「さて、たまにはランキング見てみるか」
「ん?4位か。4位ねぇ…
4位!!(;゚Д゚)!」
ほんと、恐れ多いことです。
お気に入りに登録している方々、評価してくださった方々、見てくださっている方々、本当にありがとうございます。
俺は正義の味方になりたかった。
九を救い、一を捨てるのではなく、十すべてを助ける存在になりたかった。
あの聖杯戦争で前者になって、世界と契約した未来の俺にならないために、必死に色々なことを学んだり経験したりした。
遠坂と一緒に、倫敦にある魔術協会に行って魔術について学び、
シエルさんから、鉄甲作用を付けた黒鍵の投擲術を学び、
バゼットさんから素手での近接戦闘を学び、
遠野志貴と出会う毎に殺し合いながら、七夜の体術を(完璧ではないが)見て盗み、
橙子さんから、魔術についてさらに詳しく教えてもらったり、
両義さんに、兼定を投影した物をやって本気状態になって殺りあったり、
真祖の吸血鬼であるアルクェイドさんや、死徒二十七祖のアルトリュージュさんなどとなぜか殺り合ったり、
なぜか分からないけど、青子さんに気に入れられ、死合という名の模擬戦をしたり、
メレム・ソロモンが、俺の固有結界が珍しいということで、見せる代わりに自身が持ってる宝を見せてくれたり等、
今思い返せば、生きているのが不思議な程の人生を過ごしてきた。
そして、それらを使って紛争地域に行ったりなどして、色々な人達を救ってきた。
けど、魔術の秘匿を無視して救ってきたせいなのだろうか。
魔術協会が俺を封印指定をして、俺を捕まえるために行動してきた。
様々な手段を用いて、魔術協会から逃げながら正義の味方のような行動をしてきた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
しかし、組織対個人では限界があった。
今、俺は致命傷を負っている。
ある紛争に参加して、俺はいつも通り人を救おうとしていた。
しかし、魔術協会も俺を捕まえるために、その紛争に参加してきた。
俺はそれを知ってはいたが、紛争に巻き込まれている人達を見捨てるわけにはいかず、そのまま参加した。
紛争が収まりそうになったとき、協会側は焦ったのだろう。
最初は戦闘の流れ弾みたいにして俺を狙っていたのだが、全く効かないとわかり直接挑んできた。
沢山の模擬戦のおかげで、苦も無く倒せると思っていた。
けど、魔術の流れ弾が無関係の人に当たりそうになった。
俺が庇うことで、なんとか当たらずにすんだが、当たり所が悪く致命傷になってしまった。
それでもなんとか魔術師を倒すこができた。
そして現在、協会側からの追撃を逃れるため、痛む体を無理して逃げている。
「はぁ、はぁ、これは、まずいな…」
喰らったのが攻撃魔術と呪いの魔術の融合型の魔術だったため、ただでさえ致命傷なのに呪いのせいで悪化している。
アヴァロンのおかげで傷は塞がってきたのだが、先程の戦闘で魔力がほとんど残っていない状態で使ったため、皮膚が塞がっただけで消費した血と、抉れた臓器の修復ができていない。
まぁ、その場で死んで協会側に遺体を回収されるよりかはまだマシなんだが…
「さて、この後どうしようか…」
とりあえずこの後の短い間の俺の行動だが選択肢はある。
このまま死ぬか、遺体を残さないようにするか…
どっちにしろ俺が死ぬことに代わりはない。
死ぬのか…
「けど、庇って俺が死ぬ代わりに助けることができたんだ。
正義の味方として充分な死に方だと思う」
救えない命はあった。
それに悔やむ気持ちもある。
けど、それが行き過ぎてアーチャーは摩耗してしまったのだ。
俺は遠坂や橙子さん、両義さん、シエルさんなど色々な人達から同じようなことを教えてもらった。
『救えない命は確かにあるだろう。けど、行動したからこそ救えた命がある。
それらの命を蔑ろにして、救えない命ばかり見ていてはいつか摩耗してしまう。
過去を振り返るな。現実(いま)を見ろ』
それを最初に言われたとき、俺は理解できなかった。
けど、摩耗した自分、アーチャーを見たことがある俺はすぐに理解できた。
その教えを心に刻み、色々な人達を救った。
ああ、俺は救えたのか…
そう思うだけで俺の心は摩耗することはなかった。
だから俺はアーチャーのように後悔していない。
ただ、ひとつ…
「俺は、正義の味方になれたかな?遠坂」
遠坂…
「結局、面と向かって言えなかったなぁ…」
そう、唯一心残りなのは遠坂にまだ告白してない。
「ごめんな遠坂。
迷惑ばかりかけて」
「愛してる、遠坂…」
そうして俺は、遺体を残さないようにするために、投影して自爆しようとした時、
「…なに恥ずかしい台詞を言いなが死のうとしてんのよ」
「え?」
声をした方向を見ると
そこには顔を真っ赤にして立っている遠坂がいた。
「遠坂?」
「まったく、あんたを助けようとして来たらいきなり告白だもの。
…まぁ、嬉しかったけど」
「え?」
「な、なんでもないわよ!!
