早めの更新だぜ!(質があるとはいってない)
というわけで、例によって例のごとく、時間を見つけての更新です。
どうかよろしくお願いします。
Side 紬
律ちゃんが千乃ちゃんに告げた後、少しの静寂。
目の前の千乃ちゃんはやはり、何が何だかわからないというような顔をしている。
それは、私たちと音楽をずっと続けていけると思っていてくれていたからなんだとわかると、やはり私の胸は締め付けられる。
何が足りなかったのか。
その明確な答えをまだわかっていないことにも自分に憤りを感じるけど・・・それよりもやはりこんな表情をさせてしまったということに私は罪悪感と無力感を覚える。
「・・・っ、あ・・・」
何かを言おうとして、その小さな口を閉じる千乃ちゃん。
普段ならいとおしいと思うその仕草を、今は私たちを責めるかのように感じてしまう。
「わ・・・私、は・・・」
やっとの思いで言葉を発する千乃ちゃん。
「私が・・・っここまで、これたのは、皆さんがいたからで・・・一人じゃ・・・いや、です」
「・・・・・・・・・」
「だから・・・皆さんが、いないなら・・・」
そういって、その口をまた閉ざす。
律ちゃんの先ほどの言葉を理解しているからだろう。
なかったことにしないでくれ、と。
部長はそう言ったのだ。
「わ・・・わたしは・・・」
いつも以上におぼろげなその口調に、目にはみるみる涙が溜まっていく。
千乃ちゃんは、卑屈な笑顔を浮かべて。
「わたしなんか・・・いらない?」
そして、そう言った。
「わたしなんか、もう、いらない?」
「・・・っ」
「一緒にいると、迷惑、かけてしまい、ますか?」
今まで何度も言ってきた言葉。
そして、同じように何度も返してきた言葉。
迷惑をかけろ、と。
それを千乃ちゃんは、申し訳なさそうに頼ってくれた。
頼ってくれて来たのに、何故か。
本当に何故か、無性に心がざわついた。
今まで感じたことのないような感情。
これは、いったいなんだろう。
その答えが出ないまま、千乃ちゃんがまた言う。
「だったら・・・だったらもう、迷惑を、かけないように、します。
一人で、なんでもやり、ますっ・・・たら・・・そしたら、一緒にいてくれますか?」
何度も、躓きながらも言い切った。
どうしてこんなにも、心がざわつくの?
この言いようのない感情はなに?
まるで真夏のアスファルトを歩いているみたい。
そして気づく。
この感情は・・・。
「どうか・・・見捨てないでください・・・捨てないでください」
「甘えないで」
この感情は、苛立ちだ。
千乃ちゃんが・・・いや、湯宮さんが目を見開き、止まった。
そうだ、なんで私が湯宮さんのためにここまでしないといけないのだろう。
別段、そこまで仲良くもないのに。
そう思っていると、律ちゃんや澪ちゃんもそう思ってくれたのか、お大事にと一言伝えて、私たちは病室から出ていった。
唯ちゃんは信じられないものを見たような、そんな目をしていたけどなにかあったのかしら。
病室から出ていく最後、湯宮さんが胸を押さえて泣いていたけど、私が思ったことはなんだかめんどくさそうな女の子だなぁということくらいだった。
Side 千乃
あぁ・・・あぁ・・・!
そうか、今回はこれか。
今回、喪失したものは・・・これか。
律ちゃんが、澪ちゃんが、紬ちゃんが私を見る目が、他人のものだった。
そのことが、私は今まで喪失したものの中で一番心が痛くなった。
生前にも、経験した。
今まで何度も話しかけてくれたお医者様が、ある日を境に急によそよそしくなった。
そして思い出したかのように、以前のようにいろいろと話しかけてくれるようになったこと。
お医者様のお話や、喪失病でわかっていることのなかでもそれは綴られていた。
簡単に言うと、親交度の喪失。
まるで嘘のような現象。
しかし私は疑わない。
経験をしているからだ。
覚悟はしていたけど、やはり、皆さんにあの目を向けられるのは辛い。
皆さんからしたら、きっと、なんで私の病室に来ているか疑問でいっぱいだったことだろう。
他人のお見舞いだなんて、普通はしない。
きっと、皆さんの中では私がHTTの一員だったということも喪失しているのだ。
救いは、これはきっかけがあれば思い出してくれるということ。
以前のお医者様も、わたしのカルテを見たら、思い出してくれていたから。
だから、皆さんも今日KCに何をしに行ったかを考えてくれれば思い出してくれるはず・・・。
でも、やっぱり悔しいなぁ。
忘れないと、言ってくれた。
それを私は、泣いて喜んだ。
無理だとわかっていてももしかして、と。
そして案の定、訪れるべき結末が訪れただけなのに、私の心はこんなにもぼろぼろになっている。
なんで、私なんだ。
病室にいるからか、そんな風に弱気になってしまう。
これも何度も何度も思ったこと。
悲劇のヒロインを気取る気なんかない。
そんなことをしても何も変わらないのはもうわかっているから。
でも、それでもどうしてもこの気持ちだけは抑えられない。
真っ白なベッドに染みを作ってしまう。
声にならない声で泣く。
あぁ・・・なんて無様。
ふわり、と頭を撫でられる感触。
「喧嘩したの?」
そこにいたのは、私自身、菊里さんだった。
神様「ここから泥沼」