『近所の小学生に遊戯王で遊ぼうと言われ、今も昔もブルーアイズが最強と信じて疑わない私に白色のカードや黒色のカード、あげくにモンスターと魔法が混ざったようなカードを使われ、1ターンで負けた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うがおれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…
3行でまとめると。
社会人一歩手前の私が
いつも遊んでやってるジャリ共に
カモられた。
誰か今の遊戯王教えてください。
朝、目を覚ました私は体を抱きしめる。
あぁよかった。夢なんかじゃなかった。
私は、生まれ変わったんだ。
いつもは、目を覚ましても体を動かすことはほとんど出来ず、わずかに動く首を精一杯動かし、事故にあったことも、喪失病も、両親がいないことも全部夢じゃなかったと確認していただけでした。
けど・・・夢じゃないんです。
やってみたかったこと。
眼が覚めておもいっきり『伸び』をしてみたかったので、ん~と眠気を吹き飛ばします。
昨日は結局、疲れてしまってたのか、お風呂に入ってから卵かけご飯を食べてすぐ寝てしまいました。
卵かけご飯、本当に美味しかったです。
純白の白米の美しさ。
炊き上がった湯気が顔いっぱいに広がり、温かさが撫でていきました。
お米も一粒一粒がキラキラと輝いていて、宝石のようでした。
この宝石の上に卵をかけてしまうことを、何かいけないことのようにも思えましたが、
ほかほかの白米は卵を受け入れて、更に眩しく光って、白い雲に浮かぶ月のようでした。
醤油を少したらして、お箸を手に握ります。
ゴクっと、喉が鳴ってしまいました。
チューブで食事を済ましていた私の体は果たしてどんな反応をするのでしょうか。
胃がびっくりして、戻してしまうのではないでしょうか。
味が感じなかったらどうしようかとか、いろんな事が頭によぎりました。
でも、そんなことが小さいことに思えるように、目の前のご飯は輝いていました。
少しだけ、口に含むつもりでした。
私の舌先に触れた白米と卵は、脳天を貫いた感覚を残していきました。
もしかしたら、私は感覚が鋭敏化しているのかもしれません。
そう思えるほど久しく味を失っていた私には、それが何よりも衝撃で。
また一口。
もう一口。
気づけばすするようにかき込んでいました。
あまり、お行儀がよくはありません。
でも、噛みごたえ抜群のお米と。
喉をするりと落ちていく卵。
そして頬をつたう涙が私を、一心不乱に動かします。
美味しい・・・。
美味しいです・・・。
1杯だけでおなかは膨れてしまいました。
食べるって、こんなに満ち足りることなんですね。
これから毎日、なにを食べるかすっごく迷います!
その後、歯磨きをして泥のように眠りました。
気持ちの良い眠りでした。
今日から高校生活。
勉強についていけるかな。
運動も頑張らなきゃ。
友達・・・和さんと平沢さんともっと仲良くなりたいな。
頑張ろうって思いました。
とりあえずは朝ごはんにしましょう。
もーにんぐとーすと・・・食べて見たいと思ってました。
・・・別に食い意地ははってませんよ?
登校中。
家から学校は道に迷いさえしなければ歩いて25分くらいでした。
同じ制服の人がいっぱいいます。
なんだか、その光景が嬉しいですね。
私もその1員なんです。
校門を抜けて、靴を履き替え教室へ向かいます。
1年3組。
ここが私の教室。
昨日は、一言もしゃべれなかったですけど今日からは違います!
いっぱい喋ります!
目指せ友達100人です!
「おはよー」
・・・教室に足を踏み入れた私にそんな声が。
私なんかとは比べ物にならないくらいしっかりした体の女の子が目の前にいました。
今のは・・・私に声をかけたんじゃなくて、後ろの人ですよね?
後ろを振り返るけど、誰もいません。
「いやいやいや・・・誰もいないから・・・」
呆れたような声でそう言う。
ってことはですよ?
私に言ったってことですか?