とりあえずあんたを助けに来たの!!」
最後なにか言ってたけど声が小さくて聞こえなかった。
「士郎。いまの自分の体がどうなっているのかわかるよね?」
「ああ、傷は皮膚が塞がっただけで、中は致命的な状態。
さらに、呪いによって魔術や宝具による治療が効きづらくなっている。
それ以前に、宝具を起動する為に必要な魔力が全く無い」
「そう。そして助かるには」
「新しい体に移るしかない…」
「そう、空の入れ物に入るしかない」
確かに、いまの状況から助かるにはその方法しかない。
けど…
「遠坂は、魂を別の入れ物に入れる魔術ができるのか?」
「できるわけ無いでしょう。
私の専門は第二魔法、人形師のようなことできるわけ無いでしょう」
「それじゃ、どうしようもないじゃないか」
「大丈夫よ。人形師がこういうことが起きるのを予想して、あらかじめ準備していたらしいわ」
「どういうこと?」
「まず、士郎の体を作る。
これはまぁ人形師だから普通にできたらしいわ。
けど、次からが問題だったらしいわ」
「魂を人形に移す…」
「そう。その場に本人が居合わせたらいいんだけど、そう都合よく目の前でそういうことが起きるわけじゃない。
だから、その場に居なくてもできるよう体に細工しておいたらしいわ」
細工?
けど、自分の体を解析してもそんなものは見つからないんだけど…
「見つかるわけ無いでしょう。
魔術で見つかるような細工だったら、他の魔術師にわかってしまうでしょう」
確かにそうだ。
せっかく生き延びられるように細工しておいたのに、バレてしまっては意味が無い。
「細工の内容は曰く、士郎が死んでしまった場合、自動的に人形に移るということらしいわよ。
あの人形師は、自分の体の予備を作っておいて、死んでしまったらその人形に移るというのをやってるから、それを他人の体に置き換えてやったらしいわよ。
ただ、自分以外でそれをやったことがないから少し苦労したらしいわよ」
つまり…
「俺が死んだら」
「今、私が持ってるこの人形に移るというわけ」
といいながら、遠坂が持っていた荷物の中から人形が出てきた。
「燈子さん…」
「そうそう、人形師から士郎に伝言があるわ」
「え?」
「『これで貸し借りは無しだ。自分の体を大切にするようにしろ』だって。
あんた、あの人形師から貸しを作るなんて…いったい何をしたのかしら?」
「はは…」
「まぁ、いいわ。
これで助かることができる。けど…」
「大体予想できるよ。
協会が俺を捕まえようと、必死になりはじめたんだろ?」
「…」
やはりそうか…
そして、この場に遠坂がいるということは、遠坂も協会から命令が来たのだろう。
「今、大師父とミス・ブルーがなんとか時間を稼いでるけど、それも時間の問題。
恐らく、今までのようなことはできないわ」
「そうか…」
ただでさえさっきまでの状況で、俺は死にそうになったのだ。
今回は燈子さんが準備してくれたからよかったけど、それが何度もできるとは限らない。
確かに、橙子さんのようにひっそりと生きていれば、まだ生きていける確率が高くなる。
けど…
「だからと言って、おれはこの生き方を変えることはしない。
それをしてしまったら俺じゃなくなる」
「…はぁ、言うと思ったわ」
俺がそう言うと遠坂は呆れながら言った。
「私が第二魔法を完全に完成していたら、確実に他の世界に飛ばせるのに…」
「え?」
「私の専門はさっき言った第二魔法でしょ?
