大声で。
ソファに倒れるように座り込む。
慌てて和ちゃんと紬ちゃんが駆け寄ってくる。
「来ないで、ください・・・!」
それを、私は拒む。
「もう・・・やめて・・・」
絞り出した声は、自分でも笑ってしまうくらいに弱弱しく。
溢れる涙は今まで以上で。
「それ以上・・・いわないで、くださいぃ・・・」
「千乃・・・ごめんなさい。気持ち悪かったわね・・・女同士で、こんなこと言うなんて・・・」
「違うんです・・・」
「え?」
「和ちゃん、千乃ちゃんはそう思ってるんじゃなの。怖いのよね?」
「それって・・・」
和ちゃんが私を見る。
「それ以上、言われたら、私・・・私・・・諦められなく、なっちゃい、ます・・・」
「・・・・・え?」
怪訝な顔をしてる和ちゃん。
それを紬ちゃんが優しく隣に立ち、包み込むように手を握ってる。
全てを理解しているかのように。
「私だって・・・私だって、和ちゃんが大好きです、紬ちゃんが大好きです!告白してくれて、うれしいです!夢みたいです!踊りたいくらいなんです!
でも、私は、喪失病で、足も上手く動かなくなっちゃったんです!話すのも、下手になっちゃったんです!」
叫ぶ。
叫ぶ。
自分の心に浮かんでくる言葉をそのままに。
「これから、もっと、もっと、何も出来なくなっていくんです!1人で生活することも出来なくなってしまうんです!大好きな歌を、歌うことも出来なく、なってしまうんです!大好きな・・・大好きな和ちゃんも、紬ちゃんも、見えなくなってしまうんです!声も聞こえなくなってしまうんです!」
ひどい、と自分でも思う。
誰に当たり散らかしてるんでしょうか。
でも、もう止まらない、止まってくれない。
「2人の、こともわからなくなってしまうんです・・・・」
そう、そうなのだ。
自分が喪失病で消えていくことが怖い。
けれど、それ以上に大切な人と別れることがこれ以上ないくらいに怖いのだ。
生まれ変わる前、私は最後には消えてしまってもいいと思ってた。
それが当たり前のことで、3年間と言う時間は本来ありえなかったことなのだから。
そのことに文句をつけられるはずもなく、感謝してもし足りないくらいなのだ。
けど・・・思いもしなかった。
友達という存在がここまで大きかったなんて。
軽音部という居場所がこんなにも手放しがたいものだったなんて。
好きな人が出来るってことが、こんなにも苦しいことだったなんて。
「だから・・・だから・・・うぅ・・・」
何度目になるかわからない、嗚咽と涙。
考えがまとまらないことはこれまでも多々あったけど、今回以上に心が乱れたことはなかった。
それくらい、大好きなのだから。
その気持ちが、私をおかしくさせる。
「怖い、んです・・・私は後2年で消えてしまいます・・・けど、和ちゃんと、紬ちゃんは、私がいなく、なった後も、ずっと、ずっと、生きていく、んです・・・こんな私を、好きといってくれた、2人はきっと、優しいから、傷ついてしまう、んです」
「千乃ちゃん・・・」
「千乃・・・」
「けど、きっとそれ、は時間が、解決してくれます・・・喪失病は、そういう病気、だから。私が怖いのは・・・皆が私を、忘れてしまう、こと・・・和ちゃんと紬ちゃんが、私を忘れてしまうこと、なんです!」
今思えば、喪失病のこと、この世界の人にはちゃんと話してませんでした。
感覚が失われていく、その最後には命も喪失してしまう。
そして、喪失病に罹った人との記憶も、きれいさっぱりなくなってしまう。
あぁ・・・なんて恐ろしい。
その事実が怖くて、言えなかった。
だから、だろうか。
目の前の和ちゃんと紬ちゃんが、怪訝な顔をしている。
きっと、私が言った今の言葉に違和感を感じてるのだろう。
だから、私は続ける。
「そ、喪失病、は罹った人の視力とか、声とか、全部奪っていく、んです・・・そして、最後には、その喪失病に罹った人の記憶も、失われるんです。和ちゃんも、紬ちゃんも、私のことを、失うんです」
きっと、今の自分の顔はなんて醜い顔をしていることだろう。