「・・・っ!?あ、おおおおはようでうs!」
もう帰りたくなりました。
目の前の人も目を丸くしてます・・・。
せっかく声をかけてくれたのに。
「ぷ、あはははは!!」
いきなり笑い始めました。
わ、私何かしましたか!?
「あはははは!!か、噛みまくり!ひー!」
すごく笑ってます。
なんだか・・・どうしたらいいんでしょうか。
「・・・っ!ふぅ・・・いやーごめんね。
いきなりだったからさー。昨日は喋ってるところ見なかったからクールな子なのかとおもったら、そんなリアクションくれるとはね!あ、私は中島信代ね!同じクラス、よろしく!」
いっきにまくし立てられて口を挟むことが出来なかったんですが、挨拶はせねばと思い。
「あえっと、湯宮・・・千乃です・・・よろしくお願いしまし」
「はいはい、よろしくねー。席は自由らしいよー」
「あ、あありがとうございます」
「べつにそんな緊張しなくても・・・取って喰やしないよ」
ニヤニヤと笑って言ってくれます。
う・・・また笑ってます。
「あら、千乃。おはよう」
この声は!
和さん!
「お、おはようございます!和さん!」
名前で呼んでくれました!
名前で呼んじゃいました!
・・・やっぱり嬉しいなぁ。
いつも憧れてたんです。
教室で、友達と何気ない朝の挨拶をするってこと。
1人、感動に浸ります。
「あれ、もう友達?」
中島さんが和さんにそう尋ね。
「ええ。少し噛み癖があるけれど、友達よ」
もしかして今の会話、聞いてました!?
「あははは!やっぱそうなんだ!」
「ふふ。でもやるときはやる子よ・・・席は自由なのね」
ピコーン!
席は自由・・・和さんとち・・・近くがいいなぁ。
「千乃、まだ決めてないなら隣に座らない?」
「い、いいんですか!?」
「もちろん。唯もきっと近いだろうし・・・私も近くがいいわ」ボソ
最後のほうはあまり聞き取れなかったですけど、でも隣・・・。
すっごく嬉しい。
「おやおや?顔がほころんでますなぁ」
!?
隠すように手を頬にあてる。
「う・・・かわいい」
「でしょう?」
?
2人が何か会話しています。
「じゃあ千乃、窓際が開いてるからそこにしよっか」
「あ、はい・・・」
後ろを着いていきます。
「なんか羨ましい・・・」
中島さん、なにが羨ましいんでしょうか・・・?
「おっはよ~!」
平沢さんが到着しました。
朝からすごく元気で、見てるこっちもなんだか元気になります。
「唯、おはよう」
「あ、ひっ、平沢さん・・・おはようございます」
「和ちゃん、ゆっきーおはよー!
聞いてよあのね~、目覚ましかけたと思ったら電池が切れててさー・・・憂が起こしてくれなかったら遅刻してたよ~」
・・・ゆっきー?
誰のことでしょうか。
「・・・唯、いきなり言うとわからないわよ。千乃、唯が今呼んだのはあなたのことよ」
・・・・・・!?
朝から驚くことがいっぱいです。
私が・・・ゆっきー?