けど、まだ私は穴を開ける程度のことしかできないのよ」
「ちなみにその穴で他の世界に行ける確率は?」
「よくて二割ってところかしら?」
「そうか…」
「どうする?それでも行く?」
必ず行けるとは限らない。
けど、それでも魔術協会が本気で俺を殺そうとしてるこの世界にいるよりまだましだ。
なら、俺がとる方法は一つ。
「それでも、俺は他の世界で正義の味方を続けたい。
それが俺の生き方だから…」
「…そう」
遠坂は、呆れてはいるが微笑んでいた。
「わかったわ。
穴を開けるために欠陥品ではあるけど、宝石剣があるからこれを使って穴を開けるわ。
あとは」
「俺が死んで、体をこの人形に変えたらいいんだな?」
「ええ、そしてその後、私が穴を開くからそれに入ればいいわ」
「わかった」
そして、俺は人形に移ろうとして死のうとした瞬間
「はーい、ストップ。
おまえら何大博打しようとしてんだよ」
「「え?!」」
声がする方向に向くとそこには
言峰が着ていた服を白くした、両義さん似の何かが居た。
「まったく、完成されてない状態で無理やり第二魔法やろうとするなんて…
ないわほんと」
「あなた、誰?
というか人間?」
「ああ、やっぱり気配で大体は勘付くか。
そうだよ。俺は人間ではない。
簡単に言うと、この世界の神だ」
「「は?」」
俺と遠坂は自称神が言ったことに困惑した。
いや、確かにアルクェイドさんとか、アルトリュージュさんのように人間じゃない気配がしているのはわかる。
けど、だからと言って…
「あなたが神だって言っても、それを信じれるほどの証拠がないと信じきれないんだけど」
「まぁ、確かにそうだよな。
んじゃあ
これで信じてくれるよな?」
と言うと、さっきから感じる痛みと不快感が消えた。
まさかと思い、自分の体を解析してみると
「傷と呪いが、消えた…」
「え?!嘘?!
まさか、魔術をする素振りも見せず無詠唱で治療したっていうの!!」
「出来るに決まってるだろ。
俺は神なんだから」
「「…」」
「これで信じてくれたかい?」
信じないわけにはいかないだろう。
無詠唱で、しかも何の素振りもせず、致命傷の傷と魔術や宝具を使った治療を妨げる呪いを、一緒にしかも一瞬で消したんだ。
そんなことができる奴なんて聞いたことがないし、そんな魔術絶対存在しないだろ。
現に、俺より魔術に詳しい遠坂が俺と同じ反応しているんだ。
俺と同じ考えなんだろう。
「…まぁ、実際に見せてくれたんだから、信じるしか無いんだけど。
で?神様が何の用でしょうか?」
「何の用かだって?
簡単だ。
そんな博打で、衛宮士郎を他の世界に飛ばされる前に、俺が確実に成功する方法と、プレゼント付きで助けに来たんだよ」
「「…は?」」
神が言ったことに俺と遠坂はまた困惑した。
神様が俺を助けに来た?
「なんでさ?
