転生特典には気をつけよう   作:鯛じゃ

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たびのまえ

既に息子の10歳の誕生日から数ヶ月が経った

誕生日の当日に息子はトレーナー試験を受け見事合格した

そしてトレーナースクールも特に問題なく進み、無事10歳で卒業することとなった

一足早く卒業することになった息子を友達のキョウヘイ君とヒュウ君が涙ながらに祝福していた

とっても仲良しだったもの、離れ離れになるのは寂しいわよね…

でもその後、自分達もすぐにトレーナーになるからまた会おうね!って約束して笑顔でお別れができていたので良かった

 

そして、今日は旅に出る日だ

先週ぐらいから、あれが必要だこれは要らないんじゃないかと慌ただしくしながらも荷物の準備も終え、万全の状態でこの日を迎えることが出来た

 

玄関に立つ息子を見る

生まれたばかりのまだ小さい姿からは想像できないくらいとても大きくなった

立ち姿もしっかりとしていて、今日旅に出るというのが本当に楽しみだったことがよくわかる

 

はぁ…覚悟はしていたけれどやはり実際にその日になるととてもくるものがある

 

 

 

息子が生まれてから10年色々な事があった

 

子育てなんて初めてで大変なことばかりだった

赤ちゃんのころなんてどこを持ってもふにゃふにゃで怪我しないか不安でいつもハラハラしていた

突然熱を出した時なんてタクシー呼ぶことすら忘れて走って病院まで駆け込んだこともあった

今思えばデカくて飛べるポケモンが真横にいたんだから頼ればよかったと後悔している

いやでもあの時はアイツひたすら慌ててただけだったな…

 

あぁそういえばゼクロムにもなんやかんや助けられたっけ

一人で子育てってなるとどうしても手を離せない時ができてしまうけど、そういう時には基本的に息子の隣から離れなかったアイツは便利だったな

泣きだしたりしたらすぐに知らせてくれたし、息子から離れなかったお陰で転びそうなときとかもすぐに助けてくれたりしたし

なんなら途中から慣れすぎて泣き方とかでご飯かおトイレかとかも見極められてたな…流石伝説のポケモンとでも言ったところか…

 

でも、息子が最初に話した言葉が「ゼクロム」だったのは未来永劫許すつもりはないからな???マジで

 

というか世話にはなったけど、どちらかといえば迷惑のほうが多かった

デカいのが増えるたびにチャンピオンや国際警察がやってきたり、近隣の人に説明しなきゃいけなかったりしたし

庭とか基本占領されてて趣味のガーデニングもできなかったし

つーか途中からあの茶色のに勝手に使われてたし…しかも無駄に綺麗なのがイラッとくるのよね…

 

ってアイツらのことはどうでもいいのよ

ある程度の年齢になってからはかなり楽になった

確かに元気ではしゃぎまわったりはしてたんだけど、ある一定以上は絶対に超えなかったからか、あまり心配したりすることは少なかった

どちらかというと自分の方が心配なくらいだった

だって、息子の元気な姿をみているだけで何故かやる気がモリモリ湧いてくるし、仕事で疲れても息子が出迎えてくれるだけであんなに重かった体がテレキネシスでもされたみたいに軽くなったんだもの

なんなら少し浮いてる気さえする電磁浮遊だったかもしれない

 

昔はそんなふうになるなんて思ってもみなかった

あんなことがあってできた子どもなんて絶対に愛せないと思っていた

ただあの男が気に食わないから、このまま堕ろすのも負けた気がして嫌だったから、そんな理由で産んだのに

いざ産んでみればこの世の何よりも大切で愛しいモノになってしまった

今までくだらないことで頭を悩ませていたのがバカみたいに思えるくらいだった

そんなことよりもこの子とずっと幸せに暮らしていきたい、そう思えるようになった

 

私の人生を変えてくれた

私の子どもになってくれた

私にたくさんの幸せをくれた

 

 

「忘れ物はない?大丈夫そう?」

「うん!さっきも一杯確認したしバッチリだよ!」

 

そんな世界で一番大切な私の宝物が今日、旅に出てしまう

 

「◯◯」

「お母さん…?あっ…」

 

私は息子を抱き寄せる

これからの旅を祝福するかのように、優しく包み込むように抱きしめる…

そうしたかったのに、体は言うことを聞かなかった

どうかいかないでと、側にいてと強く強く抱き留めてしまった

 

昔に比べて随分大きくなった

でも、それでもまだこんなに小さいのだ

私よりも体は小さく、腕も足もとても細い

確かに元気に走り回れる、あんなに大きいポケモン達を洗ったりもできる

とても頑丈なのだろう

それでも、私にはまだまだ小さく愛おしい私の子どもなのである

心配だ

どうかいかないでほしい

まだ側にいてほしい

 

 

息子はそんな私を見ると、少し躊躇いながらも同じように強く抱きしめ返してくれた

 

「ありがとうお母さん。僕を心配してくれて。

でも、ごめんなさい。皆が僕を待ってるから行かなきゃいけないんだ。

…いや、違うな。僕が皆に会いに行きたいんだ。少しでも早く。」

 

皆

偶に息子が話す「皆」

旅に出ると決めてからは前よりも話すようになった「皆」

いったい誰のことなのだろうか?…なんてわからないフリをするつもりはない

きっとゼクロム達と同じで、どこかで息子のことを待っている者達がいるのだろう

ゼクロム達のように息子の元へいけず、今もずっと待ち続けているのだろう

 

そして、それは息子も同じだった

いつからなのかはわからない

生まれたばかりからなのか、それとも生まれる前からなのか

ずっと、ずっと会いに行くのを待ちわびていたのだろう

 

息子はどれほど止めようと止まることは無いだろう

…あぁ心配だ。いかないでほしい、側にいてほしい

私は息子の顔を見る

その目の光は誰にも汚されることのない決意の現れであった

 

その光を見せられて、引き止められるほど私は親をやめているつもりはなかった

私は息子を抱き寄せるのをやめ、正面に座り目線を合わせる

 

ねえ◯◯

貴方にはこれから先、たくさんの困難が待ち受けているかもしれない

辛いことや悲しいことも一杯あるでしょう

貴方にもポケモン達にもどうにもできないことだって起きてしまうかもしれない

もしかしたらどこかで挫けて、もう何もかもが嫌になってしまうかもしれない

 

それでも貴方は行くのよね?