「あ、もしかしてニックネームとか嫌だった・・・?」
平沢さんが不安そうな顔で覗き込んできます。
嫌だなんて・・・そんなことありません。
嬉しいです。
そんなこと、今までありませんでしたから。
「いえ・・・すっごく嬉しいです!」
自分でも大きな声がでたと思いました。
クラスのみんなが驚いてます。
うぅ・・・また失敗しちゃいました。
「よかった~。千乃ちゃんだからゆっきー!」
「唯は安直よね。きっとペットを買ったら、犬なら太郎、猫ならミケ、ハムスターならハムよ」
「む、そんなことないよ~。ちゃんと昨日の夜一生懸命考えたんだも~ん」
「まあ千乃が気にいってるならいいんじゃない?」
「はい・・・ありがとう・・・ございます」
喜びでおかしくなりそうです。
・・・欲を言っても許されるなら、和さんにも・・・そう呼んで欲しいような・・・いえ、なぜか和さんには千乃って呼んで欲しいって思いました。
「ひ、平沢さんも・・・席・・・ちっ近くに・・・」モニョモニョ
「うん、そうする~。あ、ゆっきー、私も唯って呼んでよ~」
えへへって笑いながらいってくれました。
もう、幸せで今ならはじけて消えてもいいかも・・・いや、やっぱりもっと一緒にいたいです。
「えぁっと・・・ゆゆゆうういさn?」
「あははは!違うよ~。ゆ・い!」
「ゆ、ゆいさん」
「む~。さん付けじゃなくていいのに・・・」
「確かにね。もっと砕けて呼んでくれてもいいのよ」
そんな・・・そんな恐れ多いです。
もし、そんな事をしてしまったら幸せで死んでしまいそうです。
「や、え、っとその・・・」
下を向いてしまいました。
感じ悪い・・・ですよね。
「・・・すぐにとは言わないわ。いつか・・・呼んでくれたら嬉しい」
そう言って、手に触れてくれました。
暖かい、です。
「・・・コク」
なんとか、首を縦に振ることが出来ました。
その後に先生が来て、朝のHRが終わり授業が始まりました。
授業自体は、私がまだ喪失病で感覚など失う前に病院のリハビリの一環として習っていたものだったので、ついていく事は出来ました。
でも、久々に鉛筆を手にしたので字がうまく書けません。
帰ったら練習しよう・・・。
授業と授業の合間に、鉛筆を削っていると和さんと唯さんがびっくりしてました。
「なんでシャーペン使わないの~?」
しゃあぺん?
なんですかそれ?
私が頭をかしげていると唯さんがそのしゃあぺんなるものを見せてくれました。
「・・・!?」
見た目は鉛筆でしたが、材質は木ではなくメカチック・・・頭を押すと鉛筆の芯が出てくる・・・すごい!
カチカチ、と耳障りのいい音を気に入ってしまいずっと押してると、芯がポロっと落ちてしまいました。
「あー!壊した!」
唯さんがそう言った。
嘘・・・壊してしまったんですか?
どどどどどどどどどうしよう・・・
おろおろとしてる私を、和さんが。
「壊れてないわよ」
そう言って、芯を入れなおしてくれました。
よかった・・・。
「いや~、ゆっきーはいいリアクションするねぇ。かわいくてついいじめたくなっちゃうよ~」
・・・知らなかったんですもん。
あと、可愛いなんてお世辞、恥ずかしいです。
唯さんのほうが可愛いし、和さんも言ってくれたことはあるけど、和さんのほうが美人です。
でも、きっと2人は優しいからそう言ってくれたんですよね。
今度、おしゃれの仕方でも聞いてみようと思いました。
授業は終わり、下校の時間になりました。
高校では給食じゃなくてお弁当と聞いたときは絶望でした。
小学生の社会的知識と、看護しさんによる情操教育による知識しかなかったので、高校では給食じゃないって知らなかったのです。
お弁当がない私に、和さんと唯さんが少しずつ分けてくれました。
絶対に恩返しします。
お弁当は美味しかったです。
美味しそうに食べるね~って、2人に言われました。
放課後になって、私はクラブ見学をしようと思い、学校に残りました。
和さんは生徒会らしく、同じく残ることに。
唯さんは今日は帰るそうです。
何でも妹さんと料理をするんだとか・・・。
別れ際、中島さんが声をかけてくれました。
「クラブ見学するの?バスケットボールは!?」
グワっと迫ってくる中島さん。
びっくりして荷物を落としてしまいました。
びびびびびびっくりしただけで、泣いてはいませんからグス