俺、神様のために何の良いこともしてないんだけど」
「俺は『平等』という考えを元に行動している。
神というのは、その世界で生きている全ての命を考えなければならない。
他の全ての命に対して、害を与える存在にはそれ相応の報いを、他の全ての命に対して、幸福を与える存在にはそれ相応の報奨を。
それが俺の『平等』についての考えだ。
だから衛宮士郎。
命を救い続けた正義の味方には、それ相応の報奨を貰える権利がある」
「ちょっとまってくれ。
確かに俺は命を救い続けた。
けど、救ってきた人からその分の報奨をもらってる。
これで充分平等にはなるじゃないか」
「…はぁ。
お前は自分がどれだけのことをしてきたのか、まだ自覚がないのか…」
「?」
俺が一人言われたことに疑問を持っていると
「ああ、なるほどそういうことね」
遠坂が納得していた。
「どいうこと?」
「お前は命を救う毎に貰う対価と、救った命が釣り合ってないんだよ」
そんなはずはない。
あの聖杯戦争が終わった後、遠坂は俺が対価を貰わずにやっていくのおかしいと言われて、貰うようにと聞き飽きるほど言われた。
そういうのもあって、俺はそれ以降助けた人からは対価を貰っている。
だから、別におかしいことはないんだけど…
「それじゃあ、一つ聞いてみたいんだが。
お前はいつもどんな対価を貰ってる?」
「助けた人が家持ってたら一泊してもらったり、情報を貰ったりとかかな?」
「「はぁ…」」
そういうと遠坂と神は呆れながら溜め息を吐いた。
なんでさ?
これくらいの対価なら別に大丈夫だと思うんだが…
「衛宮士郎。
命の重さは、その程度の対価で釣り合うのか?
お前が思っている命の重さは、その程度なのか?」
「そんなわけっ!」
「そんなわけないよな。
たくさんの命が目の前で消えたあの大火災から切嗣によって救われ、切嗣の思いを受け継いで、全ての命を助けると決めたお前が、そんなこと思うわけ無いよな?
だからこそ、お前が貰った対価と命の重さが釣り合ってないんだ」
「どういうことだ?」
「釣り合ってないということはつまり、まだ対価の貰い残しがあるんだ。
そして、さっき言ったとおり、俺の行動原理は『平等』だ。
その貰い残し分を、お前にあげるために行動しているんだ」
「その貰い残しが、さっき言った確実に他の世界に飛ばすのとプレゼントってわけね」
「そういうことだ」
「ああ、そうそう。
俺はもう対価を貰ったから、そんなことしなくていいっていう意見は却下するから」
言おうと思ったことを言われた。
「さて、時間がないからすぐにやらせてもらう。
まずは、魂をその人形に移すために殺さないといけないんだが、その前にその人形を改良させてもらおう」
「改良?」
「まぁ、改良内容はあとで自分で確認してくれ。
ぶっちゃけると、その改良ももうし終わったんだけどね」
「…さすが神様、と言ったところね」
正直言って、どんな改良をされたのかわからないから、自分の体をあの人形に変えたくないんだけど…
「あとはその人形に服を着せてるっと、よし終了」
人形の服装を見ると、それはまるっきりあのアーチャーと同じ服装だった。
「ちょっとまて、何故にその服?」
「似合うからいいでしょ」
そんな理由かよ…
「さて、ではその人形に移ってもらおう」
「え?!もう?!ちょっ!!」
「はい、ドーン」
神がそう言いながら、指パッチンをするのを見るのと同時に意識がなくなった。
そして、俺はすぐに意識を取り戻したのだが、体に違和感を感じた。
その違和感を探すために、自分の体を解析してみた。
(――――――同調、開始《トレースオン》)
身体詳細……大体変わらず。ただ肌の色、髪の色など魔術使用による身体的副作用改善。
身体機能……変わらず。ただ鍛錬することによる身体機能上昇率二倍増。
魔術回路……全二十七回路使用可能+α、投影使用可能、強化使用可能、真名解放可能、壊れた幻想使用可能、無限の剣製条件付きで可能。
魔力量……五倍増。(!!!!)
「ちょっとまて、なんで魔力量が五倍も増えてるんだ?」
「俺からのプレゼント。
あ、あと今の状態では魔術回路の数は変わらないけど、鍛錬するうちに数が増えて最終的には二倍になる予定だから」
「よかったわね士郎。
これで、あんたも人外の領域に確実に近づいたわね」
喜んでいいのだろうか?