2人が心底驚いた顔をしている。
「うそ・・・でしょ?そうなんでしょ・・・千乃」
「嘘だったら・・・どんなに、幸せですか・・・」
「なんで・・・なんで今まで黙ってたの千乃ちゃん!?」
「・・・っ言える、わけない、じゃないですか・・・そんな病気・・・言ってしまったら、みなさん、今以上に傷ついてしまう、じゃないですか!」
自分でも嫌になってしまう。
2人にあたってしまうこと、それが醜いと思いながらも止まらないこと。
「っ・・・!一緒に傷つかせてって言ったじゃない!」
「私が、いや、なんです!」
ひときわ、大きな声が出る。
ぼやける視界で、2人が揺らいだように見えた。
「なんで・・・」
「だって・・・みなさんは、優しいから・・・優しいから・・・うぅ」
「千乃・・・」
「わたし・・・わたしは、みなさんがぁ・・・傷つくところ、見たくないんです」
涙が止まらない。
感情がまとまらない。
誰かと本気で向かい合うときはいつもそうだった。
生まれ変わる前は、人と向き合ってこなかった。
「黙ってたこと・・・ごめんなさい・・・」
搾り出す。
ここが瀬戸際だ。
今まで、軽音部のみなさんには、そしてこの2人にはたくさんのものを貰った。
本当に夢みたいな時間だった。
夢もたくさん叶った。
歌手になりたいって言う夢は無理だったけど、それでも胸いっぱいの幸せを貰った。
夢はいつか覚める。
それが今日だった。
貰った分、返せてはいないけど、これ以上・・・私は重荷になれない。
なりたくない。
だから・・・。
ここで終わりにしよう。
湯宮千乃という後書き。
読む人にしたら中途半端って思うかもしれないけれど、ここがベストなんだ。
ここから先は蛇足になる。
綺麗に終わるにはここで打ち止めがいいはず。
「それから、お願いがあるん、です」
言うんだ。
勇気を持って私に話してくれた紬ちゃんのように。
言うんだ。
凛とした態度で、いつでもまっすぐだった和ちゃんのように。
「もう、私に、関わらないで、ください」
情けないほど震える体をおさえつけ。
ばれないように、慎重に言葉を刻む。
これで、いいんだ。
「みなさんといると、辛い、です。みなさんは楽しそうに笑っているのに、どうして、私は病気なの、って思ってしまいます」
もうこれ以上、私に関わらなければ。
喪失病で2人が傷つくことはない。
私のことで胸を痛めることはないんだ。
関わらないでください。
なんて嫌な言葉なんだろう。
それを私は友達に叩き付けた。
これで嫌われたはずだ。
ごめんなさい。
こんな最低な私を、2人は気にしなくて良くなる。
ごめんなさい。
和ちゃんと紬ちゃんは優しくて綺麗でかわいいから、これからももっと友達が出来る。
ごめんなさい。
きっと・・・好い人だって現れる。
ごめんなさい。
わたしのことなんて、すぐに忘れることが出来る。
・・・ごめんなさい・・・。
コレデ、イインダ。
ごめんなさいぃ・・・。
コレデ、ミンナ、シアワセナンダ。
パン。
渇いた音が響く。
続いて、頬が熱くなる。
顔を上げると、和ちゃんの顔がすぐ間近にあった。
「え・・・」
和ちゃんの目には涙が零れ落ちていた。
そして、紬ちゃんと繋がれていた手は振りぬかれていた。
そこで私は叩かれたんだとわかった。
「・・・バカ!」
和ちゃんから、いや、友達から初めて怒られた。
自分で望んだこととはいえ、やはり悲しい。
けど、これで、終われる。
しかし、その思惑は外れる。
「千乃、あなた今どんな顔してるかわかってる?」
鼻声でそう問いかける和ちゃん。
その声は泣いていて、怒っていた。
「嘘ついてて、何度も何度も謝ってて、一人にしないでって!そう言ってるのよ!」
「・・・うそです」
「嘘なんかじゃないわ!」
「うそですそんなの!」
「泣いてるじゃない!」
「っ、これは」
「私たちを傷つけないように自分の心を殺してるじゃない!」
「ちがっ・・・なんで和ちゃんにそんなことわかるんですか!」
「わかるわよ!千乃のことならなんでもわかるよ!だって・・・だって好きなんだもの!」