「あああ、ごめん!」
そう言って拾うのを手伝ってくれました。
「大丈夫ですか?」
長い黒髪が綺麗で、和さんとはまた違ったベクトルの綺麗な女の子も手伝ってくれました。
お礼を言わないと・・・。
「あああありがとうございまっす」
きょとんとした顔でこっちを見てます。
中島さんは笑いをこらえてます。
「そ、そうですよね!?普通初対面の人と話すと緊張しますよね!?」
急に、綺麗というか可愛い雰囲気になりました。
話し始めた内容をまとめるとどうやら、幼馴染さんが無理難題を言って困らしているらしいです。
荷物を拾ってくれたお礼を言って、別れた後、なんだか少しおかしくなってしまいました。
目の前で急に慌てるようにまくしたてる彼女の表情。
可愛かったです。
あ、名前・・・聞いておけばよかった。
桜が丘高校のクラブはいっぱいありました。
他の高校のクラブの数を知らない私が言うのも変ですけどね。
でも、残念なことに音楽系は2つしかありませんでした。
一つは合唱部です。
結構有名らしくて、コンクールで賞を貰うこともあるとか・・・全国レベルらしいです。
でも、部室に行っても誰もおらず、顧問の先生に聞いたところ、将来有望な新戦力確保のために部員総出で勧誘に向かってるらしいです。
そんなにすごい人がいるんですか・・・私も会ってみたいです。
そして歌い方とか教えて欲しいです。
結局、部員の方とは会えず、次に向かいました。
もう一つはジャズ研と呼ばれる部。
ジャズ研はかなり部員も多く、楽器が出来ないと正直きついと言われました。
もちろんクラブ内で教えあったりもするが基本はサバイバルである、と。
一丸となってコンクールに出ることもあれば、個人ででたり・・・。
部室内はかなり広く、使い込まれている楽器、賞状やトロフィーがいっぱいありました。
あと、歌は正直いらないとも。
演奏メインらしいです。
残念です。
・・・歌いたかったなぁ。
あと・・・軽音部があったらしいです。
あったらしいというのは、今はもう部員がいなくて廃部になりかけているらしいです。
だから実質2つの音楽系のクラブということです。
軽音部、どんなクラブだったのでしょうか。
少し、興味があります。
一度、部室を見に行ってみたいと思いました。
ここ・・・ですか。
校舎の3階、そこに軽音部の部室はありました。
中をのぞいてみると、誰もいません。
当たり前ですよね。
でも・・・妙に綺麗といいますか。
つい先ほどまで誰かいたかのような感じがします。
ここで演奏したり、歌ったりしてたんですね。
そんな思い出が染み付いて、私にそんな感覚を覚えさせたのかもしれません。
・・・入りたかったなぁ。
何故だかそう思いました。
きっと、楽しかったと思います。
でも廃部してしまったのならしょうがないと思います。
1から部員を集めるなんて、私にはとても出来そうもありませんし。
・・・いや、それは言い訳ですよね。
ジャズ研部には断られて。
軽音部は廃部。
合唱部はまだわかりませんけど。
私には音楽と縁がないのかもしれないと、弱気になってるんですよね。
きっと諦めることしかできなかったから、諦めることに慣れてしまっていて。
でも、もう絶対に諦めません。
部員を集める。
絶対に無理、なんて言いません。
やってみせます。
だって、夢だから。
なんだか、本当にここはいい場所です。
落ち着くといいますか、誰もいないからそう思うのかもしれません。
私の決意を後押ししてくれてるような気がします。
この空間が好きになってしまいました。
絶対に諦めない。
その誓いに、自分への約束として。
歌いたいと思いました。
ただ誓うだけじゃ弱いと思って。
・・・和さんにも、唯さんにも上手だといってくれたから歌いたいっていうのもあります。
それに、歌うのは恥ずかしいけど、その分、私っていうものが作られて行くような気がして。
幸いにしてここは音楽室。
防音は完璧です、多分。
それに誰もいません。
これが重要です。
「碧の香り」
神様「まさかの信代さん」
最近寒くなってきましたね。
季節の変わり目は気をつけたいと思います。
碧の香りは、牧野由衣さんという歌手の曲です。
いい曲です。
ソウルイーターというアニメのEDになってました。
初めて聞いたって方は、是非一度聞いてみて欲しいです。