まぁ、身体機能が上昇しやすくなったのはうれしいけど…
「で、固有結界が条件付きで使用可能って、条件って何?」
「固有結界は、自由に使えるとお前のためにならないから条件を付けた。
内容は、自分で考えろ」
「いや、理由はわかるけど、内容教えてくれないのかよ」
「教えないということは、それくらい使うのをやめてくれって言う意味だ。
使いたければ、頑張れ」
「はぁ…」
「さて、次が本番だ。
衛宮士郎、お前を他の世界に飛ばす」
「けど、どうやって飛ばすのかしら?
まさか、第二魔法を使うつもり?」
「いいや、そんなもん使うより確実に他の世界に飛ばせて、なおかつ飛ばした先の世界に迷惑かけること無くいける方法だ」
「世界に迷惑を掛ける?
それって抑止力のこと?」
「そうだ。
元から存在しないものがいきなり世界にくるんだ。
その世界からしてみれば、世界の秩序を乱す存在だろう。
その存在を世界が見逃すわけがない。
恐らくというか、確実に世界は抹消するために動くだろう。
その抑止力を最小限に抑えるための方法だ」
「なるほどね。
どちらにしろ、確実に世界が動くなら、その力を少しでも弱らせるためってことかしら?」
「そういうことだ。
だからこそ、衛宮士郎にいろいろプレゼントしたんだ。
その抑止力に対抗できるために」
抑止力。
別名世界の掃除屋。
あのアーチャーがその存在になったらしいがつまり最低でもアーチャーレベル、英霊以上の強さを持つ者が来るっていうことか。
…まぁ、アルクェイドさんみたいな真祖の吸血鬼よりかは弱いだろう、多分…
「その方法だが、簡単に言うと飛ばす先の世界に衛宮士郎、お前が召喚されるということだ」
「召喚?」
「言うなればこちら側が送信側、飛ばす先の世界が受信側になるということだ」
「ああ、なるほどね。
仮に、飛ばす先の世界に召喚魔法というのがあった場合、世界から見たら召喚魔法をしているという認識になるということね?」
「そ。
それによって世界からの干渉を防ぎ、なおかつ使い魔という形にすることで
、結果的には邪魔な存在ということで抑止力は働くけど力は弱くなるというこ
とさ」
「なるほど。
ちなみに、その方法を使うことによってどのくらい弱くなるんだ?」
「簡単に言うと、真祖の吸血鬼からアーチャーくらい」
「「うわぁ…」」
「だから、もし仮にさっきおまえらがしようとしていた方法で成功していた場合、そんな奴といつか戦うことになっていたというわけだ」
…それ、もう確実に死んでいたな俺。
「召喚陣は、おまえらが知っているこの陣でいいよな?
ぶっちゃけ陣の種類はなんでもいいし」
と言いながら出した召喚陣は…なんだろう?
見たことはあるんだけど…
「懐かしいわね。
あの陣を使うなんて、空気を読んでいるのかよくわからないわ」
「遠坂はわかるのか?」
「士郎だってわかるでしょう?ってそうだった…。
士郎は正規の方法で召喚してないからわかるわけないか」
「?」
「この陣は、聖杯戦争でサーヴァントを召喚するときに使う陣よ」
「へぇ」
セイバーが召喚されたときにでてきていたあの陣か…
それは覚えているわけないよな。
一瞬しかでてなかったし。
「では衛宮士郎。
この陣の上に立ってくれ」
「わかった」
神にそう言われたので、俺は陣の上にたった。
「もう少ししたらその陣が光りだす。
それは受信側が召喚するために、詠唱を始めたということだ。
それまで、遠坂嬢と暇を潰していたらいい」
と言うと神は歩きながら気配を消した。
このまま俺達を放っておくことはしないと思うから近くにいるとは思うけど、どこにいるのかはわからない。
「…まぁ、いいか」
というわけで、いま遠坂とふたりっきりになったわけだけど…
「「…」」
どうしようか…
この方法が成功したら、もう二度と会うことはないのに、俺は何を話すか迷っている。