「なん・・・」
瞬間、体が包まれる。
和ちゃんが私を抱きしめる。
「絶対に離さない。一人になんかさせない。こんなに泣いてる千乃を一人になんか・・・」
「のどかちゃ・・・」
続いて紬ちゃんにも包まれる。
「私も、千乃ちゃんを1人になんかさせないわ。」
「・・・どうして?あんなに、酷いことを言ったのに・・・どうして2人は・・・」
「「何度でも言うわ。愛してるからよ」」
「・・・でも、忘れるんです」
「忘れない」
「誓うわ」
「「絶対に忘れない」」
その言葉に、生まれ変わる前だったらありえないと、そう思っただろう。
けど、包まれる温かさは本物で。
2人分の鼓動が、私の心を動かしてるみたいで。
だから、愚かなことをしてしまった。
信じたい、なんて。
2年後に来る別れを少しでも軽くしようとしたのに、私は結局もとの道を戻ろうとした。
「あ・・・あぁ・・・・あああぁぁぁぁぁ」
声を上げて泣く。
抱きしめられる力が強くなる。
そのことにまた泣く。
「ごめ・・・ごめんなざいぃ・・・私、2人に、酷いことを・・・」
「いいのよ千乃ちゃん」
「そうね。好きな人を抱きしめられてるんだから許してあげるわ」
「あら。好きな人だなんて照れるわ。でも私の一番は千乃ちゃんなの、ごめんね和ちゃん」
「何を勘違いしているのかしら。というかそろそろ離れてくれないかしら。千乃と私の邪魔なのだけど?」
「千乃ちゃんは和ちゃんのものじゃないわよ?」
「でも告白したわ」
「えぇ、私も」
「先に告白したのは私よ。その返答をもらえるまではムギのはノーカンよ」
抱きしめられて、泣いて。
2人の会話を聞いて。
先ほどまでの緊張がうそのように体の震えが止まった。
私は、こんなにも愛されていたんだ。
そこから1時間ほど、私は泣き続けた。
一生分泣いた気がした。
けど、きっともっともっとこれから先泣くはずだ。
「おちついた?」
「は、はい・・・すいません・・・」
「いいのよ千乃。何度も言うけど、好きな人に頼られるのってうれしいのよ」
顔を赤くする和ちゃんに、つられて赤くなるのがわかった。
そうだった・・・告白されたんだ私。
こんな経験なんてないからどうしたらいいのかわからない。
・・・あ、もしかしてさっきの告白は私を落ち着かせるためのものだったんじゃ・・・。
き、きっとそうにちがいない。
「ところで、千乃・・・さっきの返事を聞かせて欲しいんだけど?」
うそじゃなかったー!
どどどどどどどどどどどうしよう!
え、女の子同士だし・・・ってそれはそんなに抵抗はないですね。
・・・ってなんでですか!
なんでそうおもうのでしょうか!
うぅ・・・わからない。
「はいはい!私も聞かせて欲しいわ~」
「・・・ムギ?」
「告白した順番なんて関係ないわ。愛の大きさが大事なの」
「へぇ・・・私より、自分のほうが千乃から愛されてると?」
「それを決めるは千乃ちゃんよ」
ふふんと笑う紬ちゃんと、ちょっと怖い雰囲気の和ちゃん。
ていうか紬ちゃんまでー!
もうなにがなんだかわかりません!
これがモテ期!?
頭が沸騰します!
「いいわ。千乃、改めて言うわ」
「そうね。千乃ちゃん」
「「私と付き合ってください」」
同時に差し出されたその手。
わ、私はどうしたらいいのですか!?
和ちゃんは始めての友達で、綺麗で頼りになって話しててどきどきします。
和ちゃんといるだけで幸せな気分に慣れるんです。
紬ちゃんはたまに雰囲気が変わって何を言ってるか解らないけど、それでもあったかくて柔らかくてそれでいてがんばり屋さんで・・・やっぱり話すとどきどきします。
あれ?
これって私2人に同じ気持ちを?
いやいやいや!
そんな、だって・・・ていうか本当になんで私なんかにこんな素敵な2人が!?
「千乃?」
「千乃ちゃん?」
上目遣いでそう不安そうに名前を呼ぶ紬ちゃんと和ちゃん。
ああああああ!
もう!
考えない!
私は、手を掴んだ。
2人の手を。
神様「ハーレムエンドへの一歩目・・・?」