 

「うん。」

 

…そう。ならお母さんはもう止めないわ

 

◯◯覚えていて

どんなに遠くに行っても、どんなに辛いことがあっても、私は貴方のことを愛しているわ

ずっと、ずっと大切に思っているからね

 

「うん、わかった」

 

私はその言葉を聞くと、後ろに置いていた袋からとあるモノを取り出す

 

「じゃあこれ。いっぱい外で活動するでしょう?日よけにもなるし、何か落ちてきても頭を守ってくれるわ」

「!ありがとう!大切にするね!」

 

そういって、私から渡した帽子を息子は被る

「うん。とっても似合ってる。」

「そう?ふふっなら良かった」

 

 

私と息子は顔を合わせ笑い合う

 

「それじゃあ、行ってらっしゃい。気をつけてね。」

「うん!行ってきます!」

 

荷物を詰めたリュックを背負い、今一度帽子を深くかぶり直す

そして、こちらに手を振りながら玄関を出て行く

 

ガチャン

扉が閉まると、シンっと家の中は静まり返った

まるで、ここにいる私は世界でただ一人だけの存在になってしまったのでは無いのかと思ってしまう

寂しい

心配だ

辛い

 

そっと一筋の涙が私の頬を濡らす

今日は息子の前では絶対に泣かないと決めていたが、息子がいなくなった途端絶えられずにボロボロと流れ始めた

 

私はそれを拭いながら、1つの願いを口にする

 

―どうかこの世に神様というのが本当にいるというのなら

どうか、どうか息子のことをよろしくお願いします

無事に怪我なく、またあの子の笑った顔を見れますように

 

 

 

 

……………

〜半年後〜

「ただいま!」

「えぇ?!?!」

私はあまりの驚きにひっくり返った

 

 

 

______________________________________

 

・息子(主人公)

たったの半年でイッシュ地方全域を旅し、仲間たちに出会い帰ってきた

お母さんにはこれまで起こった色々なことを話す予定だ

かつての仲間たちのこと

訪れた街であった色々なこと

昔出会ったピンクの女の子と再会したり、他にも色んな人達と友達になれたこと

とある緑髪の青年に出会ったこと

ジム戦全てを6タテしたこと

未だに残って悪さを働いていたプラズマ団を1人ずつ頭以外土に埋めたこと

ギアステーションでひたすらマルチトレインに誘ってくる2人の謎の女の子のこと

バトルになると途端に人を殺したかのような目つきになる少年とその2人の幼馴染のこと

他にもたくさんのことを話す予定だ

なお、一ヶ月後にはまた旅に出る予定

 

・母

息子が旅に出た後は、趣味のガーデニングを再開した

既に花壇に植えてあったピンクの花がとても綺麗で捨てるのがもったいなかったので、隣に別の花壇を作った

週一で電話はしていて、電話するたび別の場所におり、え?ここからあそこまでをたった一週間で?なんて驚いたりしていたが、まさか半年で旅が終わるとは思っていなかった

まぁ、でもこれで旅が終わったのならこれからは毎日一緒よね!

一ヶ月後、再び旅に出ようとする息子を全力で引き止めようとする姿が見かけられた

 

・伝説のスーパー保護者ポケモン

ゼクロム

主のオムツを変えた回数と離乳食をあーんさせた回数は母親にも勝るとも劣らない

ふるえば大木も軽々とへし折る腕も、いかなる硬い壁でも易易と切り裂く爪も、主に対してはまるで絹のように繊細な扱いをする

ケガなんて絶対にさせないから安心してな主のお母さんよ

 

・2人の友達

キョウヘイ

ヒュウ

先に旅に出た◯◯に追いつくためにも勉強頑張るぞ!ってコツコツ頑張っていたらなんか1年と経たずに帰ってきててビックリした2人

そして、一ヶ月後にはまた別のとこに旅に出ていってしまった◯◯を見てまるで台風みたいな奴だなと少し呆れた

 

・旅で出会った色々な人達

ピンクの少女「えー!もう旅に出たんですか?!早すぎますよー!」

歯磨き粉みたいな髪の少年「おー良いドラゴンポケモン持ってるじゃねーか、キョーダイ」

ポニーテールの女の子「なぁお前もマルチトレインに乗らないか?」

お団子ツインテールの女の子「ねぇ君!私と一緒にマルチトレイン乗らない?」

緑髪の青年「君がトモダチが話していた…!ずっとずっと会いたいと思っていたんだ。僕の名前は…」

目つきが悪すぎる少年「……。」

目つき悪い少年の幼馴染男「トウヤ、ポケモンバトルの度にその目つきになるの直したほうが良いと思うよ」

目つき悪い少年の幼馴染女「この前目つき怖すぎて、野生のポケモン泣かせてたよねぇ」

etc...

 

・本当にいる神様

アルセウス

お任せください母君。私達が必ずや主に安全かつ怪我のない旅をさせると誓いましょう

それはそれとして、花壇の方はできれば定期的に水を与えておいては貰えませんでしょうか?いや、無理のない範囲で構いませんのではい。

 

 

 

 

 




ようやく旅に出せた…
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