「…っぷ」
と考えていると、遠坂がいきなり笑い始めた。
「どうした、遠坂。
いきなり笑い出して」
「ごめんごめん。
今士郎が思っていることを想像したら笑っちゃって、ふふ」
「失礼だぞ、遠坂!!」
「だから謝ってるでしょ!!」
もう会うことができなくなるのに喧嘩していまう。
けど、これが俺らのいつも通りな会話なんだと思う。
「ははは」
「ふふふ」
ああ、こういう雰囲気ももうなくなるのか…
「ありがとな、遠坂」
「え?」
「もし遠坂がいなかったら、俺はアーチャーのようになっていたと思う。
傍に遠坂がいたからこそ、自分の理想に絶望すること無く生きていけたんだと思う」
「…」
だからこそ、感謝と自分の思いを伝え忘れないように、万感の思いを込めて伝えたいと思う。
「遠坂。
ありがとう。…愛してる」
「っ!!」
そう言うと、遠坂は顔を真っ赤にして、
「…私もよ、士郎。
愛してる」
泣きながらそう返事してくれた。
ああ、やっと、やっと伝えることができた。
しかも遠坂が同じ思いだと知って、男としてこれほど嬉しいことはない。
「士郎」
「?」
「約束して。別の世界では私のことは気にしないで、パートナーをしっかり作るって」
「な!!」
「確かに私の事をずっと愛してくれるのは嬉しいわ。
けど、それによって、あなたを縛りたくないの。
士郎の自由に生きて欲しい。
絶対、作りなさいよ」
泣きながら、けど威圧的に遠坂は言ってきた。
遠坂は、世界に居ない人間を愛し続けるより、その世界にいる人間を愛して、生き続けて欲しいと言われた。
正直、俺は別の世界に行っても、作るつもりは一切なかった。
俺にとって、初恋の相手であり、人生を変えてくれた恩人だ。
そんな人の最後の願いなら、叶えなければならない。
けど、せめてこれだけは…
「…わかった。
けど、これだけはわかって欲しい」
「?」
「どんな相手だろうとも、俺の初恋の相手であり、人生最高の恩人なのは全世界で遠坂ただ一人だ。
これだけは、俺の心に刻みたい。
絶対に、忘れたりしないよ」
「相変わらずね、士郎は…」
「ありがとう。私も、初恋の相手は絶対に忘れないわ」
とても素敵な泣き笑いをしながら、遠坂はそう俺に言ってくれた。
と、同時に陣が光だした。
「始まったか。
最後に言うが、あっちの世界についたら目の前に人がいると思うが、そいつがお前を召喚した人でマスターになる人だ。
間違っても殺すなよ」
「わかった」
さっきまで気配を消していた神が、いきなり出て来て説明し始めた。
「ありがとな、神。
ところで、なんで両儀さんの姿なんだ?」
「ん?簡単な理由だよ。
こいつの体が、一番適しているからだよ」
「?」
「いや、理解できないならそれでいい。
それより、俺に感謝を言うなら、今まで良い事をしてきたお前自身に言いな。
やってきた行動のおかげで今があるんだ。
お前のやってきたことは誇っていいことなんだ」
…ああ、そうか。
確かに救えなかった命があった。
けど、同時に俺が行動したからこそ救えた命がある。
誇って、いいんだな…
光が強くなった。
もうそろそろ詠唱が完了するのだろう。
「それじゃあ、遠坂」
「グスッ、何?士郎?」
まだ真っ赤になりながら泣いている遠坂に、この言葉を送って行こう。
「行ってくるよ」
「…いってらっしゃい。
元気でね」
そして俺はこの世界からいなくなった…
あまりにも眩しすぎて目を閉じていたが、光が弱くなったのを感じて目を開けてみると、
目の前に、美少女がいた。
神が言ったことを信じると、目の前にいるこの女の子が俺のマスターなんだろう。
そう思っていると目が合った。
俺は、自然と思ったことを口に出した。
「「問おう。あなたが「俺」「私」の「マスター」「サーヴァント」か」」
そして、この言葉がこの世界で生きる俺の第二の人生の始まりであった…